2018年01月

2018年01月14日

NANPACLUB第3話無料公開

デヴィット・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の
『FIGHTCLUB』をオマージュした『NANPACLUB』。
ここに、その第3話を無料公開します。

 金曜日の20時。俺は池袋に降り立った。
 埼玉県の多くの駅と同じく、俺の駅からは東京に行くには必ずといっていいほど池袋を通るので、慣れているといえば慣れている街だが、これから始まることを考えると、いつもと違う街に見えた。
 エスカレーターを上がり、交差点を渡り、サーベルタイガーに来いと言われた池袋西口公園に。
 ホームレスたちが円を描くように住み着いており、中央では無名のジャズバンドが演奏をしている。カップルが数組、サラリーマンが数組、行き交う人々が何人も通り過ぎた。
 
 サーベルタイガーが来ると遠くからでも一目でわかった。
 ドルチェ&ガッバーナのジャケットとパンツ。バッファローボブズのロンT。ティアドロップのサングラス。それを着こなす本人。カリスマティックなオーラを発している。
 それが合図のように、周りから男たちが集まってきた。サラリーマン風の男が数人、大学生のようなマルイのファッションに身を包んだ男が数人、サーベルタイガーのようなファッションの男が二人、サーベルタイガーとはまたちょっと違うがオシャレな雰囲気の男が数人。さえないおっさんのような男が数人。だいたい30人くらいだ。

「今日はまず新入りを紹介する」
 円陣を組むように集まった男たちの中心で、サーベルタイガーが話し出した。視線が俺に集中する。
「埼玉の…えっと、なんだっけ」
「鈴木といいます、よろしくお願いします」
 男たちが「よろしく」「よろしくお願いします」と返してくれた。
「ハンドルネームはまた後でつけてやる。こいつらの紹介も後だ。まずは、クラブの掟だ。じゃあ今日は…太郎、お前がやれ」
「はい!」
 マルイファッションに身を包んだ大学生風の一人、太郎が返事をした。

「クラブの掟、一つ!」
「一つ!」
 周りに人もいるのに、大声で声を出す。デパートで店員たちが開店前に「いらしゃいませ!」などと声を出すような、営業会社が朝会で「自分から仕掛ける!」などと声を出すようなものだろう。

「ターゲットには2秒以内に声をかけろ!」
「ターゲットには2秒以内に声をかけろ!」

 太郎が声を出し、他のメンバーが続くのが繰り返された。その掟とは…

「ターゲットには2秒以内に声をかけろ」

「ナンパは自らするものでさせられるものではない」

「ナンパとは、先手先手でやるもので、受身でやるものではない」

「美女をナンパしろ。ブスをナンパすると、君までブスになる」

「安易に相席屋とかに行くな。難しいナンパをしろ。これを成し遂げるところに進歩がある」

「連れ出したら放すな。殺されても放すな。目的完遂するまでは…」

「周囲を気にして『ナンパは恥ずかしいからやめておこう』とか思うな。『あそこでナンパしてるから邪魔しないでおこう』と周囲に思われるくらいになれ」

「自信を持て。自信がないから君のナンパには、迫力も粘りも、そして厚味すらがない」

「ガンシカ、罵声、グダを怖れるな。ガンシカ、罵声、グダは進歩の母。積極の肥料だ。ガンシカ、罵声、グダを恐れると、君のナンパは卑屈未練になる」

「一人目に即系には声をかけない」

「あえてフラれろ」

「Lゲするまで帰るな」

「地蔵トークするような奴は死ね」

 言い終わると…

「開始!」

 号令と同時に、男たちが夜の街へと散っていった。
 サーベルタイガーがつぶやいた。

「ゲームの始まりだ」



godago at 06:32|PermalinkComments(0)