本屋さんが好きです。店内の本や本棚の香り、棚を見て新しい発見があると心が踊ります。ただ本屋に勤めたことはありません。そしてどれが書店的にすごい本棚なのかを見極める眼力もありません。

本も好きです。ただ文学部を卒業しているわけでもないし、名著といわれる作品の多くは読みこぼしています。そんな自分を本当に本好きなのかと疑うこともあります。

本屋さんの経営にも興味があります。ただ再販制度と委託販売制度をかろうじて混ぜない程度の知識で、とてもにわかです。

今日ご紹介する本にはこれらすべてのことが書かれていているだけでなく、ミーハーな私を受け入れてくれる懐の深さもありました。そして、この本を読んでさらに本屋さんと本のことが好きになりました。今日の本、それは早川義夫さんが書かれた『ぼくは本屋のおやじさん』です。






■内容


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(イメージ、https://stocksnap.io/)

この本は早川義夫さんが川崎で早川書店を営んでいた頃の日常を描いたものです。

ミュージシャンを志していた早川さんがとある事情から書店を起業することになります。イメージしていたのは好きな本を仕入れてのんびりと書店を経営するというもの。そういう夢は早々に打ち砕かれます。

我が物顔で長時間立ち読みするお客さん、飛び込みで訪れてくる書籍と関係ない営業マン、増刷と新聞に書いてあっても仕入れることのできない本等々、個人で営んでいる本屋さんならではの悩ましいエピソードの数々。

そしてそんな日常に悪戦苦闘しながらも、リュックを背負って神田村を駆け回りベストセラーをかけ集めたり、同業者さんとの交流や『読書手帳』という冊子を発行しながら思ったこと等々、いつの間にか個性的な本屋さんの奮闘劇へと変わっていきます。

最終的には本屋さんをたたみ、ミュージシャンとして生きていくことにした早川義夫さん。この本はそんな彼の壮大なポートレートなのかもしれません。


■感想

(ネタバレも含まれてますのでご注意を~)
 
 この本、とにかく読んでいて気持ちが良かったです。ご自身の書店の成功談ではなく、苦労談が中心となっているのですが、文章に嫌味なところはないし、文句を言わない。・・・正確には仕入れ先や一部のお客に対して少し“苦言”を呈しているところはあるのですが、そこだけなんです。それもこのブログやこの本を読む方にとっては納得できる内容だと思います。

上の内容のところにも少し書きましたが、例えば立ち読みを平然と長時間されたり、座り込むお客さん。本屋さんは図書館ではないのでこれをされるとつらいですよね(もちろん図書館だってマナーを守らなければなりません)。そして仕入れ先に対してはどうしても利益が対立してしまうのでしょうがないと思います。その程度の苦言です。

そしてそれ以上に自身の努力を少し滑稽な様にして披露する。そんなエピソードが交互に来るから勢いが衰えることなく最後まであっという間に読むことができました。

現在、早川さんはミュージシャンとしてライブハウスを回っているそうです。タイミングが合えば演奏を聴きに行きたいなと思いました(宣言したことはちゃんと実行します(たぶん))。それほど素敵な人柄がにじみ出る本でした。ちなみに本の最後のほうに本屋さんを畳んだ後の本屋さんに対する文章がありました。それは少し寂しげでありながらも、本屋さんを心底思う人ならではのものでした。

もちろん、この本が書かれていたころと世情はだいぶ違います。80年初に2万店以上あった本屋は、2017年7月時点で1万2千店強*まで減少しています。電子書籍ができ、ネット販売も盛んになりました。また以前は一部の雑誌しか取り扱っていなかったコンビニや雑貨店も本を一部取り扱うようになりました。書店にとっての競争は激化しているものと思います。

そんな時代だからこそ本書を読んで、色んな人と書店について一緒に考えてみたいなと思いました。皆さんも読書の秋に読んでみてはいかがでしょうか? 

*日本著者販促センター調べ、http://www.1book.co.jp/001166.html

(おすすめな層)
・本屋を開業しようとしている方、、、もっと適切な本はあると思います。。
・本屋って最近減っているんだって?どんな業界なんだろうと思った人
ひみつ堂のヒミツ 1000円のかき氷を1日500杯売り続けられる理由 [単行本]を気持ちよく読んだ方(業種も違えば、始めたきっかけも違うのですが店主さんが一所懸命になって行動している様が似たものを感じました)

■雑な閑話休題



 この本を読み終わって、もし早川さんが今も本屋を経営されていたらその本屋は流行ったのか想像しました。当時の本屋を訪れたことはないですし、残されたウェブ上の写真もごくわずかです。ちなみにこの本で触れられている小倉金榮堂は閉店し、芳林堂も営業譲渡をしてしまいました(芳林堂は現在もこの名前で営業を継続しています。)。そんな難しい時代にあっても何となくですが、早川さんのお店は営業していて、今なら老舗の個性的な書店として雑誌とかに取りあげられたんじゃないでしょうか。そんなことを早川書店のブックカバーやしおりをみながら思いました。


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 ちなみにこの本を購入したのはジュンク堂池袋店。現在も行われている20周年企画(リンク)の書棚の中央に置かれていました。何気なく手にとり、目次と最初の数ページを読んで、止まらなくなりそうだったので購入を決意しました。

 この書棚には本当に面白そうな本がたくさんありました。キャンペーンが終わるまでに少なくとももう一度行きたいと思いつつドタバタしていてなかなか実現していませんでしたが、今回の感想文を書いて時間を作っていこうと決意しました。書棚との出会いはそれほどまでに尊いですからね。
 
ということで今日はここまで。いつもお読みいただきありがとうございます。
また次の記事でお会いできるのを楽しみにしています♪
 


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