2009年02月25日

<105>トパーズ

風俗、特にデリバリーのSMクラブで働く女性を主人公に書かれた短編を12編収録。後に「コックサッカーブルース」や「イビサ」、「エクスタシー」三部作に結実して行く陰惨なSMによる異化と浄化のプロセス、確実にどこかイッちゃってる女たちのその「壊れ」の内側に入りこむ手法はここで既に確立しており、そうした長編に比べればひとつひとつの作品が短く完結している分、イメージの喚起力は逆に強いと言えるのかもしれない。

SMと呼応するものを持つ女性はどこかに決定的な歪みを持っており、その多くは父親との円満な関係を持てなかったことに起因するという村上龍のテーゼがここでも立ち現れる。そんな単純な話でいいのか、という気もしないでもないが、ノーマルな女子高生を主人公にしたこの作品集の中では異質な「サムデイ」だけが、父親とのリアルなコミュニケーションについて書かれているのも、やはりそのことを示しているのかもしれない。

どれもこれも、どこにも行き着かないひたすら薄汚く、救いのない話ばかりだが、そこには村上龍の作品特有の密度があり、それがこの作品の果てしない消耗感を支えている。一編読み終わるたびに神経がぐったり疲れるのは濃密な情報のせいだ。過剰で不要な情報が僕たちの神経を苛立たせ、僕たちを無理矢理物語に引きずり込む。そして僕たちの生は結局そうした浪費と消耗に他ならないのだと訴えている。やはり「サムデイ」がいい。

(1988年発表 角川文庫 ★★★★)


going_underground at 00:13│Comments(0)TrackBack(0)書評 

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