2007年01月09日

胡錦濤国家主席は、なぜ、「中日関係は、最も重要な二国間関係」といったのか?地政学的に見る日中関係。

1月9日付け日本経済新聞によれば、公明党太田昭宏代表は、1月8日、胡錦濤国家主席と会談。安倍首相の親書を手渡し、胡錦濤主席の来日を要請した。胡錦濤主席は「喜んで訪日招請を受け、双方に都合がよい時期に訪日する」と意慾を示したという。さらに、唐家せん国務委員(外交責任者)は、「4月頃に、主な指導者(温家宝)が貴国を訪問する予定だ。安倍首相のご都合のよい時期の訪中を要請する。国事訪問でお願いしたい。」と述べ、安倍首相の国賓級待遇での年内訪中を招請した。

中国側の安倍首相に対する並々ならぬ厚遇がみてとれる。安倍首相の先の訪中におけるトップ3との会談、今回の太田公明党代表への対応を見るに、最高度の接遇で対処している様子が窺える。なぜ、胡錦濤指導部は、安倍首相にこれほどの期待を示しているのか?安倍首相が「教育基本法」を改正し、「憲法改正」を企図していることを知りつつ、すなわち、社民党や共産党から「最悪の右翼首相」と非難されている安倍首相に対する中国の厚遇は、いささか常軌を逸している感がしないでもない。

胡錦濤指導部の対日政策は、短期的な経済交流戦術と中・長期的な安全保障戦略を組み合わせて行なわれているものと推察される。短期的な経済交流については、中国が直面している課題、すなわち省エネ技術の導入、環境汚染対策技術の導入等、我が国の最先端技術を中国に移転したいとの熱烈な意思があるため、少々のことには目をつぶることに決めたのではないか。安倍内閣が憲法改正をやったり、少々の軍事力増強をやる程度のことには目をつぶることにしたのではないか。とりあえず、中国の内政を重視すること、最先端技術を日本から導入することを優先しているのではないか。

中国の中・長期的戦略というのは何か?

日本列島は、中国大陸を囲む陣形となっている。中国から見ると、日米を中軸とする軍事力に囲まれた、すなわち「鶴翼の陣」に対峙しているといえる。これに対し、中国は魚鱗の陣であろう。加えて、最近、日米両国は、ベトナム、インドとも急速接近し、中国包囲網が形成されるおそれもある。また、後背のロシアとの関係は、ロシア国民やロシア軍の反中・嫌中感情が強く、いつ何時、中ロ関係が悪化するか分からない危うさを秘めている。パキスタンやイランとの友好関係を築いても、安全保障上は屁のツッパリにもならないし、北朝鮮や韓国は、全体状況を変える要素にはなりえない。

中国の中・長期的戦略思考によれば「日本と中国が同盟すれば、アメリカは北東アジアから撤退せざるをえない。北朝鮮や韓国は、中国の庇護を受ける立場になる。台湾は熟柿の落ちるがごとく、おのずから中国に併合される。ASEANも、中日同盟の影響下に甘んじる。中国は対ロ、対印関係でも、強く出ることができる。すなわち、中国はアジアの覇権を手にすることが出来る。」と考えているのではないか。

これに対し、我が国は数十年後を展望した国家戦略が描けているだろうか?安倍首相は、個人的にはデッサンしているかもしれぬが、国家戦略として、「日本の中・長期的戦略」が立案されているとは思えない。情報管理が杜撰な日本では、極秘の戦略を立案することが困難だからだ。すぐに、外部に漏洩する危険が高いのだ。このような問題の情報管理については、中国のような共産党独裁国家に分がある。我が国も「国家機密漏洩罪」、「国家転覆幇助罪」及び「スパイ防止法」等の情報管理を行なう法律を作る必要があるのではないか。中国の情報は入手できず、日本の情報は中国に流れる現状を改善しなければ、中国相手の勝負は、やる前から負けと決まっているようなものだ。とにかく、胡錦濤主席以下の指導部は、「孫子の兵法」を徹底学習して、あらゆる謀略的手段を行使しているのであるから、遅まきながら、日本も対応策を検討すべきである。

かって、毛沢東や周恩来は、「アメリカ帝国主義は、中日両国人民の敵と考え、日本の戦争責任をA級戦犯等の指導者に限定、日本人民を中国側に引き寄せる意図で、日本の戦後賠償責任を免除した。その結果、狙い通り、日本人民多数が親中国派となったことは慶賀にたえない」と考えていたはずだ。ところが、「江沢民前国家主席が、反日教育を徹底し、訪日時も日本批判を繰り返したほか、反日暴動が日本の上海領事館を破壊、サッカー試合の日本人サポーター多数が中国人に暴行される映像が放映されるに至り、長年、営々として築いてきた日本人民の親中国感情が一挙に「嫌中感情」に転化してしまった。現在、日本人に嫌われるワースト2の国に転落してしまった。将来、日本が中国に敵対することがないよう日本人民の感情を、親中国に戻す必要がある」と考えているはずだ。

太田昭宏公明党代表が、胡錦濤主席に「拉致問題は、日本にとって重要だ。中国のサポートにより対中感情が劇的に変化する。」(以上、1月9日日本経済新聞)と述べたのも、中国側の心理に訴えたのであろう。

一方、アメリカは、米軍を嘉手納からグアムに移転させる費用として、1兆円に及ぶ財政負担を日本に求め、認めさせた。さらに、自衛隊をアメリカ軍の補完部隊として活用しようと企図している。

「日本を、共産主義の脅威から守ってやる」役割を担っていた米軍が、冷戦終結後は自己中心的な振る舞いをするようになった。その内、韓国と同様、在日米軍に対する反感が高まるかもしれない。中国の戦略的対日政策と比べ、アメリカは軍事中心の同盟関係のあり方に限定している。アメリカの対日戦略の欠如が目立つ。

アメリカの世界戦略は軍事面に偏り過ぎており、国民感情、当該国家の歴史・文化等への配慮が乏しい。力ずくで、世界を支配できると思っているのだろうか。落日の帝国は、かくも戦略的思考が退行するのか。

アメリカの没落は、経済、政治、軍事だけでなく、戦略的思考が弱体化することで決定的になったというほかはない。アメリカが地域の大国に没落するのも時間の問題だ。

日本は、米中の狭間にあるという戦略上の要所を占めている。今後、アメリカの影響力が減退するだけに中国の影響力は強まる。日本は、中国の対日戦略の意図を読み取りながら、インド、EU,ロシア、ブラジル等との戦略的パートナー関係を築くことで、台頭する中国との対等・平等な国家関係を保持するよう努めるべきである。

2007年の、温家宝首相及び胡錦濤国家主席の来日は、今後の日米関係、日中関係を大きく変える契機となるのではないか。



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