2010年10月10日
中国の反体制派知識人劉暁波がノーベル平和賞を授与された背景を読み解く。欧米と中国共産党北京政府の経済戦争は始まっているのか?
はじめに
1、ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を中国で服役中の民主活動家、劉暁波氏(54)に授与すると発表した。1980年代から基本的人権を巡って続けてきた活動実績を評価、受賞理由を「(当局の)厳しい刑罰を受けた劉氏は中国の人権状況改善に向けた戦いの最も重要な象徴となった」と説明した。
2、劉氏は89年の天安門事件の際の学生リーダーの一人。中国共産党による一党独裁の廃止を求める「08憲章」の起草で中心的な役割を果たしたことから「国家政権転覆扇動罪」に問われ、懲役11年の実刑判決を受けて現在も服役している。
3、同委員会は、世界第2位の経済力を持つに至った中国の発展で多数の人々が貧困を脱したと指摘。そのうえで、「新しい立場に置かれた中国はより重い責任を果たすべきだ」と主張し、中国が「いくつかの国際合意に違反しているほか、表現の自由などを定めた自国憲法にも違反している」と批判した。
(以上は、10月9日付け日本経済新聞の引用)
ノーベル平和賞は時代状況を反映する政治性が濃厚なノーベル賞である。かって我が国の佐藤栄作総理が「非核3原則」を唱えたことを評価されノーベル平和賞を授与されたことがある。我が国の国益を犠牲にして、欧米列強を喜ばせたご褒美である。同様、韓国の金大中大統領(当時)は米クリントン政権による「北朝鮮懐柔の太陽政策を推進した功績」が評価されノーベル平和賞を授与された。ミャンマーのアウン・サン・スー・チー女史はビルマ(ミャンマー)ーの民主化闘争を主導したこと、そして地球温暖化防止に精力的に取り組んだゴア米元副大統領も受賞した。
以上、ノーベル平和賞は欧米列強の時代認識を強く反映した政治的狙いを持ったものである。今回、中国共産党一党独裁を否定し、民主主義国家中国への展望を示した「08憲章」の起草者の一人で、現在、実刑判決を受け収監されている劉暁波がノーベル平和賞を受賞した意味は、欧米列強が中国共産党政権をミャンマーの軍事政権と同様「最悪の人権侵害国家又は世界最大の撹乱者」と認定した証拠である。
中華連邦共和国憲法要項とされる「08憲章」が発表されたのが08年12月。筆者は同時期ブログで「年間10万件に及ぶ人民の暴動や抗議闘争に触発された一部知識人による上からの改革運動で、人民大衆の怒りのエネルギーを吸収できるかどうか疑問。13億人民大衆の怒りに怯える共産党中央の一派と連携した体制内変革の動きではないか」と指摘しておいた。
ゴルバチョフやエリツィンに代表されるいわゆる「民主派」を名乗る共産党幹部が人民大衆の不満を吸い上げ、共産党独裁政権を打倒し、最大の功労者として「各共和国の大統領に就任して実権を掌握した」ことは記憶に新しい。彼らは、共産党独裁政権で名誉ある地位を占め、共産党独裁政権崩壊の幕を引き、そして新たに誕生した新生ロシア等の共和国で最高権力者となって君臨した。当然ながら、中国共産党中央指導部はソビエト共産党一党独裁が崩壊した背景、要因、経緯等を綿密に研究し熟知している。
劉暁波がノーベル平和賞を授与された意味は、当局の厳重な監視下におかれている情報封鎖社会中国において、劉暁波を初め「08憲章」を起草し弾圧された多くの知識人に対する激励、「08憲章」の起草者を代表して厳しい刑罰を受け収監されている劉暁波の不撓不屈の人権精神に対する高い評価、そしてノーベル平和賞を授与することで中国共産党の人権侵害を告発し、中国共産党独裁政権の正当性に疑問を投げかけることであった。ノーベル平和賞委員会は中国共産党独裁政権をビルマ(ミャンマー)の軍事独裁政権と同様「世界有数の人権侵害を行なう独裁政権」と認定したのである。
ここで、劉暁波がノーベル平和賞を授与される根拠となった「08憲章」の政治的意味について検討してみたい。
第1:「08憲章」の起草者(実名による連名)
1、職業別
人権・民主活動家78人、学者60人、作家・詩人37人、法律家34人、マスコミ関係者・フリーター25人、芸術家・農民等69人。なお、ネットで賛同者を募り、わずか2週間後の10月23日、署名者が6191人に達した。
共産党一党独裁政権下における知識人はいわゆる「勝ち組」である。経済的にも裕福で、本人はもとより一族にも多くの共産党高級幹部がいると推定できる。「コネ社会中国」において、彼ら「勝ち組」に属する知識人は世界の常識にも接しやすいし、社会の構造的矛盾を理解できる能力がある。
2、地域別
北京市80人、湖北省38人、上海市30人、広東省25人、浙江省24人、貴州省20人、山東省10人、その他76人。
起草者は一応、中国全土に拡散しているが、北京市が80人、上海市30人、広東省25人で勢力図に偏りがある。起草者の中心勢力が党中央が所在する北京市であることは興味深い。党中央最高幹部の邸宅がある中南海の北京市に集中し、上海閥の牙城で中国最大の近代都市上海市は北京市の約3分1と少ない。
大紀元日本によると、先般、中国共産党中央政治局常務委員会において、「共産党独裁政権崩壊を想定した中国共産党史の廃棄問題が議論された」という。共産党政権崩壊後、人民弾圧記録が開示されるのを恐れ、証拠を隠滅する具体的方法を議論したというのだ。という緊迫した情勢であるから、党中央政治局幹部の相当数が、背後から「08憲章」を支援し連帯していても不思議ではない。誰でも我が身が一番、自己と一族の生き残り策を模索し対策に乗り出している。
第2:劉暁波への刑罰
北京第1中級人民法院は国家政権転覆扇動罪で懲役11年の実刑判決を宣告したのであるが、検察や裁判所を統括する中国共産党中央政法委員会の書記は江沢民が率いる上海閥が掌握してきた。法輪功の信者を不当逮捕して虐殺したり、生体から臓器を摘出した人権蹂躙の罪で、スペイン等の外国政府から国際手配されている責任者も数多い。
「08憲章」を起草した劉暁波らは政法委員会が統括する裁判所で実刑判決を受けた。つまり「08憲章」起草者を弾圧した敵は上海閥という構図だ。一説によると、習近平国家副主席を首領とする太子党は「劉暁波を南アフリカのマンデラとみなし接近工作を図っている」というが真偽は不明である。筆者は共青団閥の棟梁胡錦濤主席や温家宝首相ら体制内改革派を「08憲章の背後霊」と推定している。
第3:「08憲章」の概要
1、基本理念
自由権・・・言論、出版、信仰、集会、結社、移動、ストライキ、請願などの権利保障
人権・・・・人民主権を基本におく
平等権・・・公民は社会的地位、職業、性別、経済状況、民族、人種で差別されない。
共和・・・・地方分権と利益のバランスを図る
憲政・・・・法治によって政治権力を制限し、行為の境界を明確にする。
以上、おおむね、日本国憲法から、前文、第1章(天皇)及び第2章(戦争の放棄)を除外したものと考えればよい。
2、主張
憲法改正、三権分立、直接選挙、司法の独立、軍の国軍化、人権保障、公職選挙、都市と農村の平等、結社の自由、集会の自由、言論の自由、信仰の自由、公民教育、財産権の保護、税制改革、社会保障、環境保護、連邦共和制度、正義と名誉回復
以上も、「都市と農村の平等」、「軍の国軍化」、「連邦共和制度」および「正義と名誉回復」を除くと、おおむね日本国憲法に近い。
「都市と農村の平等」というのは、都市戸籍と農村戸籍の差別を廃止し、人民に移動の自由を保障し社会的差別を禁止するということだろう。「軍の国軍化」は共産党の私兵に過ぎない中国人民解放軍を「国家の軍隊」に改めること。「連邦共和制」は、中央集権政治を改め、各州や特別市等の自立を高めることであろう。
「正義と名誉回復」とは
(1)政治的迫害者及び同家族の名誉回復を図り、国家賠償を行う。
(2)政治犯と良心又は信仰によって罪に問われたすべての人々を釈放する。
(3)真相究明調査委員会を設置し、(文化大革命、天安門事件、チベット・ウイグル・内モンゴルでの大虐殺等の)歴史的事件の真相を解明し、事件の責任を明らかにし、正義を鼓舞する。それを基礎に(分裂した中国社会)の和解を図る。(カッコ内は筆者が補足)
第4:「08憲章」に対する異論
大紀元日本(2010年2月22日)によると、「天安門事件のリーダーで王丹、厳家麒、封従徳など21人が2月13日、<ネット革命宣言」と題する公開書簡を発表、中国共産党の独裁体制を解体する革命を起こすよう呼びかけた。「08憲章」が提唱する体制内改革路線から、共産党政権打倒の革命を起こす路線転換について国内外で高い反響を呼んだ。
なお、「08憲章」が体制内改革と指摘される理由の一つは「08憲章」の結語で「我々は、すべての危機感、責任感、使命感を共有する中国国民が、朝野の別なく、身分にかかわらず、小異を残して大同につき、積極的に市民運動に参加し、共に中国社会の偉大な変革を推進し、できるだけ早く、自由、民主、憲政の国家を作り上げ、国民が100年以上の間根気よく追求し続けてきた夢を共に実現することを希望する」と記す点だ。この「朝野の別なく」という訴えは、劉暁波ら先進的知識人の主張であっても良いし、温家宝首相の訴えであっても一向に構わないのである。筆者が「怪しい」と睨んでいる所以だ。
第5:温家宝首相が繰り返す「異様なる政治改革」の提言
(以下1,2,3は、大紀元日本より抜粋)
1、温家宝首相は最近、党中央の意向に逆らって「政治の民主化を実現しなければ改革開放政策による経済成長の成果が台無しになる」と繰り返し発言している。8月22日の深セン市、9月6日の米カーター元大統領との面談、9月13日の世界経済フォーラム、9月22日のニューヨークでの中国メディアとの懇談、9月23日の国連総会でのスピーチ、10月1日の建政記念日の演説で同様の発言を繰り返した。
2、温家宝首相の発言について、上海閥の影響が強い中国共産党機関紙「光明日報」の9月4日付けは「政治改革は社会主義民主と資本主義民主との間の境界線を区別すべき」と批判した。(共産党一党独裁を前提とする民主化=社会主義的民主か、それとも共産党一党独裁を否定する資本主義的民主=反体制・反革命を厳格に区別せよという意味かー筆者)
3。一方、ネットユーザーが温家宝演説を擁護したほか、広東省委書記汪洋(共青団閥)が指導する機関紙「南方日報」は「政治改革を行うに当たっては思想の束縛から解放されるべき」と、光明日報への反論文を掲載した。
なぜ、温家宝首相は焦燥感に駆られているかの如く「政治改革の必要性」を喧伝して回るのか?「08憲章」の起草者の一人劉暁波氏のノーベル平和賞受賞と関連しているのか?それとも、中国共産党一党独裁体制を崩壊させる国内・国外の圧力(大津波)が波打ち際まで押し寄せているのか?疑問は尽きない。
(温家宝首相が焦っている背景を考えてみる)
中国人民による暴力を含む集団的争議が年間約10万件。昨年だったか、地方政府と公安庁舎が焼き討ちにされる大暴動が発生した。すでに中国大乱が始まっているといっても過言ではない。大学を卒業しても就職できない者が年間百万人を超える。人件費の高騰で企業の国外脱出が加速、失業者急増の要因になっている。経済成長率は共産党地方官僚が水増し報告したものであり実態を反映していない。地方政府官僚による嘘八百の数字を羅列した粉飾決算がまかり通っている。党中央が何度通達を出してもカエルのツラに小便、「中央に政策あれば、地方に対策あり」で、胡錦濤や温家宝の指示は骨抜きにされている。
中国共産党に対する中国13億人民の怒りは天をも貫くほどであるが、中国共産党内も火の車で分解寸前だ。大紀元日本によると、共産党および傘下の3団体から離脱意思を表明した人数は2004年11月から本年10月までの5年11月で、8100万人を超えた。最近は人数が増加傾向にあり、1日5万人以上、月間180万人以上となった。来年の今頃は1億人を超えているはずだ。
さらに、暴力と腐敗の地方政府の共産党官僚は、妾を何人も囲い、広大な別荘を有し、超豪華な生活を営んでいる。妻子や一族を外国に移住させ、腐敗にまみれた金を外国在住の家族に送金し洗浄している。いつでも国外脱出、国外逃亡できるよう準備を整えている。
以上の国内問題に加え、胡錦濤・温家宝指導部は米オバマ政権から厳しく査問されているはずだ。「約束した中国の民主化」が計画通り進んでいないのはいかなる理由か?中国は米国の覇権を切り崩し、西太平洋、南シナ海、東シナ海及びインド洋で制海権を握らんとする意図が窺えるが、その真意は何か?米国と戦争するつもりなのか?等々と詰問されていても不思議ではない。
そして、「中国の民主化」に関する米中秘密合意の約束期限が切れたため、胡錦濤や温家宝は米オバマ政権から「約束違反」と糾弾され、責任追及されているのかもしれぬ。これが8月下旬から10月上旬にかけて、温家宝首相が公式の席で6回も「政治の民主化を進めないと、改革開放政策による経済発展が台無しになる」と警鐘を鳴らす背景ではなかろうか。欧米日連合軍による経済封鎖を被った場合、貿易立国に変身した中国経済は一瞬で崩壊する。失業者は億単位で急増「中国大乱」が勃発する。考えただけでもぞっとする、夜も眠れないというのが温家宝の心情ではなかろうか。
第6:欧米列強は期待し支援してきた「共産党が主導する中国の民主化路線」を諦めたのか?
米歴代政権は改革開放以後の中国経済の資本主義化を強力に支援した。「中国はいずれ民主国家になる」と想定し、さまざまな便宜を供与し、中国共産党北京政府を甘やかしてきた。「中国と米国で世界を管理する構想(G2)」を唱え、北京政府を喜ばせ増長させた。
結果、チェンバレン英首相を騙したナチス・ヒットラーと同じく、北京政府は軍備を大増強して西太平洋、東シナ海、南シナ海の制海権を求めるようになった。東アジアから米国の影響を払拭すべく画策した。米ドル基軸体制を掘り崩すべく人民元による貿易決済圏を飛躍的に拡大させた。世界中の資源を囲い込み、「帝国以後の世界覇権」を表明するようになった。チベットや法輪功信者への人権侵害を繰り返し言論統制を強化した。北京政府の独断専行を制止せず看過すれば、ナチス・ヒットラー以上の凶暴な存在になると警戒された。
10月9日から、ワシントンのカナダ大使館で先進国中央銀行・財務相会議(G7)が開催される。「人民元売り・米ドル買い」で蓄えた外貨準備で世界の資源を買い漁り、人民元安と輸出拡大戦略を続行する北京政府の自己本位主義の国家経営が世界の撹乱要因として認識されるようになった。今回の首脳会議からロシアが除外されたが、先進7か国の自由な発言が中国に漏洩するのを防止する狙いがあったのかもしれぬ。
1・2年前から、欧米、インドなどで、中国製品にダンピング課税を課す動きが始まった。中国製玩具や食品に対する有害物質の検査も厳しくなった。フリー・チベット問題で世界中から中国批判の声が沸き起こったとき、北京政府は中国人留学生を総動員して反撃デモを繰り返した。当該国の国民から顰蹙をかった。また、中国に進出している外資系企業に対して、北京政府は党員を動員して「不買運動」を仕掛けた。フランス企業を窮地に陥れ屈服させた。「中国で商売したいのであれば言うことを聞け」とする北京政府の横柄な態度が目立つようになった。
今回、北京政府は尖閣諸島沖合の我が国領海内に数十隻の漁船を出漁させた。領海侵犯を取り締まっていた我が巡視船に漁船を体当たりさせた。我が国は漁船を拿捕し船長を逮捕した。温家宝は「レアメタルの輸出規制」を初めとする対日経済制裁を宣言し威嚇、中国在住の日本人社員4人を逮捕した。中国駐在の日本人は、彼らの都合によって「いつでも人質とされる」という前例ができた。今後、日中問題で紛争が発生した場合、中国に派遣されている日本人駐在員は無作為抽出されて逮捕・監禁され、運が悪ければ死刑に処せられると覚悟すべきであろう。誰が逮捕され、処刑されても不思議ではない。共産党独裁政権が続く限り。
共産党一党独裁の中国は法治国家ではない。罪刑法定主義もない。いつでも、いかなる理由をつけても、当局の都合によって中国人民や日本人駐在員を犯罪者に仕立て上げ逮捕することができる。これまで北京政府は、我が国からODAによる金融支援を引き出したり、最先端技術の供与を受ける弱みがあって特別処遇してくれた。誤解してはならない。北京政府の優しい接遇態度は彼らの本音ではない。韜晦術に過ぎない。我が国の左翼は中国共産党を美化する傾向があるが、彼らの本質は「目には目を歯には歯を」という野蛮なものである。尖閣諸島問題で、我が日本人も太平の眠りから目覚め、隣国の凶暴なる本性を見抜いた。中国嫌いの日本人が80%を超えた。
ユダヤ・アングロサクソンは戦略的思考が苦手である。目先の利害で行動を選択するプラグマチストである。尻に火がつくまで災難が訪れているのに気づかない鈍感なところがある。つい、最近まで「米中2極で世界を管理する(G2)」と主張するブレジンスキーやキッシンジャーに騙されてきた。極楽トンボの米オバマ政権も「米国覇権の終わり」と「中国覇権の出現」が現実的課題となったからびっくりした。「飼い犬(中国)に足を噛まれた」と嘆いているはずだ。「騙される方が悪い」というのは中国人の常識である。
まとめ
中華連邦共和国を唱える「08憲章」発起人の劉暁波に対するノーベル平和賞の授与は世界や中国共産党へのメッセージである。中国共産党政権はビルマ(ミャンマー)軍事政権と同じであるから、今後は「経済制裁の対象国とみなす」と宣言したことと同じと解すべきであろう。という情勢を認識した温家宝首相が狼狽して「中国の政治改革を唱えて回る」ものの多勢に無勢。党中央政治局常務委員会の多数派を占める江沢民閥(上海閥)、社会主義への復古を願う新左翼(毛沢東派)そして習近平の太子党等「反民主化勢力」の激烈な反撥に遭遇して船は前に進まない。津波が波打ち際まで押し寄せているのに何も出来ない。
欧米日が連帯すれば、中国共産党独裁政権を崩壊させるのは容易い。中国に進出している企業を倒産させる覚悟を固め「損切りするだけ」でよい。共産党政権崩壊→中国大乱→中華連邦共和国誕生の数年間、中国との交易が断絶するから先進諸国も大不況に突入する。しかし、中国大乱がなくとも、欧米金融機関が抱える含み損の累計は5000兆円以上と想定されるほど巨額である。米国の財政赤字は年間100兆円以上、我が国の財政赤字も年間40・50兆円で累積した公的負債は1000兆円に達する。
膨大な財政赤字を補うために発行される大量の国債を買う馬鹿はいないから、中央銀行やFRBに買い取らせる以外に方法はない。中国共産党政権を崩壊させてもさせなくとも、日米欧は財政赤字と累積負債及び天文学的含み損を一掃するためにはハイパーインフレ政策に踏切って経済を計画的に破綻させる以外に選択肢はない。
という訳で、中国共産党政権を崩壊させることと、資本主義経済を破壊する作業を同時に行って世界を焦土と化した上で、「21世紀のブレトンウッズ体制を再構築する」ことになったとしても誰も驚かない。その意味で、今回の先進国中央銀行・財務相会議(G7)は歴史の転換点になるかもしれぬ。
中国における法輪功や自然発生的なネット族による「草の根の民主主義」は、統一的な指導部を持っていない。散発的な暴動や山猫ストの水準に留まっている。という訳で、中国国内で全国的規模を有する統一行動がとれる民主化運動は執権政党である共産党の一派が加担する運動に限定される。ソ連共産党第一書記であったゴルバチョフやモスクワ市共産党書記であったエリツィンが率いた民主化闘争と同じ形態となる確率が高い。
中国共産党と人民解放軍の幹部は、改革開放政策の最大の受益者である。本人、家族、一族は職権を濫用して膨大な資産を蓄えた。ソ連共産党の場合は体制が崩壊した後、党幹部の利権争奪戦が始まったが、中国共産党の場合は利権争奪戦はほぼ終わっている。既得権を享受している中国共産党幹部には「現状を変革する必要性」も、「民主国家を建設する動機づけ」も希薄なのだ。だから、胡錦濤や温家宝がいくら「体制の危機」を叫んでも、他の派閥は「笛吹けども、汝ら踊らず」の状態に留まっている。歴代米国政権が期待し支援してきた「中国共産党による上からの民主化」は時間切れ廃案となり、「米国覇権を打倒するファシズム国家中華帝国が誕生した」という訳なのだ。
中国人民元の切上げを第一弾として、今後、中国製品に対する輸入課徴金や輸入制限が強化される。中国に進出している外資系企業は雪崩を打って「損切り」に追い込まれる。賢明な企業は数年前から中国市場を脱出し、インド、ベトナム、ブラジル、東欧、ロシア等の親日国家に避難している。目先の利につられてウハウハしていると、最後の賭場で所持金をすべて巻き上げられる。中国市場というのは、中国最大のマフィア(共産党)が取り仕切る賭場なのだ。最初は勝たせてくれることもあるが、最後は身ぐるみを剥がれ追い出されると覚悟して賭場に出かけるべきなのだ。
「欧米列強がルール制定権を独占する合理的理由はない」と主張する北京政府の見解にも一理ある。しかし、欧米列強に代わって誰がルールを制定するのか、となった場合、国連193か国が延々と議論して決めるのか?それとも欧米に代わって北京政府が決定するのか?という議論になる。誰かがルールを制定しなければ世界は弱肉強食のジャングルとなる。
中国と欧米日の「宣戦布告なき経済戦争」はすでに始まっている。今回のノーベル平和賞は経済戦争の激化を予想させる出来事である。右手で握手、左手で殴りあうという騙し合いの対立構造から、単純明快な対決に変わる。
中国共産党機関紙人民日報サイト・日本語版でも「中国包囲網の形成問題」が論じられる時代になった。彼らも実感するのであろう。真綿で首をしめられ息苦しくなりつつあることを。
我が仙谷・菅の腰砕け全共闘内閣は「米国の意向を第一」と心得、政権延命を至上命題としている。中国共産党による主権侵害行為を糾弾し対抗措置をとるのではなく「波風を立てない課題先送り主義」に専念している。
普天間基地の恒久化工事がまもなく始まる。仙谷・菅内閣は「尖閣諸島周辺海域で紛争が起きないよう日中協議を申し入れている」という。北京政府と協議することは「領土問題が未解決」という北京政府の手の内で踊ることを意味する。南シナ海西沙諸島の領有権を主張する北京政府は、領海侵犯したベトナム漁船を拿捕し、逮捕した船員を釈放していない。もちろん、紛争解決のために、ベトナム政府と協議するつもりは全くない。
仙谷・菅の外交音痴内閣を倒すのが先か?金権腐敗・外患誘致の小沢一郎を政界から追放するのが先か?マイナス100点同士の「どっちもどっち」の選択であるから困ってしまう。当面、刑事被告人の小沢一郎を公職追放処分に付し、小沢軍団を解体した後で、仙谷・菅の売国政権を打倒すべきか、それとも、小沢軍団を巻き込んで「内閣不信任決議を可決し衆院解散に追い込むのが先か。
数か月前、英国はインドと、フランスはベトナムとの軍事的協力関係を強化することで合意した。「本年11月に開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では新たな脅威である国際テロ、サイバーテロ、海賊対策、エネルギー安全保障等に対処するため、ロシア、日本、韓国、豪州等と、深く、幅広い政治的・実践的な関係を発展させる新戦略概念を採択する予定である。リスボンで開催される首脳会議には、ロシアのメドベージェフ大統領と日本の菅直人首相にも出席を要請する見通し」(括弧内は9日付け日本経済新聞・夕刊より要約抜粋)
経済的な圧力を徐々に高め、軍事的な包囲網を形成して孤立させる。第二次世界大戦直前の我が国に対する「経済封鎖とABCD包囲網」を彷彿させる出来事が進行中である。「敵を包囲して殲滅せよ」が、欧米列強の得意な手口かもしれぬ。
世界は今、宣戦布告なき経済戦争の時代に突入した。時代の趨勢や大局を見失うことがないよう現実を直視し、国家や企業の生き残り策に乗り出す時期である。
我が民主党政権は「鳩山友愛・妄想政治と小沢金権・外患誘致政治から脱却し、憲法改正を始め時代に即応できる大連立政権の樹立に向けて舵を切るべきだ。
世界は大きく動いている。コップの中の権力闘争を行っている場合ではない。
1、ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を中国で服役中の民主活動家、劉暁波氏(54)に授与すると発表した。1980年代から基本的人権を巡って続けてきた活動実績を評価、受賞理由を「(当局の)厳しい刑罰を受けた劉氏は中国の人権状況改善に向けた戦いの最も重要な象徴となった」と説明した。
2、劉氏は89年の天安門事件の際の学生リーダーの一人。中国共産党による一党独裁の廃止を求める「08憲章」の起草で中心的な役割を果たしたことから「国家政権転覆扇動罪」に問われ、懲役11年の実刑判決を受けて現在も服役している。
3、同委員会は、世界第2位の経済力を持つに至った中国の発展で多数の人々が貧困を脱したと指摘。そのうえで、「新しい立場に置かれた中国はより重い責任を果たすべきだ」と主張し、中国が「いくつかの国際合意に違反しているほか、表現の自由などを定めた自国憲法にも違反している」と批判した。
(以上は、10月9日付け日本経済新聞の引用)
ノーベル平和賞は時代状況を反映する政治性が濃厚なノーベル賞である。かって我が国の佐藤栄作総理が「非核3原則」を唱えたことを評価されノーベル平和賞を授与されたことがある。我が国の国益を犠牲にして、欧米列強を喜ばせたご褒美である。同様、韓国の金大中大統領(当時)は米クリントン政権による「北朝鮮懐柔の太陽政策を推進した功績」が評価されノーベル平和賞を授与された。ミャンマーのアウン・サン・スー・チー女史はビルマ(ミャンマー)ーの民主化闘争を主導したこと、そして地球温暖化防止に精力的に取り組んだゴア米元副大統領も受賞した。
以上、ノーベル平和賞は欧米列強の時代認識を強く反映した政治的狙いを持ったものである。今回、中国共産党一党独裁を否定し、民主主義国家中国への展望を示した「08憲章」の起草者の一人で、現在、実刑判決を受け収監されている劉暁波がノーベル平和賞を受賞した意味は、欧米列強が中国共産党政権をミャンマーの軍事政権と同様「最悪の人権侵害国家又は世界最大の撹乱者」と認定した証拠である。
中華連邦共和国憲法要項とされる「08憲章」が発表されたのが08年12月。筆者は同時期ブログで「年間10万件に及ぶ人民の暴動や抗議闘争に触発された一部知識人による上からの改革運動で、人民大衆の怒りのエネルギーを吸収できるかどうか疑問。13億人民大衆の怒りに怯える共産党中央の一派と連携した体制内変革の動きではないか」と指摘しておいた。
ゴルバチョフやエリツィンに代表されるいわゆる「民主派」を名乗る共産党幹部が人民大衆の不満を吸い上げ、共産党独裁政権を打倒し、最大の功労者として「各共和国の大統領に就任して実権を掌握した」ことは記憶に新しい。彼らは、共産党独裁政権で名誉ある地位を占め、共産党独裁政権崩壊の幕を引き、そして新たに誕生した新生ロシア等の共和国で最高権力者となって君臨した。当然ながら、中国共産党中央指導部はソビエト共産党一党独裁が崩壊した背景、要因、経緯等を綿密に研究し熟知している。
劉暁波がノーベル平和賞を授与された意味は、当局の厳重な監視下におかれている情報封鎖社会中国において、劉暁波を初め「08憲章」を起草し弾圧された多くの知識人に対する激励、「08憲章」の起草者を代表して厳しい刑罰を受け収監されている劉暁波の不撓不屈の人権精神に対する高い評価、そしてノーベル平和賞を授与することで中国共産党の人権侵害を告発し、中国共産党独裁政権の正当性に疑問を投げかけることであった。ノーベル平和賞委員会は中国共産党独裁政権をビルマ(ミャンマー)の軍事独裁政権と同様「世界有数の人権侵害を行なう独裁政権」と認定したのである。
ここで、劉暁波がノーベル平和賞を授与される根拠となった「08憲章」の政治的意味について検討してみたい。
第1:「08憲章」の起草者(実名による連名)
1、職業別
人権・民主活動家78人、学者60人、作家・詩人37人、法律家34人、マスコミ関係者・フリーター25人、芸術家・農民等69人。なお、ネットで賛同者を募り、わずか2週間後の10月23日、署名者が6191人に達した。
共産党一党独裁政権下における知識人はいわゆる「勝ち組」である。経済的にも裕福で、本人はもとより一族にも多くの共産党高級幹部がいると推定できる。「コネ社会中国」において、彼ら「勝ち組」に属する知識人は世界の常識にも接しやすいし、社会の構造的矛盾を理解できる能力がある。
2、地域別
北京市80人、湖北省38人、上海市30人、広東省25人、浙江省24人、貴州省20人、山東省10人、その他76人。
起草者は一応、中国全土に拡散しているが、北京市が80人、上海市30人、広東省25人で勢力図に偏りがある。起草者の中心勢力が党中央が所在する北京市であることは興味深い。党中央最高幹部の邸宅がある中南海の北京市に集中し、上海閥の牙城で中国最大の近代都市上海市は北京市の約3分1と少ない。
大紀元日本によると、先般、中国共産党中央政治局常務委員会において、「共産党独裁政権崩壊を想定した中国共産党史の廃棄問題が議論された」という。共産党政権崩壊後、人民弾圧記録が開示されるのを恐れ、証拠を隠滅する具体的方法を議論したというのだ。という緊迫した情勢であるから、党中央政治局幹部の相当数が、背後から「08憲章」を支援し連帯していても不思議ではない。誰でも我が身が一番、自己と一族の生き残り策を模索し対策に乗り出している。
第2:劉暁波への刑罰
北京第1中級人民法院は国家政権転覆扇動罪で懲役11年の実刑判決を宣告したのであるが、検察や裁判所を統括する中国共産党中央政法委員会の書記は江沢民が率いる上海閥が掌握してきた。法輪功の信者を不当逮捕して虐殺したり、生体から臓器を摘出した人権蹂躙の罪で、スペイン等の外国政府から国際手配されている責任者も数多い。
「08憲章」を起草した劉暁波らは政法委員会が統括する裁判所で実刑判決を受けた。つまり「08憲章」起草者を弾圧した敵は上海閥という構図だ。一説によると、習近平国家副主席を首領とする太子党は「劉暁波を南アフリカのマンデラとみなし接近工作を図っている」というが真偽は不明である。筆者は共青団閥の棟梁胡錦濤主席や温家宝首相ら体制内改革派を「08憲章の背後霊」と推定している。
第3:「08憲章」の概要
1、基本理念
自由権・・・言論、出版、信仰、集会、結社、移動、ストライキ、請願などの権利保障
人権・・・・人民主権を基本におく
平等権・・・公民は社会的地位、職業、性別、経済状況、民族、人種で差別されない。
共和・・・・地方分権と利益のバランスを図る
憲政・・・・法治によって政治権力を制限し、行為の境界を明確にする。
以上、おおむね、日本国憲法から、前文、第1章(天皇)及び第2章(戦争の放棄)を除外したものと考えればよい。
2、主張
憲法改正、三権分立、直接選挙、司法の独立、軍の国軍化、人権保障、公職選挙、都市と農村の平等、結社の自由、集会の自由、言論の自由、信仰の自由、公民教育、財産権の保護、税制改革、社会保障、環境保護、連邦共和制度、正義と名誉回復
以上も、「都市と農村の平等」、「軍の国軍化」、「連邦共和制度」および「正義と名誉回復」を除くと、おおむね日本国憲法に近い。
「都市と農村の平等」というのは、都市戸籍と農村戸籍の差別を廃止し、人民に移動の自由を保障し社会的差別を禁止するということだろう。「軍の国軍化」は共産党の私兵に過ぎない中国人民解放軍を「国家の軍隊」に改めること。「連邦共和制」は、中央集権政治を改め、各州や特別市等の自立を高めることであろう。
「正義と名誉回復」とは
(1)政治的迫害者及び同家族の名誉回復を図り、国家賠償を行う。
(2)政治犯と良心又は信仰によって罪に問われたすべての人々を釈放する。
(3)真相究明調査委員会を設置し、(文化大革命、天安門事件、チベット・ウイグル・内モンゴルでの大虐殺等の)歴史的事件の真相を解明し、事件の責任を明らかにし、正義を鼓舞する。それを基礎に(分裂した中国社会)の和解を図る。(カッコ内は筆者が補足)
第4:「08憲章」に対する異論
大紀元日本(2010年2月22日)によると、「天安門事件のリーダーで王丹、厳家麒、封従徳など21人が2月13日、<ネット革命宣言」と題する公開書簡を発表、中国共産党の独裁体制を解体する革命を起こすよう呼びかけた。「08憲章」が提唱する体制内改革路線から、共産党政権打倒の革命を起こす路線転換について国内外で高い反響を呼んだ。
なお、「08憲章」が体制内改革と指摘される理由の一つは「08憲章」の結語で「我々は、すべての危機感、責任感、使命感を共有する中国国民が、朝野の別なく、身分にかかわらず、小異を残して大同につき、積極的に市民運動に参加し、共に中国社会の偉大な変革を推進し、できるだけ早く、自由、民主、憲政の国家を作り上げ、国民が100年以上の間根気よく追求し続けてきた夢を共に実現することを希望する」と記す点だ。この「朝野の別なく」という訴えは、劉暁波ら先進的知識人の主張であっても良いし、温家宝首相の訴えであっても一向に構わないのである。筆者が「怪しい」と睨んでいる所以だ。
第5:温家宝首相が繰り返す「異様なる政治改革」の提言
(以下1,2,3は、大紀元日本より抜粋)
1、温家宝首相は最近、党中央の意向に逆らって「政治の民主化を実現しなければ改革開放政策による経済成長の成果が台無しになる」と繰り返し発言している。8月22日の深セン市、9月6日の米カーター元大統領との面談、9月13日の世界経済フォーラム、9月22日のニューヨークでの中国メディアとの懇談、9月23日の国連総会でのスピーチ、10月1日の建政記念日の演説で同様の発言を繰り返した。
2、温家宝首相の発言について、上海閥の影響が強い中国共産党機関紙「光明日報」の9月4日付けは「政治改革は社会主義民主と資本主義民主との間の境界線を区別すべき」と批判した。(共産党一党独裁を前提とする民主化=社会主義的民主か、それとも共産党一党独裁を否定する資本主義的民主=反体制・反革命を厳格に区別せよという意味かー筆者)
3。一方、ネットユーザーが温家宝演説を擁護したほか、広東省委書記汪洋(共青団閥)が指導する機関紙「南方日報」は「政治改革を行うに当たっては思想の束縛から解放されるべき」と、光明日報への反論文を掲載した。
なぜ、温家宝首相は焦燥感に駆られているかの如く「政治改革の必要性」を喧伝して回るのか?「08憲章」の起草者の一人劉暁波氏のノーベル平和賞受賞と関連しているのか?それとも、中国共産党一党独裁体制を崩壊させる国内・国外の圧力(大津波)が波打ち際まで押し寄せているのか?疑問は尽きない。
(温家宝首相が焦っている背景を考えてみる)
中国人民による暴力を含む集団的争議が年間約10万件。昨年だったか、地方政府と公安庁舎が焼き討ちにされる大暴動が発生した。すでに中国大乱が始まっているといっても過言ではない。大学を卒業しても就職できない者が年間百万人を超える。人件費の高騰で企業の国外脱出が加速、失業者急増の要因になっている。経済成長率は共産党地方官僚が水増し報告したものであり実態を反映していない。地方政府官僚による嘘八百の数字を羅列した粉飾決算がまかり通っている。党中央が何度通達を出してもカエルのツラに小便、「中央に政策あれば、地方に対策あり」で、胡錦濤や温家宝の指示は骨抜きにされている。
中国共産党に対する中国13億人民の怒りは天をも貫くほどであるが、中国共産党内も火の車で分解寸前だ。大紀元日本によると、共産党および傘下の3団体から離脱意思を表明した人数は2004年11月から本年10月までの5年11月で、8100万人を超えた。最近は人数が増加傾向にあり、1日5万人以上、月間180万人以上となった。来年の今頃は1億人を超えているはずだ。
さらに、暴力と腐敗の地方政府の共産党官僚は、妾を何人も囲い、広大な別荘を有し、超豪華な生活を営んでいる。妻子や一族を外国に移住させ、腐敗にまみれた金を外国在住の家族に送金し洗浄している。いつでも国外脱出、国外逃亡できるよう準備を整えている。
以上の国内問題に加え、胡錦濤・温家宝指導部は米オバマ政権から厳しく査問されているはずだ。「約束した中国の民主化」が計画通り進んでいないのはいかなる理由か?中国は米国の覇権を切り崩し、西太平洋、南シナ海、東シナ海及びインド洋で制海権を握らんとする意図が窺えるが、その真意は何か?米国と戦争するつもりなのか?等々と詰問されていても不思議ではない。
そして、「中国の民主化」に関する米中秘密合意の約束期限が切れたため、胡錦濤や温家宝は米オバマ政権から「約束違反」と糾弾され、責任追及されているのかもしれぬ。これが8月下旬から10月上旬にかけて、温家宝首相が公式の席で6回も「政治の民主化を進めないと、改革開放政策による経済発展が台無しになる」と警鐘を鳴らす背景ではなかろうか。欧米日連合軍による経済封鎖を被った場合、貿易立国に変身した中国経済は一瞬で崩壊する。失業者は億単位で急増「中国大乱」が勃発する。考えただけでもぞっとする、夜も眠れないというのが温家宝の心情ではなかろうか。
第6:欧米列強は期待し支援してきた「共産党が主導する中国の民主化路線」を諦めたのか?
米歴代政権は改革開放以後の中国経済の資本主義化を強力に支援した。「中国はいずれ民主国家になる」と想定し、さまざまな便宜を供与し、中国共産党北京政府を甘やかしてきた。「中国と米国で世界を管理する構想(G2)」を唱え、北京政府を喜ばせ増長させた。
結果、チェンバレン英首相を騙したナチス・ヒットラーと同じく、北京政府は軍備を大増強して西太平洋、東シナ海、南シナ海の制海権を求めるようになった。東アジアから米国の影響を払拭すべく画策した。米ドル基軸体制を掘り崩すべく人民元による貿易決済圏を飛躍的に拡大させた。世界中の資源を囲い込み、「帝国以後の世界覇権」を表明するようになった。チベットや法輪功信者への人権侵害を繰り返し言論統制を強化した。北京政府の独断専行を制止せず看過すれば、ナチス・ヒットラー以上の凶暴な存在になると警戒された。
10月9日から、ワシントンのカナダ大使館で先進国中央銀行・財務相会議(G7)が開催される。「人民元売り・米ドル買い」で蓄えた外貨準備で世界の資源を買い漁り、人民元安と輸出拡大戦略を続行する北京政府の自己本位主義の国家経営が世界の撹乱要因として認識されるようになった。今回の首脳会議からロシアが除外されたが、先進7か国の自由な発言が中国に漏洩するのを防止する狙いがあったのかもしれぬ。
1・2年前から、欧米、インドなどで、中国製品にダンピング課税を課す動きが始まった。中国製玩具や食品に対する有害物質の検査も厳しくなった。フリー・チベット問題で世界中から中国批判の声が沸き起こったとき、北京政府は中国人留学生を総動員して反撃デモを繰り返した。当該国の国民から顰蹙をかった。また、中国に進出している外資系企業に対して、北京政府は党員を動員して「不買運動」を仕掛けた。フランス企業を窮地に陥れ屈服させた。「中国で商売したいのであれば言うことを聞け」とする北京政府の横柄な態度が目立つようになった。
今回、北京政府は尖閣諸島沖合の我が国領海内に数十隻の漁船を出漁させた。領海侵犯を取り締まっていた我が巡視船に漁船を体当たりさせた。我が国は漁船を拿捕し船長を逮捕した。温家宝は「レアメタルの輸出規制」を初めとする対日経済制裁を宣言し威嚇、中国在住の日本人社員4人を逮捕した。中国駐在の日本人は、彼らの都合によって「いつでも人質とされる」という前例ができた。今後、日中問題で紛争が発生した場合、中国に派遣されている日本人駐在員は無作為抽出されて逮捕・監禁され、運が悪ければ死刑に処せられると覚悟すべきであろう。誰が逮捕され、処刑されても不思議ではない。共産党独裁政権が続く限り。
共産党一党独裁の中国は法治国家ではない。罪刑法定主義もない。いつでも、いかなる理由をつけても、当局の都合によって中国人民や日本人駐在員を犯罪者に仕立て上げ逮捕することができる。これまで北京政府は、我が国からODAによる金融支援を引き出したり、最先端技術の供与を受ける弱みがあって特別処遇してくれた。誤解してはならない。北京政府の優しい接遇態度は彼らの本音ではない。韜晦術に過ぎない。我が国の左翼は中国共産党を美化する傾向があるが、彼らの本質は「目には目を歯には歯を」という野蛮なものである。尖閣諸島問題で、我が日本人も太平の眠りから目覚め、隣国の凶暴なる本性を見抜いた。中国嫌いの日本人が80%を超えた。
ユダヤ・アングロサクソンは戦略的思考が苦手である。目先の利害で行動を選択するプラグマチストである。尻に火がつくまで災難が訪れているのに気づかない鈍感なところがある。つい、最近まで「米中2極で世界を管理する(G2)」と主張するブレジンスキーやキッシンジャーに騙されてきた。極楽トンボの米オバマ政権も「米国覇権の終わり」と「中国覇権の出現」が現実的課題となったからびっくりした。「飼い犬(中国)に足を噛まれた」と嘆いているはずだ。「騙される方が悪い」というのは中国人の常識である。
まとめ
中華連邦共和国を唱える「08憲章」発起人の劉暁波に対するノーベル平和賞の授与は世界や中国共産党へのメッセージである。中国共産党政権はビルマ(ミャンマー)軍事政権と同じであるから、今後は「経済制裁の対象国とみなす」と宣言したことと同じと解すべきであろう。という情勢を認識した温家宝首相が狼狽して「中国の政治改革を唱えて回る」ものの多勢に無勢。党中央政治局常務委員会の多数派を占める江沢民閥(上海閥)、社会主義への復古を願う新左翼(毛沢東派)そして習近平の太子党等「反民主化勢力」の激烈な反撥に遭遇して船は前に進まない。津波が波打ち際まで押し寄せているのに何も出来ない。
欧米日が連帯すれば、中国共産党独裁政権を崩壊させるのは容易い。中国に進出している企業を倒産させる覚悟を固め「損切りするだけ」でよい。共産党政権崩壊→中国大乱→中華連邦共和国誕生の数年間、中国との交易が断絶するから先進諸国も大不況に突入する。しかし、中国大乱がなくとも、欧米金融機関が抱える含み損の累計は5000兆円以上と想定されるほど巨額である。米国の財政赤字は年間100兆円以上、我が国の財政赤字も年間40・50兆円で累積した公的負債は1000兆円に達する。
膨大な財政赤字を補うために発行される大量の国債を買う馬鹿はいないから、中央銀行やFRBに買い取らせる以外に方法はない。中国共産党政権を崩壊させてもさせなくとも、日米欧は財政赤字と累積負債及び天文学的含み損を一掃するためにはハイパーインフレ政策に踏切って経済を計画的に破綻させる以外に選択肢はない。
という訳で、中国共産党政権を崩壊させることと、資本主義経済を破壊する作業を同時に行って世界を焦土と化した上で、「21世紀のブレトンウッズ体制を再構築する」ことになったとしても誰も驚かない。その意味で、今回の先進国中央銀行・財務相会議(G7)は歴史の転換点になるかもしれぬ。
中国における法輪功や自然発生的なネット族による「草の根の民主主義」は、統一的な指導部を持っていない。散発的な暴動や山猫ストの水準に留まっている。という訳で、中国国内で全国的規模を有する統一行動がとれる民主化運動は執権政党である共産党の一派が加担する運動に限定される。ソ連共産党第一書記であったゴルバチョフやモスクワ市共産党書記であったエリツィンが率いた民主化闘争と同じ形態となる確率が高い。
中国共産党と人民解放軍の幹部は、改革開放政策の最大の受益者である。本人、家族、一族は職権を濫用して膨大な資産を蓄えた。ソ連共産党の場合は体制が崩壊した後、党幹部の利権争奪戦が始まったが、中国共産党の場合は利権争奪戦はほぼ終わっている。既得権を享受している中国共産党幹部には「現状を変革する必要性」も、「民主国家を建設する動機づけ」も希薄なのだ。だから、胡錦濤や温家宝がいくら「体制の危機」を叫んでも、他の派閥は「笛吹けども、汝ら踊らず」の状態に留まっている。歴代米国政権が期待し支援してきた「中国共産党による上からの民主化」は時間切れ廃案となり、「米国覇権を打倒するファシズム国家中華帝国が誕生した」という訳なのだ。
中国人民元の切上げを第一弾として、今後、中国製品に対する輸入課徴金や輸入制限が強化される。中国に進出している外資系企業は雪崩を打って「損切り」に追い込まれる。賢明な企業は数年前から中国市場を脱出し、インド、ベトナム、ブラジル、東欧、ロシア等の親日国家に避難している。目先の利につられてウハウハしていると、最後の賭場で所持金をすべて巻き上げられる。中国市場というのは、中国最大のマフィア(共産党)が取り仕切る賭場なのだ。最初は勝たせてくれることもあるが、最後は身ぐるみを剥がれ追い出されると覚悟して賭場に出かけるべきなのだ。
「欧米列強がルール制定権を独占する合理的理由はない」と主張する北京政府の見解にも一理ある。しかし、欧米列強に代わって誰がルールを制定するのか、となった場合、国連193か国が延々と議論して決めるのか?それとも欧米に代わって北京政府が決定するのか?という議論になる。誰かがルールを制定しなければ世界は弱肉強食のジャングルとなる。
中国と欧米日の「宣戦布告なき経済戦争」はすでに始まっている。今回のノーベル平和賞は経済戦争の激化を予想させる出来事である。右手で握手、左手で殴りあうという騙し合いの対立構造から、単純明快な対決に変わる。
中国共産党機関紙人民日報サイト・日本語版でも「中国包囲網の形成問題」が論じられる時代になった。彼らも実感するのであろう。真綿で首をしめられ息苦しくなりつつあることを。
我が仙谷・菅の腰砕け全共闘内閣は「米国の意向を第一」と心得、政権延命を至上命題としている。中国共産党による主権侵害行為を糾弾し対抗措置をとるのではなく「波風を立てない課題先送り主義」に専念している。
普天間基地の恒久化工事がまもなく始まる。仙谷・菅内閣は「尖閣諸島周辺海域で紛争が起きないよう日中協議を申し入れている」という。北京政府と協議することは「領土問題が未解決」という北京政府の手の内で踊ることを意味する。南シナ海西沙諸島の領有権を主張する北京政府は、領海侵犯したベトナム漁船を拿捕し、逮捕した船員を釈放していない。もちろん、紛争解決のために、ベトナム政府と協議するつもりは全くない。
仙谷・菅の外交音痴内閣を倒すのが先か?金権腐敗・外患誘致の小沢一郎を政界から追放するのが先か?マイナス100点同士の「どっちもどっち」の選択であるから困ってしまう。当面、刑事被告人の小沢一郎を公職追放処分に付し、小沢軍団を解体した後で、仙谷・菅の売国政権を打倒すべきか、それとも、小沢軍団を巻き込んで「内閣不信任決議を可決し衆院解散に追い込むのが先か。
数か月前、英国はインドと、フランスはベトナムとの軍事的協力関係を強化することで合意した。「本年11月に開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では新たな脅威である国際テロ、サイバーテロ、海賊対策、エネルギー安全保障等に対処するため、ロシア、日本、韓国、豪州等と、深く、幅広い政治的・実践的な関係を発展させる新戦略概念を採択する予定である。リスボンで開催される首脳会議には、ロシアのメドベージェフ大統領と日本の菅直人首相にも出席を要請する見通し」(括弧内は9日付け日本経済新聞・夕刊より要約抜粋)
経済的な圧力を徐々に高め、軍事的な包囲網を形成して孤立させる。第二次世界大戦直前の我が国に対する「経済封鎖とABCD包囲網」を彷彿させる出来事が進行中である。「敵を包囲して殲滅せよ」が、欧米列強の得意な手口かもしれぬ。
世界は今、宣戦布告なき経済戦争の時代に突入した。時代の趨勢や大局を見失うことがないよう現実を直視し、国家や企業の生き残り策に乗り出す時期である。
我が民主党政権は「鳩山友愛・妄想政治と小沢金権・外患誘致政治から脱却し、憲法改正を始め時代に即応できる大連立政権の樹立に向けて舵を切るべきだ。
世界は大きく動いている。コップの中の権力闘争を行っている場合ではない。
この記事へのコメント
1. Posted by 田舎のダンディ 2010年10月10日 07:21
高い見識と洞察力に満ちた内容で、いつも敬意をもって拝見しております。
ノーベル平和賞が強い政治性を持っているという見解には、多くの方がうなずくことでしょう。欧州は、日本にとって手ごわい相手でもありますが、一定の集団的意思を表明する勇気は見習わなければなりません。
矛盾を衝かれた中国指導部が、極めて苛立っていることは想像に難くありませんし、一般国民は心の中で受賞大歓迎でしょう。もし、今回のことが契機となって、中国の民主化運動が再燃するとしたら、ノーベル平和賞に最も値するものは、ノーベル賞委員会自身であることは間違いありませんね。
ノーベル平和賞が強い政治性を持っているという見解には、多くの方がうなずくことでしょう。欧州は、日本にとって手ごわい相手でもありますが、一定の集団的意思を表明する勇気は見習わなければなりません。
矛盾を衝かれた中国指導部が、極めて苛立っていることは想像に難くありませんし、一般国民は心の中で受賞大歓迎でしょう。もし、今回のことが契機となって、中国の民主化運動が再燃するとしたら、ノーベル平和賞に最も値するものは、ノーベル賞委員会自身であることは間違いありませんね。
2. Posted by 白髪爺 2010年10月10日 09:08
最近の温家宝の狼狽ぶりは見ていて気の毒になります。我が国に対する経済的嫌がらせはすでに撤回する意向ですし、閣僚級以上の対話はしないという脅しも挫折しました。
このようなとき、中国であれば「溺れた犬は叩け」となるのですが、お人好しの日本政府は「人助け」に動いてしまうのですね。困ったものです。
北京政府には、さらに傍若無人に振舞ってもらえばよいのです。自分で自分の首を締めることを自覚できるまで放置しておけばよいのです。
ノーベル平和賞委員会の背後霊について筆者は「ユダヤ・アングロサクソン同盟」と推測しています。米国が、時々の都合によって、自由自在に認定している感じですね。最も有効な宣伝手段です。
このようなとき、中国であれば「溺れた犬は叩け」となるのですが、お人好しの日本政府は「人助け」に動いてしまうのですね。困ったものです。
北京政府には、さらに傍若無人に振舞ってもらえばよいのです。自分で自分の首を締めることを自覚できるまで放置しておけばよいのです。
ノーベル平和賞委員会の背後霊について筆者は「ユダヤ・アングロサクソン同盟」と推測しています。米国が、時々の都合によって、自由自在に認定している感じですね。最も有効な宣伝手段です。
3. Posted by スロウ忍 2010年10月10日 16:22
中国の反体制作家にノーベル平和賞。中国共産党を露骨に煽る新自由主義国家連合と上海閥。
上海閥は、自作自演の尖閣問題で新自由主義国家連合に中国(共産党)攻撃の大義名分を与え、ライバル北京閥(共産党)を弱体化し権力を手に入れようとしているのが透けて見えてくる。
上海閥によるクーデターだな。
上海閥は、自作自演の尖閣問題で新自由主義国家連合に中国(共産党)攻撃の大義名分を与え、ライバル北京閥(共産党)を弱体化し権力を手に入れようとしているのが透けて見えてくる。
上海閥によるクーデターだな。
4. Posted by 白髪爺 2010年10月10日 18:46
御指摘のように、尖閣諸島問題を初め、外交関係を破壊して政敵を追い詰めるのが、共産党中央各派閥が常用する手口のようですね。
結果、欧米列強を呼びこんで国家をガタガタに破壊されるのですね。清朝末期と同じく、外敵よりも内敵を恐れる官僚どもの癒しがたい体質かもしれませんね。
結果、欧米列強を呼びこんで国家をガタガタに破壊されるのですね。清朝末期と同じく、外敵よりも内敵を恐れる官僚どもの癒しがたい体質かもしれませんね。