2009年01月15日

<34>悪魔のパス 天使のゴール

オレって中田英寿のダチなんだぜ、どうだ、すごいだろ、というだけの作品。一応ストーリーとしては服用すると心肺機能が爆発的に亢進するが、心臓に過大な負荷がかかるためほぼ間違いなく心臓麻痺で死に至るという究極のドーピングを題材に、ヨーロッパ・サッカーを舞台にした陰謀劇を描くということになっており、「69」でおなじみの作家ヤザキが日本とイタリア、キューバを行ったり来たりしつつ右往左往する物語である。

物語の最後の4分の1を占めるセリエAの試合の描写はさすがに念が入っていて、一度でもスタジアムでサッカーの試合を見たことがある人であれば映像が喚起されるのではないかと思われる力のこもり具合だが、ストーリー自体が取って付けたようなお話で、過去にテニスやらゴルフやらに入れ込み取って付けたような作品を世に問うてきた村上龍の前歴を思えば、これも、今はサッカーなんだな、と微笑ましく見守ってあげるべきだろう。

この作品のつまらないところは、村上龍が中田という一人のサッカー青年の生き方にいささかも批評的な視点を持ち得ていない点だ。仲のいい友達を主人公にサッカー・スペクタクルを書きたいのなら構わないが、村上龍はここで無批判に中田に寄り添っており、まるで自分が中田であるかのように中田を代弁する。対象と厳しく向かい合うという基本的な文学的態度の欠如。書き手として対象との距離の取り方を誤った致命的な作品。

(2002年発表 幻冬舎文庫 ★★)



going_underground at 23:43│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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