大手出版社の大賞を受賞したとしても、作家として生計をたてていくのは難しい時代に知らぬ間になってしまっていたようです。一部の超がつくような有名作家以外の初刷りの発行部数は少なくなり、本当に生活ができるのかというレベルになっています。ただ、そんな作家さんも手をこまねているだけじゃありません。日々アイディアを練って執筆しています。そして、方々へネタの取材を行っています。

今日ご紹介する本は、そんな作家の悩める日々を垣間見ることができる本、『拝啓、本が売れません』です。

 


誰かが《面白い》と信じて書き、《面白い》と信じた編集者が作り、たくさんの人が《売りたい》と思って走り回り、汗を流し、その結果そこに並んでいる一冊です。
(本書終章より)

■内容


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(ずらりと並ぶたくさんの本・・・。面でおかれている本は幸せですよね~。)

 平成に生まれ、ゆとり世代と言われ育った作家が、編集者とともに、"売れる"本のヒントを探しに、各所における一流プレイヤーの話を聞きに行くルポルタージュ。

 本作で訪れたのは、誰もが聞いたことのあるライトノベルを手がけたことのある敏腕編集者、無名の作品をベストセラーへと押し上げた地方のスーパー書店員、そして人々の動向の最前線を知るwebコンサルタント、書籍を映像化するプロデューサー、そして書棚で多くの日の視線を奪うブックカバーの作り手。

 一見、ベストセラー本とは関係ない方もいるように見えるが、みんなが各々の方法で出版や自身の業界を盛り上げようとしている。そして、そんな人たちへ真摯に聞く著者にできる限りのアドバイスを贈るプロたち。

 著者は各インタビューを通じて、文芸の今を語り、そんな世界で生きていくことに悩み、もがく。
そして、ところどころに現れる、潜在的にもの書きになりたがっている層にむけたメッセージとも、苦悩する自分への応援、ともとれるメッセージ。そこには物書きとしての矜持があったように思えます。

そして、出てきた結論とは。。。


■感想


 最初に書店の平台で、この本を見たとき、インパクトのあるタイトルに惹かれたんです。本が売れないとうたった本は多くありますが、手紙のように語りかけるものは。。。ないですよね(笑)。

 そして、何となく出版界隈を描いた小説なんだろうなと思って本を取り上げたんです。・・・その予想は見事に裏切られ、内容はルポルタージュでした。

 ただ、事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、本作の著者と相棒の編集者さんが、売れる本の秘訣を求めて四方八方へ、一生懸命に飛び回るどたばた劇は、著者の軽妙な語り口の妙もあって、とても面白く読み進めることができました。 

 上でも書きましたが、本書でインタビューを受けてくれたのは本当に一流どころばっか。ライトノベル界を切り開いてきた編集者だったり、書店業界では知らない人がいないような店長だったり、業界のいずれかの分野で道を切り開いている人から得られる情報やアドバイスは、業界内外問わず、新鮮だし、何かしら刺さるものがあります。

 そして、それらのインタビューに共通して言われ、当然のようにたどり着く著者と編集者の最終的な結論。そう、読む前から間違いなく、永遠の真理なんでしょう。ただ、この真理だからこそ、永遠の課題にもなるんだと思います(何が結論かはぜひ読んでご確認ください)。

 個人的には、終章を読んでて、込み上げてくるものがありました。作者の悲痛な叫びが訴えかけてくる文章、改めて頑張って~、と心から思いました。そして、読んだ後はそんな作家さんたちを応援すべく、自身の仕事に前向きになれる、そういう一冊でした。

 巻末には7月に文藝春秋からリリース予定の『風に恋う』が1章収められています。これはこれで非常に楽しみになる作品でした。ただ、本としての余韻を楽しむのなら、一服したのちに読むのがお勧めです(もしくは、少し反則かもしれませんが、作者の雰囲気や、もしくはギャップを楽しむためにも最初に読むのもありかもですね・・・)


■雑な閑話休題



 冒頭すこし触れましたが、額賀さんはゆとり作家と自称されていますが、めっちゃエリート作家です(笑)。松本清張賞と小学舘文庫小説大賞という大きな賞を受賞してデビュー。

 特に後者は主催する会社が大手だけにその後のプロモーションもすごいものがあります。そんなすごい賞をダブル受賞した人ですら、初版の発行部数が○○という状況(読んでみてくださいね~、「えっ、そんな数なの」、と驚くと思います)。本当、今の出版業界、というか職業作家が厳しいのがわかります。だからこそ、今の時代、コンスタントにリリースしたり、自身の情報発信が重要なのかもしれませんね。

 この記事がアップされるのは6月後半。実は下書きは5月末からあって、「さよならクリームソーダ」が文庫で販売される前だったんですよね。それが、もう一度下書きを見直そうとしていたら、あれよあれよという間につゆ真っ盛りになっちゃいました。



 そんなわけで現在、「さよならクリームソーダ」は店頭に並んでいます。先日訪れたTSUTAYAでは平積みされていました。で、思わず購入。まだ我が家で待機状態となっていますが、少し落ち着いたら読みたいと思います。個人的には「風に恋う」のほうが気になったので、すぐにでも購入したかったのですが、まぁ、こればっかりはいろんな事情があるでしょうしね。のんびり7月を待ちたいと思います。

さいごに、この本に特別付録(巻末かな・・・)としてつけられた「風に恋う」。盛岡のさわや書店の店主さんとのやりとりで追加で着いたという。なんだかとっても笑顔にさせられるエピソードでした。

 いつの間にか慣習化されていたプルーフ。。だったら、直接読者にプルーフ届けちゃえとも言っているように個人的には感じてとれました(笑)。そして、読書メーターを読んでいる限り、成功しているようにも思えます。

 こういう著者のいろんなチャレンジを、一読者として応援していきたいと思いました。



あっ、本当に、最後の最後。この本にはデザイナーの川谷康久さんが出てきます。実はこの本を読んで知ったのですが、「さめない街の喫茶店」のデザインも担当されていたとのこと(Page149で紹介)。

この本、タイトルと装丁をみて衝動買いしたんです。その時はこのデザインを担当された方を知らなかったのですが、改めてカバーデザインって重要だなと思える章でした。

・・・だから、何?といわれれば終わりなのですが、まぁ、何となく書いてみたくなったのです。

■著者に関する参考情報
・額賀澪さん 自身のサイト:https://www.facebook.com/chicachicao
・twitter account:@NUKAGA_Mio

■今回の本をだした出版社
KKベストセラーズ:http://www.kk-bestsellers.com/



最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

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