2008年10月11日

<09>コックサッカーブルース

いったいこの作品が何について書かれているのか分からない。確かにSMについて書かれてはいる。作中にもプレイの描写が出てくるし、ストーリーは異様な力を持つSM嬢を巡って展開する。主人公はSM嬢を巡る壮大なスキャンダルに巻きこまれ、彼女を探し出さなければ殺される運命に陥ってしまう。胡散臭い探偵や有名な作曲家と組んで彼女を探すうちに風呂敷はどんどん広がり、最後には神秘主義が登場して霊界が何だとかいう話になる。

焦点が曖昧なのだ。霊界の掲示板のようなところに切断された人の手と足をくっつけたメッセージがあって、ってそりゃ何だ。物語の前半で描かれるSM嬢ヒロミの印象と最後に出てくる救済者としてのヒロミの人物造形も随分ギャップがあるし、だいたい主人公で物語の語り手でもある堀坂もインテリなのか凡庸なのか、ノーマルなのか変態なのか分からず人物像がはっきりしない。だから物語全体も泣き笑いのようではっきりしない。

堀坂のコミカルな語り口で、荒唐無稽かつ重たい話を一気にドライブして行く村上龍の筆力は確かなものだし、語られる話のディテールには深く肯く部分も多くあるものの、途中から話が浮世離れしてきてだんだんアホらしくなってくる。すごいモノ、超越するモノを描くために「国家予算の5パーセント」なんてタームが必要なのか。神秘主義に行くなら行くでもっと陰惨な終わり方でよかった。広げた大風呂敷を回収しきれなかった印象。

(1991年発表 集英社文庫 ★★★☆)


going_underground at 21:58│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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