「吉祥寺、和菓子」でネット検索すると必ずヒットするお店があります。その和菓子屋さんは全国チェーン店でも江戸時代からお店を構える老舗店でもありません。お店の名前は『小ざさ』といいます。店前には始発の時間帯からお菓子を求める列ができ、日中もお菓子を求める人は絶えることはないといいます。

 そんな店主が父親の代からどのように今の店を築いていったかを知ることができるのが今日ご紹介する『40坪の奇跡-40年以上行列がとぎれない吉祥寺「小ざさ」味と仕事-』です。



羊羹を作り続けていると、感動的な喜びを味わえる瞬間があります。炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡が紫色に輝くのです。透明感のある、それはそれは美しい輝きで、小豆の”声”のようにも感じられます。
(本作より)

■内容


 小ざさの2代目店主稲垣篤子さんの人生が所狭しとこの本には書かれています。

 戦前に父親が仕事を辞め、「ナルミ屋」という菓子店を吉祥寺で興したこと、そして戦争が本格化すると地方へ疎開、戦後再び吉祥寺に戻り小ざさを開き、自身も売り子として店頭に立ったこと。
 
 様々な困難な経験を経て自立した大人になり、やがて自身が生きる道は小ざさと共にあるとして、その道に入り、現在まで現場一筋で勤め上げてきたこと。その様は生半可なのものではありません。普通の人なら途中で音を上げそうな人生ですが、彼女はその人生に感謝すらしているという。

 そんな彼女が過去の出来事を一つ一つ丁寧に掘り起こしながら、どういう経緯で小ざさの2代目店主となったのか、そして小ざさがどういうことを大事にした結果、現在のように大きく成功したのかを本書に綴っています。

■感想みたいなもの


 この本は経営指南書というより、稲垣さんの人生の回顧録のようなものでした。

 ただ、単なる人生録にとどまらず、後人に役立つよう、波乱万丈な人生を歩んだ彼女しか得られない生き抜くための知恵だったり、吉祥寺という人気街の熾烈な競争を耐え抜く際に大事な金言だったり、様々なことを本書を通じて伝えようとしています。そして、その中にはどういう価値観を持って彼女が小ざさと向き合ってきたかも書かれています。

 生き方に関しては幼少期から両親の厳格な教育があり、そして自身も物事の成り立ち方がどうなっているのか自ら考えるようになったことが伺えます。その後、写真の道へ一時期身をおいた著者、当時には珍しいウーマンリブ的な生き方を地でいっているのがすごかったです(ちなみに文章の端々からよい意味で気が強そう(いわゆる職人気質なのかもしれません)な雰囲気を感じ取ることができます)。そんな彼女に言わせると餡のこねる作業と写真の現像作業は似たようなところもあるそう。読んでみると、確かにそうかもと納得してしまいました。そしてこれらの様々な経験は小ざさのいたるところに反映されている気がします。

 お店のことに関していえば、お客さんとの距離感だったり、どうしてお団子等を販売していたお店が今のような羊羹と最中しか売らなくなったのかだったり。名前に関する話だってこの本を読むまで知りませんでした。また技術的なところでは、和菓子屋さんという職人的な要素が多いであろう現場にもきちんと検証可能な工夫を取り入れ、良質な商品を再現できるようにしています。そして、ネットを通じて時代のニーズに合うような店舗経営もなさっています。小ざさに関するエピソードはいずれも目からうろこでした。

 この本を読んで劇的に経営が変わったり、餡の味がよくなるということはないと思います。ただ、どういう心意気で商売に望めばよいのかのヒントは山のように書かれていると思います。なので、長期的な視野にたって商売をしたいという方には本書はお勧めです。そして、本書を読み終えたら吉祥寺にぶらりと小ざさの羊羹・・・は難しいかもしれないので、最中でも買いにいってはどうでしょうか。


■雑な閑話休題



 そう言えば、つい先日住みたい街ランキング2018(リンク)が発表されて吉祥寺に変わって横浜が1位になったという出来事がテレビや雑誌で話題となっていました。1位の座を譲ったといえ、いまだに3位を堅持しているそうです。そういう人気もこういうお店をはじめ、色んな魅力的なお店があるからなんでしょうね。


参考になるかもしれない情報
小ざさ通販サイト:https://www.ozasa.co.jp/order.php



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