2008年11月22日

<23>ラブ&ポップ ―トパーズII―

援助交際という言葉はもはや廃れたのか、あるいはあまりに普通の言葉として僕たちの日常に溶けこんでしまったのか。ヒロミという女子高校生が、渋谷の109で見つけたインペリアル・トパーズの指輪を手に入れるために「最後まで付き合う」援助交際をすることを決意し、伝言ダイヤルにメッセージを残してみるところから物語は始まる。欲しいものがはっきりしているとき、それを手に入れるために援助交際をするのは悪いことなのか。

残念ながら本作のように風俗を扱った作品の賞味期限は早く訪れる。今では携帯電話を持たずに渋谷を徘徊する女子高校生なんていないだろう。ポケベルのサービスもなくなって久しい。そうした時代相の中で語られるヒロミの冒険譚も今となってはどことなく牧歌的だし、せっかくの冒険が「こういう時に、どこかで誰かが死ぬほど悲しい思いをしている」といった情緒的で道徳的な認識に回収されて行くのはもったいなく、情けない。

村上龍はそうした情緒的で道徳的な、あるいは因襲的で抑圧的な枠組みから解放されることをほとんどただ一つの美点として描ききった小説家であったはずだ。そうであってみればこの物語は、何の不自由もない中産階級の子女であるヒロミが、社会的落伍者の男たちに身体を売ったカネでインペリアル・トパーズの指輪を手に入れ、それをうっとりと眺めるシーンで終わってこそ説得力があったのではないか。そこに不満が残る作品だ。

(1996年発表 幻冬舎文庫 ★★★)



going_underground at 23:04│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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