2008年11月25日

<24>はじめての夜 二度目の夜 最後の夜

「コスモポリタン」という雑誌に1年半に渡って連載された作品らしい。それを知ってなるほどと思った。おそらく、フルコースの料理を題材にしてそれにちなんだ小説を書くとかそういう安易な企画に乗って書かれた作品だろう。ハウステンボスのレストラン「エリタージュ」を舞台に、そこで供される料理を織り込んで物語は進行する。いや、物語というほどのことは何もない。好きだった同級生と再会して思い出話をする、それだけだ。

それだけの話を丁寧にブイヨンで薄く伸ばしてフォアグラやらトリュフやらで味つけしただけの作品であり、特に何かが起こる訳でもない。中心となるメッセージはごくシンプルで、しかもそれはこれまでの村上龍の作品で何度となく繰り返されたものだ。この作品と舞台を共有する「69」や「長崎オランダ村」にも書かれたように、どのようにして我々の「生」をストレートに肯定するかということだけがここにある問題意識の核心である。

どうでもいいような料理の話が必然的に挿入されるのが非常にまどろっこしく、うざったく、いくら良質のブイヨンで伸ばしたといっても薄めたことには変わりはないので水増し感の強い作品だが、そういう作品の中にも何となく真理っぽいことを書き込めるのが村上龍の技量なのだろう。そういう意味ではそれなりに雰囲気も出して健闘していると言っていいのだろうがいかんせん決定的に薄く、「お仕事」的なやっつけが気になる作品だ。

(1996年発表 集英社文庫 ★★☆)


going_underground at 23:46│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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