2009年03月08日
<107>恋はいつも未知なもの
ジャズのスタンダード・ナンバーをモチーフにした掌編39編を収録。何らかの傷を抱えた男だけが迷いこむという幻のジャズ・バーに行ってきた男の話を、ジャズ・ナンバーの歌詞に引っかけて紹介するという形式になっているが、当初はそうした話の聞き手であった主人公が、自らもそのジャズ・バーに迷いこみ、終盤は主人公が、そのどこにあるかも分からないと言われるバーの秘密を探りにニューヨークを訪れる続き物になって行く。
ここに使われているジャズ・スタンダードをほとんど知らない者としては正直どうでもいいような話が繰り返し語られるだけだし、その幻のバーを探す話としても中途半端で、最後にバーの経営者らしき男にたどり着くあたりの描写もまったく迫真性に欠ける。週刊朝日に連載されたのをまとめたものらしいが、多分途中からネタが切れてスタンダードよりバー探しの話にシフトしてしまったんだろう。正直やっつけ仕事の香りが高いと思う。
ここには自分の言葉で原曲の素晴らしさと格闘しようとする表現上のあがきが感じられず、何となくそれっぽいスタンダード・ナンバーを借りてきてはそれにこじつけた適当な話(特に恋愛譚)をでっち上げたとしか思えない。原曲を知らない者が言うのも何だが、日本でジャズが所詮お洒落な恋愛のBGM程度にしか扱われていないのと同じように、この短編集も所詮はジャズを小道具に使ったお洒落な恋愛小説程度にしか読まれないだろう。
(1991年発表 角川文庫 ★★☆)
ここに使われているジャズ・スタンダードをほとんど知らない者としては正直どうでもいいような話が繰り返し語られるだけだし、その幻のバーを探す話としても中途半端で、最後にバーの経営者らしき男にたどり着くあたりの描写もまったく迫真性に欠ける。週刊朝日に連載されたのをまとめたものらしいが、多分途中からネタが切れてスタンダードよりバー探しの話にシフトしてしまったんだろう。正直やっつけ仕事の香りが高いと思う。
ここには自分の言葉で原曲の素晴らしさと格闘しようとする表現上のあがきが感じられず、何となくそれっぽいスタンダード・ナンバーを借りてきてはそれにこじつけた適当な話(特に恋愛譚)をでっち上げたとしか思えない。原曲を知らない者が言うのも何だが、日本でジャズが所詮お洒落な恋愛のBGM程度にしか扱われていないのと同じように、この短編集も所詮はジャズを小道具に使ったお洒落な恋愛小説程度にしか読まれないだろう。
(1991年発表 角川文庫 ★★☆)