2008年11月21日

<21>ヒュウガ・ウィルス 五分後の世界II

物語の設定は「五分後の世界」をそのまま継承しているが、ストーリーは、突然現れた致死性ウィルスの発生源と見られる村を処分するために地下政府から派遣されるゲリラ部隊の活躍を、敵国民であるCNNの記者キャサリン・コウリーの目から描いたものになっている。ウィルスの作用するメカニズムは徐々に解き明かされ、「圧倒的な危機感をエネルギーにする作業を日常的にしてきたか」が生死のポイントとなることが説明される。

この作品は生化学的な記号で華やかに彩られているが、最終的な救済が結局のところ「危機感」という「意志」の問題に帰着するところは非常に特徴的だし、優れてロマンティックである。ここに至って初めてこの物語が「五分後の世界」を借景としなければならなかった理由も明らかになる。そして、そのような強い危機感、生存への強い意志を持たない者が淘汰されて行く世界の訪れを予感させて「五分後の世界」は完結するのである。

惜しまれるのはこうした生化学的な知見がいかにも付け焼き刃的というか受け売り的に見えてしまうことだ。門外漢が一夜漬け的にお勉強した知識をこれでもかと見せびらかしている感が強い。作中、レイが地下に住む浮浪者の鳴き声を編集した音楽を兵士に聴かせる部分があるが、そういう描写の豊かさに比べれば生化学的な説明は生硬であり見劣りする。物語全体の密度、スピードが辛うじてそれを上回ることで作品として救われた。

(1996年発表 幻冬舎文庫 ★★★★)



going_underground at 22:27│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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