【一夜一夜】



「あんたはいつも出張も多いし、好きなもん食べれてええわなぁ〜」という嫁さんの独り言を聞く回数がなんか年々増えてきたように思う。

その日、家族で一泊、淡路島に行くことになった。
しかし、淡路島まで行ってご飯を食べずに帰るわけにはいかない(実際に何も食べないという意味ではなく、コラムを書きたくなる店で食べるということ)。以前、“あかふじ米”で有名なS社のF常務からめちゃくちゃうまいご飯を出す店のことをメールで頂いていたのを思い出した。確か店の名前は「一夜一夜」(いちやいちや)。

・ 居酒屋であるがご飯がうまい店だということ。
・ 神戸三ノ宮の東門街の中にあるということ。
・ 昼間は営業していないということ。

この三つの情報だけを頼りに、子供をホテルに預けて嫁さんと二人で夜の神戸へと向かった。JR三ノ宮駅で車を停め、歩いて東門街に。東門街入り口で一度電話をして店の場所を確認。目指す店は、生田神社の東側、東門街の北側に位置するビルの1Fにあった。

店内に入ると高級割烹に来たのかと勘違いしてしまうほど落ち着いた雰囲気。内装は白木で統一されており、テーブル席と団体用のテーブル席、そしてカウンター席とに分かれている。わたくしたちはカウンター席の右端に座ることにした。この席は偶然にもご飯を炊くお釜の丁度目の前に位置し、結果的に絶好のポジションになった。

「一夜一夜」は、全国から集めた魚介類の一夜干しと季節の野菜を、炭火であぶりながら地酒や焼酎などで楽しみ、最後に“銀シャリ”で〆るというお店。その“銀シャリ”は、銀シャリ師なる達人が一釜づつ注文をうけてから火にかける。25分ほど待てば炊きたてを食べられるのだ。

コメは、蛇紋岩米(じゃもんがんまい)と鳥取産コシヒカリの二種類。
この聞きなれない蛇紋岩米というコメは、兵庫県養父郡に蛇紋岩という断層地域があり、その岩から出る岩清水のミネラル豊富な水で作られたコメのことだそうだ(米屋のわたくしもはじめて知り勉強になった)。そして炊き上げの水は、六甲・布引の水を使用するという徹底したこだわり様。

季節の野菜と数種類の一夜干を注文。コメは別々の種類を注文し食べ比べることにした。

ここでひとつアドバイス。
コメの汁(お酒)でも飲みながらゆっくりあとからご飯も食べる方は、腹具合をみながらご飯を注文すれば良い。真っ先にご飯を食べたい方は飲み物や一夜干の注文をする前にまずご飯を注文することをおすすめしたい。

注文直後のわたくしの予定では、その日は久し振りの嫁さんとの外食(それも三ノ宮で)。当然この落ち着いた雰囲気の中で一夜干や季節の野菜を炭火であぶりながら、ゆったりと美味しくいただくはずだったのが、ここが“ご飯食い”の悪いところ。あとから出てくるご飯のことが気になって気になって炭火焼きや嫁さんとの会話そっちのけで目の前の銀シャリ師の一挙手一投足に釘付け。きちんと升(ます)をつかってコメの量をはかり、勺(しゃく)で水加減を量る銀シャリ師につい見とれてしまう。(ご飯の美味しさに全く関係ないがこの銀シャリ師がまた男前)

そして待望のご飯登場。
わたくしは、蛇紋岩米。嫁さんは鳥取産コシヒカリ。蓋をあけたとたん今までに見たことのない輝きのご飯が目の前に飛び込んできた。お釜で炊いた炊きたてのご飯とは、ここまですごいものなのか!すぐシャリ切りをしてみる。ものすごいねばりだぁ〜!(両方シャリ切りして鳥取産コシヒカリより蛇紋岩米のほうが粘りが強いことがわかる)

お釜で炊いたご飯は、通常の炊飯器で炊いたご飯よりもおネバをつくりやすいと聞いていたが、こんなにすごいとは想像以上。このご飯のすごさを表現するに値する語彙を持ち合わせていない自分に情けなくなるほどの一級品である。コメの立ち具合、歯ごたえ(食感)、甘味も申し分ない。約1合半はあるご飯をわたくしは最後のおこげまでお味噌汁と漬物そして海苔だけで完食。

好みに分かれると思うが、あっさりタイプを好む方は、鳥取産コシヒカリ。もっちりしっかりタイプは、蛇紋岩米。(個人的に蛇紋岩米がおすすめ)

嫁さんには、1合半という量はやはり多かったようで鳥取産コシヒカリを少し残してしまう。当然であるが1合半のご飯を簡単に食べきれる女性は稀である。もったいないのでわたくしが、いやしくおかわりをしようとした時、お店の人が「おにぎりにしましょうか?」 残ったご飯をおにぎりにして持って帰れるのだ。なんともうれしいサービスである。

率直な感想としてこの店は居酒屋というよりは、正真正銘の“ごはんや”だと思った。こだわりの一夜干や季節の野菜もわたくしにとっては、このすごいご飯の脇役なのだ(お店の方ごめんなさい)。昼間食べられないのは残念ではあるが、お釜で炊く炊きたてのご飯には、日本人のDNAそのものを刺激する魅力があった。  



しゃもじ

ご飯を注文するとついてくるおみやげの“しゃもじ”。
“しゃもじ”には、自分が注文したお釜が、今年何釜目に炊きあがったお釜か分かるよう番号が印されている。10個あつめるとサービスがあるらしい。

食堂メモ



店  名: 一夜一夜(いちやいちや)
住  所: 神戸市中央区中山手通1-9-12 M'Sビル1F
休  み: 日曜日・祝日
T E L: 078-325-1818
営業時間: PM5:00〜翌1:30(LO)