MTGにテンポという概念はだいぶ浸透してきた。古くは2マナ2/2を排撃することが不利になることで紹介され、現在は怒り狂う山峡を稲妻されたときにテンポを失ったと実感するようになっている。


そもそも、テンポ(アドバンテージ)とはMTGだけの言葉ではない。僕は趣味でチェスをやっているのだが、チェスの教本にはマテリアルアドバンテージ(すなわちリソース)とともにテンポアドバンテージについて紹介されている。

 

チェスのテンポはマジックより随分わかりやすかった。日本語に直すと「時間」のアドバンテージとなり、要するに何手得したか、損したか、という考え方になる。

 

たとえば自分と相手が

 

1手目 eポーン前進        cポーン前進
2手目 eポーンがさらに前進 bナイト前進
3手目 eポーンがさらに前進 gナイト前進
4手目 eポーンがdポーンをとる ビショップでそのポーンを取り返す

 

というふうに駒が進んだとき、駒はお互いにポーン1個取り合って互角だが相手がナイト2、ビショップ1、ポーン1と前進できたのに対し、自分は4手かけて進んだポーンが取られてしまったのでテンポ的に4手損したことになる。

チェス1

 

 

チェス2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、これはヘタな例であるが、実戦的には序盤にクイーンを動かすとテンポ損と言われている(クイーンは多く動けるので、何度も動かすと損になる)。

 

MTGに話を戻すと、ようするにマナを使い切ることであったりマナ効率を守ることがだいたいテンポを失わないコツになり、それがテンポの初歩になる。さっきの稲妻で怒り狂う山峡を処理することは5マナを1マナで対処することで相手の5ターン目を奪ったに等しいことになる(ちゃんと残りの4マナを活用していれば)。同様に古くオンスロートにあった変異同士の戦いで白チャームを使うことで、変異2匹対0匹の場を作ることがテンポの活用法である。

 

まあ、ここまでは大体理論としてのテンポであるし、こんなプレイをすると

 

「俺ってテンポとったぞ、いいプレイをしたな」

 

となんとなく嬉しくなる。しかし、このようなケースは結構レアケースであり、狙うのも難しいし、相手もそこそこ警戒する。

 

ところで、テンポってそんなにレアケースでしか意味を成さない理論なのか?実はそんなことはなく、もっと多くのケースで大小のテンポ交換は起こっているのだが、それがあまりにも小さかったり、逆にあまりにも大きかったりして結局そのこととは気づかずにゲームは終わっているのであると思う。たとえば、現存するスタンダードにバカみたいにテンポを稼ぐカードがあるのでそれを紹介しよう。

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審判の日だ。

 

このカードは何ターンもかけて作りあげた場をアッサリ破壊する。また、ハンドアドバンテージも稼ぐ。そのことにより、将来にも空白のターンをもたらし、さらなる時間のアドバンテージも稼ぐ。審判の日が通る限り、あなたはクリーチャーによるテンポの損失を意識する必要はない。仮にこれをカウンターするクロックパーミッションデッキを相手にする場合は意識することが必要になるが、そういう仕掛けでもない限り、このカードの獲得テンポはものすごい。

 

さて、他にも歴代のテンポ破壊カードを紹介しよう。

 

ドルイドの誓い、たった2マナでものすごく巨大なクリーチャーを生産する。
サイカトグ、3マナで召喚できる超巨大生物。
悪斬の天使、すべての殴り合いを無にする。緑単でコイツにテンポをとる方法は?

(M11のコモン以外で!)


テンポという理論があまり認知されないのもわかる。ようするに、カードパワーが高いカードは大体獲得テンポもすごい。あまりに大きすぎるテンポの損失は、要するに他のアドバンテージ損失に直結し、むしろそっちに目がいってしまい、テンポの損失がどうとかいう問題ではなくなってしまうのだ。

 

ただ、そこで話が終わってしまうとせっかく覚えたテンポという知識がもったいない。結局はそのことは受け入れなくてはいけない。ようするにテンポは「ものすごく移動することがある」ということを覚えておき、だからこそ、微差で勝負が決まるときにはそれを注意すべきなのであると思う。

 

さて、話を戻そうか。テンポアドバンテージっていうのは時間のアドバンテージである。時間のやりとりは色々だが、大体ターンを奪えばよく、その方法としてクリーチャーを奪うことが場のテンポを奪う一般的な方法でありそこをつきつめると、熊に巨大化っていう話になってくる。

 

しかし、実際はそんなキツキツのテンポの奪い合いはあまりなく、それより頻出するもっと深刻なテンポの損失がこのゲームにはある。

 

「空白のターン」

 

の存在である。それは何もしなかったターンだけのことを指すのではなく、実質的に空白のターンも存在する。例えば、審判の日を打たれる直前のターンに追加のクリーチャーを追加の召還したならそれは空白のターンであり、そのターンに相手が動いた場合は即ちテンポを失っているのだ。


実は、MTGというゲームはこの「空白のターン」をテンポの損失と考えるだけで、すべてのアドバンテージをテンポ、つまり時間で言いかえることができる。

空白のターンが生まれる最も単純な理由は「手札にプレイできるスペルがない」からである。つまり、手札がないから何も出来ないターンが生まれ、テンポを失うのだ。

逆に言うと手札があれば空白のターンが生じにくくなる。手札を確保するためには、ドローできるカードを入れたり、重いスペルを入れなければならない。そう、長期的なテンポの優位を確保するには軽いスペルだけではダメなのだ。このことはよく言われている「テンポ」とは真逆の発想に思えるかもしれないが、マナ効率を考えると当然のことである。なぜなら、永遠にターンが続くなら手札を使いきったプレイヤーはマナが余ってしまうが、手札を使いきらないプレイヤーは毎ターンマナを使うことができるからだ。

そんなわけで、僕はテンポというのは中~長期戦デッキで防御を考えるときにこそ大事に考えるべきだと思っている。攻撃時にテンポを取るということは、実は相当難しいし、それは出来たら勝てるだろう。しかし、防御時にテンポを失わないようにすることは比較的簡単である。マジックは防御側に選択肢があることが多いからだ。特に防御側は、防御を終えたあとは自動的に勝つようになっている(でないと防御と言えない)ので、序盤はキツキツのテンポを守り、中盤~終盤もマナを使いきることが勝利の道になる。そのためには、ドローカードや重いカードを相手の空白のターンにねじ込んでいき、こちらは空白のターンを作らないようにするべきである。

昔の話になるが、僕がまだプロツアーに参加していた時期の日記か何かに


「サイカトグの嘘か誠かが取るテンポがどれぐらいかを理解しているか?」


と書いた覚えがある。当時は場のサイカトグがデカくなるんでしょ?みたいな返答をよくもらったが、上記のように手札が増えて将来のテンポも稼いでるんだってことを説明し直すのにこんなに時間がかかってしまった。

さて、テンポの根本については以上だ。それを踏まえて、表題の件に移ろう。


「6ターン目に6マナのスペルを使わないとテンポを失う」

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前述したように、テンポを失わないためには空白のターンを作らないようにしたい。しかし、そのために何枚の重いカードを入れて、何枚のドローカードを入れればいいのかって話になるとそのへんはたくさんのややこしい計算や経験をしないとダメなので、そこはデッキ構築の醍醐味として皆さん頑張りましょうってことで丸投げさせていただきたい。

ただ、すごく単純な目安として「6ターン目に6マナを使わないとテンポを失う」という事実を覚えて欲しい。これはどういうことかというとMTGは7枚の手札で始まる以上、理想の回りを想定するなら必ず6ターン目に6マナを使うはずだと言うことである。

例えば初手が「1マナ、2マナ、3マナ、4マナ、5マナ、6マナの呪文、土地」だったとして先行だとしよう。


1ターン目は土地を置いて1マナ使う。手札は残り5枚だ。
2ターン目に土地を引いて2マナ使う。手札は4枚。
3ターン目に土地を引いて3マナ使う。手札は3枚。
4ターン目に土地を引いて4マナ使う。手札は2枚。
5ターン目に土地を引いて5マナ使う。手札は1枚。
6ターン目に土地を引いて6マナ使う。手札は0枚。


6ターン目までを考えるなら、これがマナ効率的には最良の回りになる。MTGが7枚の手札で始まる以上、数学的にこれが最良なのだ(特殊なことにならない限り)。

で、この中から「べつに1ターン目は動かなくていいや」と考えるならば、1個ずつずれることになるが、とりあえずは6ターンめに6マナは使うことになる。最良の回りを追うならば、必ず6マナ使うはずなのだ。

そして、それ以外は「最良ではない」回りである。だからこそ「6ターン目に6マナのスペルを使わないとテンポを失う」という目安が成立する。つまり、6ターンめに3マナのスペルを1枚しか使えなかったら3マナ分「空白」が生じているだろうし、3マナのカードを2枚使ったならどこかのターンが空白だったってことになる。

僕は日本選手権で若き群れのドラゴンを4枚入れたジャンドを使い、それがベスト8の原動力になったのだが、これは上記のような理由からである。ジャンドのような中速デッキで、かつドローがないデッキでテンポ損失を回避するにはこういう単純な工夫が大事だったと思っている。

奇しくもM11で追加されたタイタンも6マナだ。6マナっていうマナがどういう役割かを、デザインチームはわかっていないわけがないだろう。


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