1996年にスターバックスが日本へ上陸してから約20年が経ちました。スタバを訪れる客層もオープン当初からだいぶ変わったと思います。そして、それ以上に街の喫茶店やカフェの光景が変わったように見受けられます。そして、第二の黒船のごとく現れた『サードウェーブ』の代表格ブルーボトルコーヒー。

 ブルーボトルが新たな店を出店するたびに、その街でよく使われるようになる『サードウェーブ』という言葉。もう聞きなれた感もありますが、一歩立ち止まってその源流についてどれだけのことを私たちは知っているのでしょうか。

ということで今日ご紹介する本はコーヒーの最近の動向について知ることができる『サードウェーブ・コーヒー読本』です。

こんな人たち、本書はいかがでしょうか?
  • コーヒーやその焙煎の香りが好きな人(その香りを実現するための努力がわかります)
  • カフェでの時間の流れ方が好きな人(なぜその空間ができたかについてわかります)
  • 物語が好きな人(コーヒーの味も背景も楽しみたいという方、どうぞ)
 最近訪れるカフェの多くが自身が気に入った豆を作ってくれる焙煎所から仕入れたり、自身で焙煎したりしているところが多くなった気がします。なぜそのようなお店が多数出現したのか、この本を読むと少しばかり納得できる気がします。
新しいコーヒーカルチャーが教えてくれる、日本人にとって古くもあり新しくもある「ていねいな時間」の体験によって、より時間や暮らしにコンシャスな、新しいライフスタイルを発見できる。
(本書P191より)

サードウェーブ・コーヒーカルチャーでよく耳にする言葉に「シード・トゥ・カップ」(Seed to Cup)があります。すなわち、コーヒーノキの種から、コーヒーとしてサーブされるカップに至りまでのコーヒーにまつわる全工程を指します。最終的なコーヒー豆やカップで出されるコーヒーだけでなく、全てに気遣い、こだわり、これを透明にしていこう、という姿勢を表す言葉です。
(原文ママ、本書Pg199より)

 日本の喫茶店文化の心を取り入れつつも、トレーサビリティやコーヒー豆を扱う社会的責任を考えるサードウェーブコーヒーは、欧米ならではの考え方だと感じます。この本を読むとその精神に少しだけ触れることができます。

    

■内容            



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 本書では、まず最初にサードウェーブの代表的なコーヒーショップを訪れるところから始まります。その後も人気店を数店舗訪れると、やがて一つのフォーマットがあるかのように映っていたサードウェーブが、アメリカ西海岸ではすでに多様化・個性化していることがよくわかります。その中で取り上げられた、IT企業の近くにあるギークフレンドリーなカフェの要素分解は以下の通り。


(1)無料のwi-fi
(2)木目調のインテリア
(3)焙煎機
(4)飲み口が大きめのウェストシェイプのマグカップ
(5)メイソンジャー(メイソン社製の空き瓶)
(6)ポア・オーバーとエスプレッソ・バー
(7)iPadレジ


 これらがすべてないと、サードウェーブと呼ばれないわけではありません。それは読み進めるほどにわかります。特にサードプレイスを標榜するスターバックスがPCで作業をする空間となってしまっている一部の店舗の状況を嫌って、(1)を提供しない店もあるとのこと(それでもwi-fiなんて必要ないという、ギークな方々の来店はあるそうです)。また、(2)や(5)も店の雰囲気次第で、(4)もカップはお店のポリシー次第だということがわかります。つまり、サードウェーブはよりコーヒー豆やコーヒー自身に係るもののようだと導かれます。上のリストでは(3)や(6)が該当するでしょうか。

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(インスタントコーヒーはコーヒーの普及に大きな役割を果たしました)

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(いつしか街の光景に馴染んだスターバックス)

 そして振り返るように始まるサードウェーブへと至る歴史の流れ。インスタントコーヒーによるファーストウェーブがコーヒーを大衆文化へと押し上げ、スターバックスに代表されるセカンドウェーブによってコーヒーの品質が担保されました。そして、それら、大量消費と大量流通の前提としたビジネスモデルのアンチテーゼとして、よりコーヒー豆のSeed to Cup(コーヒーノキからカップまで)の工程を大事にし、コーヒー一杯ずつに着目したサードウェーブというオルタナティブ(代替)の登場。


 さらに、本書はそれらを踏まえた人に視点を移していきます。サードウェーブのお店がどういうことに注意しているのか、どういうことを大切にしているのか、現地に住んで体感して、自らも焙煎している著者ならではの視点がそこには含まれていて、インタビューはより濃いものになっているように思われます。


 また、サードウェーブで使われることもある日本製のカップやドリッパー、そしてブルーボトルコーヒー創業者が影響を受けた日本の喫茶店文化についても触れていく本書。それは日本人としてはうれしくもあり、喫茶店文化の再発見にもつながります(まぁ、リップサービスの部分もあるかもだけどね、、)。


 様々なことに触れられ、色んなことを気づかさせてくれるこの本は、家やコーヒーショップで、コーヒーを飲みながらじっくり読むのに適している一冊です。

 
    

■感想(ネタばれ注意)  


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("third wave coffee"で検索するとでてくるのが"third wave of coffee"なんですね)


 本書はバークレーに移住したお二人の合作によるものです。日本の都心からバークレーに移り住んで、出会ったコーヒーの楽しみ方。その背景にはDIYの精神や丁寧な生活を行うということがあります。引用した箇所に書かれている通り、それは日本では忘れられつつある生活スタイルなのかもしれません。少なくとも私の周りはその傾向が強い気がします。


 そして、コーヒーや現地での生活スタイルについて、在住者ならでは視点で情報を丁寧にまとめあげています。特にすごいと思うのが、アメリカならずとも日本でも名前を聞くことができる、いくつもの有名店のオーナーや有名焙煎士からインタビューをしているところです。インタビューは限られた時間で行われているようですが、それを感じさせない濃密な情報量があります。


 スターバックスや大手コーヒーチェーンが安定したコーヒーの味を顧客に届けることに成功し、今までコーヒー文化に馴染んでなかった人もコーヒーを片手に談笑したり、しばしPC作業をするようになりました。それはスターバックスが目指した「サードプレイス」的な場所なんでしょう。


 一方で、スターバックスはこの実現と同時に供給部分での問題を抱えているといいます。品質の良い豆を安定的にかつリーズナブルな値段で確保することは非常に難しいことです。それでもできることを少しずつ対応していることは彼らのIRやCSRをみればわかる気がします。ただ、大企業だからこそその取り組みはドラスティックなものとはいきません。


 そして、これらの問題点を抱えるチェーン店に対するアンチテーゼとして登場したサードウェーブ。
彼らは新たな挑戦者そのもの。小規模な取引でも、その店が実現できるだけの対価をコーヒー農園に支払う(フェアトレードの精神)。そしてコーヒー農園の豆植えから植育までフォローし、仕入れについて責任をもって行い、それにあった焙煎を行い、一杯分ずつ、お客さんに提供する。いわゆるSeeds to Cupの一連の工程を責任もって行うのがサードウェーブといえるでしょう。もちろん、自身が携わる豆なのでトレーサビリティーも万全です。


 それらは大企業が行いたくとも、資本効率の観点から、なかなか困難な取り組みなのかもしれません。ただ、セカンドウェーブの彼らも少しずつ取り組んでいるのは事実です。消費者としての私たちは、こういう問題をきちんと認識し、自分たちに何ができるのかを少しずつ考えるステージにきているのかな、と痛感させられます。


サードウェーブの人たちはファーストもセカンドも認めたうえで、自らをオルタナティブと言います。全てにとって変わることはできないだろうし、自分たちが変えられる環境も限られているかもしれない。でも、発信し続けることで世界がほんの少し変わると思っている。こういう精神に共感した人たちが、現地で今日も彼らのコーヒーを飲んでいるんだろうな、と思わずにはいられません。


コーヒー一杯、そこには改めて色んな人の想いが詰まっているんだなと、しみじみ思いました。
    

■次の一冊         






 本書でも触れられている日本の耐熱ガラスメーカーHARIO(HPリンク)の動画をみてみませんか?たまには本を薦めなくてもいいのかな、なんて思っています(笑)。興味を持ったらこの製品を買うのも面白いと思いますし、雑誌で使い方を勉強してみるのも面白いんじゃないかなと思っています。いずれもリーズナブルな値段でコーヒーメイキングをスタートができます。




 

■雑な閑話休題   


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 この本は色んなところで見かけたのですが、販売しているところが少なかったんですよね。そしてようやく購入。購入すると意外と他にも売っているところを見つけられるんですよね。つい先日青山にあるABCに行ったら、販売していました。。。こんなにも近くにあるとは。。。まぁ、マーフィーの法則ですよね。

 

■著者関連情報

著者 茶太郎豆郎さん HP:(新)http://forks.tokyo/
(旧) http://chataromameoh.tumblr.com/
facebook page:https://www.facebook.com/chataromameoh
twitter page:@chataromameoh

残念ながら、著者の直近のご活動は残念ながら伺い知ることができませんでした(どなたかご存知の方、教えてくださいませ)。ただ、この本の出版された前後、また2017年までの活動については旧ウェブサイトやfacebookに投稿されているのでチェックされるとより理解が深まるかもしれません。

■今回の本をだした出版社
枻(えい)出版:https://www.ei-publishing.co.jp/

 枻出版は趣味にスポットを当てた雑誌やウェブ記事を多数出されている会社です。また、自らその価値観を体現しているようなカフェ、レストラン、ベーカリー等も出しています。本のみならず、そういうところを訪れてこの会社について理解を深めるのもよいかもしれません。この本をピックアップして出版するようなアンテナ感度の高い店にたどり着けますよ(*´ω`)



最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

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