2008年10月18日

<12>長崎オランダ村

長崎オランダ村で40日に亘って行われたワールドフェスティバルに集まった世界中の大道芸人やミュージシャン、ダンサーらの繰り広げるドタバタを、「69」に登場した「ナカムラ」が主人公であり村上龍自身である「ケンさん」に語るというシンプルな構成でサイズも短め。「69」がそうであったように所詮は内輪ネタなのだが、それをきちんと外部化して小説として成立させている村上龍の筆力は確かなものだし、素直に面白い。

それは世界から集まってきたクセのある芸能人らが、日本でも最も西の果てに近い地方都市の人工的なリゾートに押しこめられたことによって、日本という狭い島国の空気のようなものがいとも簡単に異化されて行くことの痛快さが素材としてそもそも面白いということもあるのだが、夜の長崎をさまよい際限なく飲み食いしながら話し続けるナカムラとそれに突っこみを入れるケンさんのやりとりが洗練されているからでもあるだろう。

名作でも代表作でも問題作でも重要作でも何でもないけれど、特に「イビサ」の後には脳みそや心臓に何のプレッシャーもなく純粋に楽しんで読めるという意味で悪くない作品。ひとつだけ気になるのは村上龍がハウステンボスは単なるリゾート・コンプレックスではないなどと真面目にあとがきで書いてしまっていることだ。実際そうなのかもしれないが、僕にはそれが主宰者の説明の無批判な受け売りに思えてならない。それが残念。

(1992年発表 講談社文庫 ★★★)


going_underground at 00:57│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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