2011年05月03日

<38>心はあなたのもとに

ベンチャーへの投資ファンドを組成する主人公が風俗嬢に入れ込んで身請けするが、彼女は1型糖尿病という難病を抱えており、最後には死んでしまう、という話。もちろん、村上龍の作品なので、物語の中心的なモチーフである1型糖尿病に関する説明や、金融市場、ファンド・ビジネス、先端医療など聞きかじり感満載の付け焼き刃的蘊蓄はムダに豪華だが、要は、好きになった女の子が難病で死んでしまって悲しい、というだけの物語だ。

いや、もちろん村上龍にも恋愛小説を書く権利はあるだろう。だが、村上龍から「誰かを大切に思う気持ちは、何かを変化させ、いつか必ず相手に届く」なんてことを真面目に語られるとは思っていなかった。気持ちなんてものは所詮脳味噌の中で起こっている化学変化に過ぎないとか何とか、今まで散々センチメンタリズムをリアリズムで、力ずくで凌駕してきた村上龍が、今さら何を考えてこんな気恥ずかしい文章を書いたのか不思議だ。

「限りなく…」でも「コインロッカー…」でも「ファシズム」でも、あるいは「エクスタシー」からの3部作にしても、そこには救済(あるいは赦し)を希求する視線があったし、それはロマンチックなものであった。しかし、この作品のベタベタした優柔不断さはただ凡庸なだけで作品として何かを語りかけてはくれない。主人公のモニョモニョした独白も自意識過剰で気持ち悪い。村上龍は恋をしているのかもしれないと思ってしまった。

(2011年発表 文芸春秋 ★★☆)


going_underground at 18:33│Comments(1)TrackBack(0)書評 

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この記事へのコメント

1. Posted by ナイキ エアジョーダン   2012年10月22日 13:58
5 中国が米国に喧嘩売ってんだから日本関係ない lottejordan.com

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