街から書店が消えていくというニュースをよく耳にします。というか、私の記憶がある限り、街に書店が増えたなんて話は一切聞いたことがありません。

 それでも残っている数少ない本屋さんが何もしていないかというと、そんなことはありません。駅前や商店街にある本屋を見渡せば、新刊のポスターが目立つように店頭にはられ、目を引くような宣伝文句の週刊誌が入り口横の棚をにぎやかに飾っています。そう、彼らだって日々の努力を怠っていません。

 そんな本屋さん達が今の環境をどう考えているか、そして、これからをどう生き抜こうと考えているか、消費者の私には知りたくとも、知る術がありません。そういう想いについてほんの少しだけ知ることができる本、それが今日ご紹介する『「本を売る」という仕事:書店を歩く』です。

 


書店経営が厳しい、近所にいい本屋がないと、店主もお客もお互いに嘆くばかりではない、新しい関係づくりのヒントとして本書を読んでもらい、活用してもらえればと思う。
(本書あとがきより)

■内容


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(本書でも紹介されている荻窪にある本屋 Title 外観)

各章についてざっくり書かれていることをまとめてみました。実際には、より緻密にかつ現場の声を丁寧に吸い上げる感じでまとめられているので、少しでも興味を持った方には、本書を読んでほしいと思う限りです。

第1章 しぼむ本屋

書店経営の何が問題なのか。90年代前半まで辛うじて機能していたビジネスモデルが急速に破綻していった様子とそれらによって生じた書店の現場や周辺環境の変化ついて数字を交えながら、丁寧にまとめている。

第2章 地域と書店

諸問題を解決するための書店のみならず、地域の取り組み。積極的に書店と連携した山形の図書館の取り組みや、書店経営に乗り出す自治体について紹介。また、地域住民のニーズに、書店という枠組みを越えて答えていく新しいスタイルについて触れる。一方、POSの導入によって売れ筋本の棚が全国各地にできていった功罪についても考える 。

第3章 街の本屋の挑戦

独自の取り組みを行う書店を中心に紹介。共同仕入れ会社NET21の設立、書棚の再考、読者「カルテ」の作成、書店の共同勉強会の開催、敷地の拡大・縮小等々、色んな戦略で店を存続・盛り上げようという取り組みが紹介されている。

第4章 新しい本屋のかたち

初期投資が多額で個人による新規参入が厳しいといわれる新刊書店への参入について考察しつつ、実際に新規参入した人たちの話を聞く。また、地域に根差した書店活動ができないかについて議論を重ねている。

第5章 震災を超えて

東北と熊本の地震を経験した書店を訪れ、彼らが今何を思っているかをヒアリングする。本屋を継続する人、畳む人。そして、震災関連本を集めた棚に関する一様ではないことを知る。人によって震災に対する想いは様々で、そこにはテレビでは伺い知れない現実があった。人によって結論は違うため、本書でも無理やりまとまることはしていないが、この章こそ、この本でしかまとめられない内容になっている。

■感想


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 本書では、雑誌やテレビだと時間や紙面の関係上、掘り下げきれない、もしくは伝えきれなかった部分について、なるべく現場の声を交えながら、著者なりの考察と書店のアイディア出しが数多くなされています。

 個人的には出版界隈の現状について悲観するのは少しお腹いっぱいだったので、攻守様々な取組事例が多く書かれている本書を、新鮮な気持ちで読み進めることができました。また、こういう取組事例紹介では、往々にして都心や政令指定都市の書店にとどまってしまいがちですが、この本は違いました。

 2年という年月をかけ、全国の書店を取材しただけあって、耳慣れない書店が多く掲載されています。そして、それらの書店主のインタビューや写真もおさめられているんです。その方々が運営する書店は自らの努力によって、きちんと商圏を形成し、読者を育んでいます。その方法は店によって千差万別。御用聞きをしたり、読書会を開催したり、外商に力を入れてみたり、近くのイベント会場に因んだ興味を引きそうなものを棚に並べてみたりと。

 昔ながらの取り組みをブラッシュアップしているものもあれば、今の時代ならではの取り組みも。そういう事例、一つ一つを見ていると書店のみならず、色んなコミュニティにおけるブレイクスルーの何かしらのヒントに見えてきます。

 そして、本書を本書たらしめているのが、第5章。上の"内容"にも書きましたが、被災地を訪れ、現地の書店がどうなっているかというのもちゃんと調べているんです。時には取材を断られたり、時には沈痛な面持ちの中、取材を行ったりと、決して耳障りの良いものばかりではありませんが、この本の中には被災地で今なお頑張っている書店の姿がありました。
順風満帆とは言えない現地の姿、それでも現地で頑張っている書店員さんの姿からは、うっすらと光明が見える気がします。

 決して明るい本屋業界ではありませんが、その中で必死にもがている様から、私は多くのことを学べた気がします。少なくとも私にとっては、読後、そう思える一冊でした。


■雑な閑話休題


 
 
出版に限らず、日本国内の市場は一部の新興市場や高齢者市場を除いて、どう考えても縮小せざるを得ない状況ですよね。だからこそ、今までの土壌をおろそかにせず、今まで以上に新しいことにも目を向けていかないといけないんだと思います。

 人口に応じて、大きくなってきた企業はリストラ(ここでは人切りではなく、本来の李ストラクチャーのほう)しなければいけないでしょうし、個人や中小の企業だってルート営業が先細るのなら、新たな開拓もしなければいけない。それをやっていけるところだけが残るんでしょうね。業界は業界、その中でも元気な会社がある以上はやっていけるんでしょうね。。。な~んて、少しまじめなことを、本書を読みながら思ってしまいました。さて、私も未読の書類を読んで、メールに返信しないとなぁ。。

あっ、そういえば本書の中では5月にNHKのプロフェッショナルで放送されたいわた書店の岩田社長もでてきましたね。個人的にはタイムリーだったのでにやにやしながら読んでしまいました。

■著者に関する参考情報
・著者 プロフィール:http://twpf.jp/dokuritukisya
・twitter account:@dokuritukisya

■今回の本をだした出版社
・潮出版社:https://www.usio.co.jp/
・twitter account:@ushiopub102


最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

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