金正日体制

2011年01月17日

金日成王朝の崩壊が始まった。北京政府と中国軍による北朝鮮の独占支配が北京とワシントン・モスクワの対立を激化させる。

はじめに

熟柿は自らの体重を支えきれず自然に落下するが、熟さない柿でも落ちる場合がある。虫に食われて内部が腐るときだ。金日成朝鮮王朝は後者の例だ。北朝鮮では経済が破綻しているが、餓死者が続出しても不思議ではない状態にある。、国防を担うべき朝鮮人民軍や治安を司る武装警察が機能不全に陥り、国家機能が麻痺し無秩序・混乱状態に陥っていると推定できる。

中国共産党北京政府は10年ほど前から「東北工程」なる東北3省における少数民族の研究を行ってきた。特に、重視して取り組んだのが旧満州南部から北朝鮮地域で勃興した高句麗の研究であった。高句麗は北朝鮮と韓国がいずれも「朝鮮民族の祖」と位置づけているが、数年前、北京政府の関係部門は研究結果について「高句麗は中国の少数民族が建国した古代国家」と発表した。北京が狙う「北朝鮮併合の歴史改竄」が完成した。台湾と同じく北朝鮮は「本来、中国に帰属すべき土地」とみなされた。以降、北京では「どのような手続で北朝鮮を吸収・合併するか」という方法論が研究課題とされた。

北京の領土拡大への野心は、台湾や北朝鮮、尖閣諸島や沖縄列島だけではない。中国海軍はフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアの周辺諸国と南シナ海の西沙・南沙諸島の領有権を巡って度々紛争を起こしている。中央アジア5か国とミャンマー、ラオス、カンボジア、タイ等の東南アジア諸国へは鉄道を敷設し道路を整備して経済的影響力を強め囲い込みを図っている。資源の宝庫シベリアにはロシア人が約600万人住んでいるが、21世紀初頭で300万人の中国人を送り込み、いずれ人口比でロシア人を圧倒して、シベリア地域の政治・経済を支配する長期戦略である。北京政府と中国軍は現在、「軍事力と経済力による近隣諸国併合」に最大の関心を抱き、地道な努力を続けている。米国やロシアを油断させる「子供だましの韜晦戦略」を駆使しながら、唯我独尊の道を突き進んでいる。

米国務省に巣食う「容共左派勢力」と媚中派筆頭のキッシンジャーとブレジンスキーに騙されてきた米連邦議会議員やワシントン政府もようやく長い眠りから覚めた。「北京政府と中国軍は欧・米・露を東アジアから駆逐して東アジア各国を併合又は保護国として、東アジアの権益を独占するつもりか。戦前、大東亜共栄圏構想を打ち上げ、未遂に追い込まれた大日本帝国の再来か」と感じるようになった。米オバマ政権内部においても「中国盲従の叩頭派」の勢力が後退し、「中国と対決することなしには米国の国益は守れない」と考える「対中強行派」が台頭している。

ワシントンは従来、共産党北京政府を美化する性癖があったが、ようやく中国の現実的脅威に直面し慌てている。ナチス・ヒットラーを甘やかして増長させた英国チェンバレン首相から、対ナチス強行派のチャーチル首相に選手交代した如き現象が生まれている。アングロサクソンは戦略なきプラグマチストであるから常に打つ手が後手に回る。「もはや手遅れか?」という危機的段階に至って初めて危機状況を認識し対策を講じる。民族の特性は容易に変わるものでないから歴史は何度でも繰り返す。

第1:北朝鮮「羅先経済特区」に中国人民解放軍が進駐した

(以下1から8は、1月15日付け朝鮮日報オンライン「中国軍が北朝鮮・羅先特区に駐屯、港湾施設など警備」と題する記事より抜粋)

1.中国、ロシアと国境を接する羅先特別市(咸鏡北道)に最近、中国軍が進駐したことが分かった。中国軍の北朝鮮駐屯は1994年12月に、板門店の軍事停戦委員会から撤収して以降17年ぶり。

2.韓国大統領府(青瓦台)関係者は同日、「中国が羅先で投資した港湾、施設等を警備するため、少数の中国軍を駐屯させることを中朝が合意したと聞いている。中国軍が駐屯したとすれば、政治的、軍事的理由というよりも、施設警備や中国人保護が目的とみられる」と指摘した。

3.中朝国境では最近、中国軍の動きが活発だ。中国の北朝鮮消息筋によると、昨年12月15日頃、夜半に中国製の装甲車、戦車等60台が中国の三合(吉林省)から豆満江(図們江)を超え、北朝鮮の会寧(咸鏡北道)に入ったという。会寧と羅先特別市は直線距離で50キロ。また同時期、中国の丹東(遼寧省)から北朝鮮の新義州(平安北道)に向けて、軍用四輪駆動車が入った情報もある。同消息筋は「中国製装甲車は騒乱鎮圧用、四輪駆動車は脱北者取締用に使われる可能性がある」と指摘した。

4.韓国・外交通商部の南桂洪国際安保大使は「北朝鮮の急変に際し、中国が最も懸念するのは脱北者の大量流入で、東北三省が混乱することだ。羅先駐屯を契機として、中国は(北朝鮮)有事に際し、自国民保護などを名目として、兵力を大量に投入し、韓(朝鮮)半島問題に介入する可能性がある」との見方を示した。

5.羅先地域には、昨年12月から中国代表部が常設されたと伝えられている。現在、中国は羅先港の埠頭の改良、補修を終え、東北地区の資源を南方に輸送している。今月3日、中国の(国営)新華社通信と吉林省の現地メデイアは、中国が昨年12月7日、吉林省の鉱山で生産された2万トンを上海などに輸送する際、初めて羅先港を使用したと伝えた。今年4月からは中国側の電力が羅先地域に供給されるという情報もある。

6.北朝鮮専門の電子メデイア「デイリーNK」は最近、北朝鮮内部の消息筋の話として、北朝鮮と中国が昨年12月、羅先港に埠頭3か所を増設し、吉林省圏河と羅先を結ぶ高速道路と鉄道を建設する内容の投資契約を結んだと伝えた。(中国と北朝鮮の)住民の間では、工事労働者として働く競争が起きているという。また羅先には最近、北朝鮮の要請で、流入する中国人が増加しているという。

7.消息筋は「中国人に対する北朝鮮保衛部の規制はほとんどなくなった。北朝鮮も中国軍の駐屯は望んでいないが、中国資本を受け入れるためには仕方がないと判断したようだ」と述べた。

8、なお、中朝間では、金正日の二度の訪中以降、軍事交流が活発だ。昨年10月には中国軍最高幹部郭伯雄軍事委副主席が訪朝し、金正日、正恩父子と会談し「中朝の血盟関係」を強調した。


以上の記事が事実とすれば、北京と中国人民解放軍(以下「中国軍」という。)が、本格的に朝鮮半島北部の経営と接収に乗り出したものと考えてよい。北京は、事実上崩壊している「金日成朝鮮王朝」に食糧やエネルギーを供与する等の経済支援を行うことで、北朝鮮北部山岳地帯の豊かな鉱山の採掘権を手に入れていたが、加えて今般、「羅先経済特区に中国企業を進出させ、羅先港の増・改修工事を行ってやる」との見返りに、羅先港の50年間の租借と中国・吉林省から羅先港までの高速道路と鉄道の建設を認めさせた。4・5年前から中国が強く要請し、北朝鮮が嫌がっていたテーマがようやく実現の運びとなった。北京政府にとっては想定以上の成果が達成できたから笑いが止まらない。

第2:中国軍が「羅先経済特区」等に、中国軍を派遣し警備を行う狙い

アフリカに進出した中国企業や中国人が現地人に襲撃される事例が多発しているが、北朝鮮においても、将軍様のお膝元である平壌を除く地方都市においては治安が極度に悪化しているのであろう。武装している朝鮮人民軍の兵士や警察が野盗となって金品を強奪することが日常化しているとみなしてよい。そこで、北京政府は中国資産の保全と中国人労働者の保護を北朝鮮人民軍に委任することもできないから、中国軍を駐屯させることを企てた。かって、我が国や欧米列強が「天津・上海などの外国人租界」に軍を派遣し国家資産の保全と自国民の保護を行った行為と同じだ。

なお、中国軍国防大学国際戦略研究所に所属する「中国朝鮮半島研究会の特約研究員・綾野(仮名)ー特務大佐?)が、2006年頃「北朝鮮の和平演変・崩壊及び中国の対策」というレポートを軍上層部に提出した。それによると、

「北朝鮮の軍部の腐敗が目立つなか、一般兵士の犯罪行為も目立ってきている。小さな特権をふりかざした強請(ゆすり)や恐喝、レイプ、詐欺など一般市民を脅かす事件も頻発している。朝鮮ではいま、<昼は軍人、夜は盗賊>と、朝鮮人民軍を皮肉った言葉もささやかれている。最近では軍心(軍の規律?)の乱れも顕著になり、韓国の出版物や雑誌、音楽CDを密かに朝鮮に持ち込む者が増え、中にはキリスト教を信仰する兵士も現れているというのだ」とされる。
(以上、「中国が予測する北朝鮮崩壊の日」綾野著、富坂聰編、文春新書172ページより抜粋)

以上は、中国軍将校が5年前の朝鮮人民軍の腐敗と規律崩壊を指摘したものであるが、現在はさらに状況が悪化していると推定できるから、北朝鮮に企業を進出させ労働者を派遣する中国側としては「自国民と進出企業の資産を守るためには中国軍の警備は欠かせない」と談判し、強引に要求を飲ませたものであろう。北朝鮮側には相当の抵抗があったはずだが、「困窮すれば精神が卑しくなる」ということで、妥協したのであろう。「金正日はカネのために国家の独立を捨てた売国奴」と非難されているかもしれぬ。

北京政府が「資源獲得と東北地方(旧満州)の輸送路確保」のために行う羅先港の改修、羅先港と吉林省を結ぶ高速道路の建設及び鉄道の敷設、進出企業用の火力発電所建設等のインフラ整備事業を円滑に行うためには安全確保が何よりも大事である。さらに、投資した工場等の資産を保護し、中国人派遣労働者の生命・財産を守るための警備に心がけることは当然である。しかし、アフリカでは現地の政府軍や傭兵で安全を確保しているが、隣接する北朝鮮とは相互防衛条約を締結していることもあって、「中国正規軍」を派遣することに成功した。戦前まで欧米日等の列強が植民地で行ってきた前例を踏襲した。

中国軍にとって、北朝鮮に軍を駐屯させるのは、中国が投資した資産や中国人労働者の保護を第一義的目的とするものではない。北朝鮮に中国の租界地を確保し、守りぬき、拡大する点に最大の軍事的目的がある。目下、中国軍を駐屯させているのは、日本海沿岸の羅先経済特区周辺と、渤海沿岸の新義州周辺の経済特区に限定されているようであるが、今後、鉄道、高速道路、火力発電所建設等のインフラ事業や企業進出が加速すれば、中国軍の駐屯地は北朝鮮全土に拡大すると想定できる。遠くない将来、北朝鮮に駐屯する中国軍は数千人規模から数万人規模に増強されるはずだ。

また、金日成朝鮮王朝が崩壊し、北朝鮮が混乱に陥ったときは、中国企業の資産と中国人を保護する目的という大義名分を掲げ、数十万の中国軍が中朝国境を超え北朝鮮領内に侵攻する。中国軍は半島北部を制圧し、軍政下におく。毛沢東が行ったチベット・東トルキスタンの占領と同じだ。国連安保理は常任理事国中国の傍若無人の振る舞いに対し「抗議の議長声明」を出すこともできない。米国のイラク侵攻に際しても、国連安保理は無力であった。常任理事国の犯罪と非行を取り締まる手段はない。これが世界の現実である。

極楽とんぼの韓国政府と韓国民は、北京政府が唱える呪文「北朝鮮が崩壊すれば大量の難民が中国東北部に逃げ込むから困る」という見え透いた嘘を信じ込んでいるが、そのようなことはあり得ない。中国軍はすでに「北朝鮮有事の際は、中国軍数十万人を、中国と北朝鮮国境から北朝鮮領内に30キロ入った場所に侵攻させ難民が流入しないよう防護壁を築く」という対応を考えている。中国軍にとって難民対策はすでに解決済みの課題であって大騒ぎするほどの問題ではない。韓国や国際世論を欺く言い訳に過ぎない。中国軍にとって最大の関心事は、北朝鮮崩壊によって生じる力の空白を、中国軍が埋めるか?それとも米韓両軍に先を越されるかということだけだ。これが、朝鮮半島北部(高句麗)をチベット化したいと考えている北京政府と中国軍の最大のテーマである。

第3:韓国の政府とマス・メデイアが北京の陰謀に鈍感な背景

中国歴代王朝に服属すること約1000年。高麗・李氏朝鮮そして韓国。アメとムチで訓育・調教され、中国王朝への服属心が遺伝子レベルまで染みつき、完全に事大主義者になってしまった韓国の官民は、中国王朝が行う施策を批判する習慣がない。韓国の官民は自ずから「中国王朝の機嫌を損なう発言」を控え自粛する。中国王朝の意向を無批判に受容する民族精神が形成されているといってよい。韓民族は、パブロフの犬と同様民族も「条件づけ学習」によって調教できると証明してくれた。

我が日本国民も「反米主義者」と指摘されることに何らかの心理的抵抗を感じる。日米関係においても「条件付け学習」がなされている証拠だ。韓国の官民だけを笑うことはできない。いかなる民族も「アメとムチで長年調教された」ならば従順な犬となる。

韓国大統領官邸(青瓦台)や朝鮮日報記者が「羅先特区ほかに中国軍が派遣され警備に従事している現実」を冷静に眺めているのは不可解である。感覚が鈍麻しているのか、それとも民族の集合的無意識のレベルで「中国王朝が半島に軍を派遣するのは当然」という観念が沈殿し固まっているからなのか、は不明である。羅先地域だけでなく新義州地域においても中国軍が自由に出入りしていることに怒りは感じないのであろうか?「半島統一」を唱える民族として抵抗感はないのであろうか。それとも、韓国の官民は「北朝鮮は中国に併合してもらった方がよい」と考えているのであろうか。不可解である。

最近、北朝鮮の暴発を予防するための「日米韓3国軍事同盟化」に向けた動きが活発化しているが、韓国政府は「中国の威をおそれ」躊躇している様子が窺える。日米韓3国軍事同盟を締結すれば、北京政府が激怒するのではないかと恐れている。

韓国の官民は「中国王朝を宗主国と仰ぎ、美女1000人、軍馬5000頭、銭10満貫を貢納して忠誠を尽くして窮乏生活に耐えた李氏朝鮮と同じ奴隷の身分に回帰したい」と考えているのだろうか。例え、半島北部(北朝鮮)は中国王朝に併合されても、半島南部(韓国)だけは奴隷になって生き延びたいと欲しているのだろうか。不可解である。

第4:米・露は、朝鮮(韓)半島の利権を独占する北京政府を許すか?

太平洋戦争を惹起した原因を我が国は「1941年の欧米列強による対日経済制裁・経済封鎖」とみなすが、米国は「1931年の日本軍による満州制圧」と考えている。この歴史認識の違いは、日米両国の国益と被害感情がズレている証拠だ。我が国は「欧米列強に経済封鎖され、やむなく石油等の資源を求めて東南アジアに戦線を拡大せざるを得なくなった。これを成功させるべく米太平洋艦隊の軍事行動(対日参戦行為)の時期を遅らせる必要があって真珠湾の米太平洋艦隊を先制攻撃したと考える。

米国は1931年9月18日、関東軍が中華民国軍を満州から追い出す戦争を開始し、翌年1月3日、中華民国軍を満州から一掃したことが日米戦争の原因と主張する。つまり、「日本が中国利権を独占する戦争を始めた」ことを戦争の起点とする。米国は「日本が日中戦争を仕掛け、欧米列強の直接的又は潜在的利権を奪ったことが太平洋戦争の原因」とみなす。日米両国はいずれも、自己の国益で歴史を組み立てている。ペリー艦隊をアジアに派遣した約150年以上も前から、米国は東アジアに対する並々ならぬ関心を抱き続けている。「21世紀はアジアの時代」といわれる今日、アジアに対する米国の関心は強まるばかりだ。弱まる気配は全くない。

最近、米国で「中国は戦前の日本と同じか?欧米を排除し、中国が主導する大東亜共栄圏を狙っているのか」との猜疑心が芽生えている。米国にとって最大の国家的脅威は「アジアから閉めだされること」である。これを防ぐため米国は、アジアの覇権を狙う北京政府と中国軍に対して、核戦争を回避しつつ、経済制裁の範囲を広げ、制裁の度合いを引き上げ、北京が自壊するのを加速させる戦略をとると考えることができる。米国が「朝鮮(韓)半島北部を北京政府と中国軍が独占し支配すること」を認容するとは思えない。

米国は建国以来、「西進」して領土と勢力圏を拡大した。ロシアは逆方向からアジアに侵攻して領土を拡大した。アラスカとカムチャッカでロシアは米国と遭遇し、南に進路変更した。不凍港を求めて旧満州、遼東半島に辿りついたものの日露戦争に敗れ東アジアから追放された。ロシアは「一歩後退、二歩前進」を得意とする国家であり、東アジアへの関心を捨てた訳ではない。虎視眈々と勢力拡大の機会を窺っている。

数年前、ロシアと北朝鮮は「羅先港の改修工事と50年間の租借およびロシア国境から羅先までの鉄道をシベリア鉄道と同じ広軌道化すること」で合意した。その後、北朝鮮における親露派が実権を失い、親中派が主導権を奪還したことで情勢が一変。約1年前から「中国による北朝鮮の属国化」が急進展した。ロシアは「指をくわえて見ているだけ」では面白くない。ロシアが「平壌で政変が発生し、親露派軍人が実権を奪還してくれないか」と期待しているはずだ。しかしロシアには北京と張り合うだけのカネがない。軍資金が足りない。北京の如く大盤振る舞いできない。「ない袖は振れない」悲しい身分のロシアは不満が募りイライラしている。北京への怒りを貯めこんでいる。

まとめ

先日、前原外相が「6か国協議とは別に、日朝二国間で日朝平壌宣言を前提とする交渉に踏み出す」旨の発言を行った。これに対し北朝鮮が早速反応し「歓迎する」旨の声明を発表した。「渡りに船」という感じだ。昨日の韓国外交通商相との会談で前原外相は「南北会談を先行させ、その後日朝交渉を行う」という段取りで合意した。平壌は焦っている。米朝・南北・日朝の各交渉を進展させたいと意欲満々だ。数か月前までの北朝鮮は「第二次朝鮮戦争も辞さず」と戦争ムードを煽っていたが、態度を一変させた。北朝鮮の指導部内で、路線対立が激化しているのだろう。

現在、朝鮮労働党と朝鮮人民軍は建国以来、最大の危機に陥っている。ソビエト社会帝国主義と中華大国主義の内政干渉から朝鮮民主主義人民共和国の独立を維持するために打ち立てたのが主体思想であった。世界有数の鉱物資源の採掘権の相当部分が北京とモスクワに奪われた。さらに、北京とモスクワは羅先港の50年間の租借権を手に入れた。中国はインフラ整備の援助という名目で、続々と中国人労働者を北朝鮮に送り込んでいる。中国の企業だけでなく、労働者も中国軍も北朝鮮への出入りが自由になった。電力も中国から送電するというから、事実上「中国・北朝鮮自治区扱い」となった。金日成は草場の陰で泣いていることであろう。金正日は、国土を切り売りし、中国軍を招き入れてしまった亡国の責任を思い、連日連夜、眠れない日々を過ごしているに相違ない。

北朝鮮の絶対的支柱であった「主体思想」は地に堕ちて砕けた。外国企業の誘致だけであれば中国やベトナムと同じであるが、「中国資産と中国人を守るために中国軍が駐屯する」ことは主体思想を打ち立てた金日成が最も忌避したいと願った出来事であったはずだ。中国の企業と労働者を警護するために中国軍を招き入れるというのでは独立国家とはいえない。

現在、朝鮮労働党と朝鮮人民軍において「主体思想を守れ」「中国の属国になるなかれ」という反金正日・反金正恩・反張成澤の動きが台頭しているのではなかろうか。この反乱を鎮圧すべく粛清の嵐が吹き荒れているのではないか。また、金正日一派が、自らの意思で強硬路線を転換し、米朝交渉、南北会談、日朝交渉の融和路線に踏み切ったのも、「主体思想守れ勢力」が無視できない勢力となって対峙しているからと推定できる。

北京政府と中国軍が「金正日・金正恩・張成澤を全面的に支援し、北朝鮮の属領化をめざしている」とすれば、米・韓・日とロシアが「反金正日・反張成澤勢力」を支援する構図となる。北朝鮮で内戦が勃発しても不思議ではない緊迫した状況だ。北朝鮮は中国のチベットとなるか?、それとも核兵器及び核関連施設を廃棄してベトナムの道を選ぶか?の岐路に立っている。

北京と中国軍による北朝鮮併合の動きが加速すればするほど、米国やロシアの警戒心を呼び起こす。我が国の旧満州制圧と同じく欧米列強を警戒させ、激怒させ敵に回す。

東アジアとりわけ朝鮮半島は「風雲急を告げる」時代となった。我が国は「韓国が北京に服従しないよう警戒し、韓国の自立的判断を尊重しつつ、合わせて米韓両国軍を後方支援する役割を担う」以外に手段をもっていないが、朝鮮半島有事に対応できる国内法の整備を急ぐべきだ。

政界再編の目安は第一に安全保障政策の一致でなければならない。「国防政策」を選別基準の第1とすることで、保守と左翼を区分けすることができる。税や社会保障は保守と左翼を区分けする基準にはならない。菅直人や仙谷由人の全共闘政権が志向する「税と社会保障による大連立」は、仙石・菅政権を延命させる彌縫策であり、国家の将来にとって百害あって一利なしだ。

時代は大きく動いている。政治家も、企業も、個人においても本物が生き残り、偽物は消える。歴史の試練に耐えた真の実力を備えた政党、企業、個人が生き残る厳しい時代となる。戦国時代は過酷ではあるが楽しみ一杯の希望にあふれる時代でもある。

「最小不幸社会」という万人を等しく不幸にする社会主義思想では国家は滅亡する。「国家安康」を第1に据え、次に内政問題に優先順位をつけて一つづつ断固やり抜く胆力を持った指導者が求められている。

米国務省が主導した経済制裁の対象国に指定されたミャンマーと北朝鮮がいずれも北京政府と人民解放軍の手に堕ちた。歴史の皮肉なのか?それとも共産党北京政府と赤い糸で結ばれている米国務省の左翼勢力が北京への生贄を供する意図をもって「人権侵害国認定」を行うのか?そして、世界のメデイアを動かし、米国務省の陰謀を正当化する情報操作を行っているのか?いかにも精緻で巧妙な仕掛けではある。

繰り返す。米国務省の左翼勢力はかって中国共産革命を支援し成功させたが、現在、人権侵害国を認定し、経済制裁を課し、国家破産に追い込み、北京と中国軍の生贄に供しているのではないか?という疑いが濃厚である。

民主主義国家とされる米国務省では、北京政府の勢力圏拡大に重要な貢献を果たしてきた「左翼勢力」と、中国における人権侵害を告発し、虐げられた13億中国人民を北京政府と中国軍の圧政から解放せんと欲し、支援を惜しまない健全な人権派勢力が拮抗しているとされる。現在、前者の「対中叩頭派」が劣勢に陥り、後者の「対中強行派」が優勢になっているとされるが喜ばしい限りである。米国の国益を害し、米国を内部から掘り崩す左翼勢力(獅子身中の虫)を駆逐する第二次「赤狩り旋風」が吹き荒れても誰も驚かない。

そういえば、最近、媚中派筆頭のキッシンジャーの顔色が優れない。米国民が彼の悪しき正体を見破り始めたと感じ、迫り来る身辺の危機を直感しているのかもしれぬ。いずれにせよ、ブレジンスキーやキッシンジャーを初めとする親中派の動向に注目する必要がある。彼らの「反米・反日・媚中」の政治的言動を、米国国民とともに観察し、味わってみたいと思う。

「明けない夜はない」のと同じように「発覚しない悪事もない」のである。





白髪爺 at 00:09|PermalinkComments(0)clip!

2010年10月05日

北朝鮮は、共産党一党独裁の「共和国」から、君主制国家「金日成朝鮮」に転換した。3代目襲名披露は内乱の導火線となるか?

はじめに

激変する環境で生き残るために、国家・企業・各種団体・集団・家族・個人は必死になって対策を講じている。長年、使い慣れた衣服を脱ぎ捨て新調した毛皮のコートを着用して厳寒の冬を乗り越えようと努力する。自然や社会の激変に耐え乗り越えることができるか否かが問われている。誰でも「自然淘汰されず生き残る側に立つこと」を願うが、願いが実現するか否かは誰にも分からない。後づけで「あのようにしたら生き残れたのに」とか「あのような姑息な手段に頼ったから滅亡した」と解釈するだけだ。

この「生き残り願望」というのは、生成消滅する人類が共有する観念であるが、組織・集団・企業・国家にも「滅亡したくない願望」というものはある。「人類みな兄弟」を唱える平和主義者であっても、暴力と腐敗の共産主義者にも生き残り願望はある。人畜無害のスイス連邦にも、環境破壊と人民弾圧の共産党北京政府や金日成朝鮮にも生き残り願望はある。

北京政府の生き残り策は「中国13億人民に仕事を与え、飯を食わせること」である。外国企業を招致して雇用を増やし、輸出で稼いだ金で食料や燃料を購入し続けることである。この循環が途絶えればマンモスタンカーは座礁する。改革開放政策によって、経済発展の成果を享受して莫大な資産を手に入れた共産党官僚と「働けども働けども我が暮らし楽にならざる。じぃーっと手を見る」の13億人民の矛盾は共存不可能な水準に達した。倒すか、倒されるかの敵対的矛盾に転化した。

北京政府は人民元を為替操作によって低位に安定させ、世界中に失業者を輸出してきた。中国の雇用を守ることで、世界中の雇用を奪ってきた。北京政府の輸出拡大→雇用維持策は、世界の雇用を奪うことで世界各国と対立している。

北朝鮮は失業者は輸出しなかったが、食うに食えなくなった北朝鮮国民が数百万人単位で国外に逃亡している。国内で餓死する者も少なくない。その上、国家的事業として覚せい剤を製造・販売したり、米ドルや人民元等の外国紙幣の偽札を製造し頒布しているとされる。核兵器関連物資をパキスタンやイランに輸出し、パキスタンやイランの核兵器製造を支援したといわれている。
日本人や韓国人を拉致し、大韓航空機を爆破する等テロ国家そのものである。

第1:共産主義(社会主義)革命とは何だったのか?

英国が生んだ偉大な哲学・社会学者スペンサー(1820−1883)は、「自然淘汰(自然選択)」を唱え、生物の適者生存と多様性の原理を提示したダーウインの「種の起源」に触発され社会進化論(Social Darwinism)を唱えたとされる。ダーウインやスペンサーは当時の英国において新進気鋭の学者で一世を風靡した。科学的社会主義の祖と称するカール・マルクスはスペンサーの社会進化論にヒントを得て、「資本主義から社会主義への社会発展のメカニズム」をイメージしたという。資本主義から社会主義への進化論は、カール・マルクスが英国の図書館で捻り出した贋作であった。

カール・マルクスが英国の図書館で夢想した「資本主義から社会主義への発展モデル」はマルクスの主観が産み出した壮大な妄想であった。現実の歴史を見ると、共産党一党独裁国家は議会制度が発達していた資本主義国家からではなく、帝政ロシアや中華民国という大土地所有が色濃く残る非民主的な封建制国家で誕生した。共産党一党独裁国家は資本主義の矛盾を止揚したのではなく、封建制を資本主義に移行させる中間形態であった。ソビエト社会主義共和国連邦の崩壊以後のロシア、東欧、中央アジア、共産党一党独裁を維持しながら経済の資本主義化を推進してきた中国及びベトナム等は資本主義への発展途上国である。

共産党一党独裁の盟主であったソビエト連邦が崩壊しいわゆる冷戦が終了した。体制の危機を感じた共産党一党独裁国家は、東欧や旧ソ連邦共和国のように自ら共産党を解体し一党独裁を廃止し議会や大統領の公選制度を導入する政治改革に取り組んだ国、中国やベトナムの如く共産党一党独裁体制を温存しつつ、外国資本と企業を誘致することで資本主義経済を導入した国があった。東アジアに位置する北朝鮮も、中国やベトナム型の改革開放経済に移行すると想定されたが、異なる道を歩んだ。

第2:北朝鮮が「社会主義」に固執し、「封建社会」に回帰した背景

共産主義の元祖であるソビエト共産党や兄貴分の中国共産党が、現実主義を貫き資本主義国家への道を歩き始めたのに、朝鮮労働党はなぜ、資本主義経済に転換できなかったのか?頑迷固陋の態度を固持したのであろうか。資本主義への発展モデルではなく、封建制への退行モデルに迷い込み遭難してしまったのか?

韓族又は朝鮮族は事大主義(定見もなく、ただ勢力の強いものに従ってゆくという考え方)の持ち主であるといわれてきた。中国・明朝および清朝の無理難題の要求に屈服し隷属してきた李氏朝鮮500年の歴史が事大主義の証拠とされた。筆者は「中国歴代王朝への反抗できない恨みが怨念となって深層心理に固まり民族の集合的無意識(ハン)を育て上げたと考えている。さらに朝鮮民族の特性を考える上で見過ごせないエピソードがある。

李氏朝鮮(1392−1910)は漢族王朝である「明」(1368−1644)の儒教を模倣し国教とした。仏教を弾圧したばかりではない。明の模範的な生徒として振舞った。ところが、1644年、明が滅亡し満州族が清王朝を樹立。李氏朝鮮は新たな宗主国清を「蛮族」と軽蔑し、「李氏朝鮮こそ正統な儒教国家」と唱えたという。中国共産党が社会主義経済を捨て、改革開放の資本主義経済化に邁進している姿を見て、金日成・金正日親子が「北朝鮮は社会主義の本家本元」と考えたことと同じである。朝鮮民族の融通のきかない頑迷固陋の民族性が発揮された。「大義のために孤立を恐れず」である。

「朝鮮民族は実利ではなく観念に生きる民族」と言い換えてもよい。日韓併合から100年、豊臣秀吉の朝鮮出兵から500余年、彼らは昨日の出来事のように怨念のネタを掘り起こし、恨みの感情を更新する。1000年や2000年、いな、万年や十万年が経過しても、彼らの怨念は消えない。人間にとって、愛することが生きがいになることもあるが、それ以上に、他人(異民族)を憎悪することは「生きている実感を感じさせてくれる」貴重な素材である。異民族を虐げた体験はすぐに失念するが、異民族から虐げられた経験は何百年、何千年も語り継がれる。虐げられた記憶を掘り起こし、怒り、非難することほどの快感はあるまい。不快な体験であれば「忘れたい」と考えるのが人情ではなかろうか。本当に悲しい体験は他人に語りたいとは思わないのではなかろうか。

第3:北朝鮮における改革開放政策の失敗と封建制国家への移行

「名は体を表す」というが、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国という国名ほど実体と解離した国名はない。国民を囚人として管理し、暴力を加え、言論を封殺し、共産党と軍の官僚だけが職権を濫用して暴利をむさぼる国家が、どうして「民主主義・人民共和国」なのか?「馬鹿も休み休み言え」といっておきたい。

(以下1,2,3は、10月2日付け韓国・朝鮮日報オンライン・日本語版からの要約抜粋)

1、この国名と現実の解離に座り心地が悪かったのか、太祖金日成から権力を継承した翌年の1995年、金正日は「李成桂・朝鮮」を模倣して「金日成朝鮮」と称するようになった。さらに、1997年7月「主体年号」を導入し、金日成が誕生した1912年を「主体元年」とする年号をすべての公式文書や政府声明文書で使用した。本年は「主体99年」にあたる。

2、本年9月28日の第3回朝鮮労働党代表者会で党規約が改正された。北朝鮮の国名をはじめて「金日成(キム・イルソン)朝鮮」と明記した。党規約から「共産主義」という表現をすべて削除した。

3、朝鮮労働党代表者会において、金正日を総書記、同人の三男金正恩(ジョン・ウン)を党軍事委員会副委員長(序列第2位)と大将、同人の実妹敬姫(ギョンヒ)を党政治局員と大将、敬姫の夫張成沢(チャン・ソンテク)を政治局員候補に指名した。

以上、金正日は権力を継承した1994年以降一貫して、「李氏朝鮮」を継承する「金日成王朝」を夢見て、着実に手を打ってきたということができる。李氏朝鮮の太祖李成桂の子孫が代々李氏朝鮮を統括してきたように、金日成の子孫が代々権力を世襲するシステムを構想してきた。第2代金正日は虚弱体質に鞭打って権力を子孫に継承するシステムを構築することに心血を注いできた。

(先軍国家の司令塔は共和国国防委員会から「朝鮮労働党中央軍事委員会」に移行した)

日朝平壌宣言において、金正日は「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長」と署名した。数か月前、金正日の妹婿張成沢(チャン・ソンテク)は「共和国国防委員会副委員長」に指名された。認知症に罹患しているとされる金正日国防委員長を補佐する役割を付与された。今回の人事で、張成沢は、党中央軍事委員会委員に指名された。共和国国防委員会の副委員長が党中央軍事委員会の委員となった。これまで先軍国家の司令塔であった共和国国防委員会は党中央軍事委員会の格下の組織に位置づけられた。

「金日成朝鮮」第3代金正恩(ジョン・ウン)は党中央軍事委員会副委員長に指名された。金正日の呼称も、国家を代表する国防委員会委員長から「総書記」に変化した。いわゆる「軍が党を指導する」先軍国家から、「党が軍を指導する」システムに変更された。金正日がモデルとしている「李氏朝鮮」は文官が軍人を指導する官僚制国家であった。

(中国共産党王朝による冊封体制が復活したのか?)

1か月ほど前だったか、金正日一行が密かに中国東北部を訪問し、中国共産党王朝胡錦濤皇帝陛下の直々の拝謁を賜ったことがあった。一説によると、後継者候補で三男の金正恩を同行したといわれている。これが事実であれば、「金日成朝鮮」の後継者を決める以前に、中国皇帝の裁可を仰ぎ認可してもらったことになる。つまり、第3代金正恩(ジョン・ウン)は中国王朝から指名・認可された朝鮮の王ということになる。事実、朝鮮労働党第3回代表者会で後継体制が決定した直後、中国共産党中央が「北朝鮮の新体制を支持する」と表明した。つまり、北朝鮮は100年ぶりに、明・清王朝の冊封を受け、明・清王朝に朝貢してきた李氏朝鮮の服属外交を復活させたということができる。中朝関係は「共産党の同志:唇歯の関係」から、中国共産党王朝が冊封し支配する「金日成朝鮮」という支配と隷属の関係に変化した。

金正日は故金日成主席を「金日成朝鮮の太祖」と讃えながら、一方、金日成が中国共産党の圧力を排除して自主独立を守りぬくために創造した主体思想(チュチェ思想)を廃棄して中国王朝の奴隷となった。言葉では孝行息子(金日成崇拝)を演じながら、行動では親不幸(金日成精神の放棄)に踏み出したのである。これを称して「親殺しの大罪」という。

付言すると、尖閣諸島沖合で、我が国の巡視船に体当たりして逮捕・勾留された中国漁船の船長に対し、北京政府が「即時・無条件返還」を求めてきた表面上の理由は「中国の領海で正当な漁業活動に従事していた中国漁船の船長に非はない。不当な逮捕である」ということであった。中国漁船の船長を奪還するためには手段は選ばない。レアメタルの輸出規制、対日輸出入検査の徹底、中国駐在日本人の違法行為をびしびし摘発し取り締まることで日本政府に圧力をかけた。結果、仙谷・菅の民主党政権が腰砕けになり、彼らの「力づくで船長を取り戻す」作戦が成功した。

我が国の領海内で逮捕した中国漁船の船長を、我が国の法律で裁くのは当然であるが、仮にこれを黙認するならば、尖閣諸島周辺海域は日本の領海であると宣言する日本国政府の判断を承認したことになる。だから北京政府はいかなる犠牲を払っても、いかなる対抗手段を使ってでもこれを阻止しなければならないと考えた。それだけか?

中朝の冊封関係においては「李氏朝鮮は明や清の人間が行った犯罪行為を裁くことができず、丁重に処遇し中国王朝に送り返すべし」と定められていたされる。今回の尖閣諸島の事件をこの原則に照らすと「東夷の蛮族が司法権を行使するなどもってのほか。傲慢無礼であり厳重に懲罰しなければならない」ということになる。尊大な歴代中国王朝は周辺の蛮族との関係において何をやっても許されるという「治外法権意識」を持っている。だから、南シナ海の西沙諸島や南沙諸島でも傲慢不遜な態度で周辺国家を睥睨し脅迫している。金日成朝鮮やパキスタン以外の周辺国家は北京政府を宗主国とはみなしていないが、共産党北京政府は自らを東アジアの盟主であり、敬われて然るべきと自認している。この認識のズレが地域の紛争を拡大させる。

第3:第3代金正恩(ジョン・ウン)への権力継承の問題点

1、急ごしらえの安普請「金正恩体制」

金日成はソ連派や毛沢東派との党内闘争を勝ち抜いて絶対的な権力者となった。後継者である金正日を手元におき、役割を与え、何十年もかけて育て上げた。金日成が自らの力で光る太陽であるとすれば、金正日は太陽の光を浴びて光る月である。親の七光り、金日成が育てた子分共の支援を得て権力を保持してきただけである。

絶対的な権力者になれなかった金正日は、金日成の側近や部下であった党や軍の幹部の支えを得て独裁権力を維持することができた。党や軍の意見が対立した課題については「問題先送り」とするほかはなかった。意見が対立したまま先送りしてきた最大の課題が「後継者選択」であった。長男の金正男の擁立を狙う親中派(改革開放政策+朝鮮労働党主流派)と、次男正哲又は三男正恩(正雲・正銀)の擁立を狙う親露派(先軍政治+朝鮮人民軍主流派)の対立が激しく、金正日はいずれの陣営に組みすることもできず後継者選任を先延ばししてきたと考える。

金正日は長年糖尿病を患い、数年前から認知症で判断力が低下しているといわれてきた。一昨年だったか、脳出血で危篤状態に陥った。「革命の指導部」を立ち上げ事実上の集団指導体制に移行した。その後、金正日の病状が回復し国家経営に復したと喧伝されているが、金正日の病状は益々悪化し、国家経営を担うことができない状態に陥っているのではないかと推測する。つまり、軍幹部や党官僚の一部および金正日の実妹金敬姫(慶喜)と夫の張成沢ら側近の親族が談合して国政を壟断しているのであると考える。

今回、30年ぶりに、朝鮮労働党第3回代表者会が開催されたが(理由不明で1回延期)、これは金正日による執権を続けることが困難になったからであろう。急遽、後継者を選任して非常事態に備える必要があった。つまり、根回しと準備が整わないうちに「見切り発車した」ため、軍や党官僚の大半の合意を得ていないのではないか。だから、金正恩をナンバー2の「党軍事委員会副委員長」に指名しただけで終わった。党及び軍全体から後継者として認められたかどうかは疑問である。軍幹部、党官僚および親族の一部が後押ししているだけではなかろうか。

(新たな指導体制)

新体制の最高実力者は、リ・ヨン・ホ総参謀長(前首都防衛司令官)68歳である。党中央政治局常務委員は金日成の側近で80歳代の3人(金・崔・趙)と金正日総書記とリ大将の5人。さらに、リ・ヨン・ホは後継者とされる金正恩と共に、党軍事委員会副委員長に指名された。写真撮影の席順でも、最前列の金正日の右、金正恩の左に座っている。北朝鮮における「事実上の支配者」として頭角を現してきた。

雑誌SAPIO,10/13・20、小学館の「朝鮮人民軍」恵谷治のファイル8国防委員会「将軍様の先軍政治を支える人民軍最高幹部リスト」に掲載されている軍最高幹部のうち、今回の党中央軍事委員会に選任されたのは、リ・ヨン・ホ副委員長(総参謀長)、金明国委員(軍総参謀部作戦局長)、金英哲委員(軍偵察総局長)、張成沢委員(国防委員会副委員長)、金英春委員(人民武力部長)、ウ・ドン・チュゥ委員(国家安全保衛部首席副部長)、チュ・ギュ・チャン委員(軍需工業第一副部長)の7人。

登用されなかったのは、玄哲海(国防委員会局長・軍総政治局常務副局長)、李明秀(国防委員会行政局長・前軍総参謀部作戦局長)、朴在京(人民武力部対外事業担当副部長)、金格植(第4軍団長・前総参謀長)、尹正麟(軍保衛司令官)ほか5人である。国防委員会を改組して党中央軍事委員会に先軍政治の実権が移行したとすれば、権力中枢から排除された各位は面白いはずはない。

2、金正日の実妹金敬姫(慶喜)と夫の張成沢は親中派に復帰したのか?

今回の人事で、軍歴なしの金敬姫が大将と政治局員に大抜擢された。夫の張成沢は国防委員会副委員長から党中央軍事委員会委員と政治局員候補に抜擢された。判断力をほぼ失っている可能性が高い金正日を補佐する親族代表として、リ・ヨン・ホ総参謀長らと謀り、お手盛り人事を行ったと推定できる。

もともと、金敬姫と張成沢夫婦は、香港やマカオ等中国各地を徘徊している金正日の長男正男の後見人であるとみなされていた。つまり、親中派を代表する人物で、中国共産党と連携して北朝鮮の改革開放政策を推進する者といわれていた。

3年前だったか、張成沢が運転する高級車が軍のトラックに追突され、張成沢は大怪我をしたことがあった。張成沢はモスクワのロシア軍関連病院に入院し治療を受けた。当時、北京大学に留学していた北朝鮮の学生が全員中途退学したことがあり、中朝関係が最悪の状態にあると思われた。当時、筆者はブログで「ロシアの諜報機関とつるんだ朝鮮人民軍が連携して惹起した交通事故。モスクワで長期療養した張成沢は、ロシア軍に洗脳され又は脅されて親中派から親露派に転じた」と推定した。

以来、北朝鮮では親露派が親中派を凌駕していたようで、北朝鮮北部のロシア国境にある羅津港の改修工事、ロシア国境から羅津までの鉄道広軌道化工事でロシアが先行していた。中国はロシアよりも先に、中国吉林省延吉から羅津までの高速道路建設と羅津港の改修工事を申し出ていたがロシアに先を越された。ロシアは改修した羅津港の50年間租借、中国は10年間租借と条件面でも差がついている。

1か月前、金正日が三男正恩を伴い中国を訪問した折、胡錦濤主席は「延吉から羅津までの高速道路建設を申し入れた」とされるから、中国が獲得している羅津港の租借期間10年もロシアと同程度の50年に延長される可能性がある。

金正日が脳出血で倒れ危篤状態に陥り「革命の指導部」という集団指導体制に移行して以来、長男金正男の後見人であった金敬姫・張成沢が親中派に復帰した様子なのだ。つまり、親露派優勢から親中派優勢に変化している様子なのだ。

3、北朝鮮の権力闘争と中露対立

三代目金正恩を擁立したのは、金正日の緊急事態を想定した暫定的な措置であったと考える。親露派も、親中派も納得していない。米国も韓国も「相続問題は決着していない」と考えている雰囲気がある。北京政府は「新体制を支持する」とリップサービスしたが本音がどうかは分からない。「長年匿い、面倒をみてきた長男正男が相続すれば良いのだが」と考えているに相違ない。

ロシアは沈黙を守っている。おそらく、北朝鮮軍部やモスクワ大学を卒業した朝鮮労働党の長老や親露派の軍幹部に働きかけ、態勢挽回を狙っているのではなかろうか。「扇の要」である金正日に万一のことがあれば、朝鮮労働党および朝鮮人民軍の各派閥は主導権争いで激突する。

まとめ

中国国防大学国際戦略研究部に所属する現役軍人(特務大佐?)が作成したレポート「北朝鮮の崩壊及び中国の対策」が北朝鮮研究者に知られるようになったのは2006年11月であった。
(「中国が予測する北朝鮮崩壊の日」、綾野著、富坂聰訳、文春新書、訳者まえがきより抜粋)

世界中から「北朝鮮はまもなく崩壊する」と予測され、期待されるようになってから数年。筆者も3・4年前から幾度も「北朝鮮崩壊」を論じた。日本人拉致問題の解決には「実行責任者の金正日が死亡するか、又はカルト独裁政権が崩壊するまで困難」と考えたからに他ならない。拉致被害者の救出だけでなく、地獄の苦しみに耐えている北朝鮮人民2200万人を解放するためにも、金正日独裁政権は打倒されなければならないと考えてきた。

ようやく、金正日独裁政権の崩壊が目の前に近づいてきた。金正日の心身の衰えに伴い、独裁政権を維持することが困難となった。暴力で人民を弾圧して抑えつけても長続きしない。金日成・金正日崇拝の洗脳教育は一朝一夕にはできない。権威者となることができない三男正恩の言葉に耳を傾ける人民はいない。各人が勝手気ままに動き出す。

三代目襲名披露が遅れたのは、朝鮮労働党と軍の内部が統一できないからだ。無理やり選任すると反対勢力から不満が出て収拾できないから、暴君の金正日でも決断できずずるずると先延ばししてきた。しかし、金正日の病状が悪化、一刻の猶予もできない厳しい情勢に陥ったために、「暫定措置」として、三男正恩を後継者コースのトップに据えた。今後、北京政府が背後霊となって、長男正男を擁立して「利権拡大を狙う」者が続出しても不思議ではない。しょせん、三男正恩や長男正男は軍や党幹部が繰り広げる権力闘争の神輿(みこし)に過ぎない。

貪欲かつ凶暴なロシアが親中派勢力の台頭について「指をくわえて見ているだけ」ということはない。ロシアも親露政権樹立に向けて必死の裏面工作を仕掛けているはずだ。中国やロシアという外国勢力が介入することで、北朝鮮の派閥闘争・利権闘争が激化し、場合により内戦の引き金をひく。

時間の流れは益々早くなった。10月4日東京検察審査会は「驕れるもの久しからず」の小沢一郎に対する東京地検の不起訴決定を不当とする決定を下した。小沢一郎は最高検・東京高検・東京地検に脅しをかけ、又は人事で取引して「不起訴」を勝ち取ったが、1億3千万人国民の厳しい裁決に泣いた。民の声は天の声。「天網恢恢、疎にして漏らさず」という。

最高検を初めとする検察は、逮捕すべき巨悪(鳩山・小沢ら)を見逃して不起訴処分となし、自ら証拠を捏造して女性官僚を逮捕した。さらに検察は公務執行妨害の現行犯人である中国人船長を外交的配慮という理由をつけて釈放した。司法の独立を自ら投げ捨てる所業である。「何でもありの検察」に堕落した。先人が長い年月をかけて維持・発展させてきた司法の独立は、心ない現在の検察首脳によって破壊された。

何事も、建設するには長い年月を要するが、破壊するのは一瞬だ。検察は骨の髄まで腐っている。すべてを解体し、更地にして、一から建て直すほかはあるまい。修繕できる範囲を超えている。


白髪爺 at 00:02|PermalinkComments(0)clip!

2010年03月14日

大阪府橋下徹知事が朝鮮学校に対し「朝鮮総連との関係を絶つよう」求めた真意を読み解く。

はじめに

高校の授業料無償化に関する朝鮮学校への対応をめぐり、大阪府の橋下徹知事は12日、大阪朝鮮高級学校および生野朝鮮初級学校を視察した。以下は13日付け産経新聞の要約である。

1.橋下知事の主張

(1)朝鮮学校の教室から金正日総書記の肖像画を外すこと。
(2)朝鮮学校は在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係を絶つこと。
(3)朝鮮学校で使用する教科書が「敬愛なる金総書記」などと個人崇拝の表記をしないことや竹島や日本海の呼称について、日本側の主張も含め、日朝両論併記で掲載すること。
(4)大阪府はこれまで朝鮮学校に対し、生徒一人当たり年間約7万円の振興補助金を支給している。22年度の府予算に盛り込んだ「高校授業料無料化のための補助金」と合わせ、上記(1)から(3)の条件が満たされるまで執行を留保する。

2.学校側(辛正学理事長)の応答

(1)「金正日総書記の肖像画を撤去するか否かについては今春に開かれる理事会で検討する。
(2)教科書記述野内容(の変更)は夏頃に行われる教科書の編集会議で検討する。この件に関し大阪府は専門家による委員会を設置し、記述内容を確認する方針と伝えた。

3、会見後

(1)橋下知事は「これは最低の要求だ。朝鮮総連との関係を絶った朝鮮学校と新たな関係をつくっていきたい」と話した。
(2)辛正学理事長は「知事から受けた指摘は今後、検討したい。無償化から除外されないよう願っている。」と話した。

4.懇談の概要

(1)教科書の政治的性格

橋下知事・・・・朝鮮学校の教科書は政治的主観が入りすぎ一方的だと聞くが、事実か?
朝鮮学校側・・・韓国籍の生徒も6割はいるし、政治的主観は入れていない。ただ、(北朝鮮と韓国に)住む人の価値観は理解させたい。

(2)拉致問題

橋下知事・・・・拉致問題では、北朝鮮と朝鮮総連は無関係と言いきれない。関係があるところには税金を入れることができない。子供のことを思うなら朝鮮総連と一線を画して欲しい。
朝鮮学校側・・・かっては朝鮮総連が主催する集会に生徒を参加させたり、支援を受けたりした事実があったが、現在は「距離をおいている」と強調。学校の役員にも朝鮮総連関係者はいないと説明した。

(3)金日成・金正日総書記の肖像画

橋下知事・・・・誤解を受ける可能性がある。降ろしていただきたい。自由を求めるか、府の公金を求めるのか選んでほしい。
朝鮮学校側・・・民族教育の歴史的な過程では在日1世の心情も生きている。経済的に厳しいなかで学校を作ってくれた。1世たちにとって肖像画は当たり前のもの。朝鮮半島は儒教社会でもあり、1世たちが作ったものを簡単に変えにくいということもある。

(以下は、3月13日付け朝鮮総連機関紙ブログ「朝鮮新報」の「大阪府知事、朝高、生野初級を訪問」と題する記事の抜粋)

橋下知事・・・「府民の理解が得られるよう教育上の配慮」について言及。
学校関係者・・・60年以上に及ぶ民族教育の歴史は、祖国への帰国を前提とした初期の教育から、日本での定住を念頭においた1980年代以降の教育内容の変遷に言及。

続いて、橋下知事は高級部1・2年の授業(日本語・数学)を参観し、生徒らのクラブ活動を見学した。

日程を終えた橋下知事は記者会見を行い「子供たちは元気でしっかりと教育を受けている。2か国語を操ることがすごい。日本の教育のだらしなさを痛感した。朝鮮学校の子供たちは民族の誇りを持って一生懸命にやっている」と感想を語った。助成金支給の如何については「大人同士の話で解決していく」と述べた。


第1:朝鮮学校側が「橋下知事の学校訪問を歓迎し低姿勢の対応に終始した」背景

(1)朝鮮学校の経営難

我が国のデフレ経済による経営環境の悪化により朝鮮総連系企業・団体の経営も悪化し、朝鮮学校への寄付金を集めるのも難渋するようになったこと、朝鮮総連系金融機関が破綻し小泉内閣時代に事実上倒産し1兆数千億円の公的資金を注入されたこと、北朝鮮の首領金正日の送金要請に応えることを最優先せざるを得ないため、数年前から、朝鮮学校では教師の給料遅配や入学者減少等で、校舎の修繕費用も捻出できなくなったこと。地方自治体等の財政支援がなければ「朝鮮学校閉鎖に追い込まれる」ほど学校経営が困窮していると推定できる。

今回、我が国で「高校授業料免除」が導入された結果、授業料のほか各種協力金を要請され割高になっている朝鮮高級学校(高校)への入学者が急減すると想定されているから、朝鮮総連および学校関係者は「このままでは、朝鮮学校は閉鎖に追い込まれる」と危機感を抱いていると推定できる。「主義・思想に殉じて廃業するか?」、それとも「憎んでも憎みきれない橋下知事に懇願して生き残りを図るか?」という厳しい選択を迫られた結果「学校を挙げての訪問歓迎」と相成ったのであろう。自尊心が強い朝鮮総連にとっては苦渋の選択であったに違いない。もちろん、橋下知事が「敵の足元を見た」のは当然である。

(2)金正日カルト独裁政権の統治能力が減退したのか?

北朝鮮経済はこれまで、鉱山の採掘権を中国やロシア企業に売却し、日本海沿岸の羅津港の使用権をロシアや中国に長期間賃貸し(租借)すること等で国家経営を行ってきた。覚せい剤を製造・販売したり、ミサイル等の軍需物資を輸出して稼いでいるとも言われた。先般、紙幣切り替えのデノミ政策を断行し、国民の保有する金融財産を没収したから北朝鮮国内は無秩序の混乱状態に陥っている。2012年の「3代目金正雲の襲名披露」を行うことも容易ではない。

朝鮮総連は戦前の日本共産党・朝鮮人支部を源流とする。戦後、北朝鮮労働党金日成書記長が日本共産党宮本顕示書記長と協議して「日本共産党・朝鮮人支部は今後「祖国(北朝鮮)を支える藩屏となる」旨取り決め、在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を立ち上げた(1955)。以来、朝鮮総連は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を支配する朝鮮労働党・日本支部として活動、祖国への帰還事業、本国への送金等で過大な負担を強いられた。朝鮮総連の最高幹部は現在でも北朝鮮の国会議員である。朝鮮労働党と朝鮮総連は一心同体・不可分の関係にある。結果、朝鮮労働党が統治能力を喪失すれば、即、朝鮮総連の組織崩壊を招く。「親ガメこければ子ガメもこける」関係である。

第2:大阪府橋下徹知事の「過激な申し入れ」と朝鮮総連と朝鮮学校側の対応

(1)朝鮮総連と朝鮮学校の関係

朝鮮総連ブログを見ると、朝鮮総連には三つの傘下組織がある。一つは在日本朝鮮商工連合会ほか12の傘下団体、二つめは朝鮮新報社ほか6つの事業体、三つめが朝鮮大学校、朝鮮高級学校(高校)、朝鮮初級・中級学校(小・中学校)約120校である。朝鮮学校の最大拠点が在日朝鮮・韓国人が集中している大阪府であることはいうまでもない。

朝鮮総連を「親」とすれば朝鮮学校は「子」。切っても切れない骨肉の間柄だ。むろん、橋下大阪府知事がこの事実を知らないはずはない。朝鮮学校の辛正学理事長も「朝鮮総連と朝鮮学校が断絶できる」とは考えておるまい。橋下知事は「朝鮮総連と朝鮮学校が断絶できない関係にあること」を知りつつ、あえて難題を吹っかけたのだ。「関係を絶て」と迫ったのだ。

辛正学理事長は正面から反論せず「やんわり」と矛先をかわした。朝鮮総連機関紙朝鮮新報ブログも「あえてこの問題に深入りせず融和」を強調した。いつもは「不倶戴天の敵」とかいって過激な反応をするのに、今回に限っておとなしい。不可解な話だ。朝鮮総連と朝鮮学校側は「公的補助を得て学校閉鎖を免れたい。どこまで妥協できるか」と思案しているのであろう。橋下知事は例によって自分の振る舞いをメデイアを通じて流しているから「以心伝心でうやむや」に処理することはできない。

(2)金日成と金正日の個人崇拝(主体ーチュチェ思想)の起源

朝鮮労働党が「個人崇拝」という共産主義政党らしからぬ主体(チュチェ)思想を取り入れた背景に、国際共産主義運動の混乱があった。1956年、ソ連共産党フルシチョフ第一書記は突然「スターリン批判」を展開し各国共産党に平和共存路線を強要した。ソ連共産党を盟主と仰ぐ各国共産党は「親ソ派」と「反ソ派又は自主独立派」に分裂し熾烈な党内闘争を繰り広げた。中国共産党とソ連共産党の対立が国家間の「中ソ対立」に発展したことは周知のとおりだ。朝鮮労働党や日本共産党も党内論争が激化し分裂の危機に陥った。金日成や宮本顕示は「親ソ派」を放逐又は粛清することで独裁権力を固めた。党内の権力闘争に敗れ放逐又は粛清された集団は「反党分子」とのレッテルを張られ凶悪犯人扱いとなる。

1966年。中国共産党の少数派であった毛沢東が「多数派の劉少奇派(毛沢東派は走資派とみなした)」を打倒するクーデターを行った。数千万人の紅衛兵を動員した「文化大革命」が約10年続いた。毛沢東は朝鮮労働党金日成書記長や日本共産党宮本顕示書記長を「修正主義者」と糾弾した。朝鮮労働党や日本共産党の「親中派」を煽動し指導部追い落としの内政干渉に乗り出した。再び、朝鮮労働党や日本共産党は「親中派」と「反中派又は自主独立派」に分裂した。金日成と宮本顕示は「親中派」を「反党分子」とみなし粛清することでかろうじて独裁権力を保持した。金日成の朝鮮労働党にとって毛沢東率いる中国共産党の干渉をはねのけ、党の団結を保つことは容易ではなかった。自主独立の立場を堅持すべく「主体・チュチェ思想」で党内をまとめ上げ、「親ソ派」および「親中派」の反乱分子を一掃し独裁権力を固めた。

(主体・チュチェ思想とは何か)

朝鮮労働党の反金日成勢力を抑え込み又は一掃して、金日成の指導による党の団結を図ることが最大の課題とされた。主体(チュチェ)思想は「金日成独裁体制」を守り抜くための理論武装であった。その特徴は「個人崇拝を基礎とする家父長制的専制政治」である。

革命的首領観・・・首領は頭、党は胴体、人民大衆は手足と同じ。首領の権威は絶対的であり、すべての人民大衆は無条件に従わなければならない。

社会的政治的生命体論・・・首領は生命の恩人であり、父と同じ。父の間違いで家が傾いたからといって父を代えることができないように、首領を代えることはできないのである。全人民は、団結して、無条件に忠誠を捧げなければならない。
(以上、革命的首領観および社会的政治的生命体論は、ウイキペデイアから引用した)

(3)北朝鮮の政治体制と既視感(デジャヴュ)

北朝鮮における密告制度、連帯責任を問う連座制・縁座制の刑罰制度、農民らが大量に餓死する惨状および金日成→金正日→金正雲の世襲専制政治を見ると、我が国の江戸時代を想起する。また、「君主が親、人民大衆は子」とする家父長制的統治思想は、戦前までの我が国の政治思想と近似している。北朝鮮においてはなぜ?我が国の封建的政治システムが復活し再生したのか?

政治システムばかりではない。筆者は戦前教育を体験していないから真偽は不明であるが、仄聞するところ、戦前、我が国の小学校では「天皇陛下の肖像画」を掲げていたという。これを手本にして北朝鮮は「金日成・金正日」親子の肖像画を学校に掲げたのであろうか。

朝鮮学校においては、戦前の我が国と同様「教師の威厳と生徒の規律ある態度が保持されている」のであろうか?橋下知事が朝鮮学校の授業を参観して「素晴らしい」と感じたのはなぜか?「ざわざわして規律のとれていない我が国の小・中学校」と比較し、羨ましく感じたのであろうか?

半年前だったか、「金正日は日本人の子供である」という単行本が出版され走り読みしたことがあった。著者は20数年前、陸上自衛隊最高幹部を定年退官した某氏である(名前は忘れた)。その骨子を整理すると以下のとおりである。

「我が帝国陸軍諜報部は敗戦を予想して、フィリピンの小野田少尉と同じく、旧満州に「残置諜者某氏」を配置した。この某氏が若き日の金日成を指導し、朝鮮民主主義人民共和国建国後は朝鮮人民軍の顧問となった。某氏には女がいたが懐妊した状態で金日成と結婚、長男の金正日が生まれた。金正日が某氏の子供であることは金日成も承知していたが、金日成は革命の最大の功労者で、かつ個人的にも恩義のある残置諜者某氏への報恩のために、某氏の子供である金正日を後継者に指名した。北朝鮮は残置諜者某氏の影響力を色濃く残している。かくして北朝鮮は国家も軍も「旧大日本帝国」と相似形の国家となった」

以上、突拍子もない仮説であり、筆者は「眉つばもの」と感じたが、それにしても80歳以上になる旧帝国陸軍士官(元陸上自衛隊最高幹部で退官)の著書であるから、妙に気になった訳である。というのも、我が国で死滅した政治・教育制度が亡霊の如く北朝鮮で蘇っているからだ。「まさか、だが、しかし・・・」という感じなのだ。

(4)金日成と金正日の肖像画を取り除くことの意味

橋下知事はいきなり「敵の大本営」に殴り込みをかけた。戦前であれば「天皇陛下の肖像画を撤去せよ」と勧告したのに等しい。「さもないと、補助金や高校授業料相当分の支給を凍結するぞ」と脅しをかけた。「天皇陛下の肖像画」は我が国が無条件降伏して連合国軍の軍政下で撤去された。しかるに、橋下知事はマッカーサー元帥ではない。それほどの大権を有していない。

朝鮮学校で「金日成と金正日の肖像画を掲げる」趣旨は、金正日崇拝の精神を児童・生徒に植えつけるためである。「肖像画」が教室の高みから児童・生徒を見降ろしている。生徒は自然に心の襞に肖像画のイメージを焼きつける。思想レベルではなく、深層心理に深く植えつけられることで人間は、自らの意思と感性で肖像画を「主と仰ぐ」ようになる。「主のためなら生死を厭わず」自動機械の如く振る舞う。これが洗脳である。洗脳は同じ刺激を「繰り返し与えられる」ことで完成する。毎日毎日「御尊顔」を拝ませることで、児童・生徒の深層心理に刻み込み、焼きつける。

肖像画を拝ませることは「主体(チュチェ)思想」を人民の心に植えつける主要な手段である。朝鮮学校において「金正日首領様のためであれば、例え火の中水の中」の人間を育成するためには、肖像画は不可欠なものである。これを取り外したならば、朝鮮学校は「牙を抜かれた」普通の民族学校に生まれ変わる。朝鮮学校が橋下知事の提言を受け入れ「教室から金正日総書記の肖像画を撤去した」ならば、北朝鮮は「主体・チュチェ思想」を捨てたことになる。

また、朝鮮学校と朝鮮総連が「大阪府からの補助金や高校授業料相当額の支援を得る」との目的で、便宜的に「肖像画を取り外す」との偽装契約を行ったとしても、主体(チュチェ)思想の貫徹が困難となる。「金正日総書記」に対する生徒や保護者の個人崇拝をつなぎとめることが困難になる。

(5)教科書改訂に対する橋下知事の注文

特に、歴史や社会科の教科書では「金正日崇拝」を中心とした編集になっているはずで、金正日の手足となって突撃する部隊を育成しているとみなされても仕方がない。橋下知事が「これまで通り、北朝鮮の国益第一の教科書で教育したいのであれば、どうぞ御勝手におやりください。公的資金を提供することは困難ですから自己資金でおやりください」というのは正論である。

なお、橋下知事の事前検閲制度ともいうべき教科書検定について、朝鮮総連(朝鮮学校)側が、反論せず「理事会で検討する」と応じたのはいかなる存念であろうか、不可解である。本来であれば「不当な干渉」と断固拒否してはねつけるはずであるのだが・・・。

第3:橋下徹知事に対する朝鮮総連系学者の非難

3月11日付けブログ「BLOGOS」に、関西学院大学社会学部金明秀准教授が「橋下知事の発言を巡る諸問題」という論稿を掲載している。それによると(以下、要約。括弧内は筆者が付加)、

「高校教育の実質無償化政策から朝鮮学校を除外する案について、橋下知事のレイシスト(人種差別主義者)発言ぶりが際立っています。」

「橋下知事には(戦前・戦後の日本が行った朝鮮人に対する悪逆非道な行為に対する)反省心が欠けているほか、逆に朝鮮人を追い込もうとしている。知事の権力をかさにきて、在日の子供たちに踏み絵を強要しようとしている。橋下知事には、民主主義を守ろうという精神的基盤が欠落しているとしか考えられません」

「以下は、日弁連の<高校授業料無償化法案の対策学校に関する会長声明>から引用したものであるが、朝鮮学校の生徒達が、本法案の対象外とされ、高等学校、専修学校、インターナショナル・スクール、中華学校等の生徒と異なる不利益な扱いを受けることは、中等教育や民族教育を受ける権利にかかわる法の下の平等(憲法第14条)に反するおそれが高く、さらには、国際人権(自由権・社会権)規約、人種差別撤廃条約、子供の権利条約が禁止する差別に当たるものである。この差別を正当化する根拠はない。」

「橋下知事は、北朝鮮と朝鮮総連を一体的に暴力団やナチスに例えながら<不法国家・不法団体には税金は投入できない>との論理を政治的に正当化しようとしているわけで、悪しきポピュリズムの典型的な手口である」

「国内の少数者を恫喝し、操り傷つけることで大衆的人気の獲得を図っている点で、橋下徹という政治家こそナチスとヒットラーの名にふさわしいのではないか」

「橋下知事の一連の発言について、各紙とも論評を加えずに淡々と紹介するスタンスに徹している。人気政治家の発言に賛否を表明して攻撃を加えられるのを恐れているのであろう。言論が(ジャーナリストとしての)責任を回避する姿勢はメデイアの自殺行為である。メデイアに関わる人々が<知事の発言にも一理ある。だから朝鮮人の子供が犠牲になっても仕方がない>という発想を否定していないためでしょう。なんたるレイシスト(人種差別主義者)ぶりか。」

以上、縷々紹介したが、関西学院大学金明秀准教授の主張は「朝鮮人は被害者である」という前提をおいて、「朝鮮学校におけるカルト的個人崇拝的教育実践」には全く触れず、橋下知事が朝鮮学校への補助金凍結と高校授業料相当額を税金で負担しないと宣言した件につき、レイシスト(人種差別主義者)とか、ファシストと非難する。しかも日本弁護士連合会の声明文「日本国憲法第14条に違反する」という偏った論理を引用する。笑止千万といわねばならない。「法の前の平等」を謳った日本国憲法第14条は日本国民の権利として定めているもので、それ以外の外国人の処遇はケース・バイ・ケースで判断して処遇すればよいのである。

朝鮮高級学校は「金正日カルト独裁政権に忠誠を誓う戦士を育成する学校である」から問題となっているのだ。朝鮮総連が北朝鮮の工作員を手引きして、日本国内から数十人又は数百人の青少年や児童を拉致したのは周知の事実である。橋下知事は「暴力団」と比較したが、暴力団の何百・何千倍も凶悪な集団が北朝鮮の金正日独裁政権であり、同日本支部の朝鮮総連なのだ。

また、金明秀准教授は日弁連の見解を引用して、国際人権規約や人種差別撤廃条約および子供の権利条約を根拠にしているが、それならば、北朝鮮国内において多くの児童が餓死させられ、未成年の少女が売買されている現実をなぜ非難しないのか。祖国で発生している残虐な人権侵害には目をつぶり、棚上して、我が国から便宜供与を受けられないことに腹を立て、レイシスト呼ばわりするとは言語道断といわねばならない。

日本弁護士連合会の新役員人事で、社会主義者の社民党福島瑞穂の夫が事務総長に就任するが、この人物も社会主義者又はトロッキストであろう。日弁連は我が国の些細な問題を針小棒大に取り上げるが、北朝鮮の人身売買や公権力による虐殺行為および拉致問題には取り組まない。中国共産党の「生体からの臓器摘出問題」にも目をつぶる。人権擁護とは縁もゆかりもない、利権と詐欺集団が日弁連なのだ。日弁連と朝鮮総連は「反社会的集団」という意味で、同じ穴のムジナである。

まとめ

今回、大阪府橋下徹知事が朝鮮学校に対し「朝鮮総連との関係を絶つよう」求めた真意は、彼の「子供のことを思うなら朝鮮総連と一線を画してほしい」という言葉に集約されている。つまり、犯罪者カルト集団「朝鮮総連」との関係を絶ち、個人崇拝の洗脳教育を捨て、健全な民族教育機関として再生してもらいたいという願いであろう。という訳で、朝鮮総連系学者が主張するように「橋下知事はレイシスト(民族差別主義者)だ」という主張は独断と偏見に基づく誤った判断というべきである。

ただ、朝鮮総連側にとっては組織の命運を左右するほどの挑戦を受けているから橋下徹知事をレイシスト又はファシストと呼びたい心情は理解できる。彼らカルト集団にとっては組織の存亡がかかっている。

これまで、誰も手をつけることができなかった朝鮮総連と朝鮮学校の問題について、大阪府橋下徹知事がメスを入れた勇気を称えたい。朝鮮総連はこれまで「朝鮮人は被害者である。日本人は謝罪し償なえ」と私利私欲の横暴なる振る舞いを行ってきた。彼らの脅しに対して我が国民は文句もいわず忍従を強いられてきた。結果、彼らを増長させたきたことは否めない。我々日本人は「殴られぱっなし」の従順な対応に終始したからイジメから逃げることができなかった。イジメッ子が二度と殴れないほどの反撃を行う必要がある。とりわけ、中国人や朝鮮人(韓国人)に対しては、1回殴られたら2回殴り返さなければならない。そうすれば、彼らも「図に乗って殴ってくる」ことはしなくなる。これが喧嘩の極意である。

橋下徹という男は時々「小沢さんは素晴らしい方です」とかいって進路を間違えることもあるが、気骨においては政治家の中でダントツだろう。おそらく同和地区で過ごした幼児体験が彼の精神を鍛え上げ、喧嘩強い人格を形成したと推定できる。ひ弱な2世・3世・4世国会議員とは比べものにならないほど「根性」が座っている。なお荒削りで粗暴かつ思想的に変転する不安定さはあるが、将来を嘱望できる人材といってよい。

我が国はこれから未曾有の政治的混乱と経済的危機に陥る。蛮勇を振るって国家の改革を断行する人材が求められている。これを行うには、ある程度のポピュリズム性とファッショ性が不可欠である。「乱世の姦雄」が求めれる時代がやってきた。大阪府橋下徹知事が知事に就任して2年、約80%の支持率を保つことができているのも、大阪府民が彼の蛮勇に期待しているからにほかならない。橋下知事が「多少の過失や発言ミスをしても」、大阪府民は「余人に代えがたい人物」と評価しているのだ。行うべきことを「命がけ」で断行しておれば、大衆は決して見捨てない。

大衆は「何を語ったか」ではなく「何をやったか」で判断する。「やるやる詐欺師」の鳩山由紀夫のような人間にはウンザリしている。政治家を見る国民の目は厳しい。言葉の誤魔化しは通用しない。裏表のない誠実な態度で、蛮勇をふるうことのできる「強い男」が求められている。

大阪府橋下徹知事が「開かずの扉」を押し開き、さらに大衆の期待を担って前進してくれることを期待する。大阪府で実績を積み重ね、場数を踏んで自らを鍛え上げ、国政を担う大人物に成長することを期待する。
























白髪爺 at 10:09|PermalinkComments(4)clip!

2009年07月04日

朝日新聞にガセネタ情報をつかませ「金正日の三男正雲が訪中し、胡錦涛国家主席に面談した」との記事を書かせた中国共産党内旧守派の狙いを読み解く。

はじめに

2007年秋の中国共産党第17回大会の数か月前。毎日新聞電子版は特ダネ情報として「中国共産党第17回大会で、胡錦涛率いる共青団閥が大躍進する」旨の記事を掲載したことがあった。その情報の入手先を北京駐在の女性記者は「中国共産党の信頼できる筋からの情報」と説明した。

筆者は「党大会前に、共産党中央最高幹部の人事が外部に漏えいすることの不自然さ」を指摘し、「江沢民(上海閥)、曾慶紅(太子党)と死闘を繰り広げている胡錦涛(共青団閥)が敵を牽制するために、毎日新聞女性記者にガセネタ情報を提供し、敵を揺さぶる陽動作戦に出たもの」と指摘したことがある。

中国共産党第17回大会における党中央最高幹部の人事は、毎日新聞が報じたガセネタ情報とは逆の結果になった。中国共産党最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会の3分の2は上海閥と太子党が独占した。治安を司る警察・検察・裁判所の総元締め党中央政法委員会書記と共産党員の行状を監察・摘発する権限を持つ党中央規律検査委員会の責任者である書記は上海閥に奪われた。加えて、胡錦涛総書記の後継には、曾慶紅の子分である太子党の習近平が内定した。党大会の席上、曾慶紅と習近平が抱き合い喜び合う姿をテレビが放映した。胡錦涛(共青団閥)は最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会を動かす力を失った。

我が国のメディアの多くが「共青団閥は党中央政治局常務委員会では少数派であるが、党中央政治局レベルでは大躍進した」と共青団閥擁護のキャンペーンを張った。

中国共産党は「民主集中制」を組織原則とする中央集権的官僚組織である。最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の9人が全党を指導するという特別の体制である。議会制民主主義国家とは指揮命令系統の仕組が全く異なる。つまり、2番手の党中央政治局以下は上部の命令を忠実に執行する手足に過ぎない。つまり、党中央政治局常務委員の3分の2の子分を擁する江沢民・曾慶紅は、引退して無位無官になった現在でも最高実力者として中国共産党の上に君臨し全党を支配する。胡錦涛と温家宝は「雇われマダム」に過ぎない。

第1:金正日の後継者(正雲)が権力を継承する以前に中国詣をすることはあり得ない。

かって、李氏朝鮮が中国明・清王朝に服属し、臣下の礼をとっていた時代があった。李氏朝鮮王朝は後継者を選任する際は、事前に「中国王朝の許可を得る」慣行があった。これを怠ったならば、中国王朝は無理難題を押しつけ又は「今後は朝貢する必要なし」と絶縁処分を申し渡した。ひとたび中国王朝の機嫌を損ねた場合、李氏朝鮮は「美女1000人、馬5000頭、銭10万貫等を献上する等して中国王朝の御機嫌をとり御寛恕を乞い願うほかなかった。(以上、中西輝政著「帝国としての中国」東洋経済新報社191ページ以下を参照)

米国の一部で喧伝されている如く「北朝鮮労働党は中国共産党に服属する下僕である」と仮定すれば、伝統的な中朝関係が復活しているという見方も成り立つが、事実は違う。筆者はブログで何度も指摘してきたが、毛沢東が主導した文化大革命以来、中国共産党と朝鮮労働党は敵対関係に陥った。朝鮮労働党は党規約で、米帝国主義、ソ連社会帝国主義と並立して「中華大国主義」を主要な敵と位置づけた。金日成が国体護持のため、主体(チェチェ)思想を創造し国家の指針とした事実は広く知られている。

冷戦終結後、北朝鮮は「対中融和」「改革開放」を模索したこともあるが、「主体思想の基本線が修正された訳ではない。北朝鮮は一貫して中国とは対等な関係を堅持してきたし、中国を宗主国とみなしたことは一度もなかった。仮に、三男金正雲が権力を継承するとして事前に中国詣をしたならば、北朝鮮は李氏朝鮮と同様、中国の服属国とみなされる。自意識過剰の北朝鮮がそのような卑屈な対中服属外交に踏み出す可能性はない。

第2:朝日新聞等に「金正雲訪中のガセネタ」を流し、報道させた某勢力の狙いは何か?

(1)朝日新聞の報道
「金正日の長男正男が、権力継承者とされる異母弟の正雲を引率し、胡錦涛国家主席と面談した」という牽強付会の記事である。長子相続制度の正統な後継者である長男正男が、後妻の次男、つまり異母弟正雲の後見人役を引き受け、胡錦涛の謁見を仰ぐというのも現実離れした話である。また、格式に異常なる拘りを持つ胡錦涛が、中国で放浪し遊び回っている金正男が引率する金正雲と面会するのも荒唐無稽な話だ。胡錦涛は朝鮮労働党又は朝鮮人民軍代表団とは面談するであろうが、形式が整わない金正男や金正雲と面談することはありえない。もし、素浪人風情の金正男が引率した金正雲と面談したとすれば、それこそ胡錦涛の威厳に傷がつく。胡錦涛の権威が地に堕ちる。胡錦涛はそのようなことが判別できないほど馬鹿な指導者ではあるまい。

(2)英国某新聞の報道
朝日新聞の報道が余りも荒唐無稽で現実離れしていたから信用されないと感じたのか、情報の提供者は、急遽、英国某新聞社の記者に「金正日の後継者正雲は北朝鮮ナンバー2の張成沢に伴われて訪中、江沢民前国家主席や習近平国家副主席と面談した」というガセネタ情報を流した。今度は、北朝鮮労働党を代表する格式を整えている意味で、朝日新聞の記事より若干現実味が感じられるガセネタ情報である。

この情報を北朝鮮側から見ると「後継者金正雲を中国に派遣し、影の最高権力者江沢民や中国共産党ナンバー2の習近平に面談させることは「正雲も若年ですからどうか後見人になって下さい」と懇願するようなものだ。李氏朝鮮が中国王朝の臣下となって「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んだ屈辱外交」を想起させる光景だ。北朝鮮が中国に「臣下の礼を尽くす意思がない」ことは度重なる核実験で証明された。北朝鮮は「中国が嫌がる核実験を敢行し、反復して見せる」ことで意地を貫いた。「北朝鮮は中国の服属国ではありませんよ」と世界に顕示した。

北朝鮮の当面の戦略は中国の臣下となることではない。北朝鮮は中国・ロシア・米韓を競わせ有利な条件を引き出すために「ない知恵」を絞っている。女に売春させて貢がせることで遊興三昧の生活を楽しんでいるヤクザのヒモと同じだ。彼らはこれを「大国に支配されない自力更生路線」と自画自賛する。

北朝鮮は「中国には甘言を弄してなるべく多くの資金と生活必需品を引き出そう」と考えている。貢ぎ女に媚を売る馬鹿はいない。北朝鮮は甘言を弄して江沢民派や軍長老を籠絡するだけではない。中国が嫌がる核実験を繰り返し、北京や上海を射程範囲におく核ミサイルの開発に全力を注ぐ。北朝鮮の横柄で挑発的な態度を見るに、中国共産党北京政府に服属する国家の態度でないことは明らかだ。米国の戦略思想家や我が国の外務省、親中言論人以外に騙される者はいない。大衆は欲望に目が眩んでいない分、真実がよく見える。

(3)中国共産党内某派閥が外国メディアにガセネタ情報を流す狙い
海外向けと国内向けの二つの動機がある。海外向けの動機は「北朝鮮は中国の属領・保護国である。北朝鮮を動かせるのは中国しかいない」という誇大妄想・事実無根の宣伝を繰り返すことで、国際世論をミスリードする狙いだ。「ウソも100回いうと真実になる」という訳だ。中国国内向けの動機は「国連安保理で満場一致で可決された北朝鮮に対する経済制裁に積極参加したいと考える胡錦涛・温家宝首脳部への牽制」である。「中朝は唇歯の関係にあるから、経済制裁なぞとんでもない」と考える旧守派勢力が、胡錦涛・温家宝の国連寄り路線に歯止めをかけたいと考えている。

つまり、「親北朝鮮の旧守派勢力」は、北朝鮮の核実験以降、中国共産党内で劣勢に追い込まれている。そこで、彼らは「劣勢を挽回したい」との一念から、持前の誇大妄想癖を発揮し「北朝鮮は中国の属領又は保護国である。その証拠は後継者金正雲が権力承継前に中国を訪問したではないか」というストーリーを作り上げたのだ。

彼らが、朝日・毎日新聞や英国某新聞を活用する理由は「情報源を秘匿してくれる」という安心感と、「西側のメディアは特ダネ情報に飢えているからガセネタにもすぐに飛びつく」と考えているからなのだ。外国の新聞社に偽情報をつかませ報道を唆しても、金はかからないし中国で刑事罰に問われる危険も少ない。そこで、中国共産党の各派閥が競って「朝日・毎日新聞や英国某新聞にガセネタ情報をつかませる陽動作戦を駆使する」という訳なのだ。朝日・毎日新聞や英国の某新聞は、中国共産党の派閥闘争の手駒に使われているのだ。

(4)ガセネタ情報を朝日新聞・英国の某新聞に流した犯人は上海閥?太子党?それとも軍長老?

北朝鮮の核ミサイルは、当面の敵である日韓両国に照準を当てて配備すると想定してよいが、核ミサイルの照準先は変更可能であるから、いつ何時、首都北京、最大の商業都市上海、勃興しつつある天津や大連に変更されるか分からない。

中国国内においてはおそらく「北朝鮮が核兵器を開発し保有できたのは、中国が経済支援してきたからだ」という議論が沸き起こっているのではないか。「江沢民の北朝鮮融和政策が北朝鮮の核開発を加速させた。結果、中国は北朝鮮が開発した核の脅威に曝されることになった」という責任論が中国共産党指導部や人民解放軍指導部で議論されているはずだ。

これまで、北朝鮮融和政策を推進してきたのは、軍長老と江沢民、曾慶紅系列の上海閥・太子党であった。北朝鮮が核実験を繰り返し、核保有国となれば、中国の安全保障にとって重大な脅威となる。「北朝鮮擁護一本やり」の上海閥・太子党・軍長老への批判が高まるのは避けられない。これら旧守派と「中国と北朝鮮は普通の国家関係」と考える人民解放軍上・中級幹部並びに共青団閥の対立が激化していると推定される。換言すると「国連安保理決議に則り北朝鮮に対する経済制裁を断行せよ」と主張する勢力と「北朝鮮をこれ以上追い込んではならない。経済制裁には断固反対する」と主張する勢力の対立が激化していると考える。

北朝鮮が核実験とミサイル発射実験を反復するから、「親北朝鮮派」の旧守派勢力が勢いを失い、苦境に陥っているのではないか。今回のガセネタ情報騒動は「親北朝鮮の旧守派」が劣勢を挽回すべく仕掛けた陽動作戦、つまり「後継者金正雲の訪中」というストーリーではなかろうか。

最近、中国人民解放軍内で「中国は核保有国(米国・ロシア・インド・北朝鮮)に包囲された。核戦力を拡充すべきである」とする論調が出ているという記事があった。(大紀元だったか?情報源は失念した)

北朝鮮の核保有が中国にとって如何に脅威であると受け止められているかの証拠である。北朝鮮が核武装に踏み切った情勢の変化が、中国共産党並びに中国人民解放軍における江沢民・曾慶紅派の退潮と胡錦涛派の元気回復を促している背景要因ではではないかと考える。

そういえば、最近、国営新華社の電子版「新華網・日本語版」が、胡錦涛の直参旗本で共青団閥の李克強党中央政治局常務委員兼筆頭副首相が訪中する外国要人と面談したとする記事を頻繁に掲載するようになった。上海閥と太子党に抑圧されて逼塞していたはずの共青団閥が元気を取り戻す兆かもしれぬ。

まとめ

北朝鮮の核開発を契機にして、日米韓の連携が強化された。オバマ大統領は「韓国が核攻撃を受けた場合は米国は核の傘を韓国に提供する。核兵器を含むあらゆる手段で韓国を防衛する」と誓約した。

中国軍は目下、上海協力機構に参加するロシア軍との合同軍事演習を繰り返している。「米国の一極支配は認めない」ということではロシアと盟約を結んでいる。だが、米国の覇権が終了し、米国が地域大国の一つに転落したとき、中国とロシアは共通の敵を失う。中露の利害対立が顕在化する。

すでに、インドは中国を「仮想敵国」と位置づけ、核ミサイルの増強を初め原潜や空母の配備に注力している。ベトナムも海南島の中国潜水艦基地の大拡充に対抗すべく、6隻の潜水艦をロシアから購入する旨決定した。ベトナムの仮想敵国も中国になった。

米国覇権を脅かす最大の国家中国に対し、今後「米中(G2)で世界を管理しよう」と呼びかけるブレジンスキーやキッシンジャーの世界戦略は後退を余儀なくされる。「米国最大の仮想敵国は中国」という認識が米国標準となる日も近い。米国は東アジアにおいて日韓両国との絆を強めざるをえない。

一昨日だったか、有罪が確定した起訴休職外務事務官佐藤優が主張する「日米露三国同盟」という構想も一つの選択肢となって浮上するかもしれぬ。中国包囲網を打破すべく中国軍はロシアとの合同軍事演習を繰り返しながら、日米韓との提携を模索することになろう。それとも中国軍は「穴熊戦法」で乗り切るのか?今後の推移を観察してみたい。

中国の政局は、北朝鮮の核武装、ロシアとインド・ベトナムの軍事的同盟化の動き、日米韓3国軍事同盟の強化など中国の周辺環境は激変しつつあるといえる。中国共産党と軍は、身内の派閥闘争を行いながら、13億人民の蜂起に脅えることになった。年率二桁の軍事費拡大を続ける中国軍に対する周辺諸国の目は厳しい。これを内憂外患という。内も外も火の車だ。

北朝鮮の権力を三男正雲が継承したとしても、就任直後に中国を訪問することは想定の範囲外だ。北朝鮮は、ロシアとの善隣友好を基軸にすえながら米中韓日との等距離外交に踏み出したいと考えているはずだ。それ以外に、北朝鮮が経済的に発展できる道はない。問題は「核兵器を保有したままの北朝鮮」を国際社会が受容できるかどうかにかかっている。受容されない場合、北朝鮮のハンガーストライキが続く。

北朝鮮は「核を求めて孤立を恐れず」の路線を邁進すると強調している。、北朝鮮は核兵器を抱え餓死するか、それとも核兵器を捨てて「ベトナムに追いつき追い越せ」の経済発展の道を選ぶかの岐路に立っている。

日本人拉致被害者の救済は急を要するが「急いては事をし損じる」というから当面「水攻めにして、落城するのを待つ戦法」で臨むほか仕方がない。下手に妥協すると、金正日一族の延命を手助けするだけだ。韓国金大中とノ・ムヒョンの10年がこれを証明した。北朝鮮人民2200万人は餓死を待つか、それとも中国に脱出して動物の如く売買されるかの過酷な運命に曝されている。このような「生き地獄」の専制国家は1日も早く終わらせなければならない。                                                       人道支援という名目で、北朝鮮に食糧支援する国連や人権団体の誤った政策を中止させるべきだ。食糧支援は餓死寸前の人民大衆の空腹を満たすことはない。国家の利権を独占している朝鮮労働党並びに朝鮮人民軍高級幹部の生活を支えるだけだ。体制温存の役割しか果たさない。                                                                北東アジアはいつ噴火しても不思議ではない活火山である。我が国も国の備えに注力し、有事即応体制を構築しておくべきだろう。

白髪爺 at 19:40|PermalinkComments(5)clip!

2009年06月16日

金正日の三男「金正雲」を擁立した親ロシアの朝鮮人民軍が権力を掌握したのか?また、親中国の長男「金正男一派に対する粛清」は完了したのか?

はじめに

筆者は2008年9月13日付けブログで「北朝鮮は金正日独裁体制から、暫定的集団指導体制に移行した。いよいよ始まる権力闘争と内部分裂」と題する一文を掲載した。その骨子は以下のとおりである。

(1)2008年夏、金正日が脳出血で倒れ危篤状態に陥った。急遽、「革命の指導部」と称する暫定的集団指導体制に移行した。

(2)「革命の指導部」が発した声明文によると「革命の指導部は中国共産党が推進してきた外資導入による改革開放政策という経済政策」を放棄し、「自力更生による国家経済の立て直し」に舵を切った。

(3)「革命の指導部」は、朝鮮労働党や朝鮮人民軍など金正日独裁体制の主要な勢力が応急措置として立ち上げたもので、今後、指導部の各勢力における権力闘争が激化する。

(4)親中国派は長男「正男」・金正日の妹婿張成沢、親ロシア派は朝鮮人民軍、親米国派は外務次官金桂冠。

(5)2007年頃、金正日独裁体制は、親ロシア派が実権を掌握したのではないか。その理由は、北朝鮮から北京大学に留学中の約50人全員が、突如、中途退学したこと、並びに親中国派筆頭の義弟張成沢が乗っていた乗用車に軍のトラックが追突。張成沢が重症を負いモスクワの病院に入院し治療を受けた。

第1:義弟「張成沢」は親中国派から親ロシア派に転向したのか?

(1)2007年頃、張成沢に重傷を負わせた人民軍は、なぜ?張成沢をモスクワに連行し治療を受けさせたのか?

北朝鮮の如き封建的専制国家においては「長子相続」が当然とみなされている。長男「正男」は、周知のとおり我が国に偽造パスポートで入国しディズニーランドで遊んだり、マカオを初め中国国内を徘徊している。北朝鮮が中国に預けている「人質」といえなくもない。中国共産党北京政府は「金正日の後継者を手元におき押さえている」と捕らぬ狸の皮算用をしていたであろう。いずれ、中国の傀儡政権「金正男独裁政権を樹立する」と想定していたはずだ。

金正男の後見人は義弟張成沢といわれた。改革開放政策を放棄し自力更生をめざす朝鮮人民軍にとって「張成沢は目の上のたんこぶ」という地位にあった。だから人民軍が、張成沢の車と認識したうえで、軍のトラックを追突させ「事故死」を狙ったとしても不思議ではない。

親中派筆頭の義弟張成沢の後見を受けた「正男」が、金正日の後継者に昇任することを喜ばないのは軍だけではない。北朝鮮の権益確保で中国と激烈な競争をしているロシアが「中国命の金正男政権の誕生は何としても阻止したい。<将を射んと欲すれば馬を射よ>というから、まず後見人の張成沢を亡きものにするか、又は自陣営に取り込むか」と考えたとしても不思議ではない。

仮に、朝鮮人民軍諜報機関とソ連国家保安委員会(KGB)の後継ロシア対外情報庁(SVR)が共謀して仕掛けた交通事故(張成沢の車に軍用トラックを追突させた)であったとすれば、事故死を狙ったものではあるまい。「数か月の入院加療を要す」という中程度の交通事故を計画し実行したはずだ。負傷した張成沢を現場で応急手当した上、モスクワの病院に搬送(拉致)した疑いが濃厚である。

モスクワの病院(軍関係?)では、怪我の治療だけでなく、心の治療も行われたはずだ。「親中国→親ロシア」への精神療法が施されたのではないか。怪我の治療は数か月で完治したであろうが、精神療法に多少の時間がかかった。ようやく、精神療法の成果が上がったから、張成沢は帰国を許された。そして、再び朝鮮労働党の要職に復帰することができたとはいえないだろうか。

筆者の疑念は「朝鮮人民軍は、なぜ?張成沢が乗っている最高級車と知りながら、軍用トラックを追突させたのか?」ということと、「親中国派筆頭の張成沢の怪我の治療をするために、わざわざ遠隔地のモスクワの病院に運び入院治療させたのか?」であった。「自然ではない。陰謀ではないか」と感じた。

筆者の仮説が正しいか否かは、まもなく明らかとなる。現在、北朝鮮では「親中国の正男派」に対する粛清が始まっているという。「すでに、数万人が粛清された」という情報もある。「正男派」を根こそぎ一掃する粛清が進行中とみなすと、早晩、義弟張成沢が標的になるはずだ。張成沢が生き残り、喧伝されているように「三男正雲の後見人として権勢を維持できた」とすれば、「正男派から離脱し正雲派に鞍替えした」とみなしてよい。モスクワで洗脳教育を受け「親ロシア派」に転向したと考えてよい。

第2:長男「正男」は中国に亡命するのか?中朝対立が激化するか?

6月16日付け韓国・中央日報電子版・日本語版は以下の記事を掲載した。

(1)KBSテレビが15日報じたところによると、北朝鮮の金正日国防委員長の後継者に内定したとされる三男正雲氏の側近が最近、金委員長の長男、正男氏の暗殺を図った。

(2)中国政府筋によると、最近北朝鮮の有力後継候補に浮上した正雲氏側が図ったこの暗殺計画は、中国当局が阻止、失敗した。中国当局が北朝鮮内のこうした動きを事前に把握、正男氏を避難させた後、身柄を保護しているという。正雲氏側近は金正日委員長に報告しないまま、正男氏の殺害を計画したものとされる。

(3)中国消息筋は「中国が正男氏を救出したのは、中国高官らとの長い付き合いのため」と伝えた。同筋はまた、正男氏が今後、隠れ先に滞在しながら、中国への亡命を検討する可能性があるとしている。

(4)一方、KBSの報道によると、中国での(金正男に対する)暗殺計画など、一連の事態を受け(中国は)北朝鮮との合弁事業を全面的に中断した。(括弧内は筆者が加筆)

以上の報道が事実であるとすれば、「正男派に対する粛清」が最終段階に至ったと見ることができる。北朝鮮国内では粛清作業が一段落したと見るべきだろう。

「親ロシアの正雲派・人民軍一派」が、金正日の長男「正男」を暗殺する行為に出たとすると、金正日は実権を失っているといえる。金正日が健在であれば、「正雲派・軍」がこのような無謀で危険な企てを試みるはずはない。「発覚しても処刑される不安がなくなった」から暗殺を企てた。

中国共産党北京政府が長年面倒を見てきた「金正男」に対する暗殺を企てる行為は、北京政府への敵対行為である。「後継者は長男正男」を想定してきた北京政府への反逆である。だから北京政府は急遽「中朝合弁事業の全面的中断」という思い切った強硬措置に出た。

現在、北朝鮮人民軍の最高幹部金永春人民武力相が訪中している。「金正男暗殺陰謀」に対する中国の厳重なる抗議に対処するための訪中か?それとも「北朝鮮にとって粛清すべき反国家・反党の筆頭である金正男の身柄を北朝鮮に引き渡せ」という談判のための訪中なのか?

おそらく北朝鮮側は、中国の抗議に対する釈明と、中国が正男を匿い続ける内政干渉に対して抗議しているのではないか。金正雲独裁政権を狙う北朝鮮軍部にとって、正統な後継者(長子相続)である正男が中国に匿われていることを容認する訳にはいかない。正男が中国の後援を受けて、いつ何時「政権転覆の主導者となって帰国するか」分かったものではない。新政権側にとっては「悪夢にうなされ夜も眠れない」という心境であろう。

北京政府はかって、カンボジアを追われたシアヌーク殿下を匿ったことがある。「いずれ、カンボジアに中国の傀儡政権を樹立する」という目的を実現するための先行投資であった。今回も、北京政府は「正男を匿い続ける」はずである。北朝鮮の「金正雲軍部独裁政権」との対立は激化するかもしれぬが、これが北京政府の流儀であり体質なのだ。今回も同じ行為を繰り返すはずだ。北京政府が「北朝鮮との国交を断絶する」といっても不思議ではない。想定の範囲内だ。

第3:北朝鮮はロシアへの依存を深めるか?日米との関係改善に動くか?

中国と北朝鮮の関係が悪化すれば、ロシアのメリットは大きい。北朝鮮北西部の鉱物資源の採掘権並びに日本海に面する羅先港の改修・租借を巡って中露が対立してきた。昨年だったか、ロシアは羅先港の改修工事を請負い使用できる契約を締結した。ロシアは、シベリア鉄道を北朝鮮・羅先駅まで乗り入れるべく広軌道化工事に着手した。

金正日が命令して実行させた「日本人拉致問題」は、独裁者が変わったならば「これまでのいきさつはともかく」「未来志向で話し合いましょう」という機運が盛り上がることはあり得る。特に、北朝鮮は中国からの経済支援と交易が断たれたならば、ロシアだけでなく日米韓との交流を深めざるを得ない。それ以外に国家経営を維持することができない。餓死者続出、逃亡者続出で軍の規律も保てない。

朝鮮人民軍は「核兵器を保有したままで、日米韓との貿易を拡大したい」と考えるであろうが、そのような身勝手なことは誰も認めない。北朝鮮と日米韓の「我慢比べ」が再び始まる。北朝鮮のハンガーストライキが始まる。

(まとめ)

2008年夏、金正日が脳出血又は脳梗塞で倒れ危篤状態に陥ったことで、急遽「革命の指導部」と称する暫定的集団指導体制に移行した。「革命の指導部」は、金正日独裁体制を支えてきた朝鮮人民軍、朝鮮労働党の側近グループであると推察する。

北朝鮮では、約2年前から「社会主義体制堅持・自力更生」を掲げる親ロシアの軍部が台頭し、「改革開放経済導入」を唱える親中国勢力との対立が激化している雰囲気があった。その後、次第に親ロシアの軍部勢力が実権を掌握した。

親中派筆頭とみなされてきた義弟張成沢は自動車事故を仕掛けられ負傷、モスクワの病院に搬送・隔離され洗脳された疑いが濃厚である。現在、軍部独裁に移行しつつある北朝鮮において、義弟張成沢と三男正雲が神輿になっているが、両名が軍部側に鞍替えした証拠ではないか。権威もなく、軍歴も乏しい彼らが朝鮮人民軍を指導し統率できるとは思えない。軍に利用され使い捨てられる立場だ。都合が悪くなれば、いつでも粛清される運命だ。

喧伝されている如く、軍部が「三男正雲」を擁立して権力を掌握、「親中国派である長男正男一派」に対する大規模な粛清が開始されているとする。これが事実であれば、中朝関係は最悪の事態に陥る。北朝鮮のロシアへの依存はさらに深まる。

親ロシアの軍部による親中国派一掃を狙った大規模な粛清は「中国に敵対する行為」といってよいから、中国が今回の政変を反中的暴挙とみなし「北朝鮮への食糧・エネルギー支援を停止し、兵糧攻めの圧力をかける」と考えるのが自然だ。中国の経済支援を得られなくなった北朝鮮は生き残りを図るためロシアへの依存を深める。「日米韓との融和」に動き出す。

我が国は国連安保理の決議に則り、北朝鮮と朝鮮総連に対する締め付けを強化し、中朝関係が悪化するのを「高見の見物」しておればよい。我が国にとって情勢は好転する方向で動いている。

「さすがは、プーチンのロシア」といわねばならぬ。「最小の投資で最大の果実を得る」というのは、プーチンが仕掛けた北朝鮮対策のことをいうのではあるまいか。「孫子の兵法」の中国と「戦略思想家だらけ」の米国を翻弄するロシアのソフトパワーは侮りがたい。ロシアとは友好親善を基本としつつも「寝首をかかれないよう」警戒心を持って対処したい。

(追記)

北朝鮮情勢に詳しい関西大学李英和教授はSAPIO6月24日号で「北朝鮮<核の暴走>の真相は金正日後継を巡る・2人の大将の陰謀だ」と題する記事を寄稿している。李英和は三男金正雲を担いでいる軍部の代表を人民軍総政治局の副局長=玄哲海大将(75)と国防委員会の行政局長=李明秀大将(72)であると指摘する。李英和が独自の取材網で判断した結論であろうから、筆者にはこれを否定できる材料はない。

李英和は「親中国派筆頭で、長男正男を擁立してきた義弟張成沢と前述した軍幹部の権力闘争が今後激化する」と推定している。この仮説が正しいとすれば、張成沢も遠くない将来、軍部によって粛清されるはずだ。生き残ることは困難だ。李英和がいう「張成沢は三男正雲の後見人として10年間君臨する」という見解と矛盾する。

朝鮮労働党並びに朝鮮人民軍には、当然ながら親中国派もいれば、親ロシア派も存在したはずだが、軍の一部が反乱を起こしたという情報はない。軍部は李英和がいう2人の大将だけでなく、大勢として「三男正雲擁立」で固まっているのではないか。この軍部の方針に反対する朝鮮労働党主流派に対する大規模な粛清が始まっているのではあるまいか。

人間という動物は「過去の延長で未来を考える」という傾向がある。義弟張成沢は長男正男の後見人で、心変わりすることなく永遠に「親中国派筆頭」とみなす傾向がある。だが、激動する時代の人間は「昨日の友は今日の敵」となる確率が高くなる傾向がある。我が国でも、鳩山邦夫が麻生太郎から離反した。今後、自民・民主の双方で「昨日の友は今日の敵」という出来事が頻繁に起こる。

つまり、張成沢が「長男正男の後見人役と親中国の姿勢を堅持する」と想定することはできないのだ。人間は情勢の変化と自らがおかれた境遇によって時々刻々変化する存在と考えるべきである。永遠不変なミイラのような人間はいない。この意味で、筆者は「張成沢と軍部の権力闘争が激化する」と予想する李英和の見解に同意することはできない。

いずれにせよ、遠くない将来事の真相が明らかになる。張成沢が粛清されるか?それとも張成沢は三男正雲とともに軍事独裁政権の神輿となるか?数か月以内にすべての真実が判明する。







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2009年02月12日

北朝鮮「金正日カルト独裁政権」の崩壊は近い。公安調査庁と全国の警備警察は「朝鮮総連の狂信的過激集団」の監視を強化せよ。

(はじめに)

我が国では、朝鮮(韓)半島情勢について関心が低いこともあって、メディアが報道することはめったにない。だが、北朝鮮と韓国の対立は「軍事的衝突」を惹起しかねないほど緊迫した状態になっている。北朝鮮有事の際、我が自衛隊と海上保安庁は「武装難民の大量漂着」という観点で対応策を検討していると思うが、それだけでは十分でない。

数日前から、筆者のブログにコメントしてくる朝鮮総連内の過激分子と思われる人物がいる。在日3世の彼は、我が国の私立大学工学部に在籍中で「金正日将軍様のためなら死をも厭わぬ。玉砕覚悟である」と語っている。我が国に対する根拠のない被害妄想を抱いている。金正日カルト独裁国家が崩壊する時はいかなる暴走行為を行うか分からない。集団で「武装蜂起」するか、又は個人単位で「無差別大量殺人」を行う危険がある。

金正日を盲目的に崇拝する狂信的過激分子の人数は少なく見積もっても数千人はいると判断されるから、公安調査庁は警備警察と連携して朝鮮総連内の狂信的過激分子の動向を監視し、彼らの暴発を未然に防止する対策をとるべきである。「窮鼠、猫を咬む」という。「生きる希望を失い、追い詰められた人間」ほど怖いものはない。断じて油断すべきではない。また、彼らが大規模な騒乱を企てた場合、警察力だけで鎮圧するのは困難であるから、陸上自衛隊全体を「有事即応部隊」に編制替えするのも急ぐべきだ。

さらに、朝鮮総連内過激分子と結託している我が国の極左集団(革共同など)数千人、日教組内「チェチェ思想研究会」の約1000人などの動向も要注意である。彼らが連携して「武装蜂起」に立ちあがる危険もあると想定した対策をとるべきだ。

第1:韓国内における(北朝鮮)朝鮮労働党拠点が崩壊しつつある。

金大中、ノ・ムヒョンの容共左派政権の10年で、大統領官邸を初め、軍・警察、教育など国家中枢の主要部門が北朝鮮の影響下におかれた。韓国国民の多数が「北朝鮮軍に合流して在韓米軍と闘う」という信じられない状態に陥った。金正日は「韓国を併合できる日も遠くない」と考え「取らぬ狸の皮算用をしていた」に違いない。

そこへ登場したのがハンナラ党の李明博大統領である。就任早々「米国産輸入牛肉問題」を李政権打倒の口実に使われ、連日の「ろうそくデモ」を仕掛けられた。神風がふいた。タイミングよろしく「竹島(独島)問題」が発生した。韓国国民の怒りの矛先を日本に向ける」ことで緊急避難できた。また韓国は、急激な外資の流出によるウオンの暴落で「債務不履行」に陥る危機を迎えたものの、米・日・中とのスワップ協定の大幅な増額を締結できたことで、国家破産の危機を乗り越えることができた。

李明博大統領は、金大中とノ・ムヒョンが行ってきた北朝鮮に対する「太陽政策」という名の無原則的な資金供与を見直すと宣言、これまで韓国の政治・経済・教育を壟断してきた容共左派勢力の腐敗にメスを入れ始めた。ノ・ムヒョンの実兄にも捜査の手が伸びた。朝鮮労働党の拠点である民主労総幹部の犯罪行為も次々に摘発されている。韓教組幹部による女性教師に対するわいせつ行為が摘発され、わいせつ行為を隠ぺいした執行部が総辞職に追い込まれた。金正日が長い年月と資金を投入して組織した韓国における北の拠点が次々に陥落しつつある。今後、さらに容共左派勢力の犯罪行為が摘発され、北の拠点が解体されるはずだ。金正日は「長年の苦労が水の泡になった」と落胆し、李明博大統領への怨念を強めている。

第2:北朝鮮の最後通告の概要

(2009.2.2付け祖国平和統一委員会(祖平統)声明・・・朝鮮総連機関紙「朝鮮新報より抜粋))

「祖平統は1月30日、北南間の政治的・軍事的対決状態の解消と関連したすべての合意事項を無効化し、北南基本合意書(1991採択)とその付属合意書にある西海海上軍事境界線に関する諸条項を破棄すると宣布する声明を発表した。」

「こんにち、朝鮮半島情勢は、南朝鮮(韓国)保守当局の分別のない反北対決策動により日を追って緊張している。」・・・(中略)・・・

「李明博一味の北南合意破壊活動により、西海海上軍事境界線関連条項の幣履と化した状況で、われわれはそれらの条項を完全に、そして終局的に破棄することを公式に宣布する。」


以上、いかにも北朝鮮らしい「大げさな煽動文」ではある。北朝鮮は日頃から、大げさな身振り手振りで相手を恫喝する手口を多用するから周辺諸国から「また、いつもの手か」と馬鹿にされている。

韓国がこの宣布文に正面切った反応を示さないので北朝鮮側は「李明博の野郎。馬鹿にしやがって」と怒っている。李明博だけでなく誰でも「いつもの手口」と考え馬鹿にするのではあるまいか。「脅し文句」は肝心要(かなめ)な箇所に限定しなければ効果はない。年から年中、脅し文句を使っても誰も驚かない。

北朝鮮側が破棄した西海(黄海)海上の軍事境界線は、北朝鮮と韓国が「自らの領海」と主張する部分が重なる。警備艇同士の軍事衝突が発生したことがある。今回、北朝鮮が軍事境界線の合意事項を破棄したから、双方の警備艇・軍艦が接触し衝突する危険が高まった。双方が任意に「戦争を仕掛けることができる環境が整った」といってよい。韓国・李明博大統領は「いつでも仕掛けてこい」とチャンスを待っているのかもしれぬ。

(北朝鮮の警備艇が北方限界線を侵犯・・2月11日付け韓国・朝鮮日報日本語電子版より抜粋)

「韓国軍合同参謀本部によると、2月4日未明、北朝鮮側の警備艇が北朝鮮の漁船を自国領海内に引き戻すために南下し韓国の領海を侵犯した。韓国海軍の高速艇が出動、緊張が走った。一方、西海(黄海)ではこれまで見られた中国漁船が姿を消し、北朝鮮の警備艇が北方限界線近海を偵察するなど、異常な兆候が見られる。(韓国)海軍と関係機関が警戒している。」


これまで、中国漁船多数が韓国領海内に不法侵入し密漁を行っていた。韓国警備艇に体当たりするなど傍若無人にふるまっていた。韓国・海上警察官が中国漁船員に殴られ死んだ事件もあった。乱暴狼藉を平気で行う中国漁船が消えたことは、中国当局が北朝鮮と韓国の軍事衝突を懸念して自国漁船の出漁を差し止めたか、又は北朝鮮が中国政府に「中国漁船は西海の軍事境界線付近に立ち入らないように」と申し入れた可能性が高い。北朝鮮側も双方警備艇の銃撃戦が起こりうると想定しているはずだ。中国漁船を巻き添えにして中国との関係が悪化するのを防ぐ配慮をしているのかもしれぬ。


第3:米韓連合軍の対北朝鮮戦略
(2月11日付け韓国・中央日報日本語電子版より抜粋)

(1)9日、シャープ在韓米軍司令官兼韓米連合軍司令官がプレスセンターで発言した内容

具体的には言及できないが、(北朝鮮との)全面戦争に備えた計画もあり、北朝鮮の不安定事態に備えた計画もある。北朝鮮の不安定事態に備えた計画には、「自然災害、内戦、核兵器に対する統制喪失など全般にわたる状況が含まれている」とし、金泰栄(キム・テヨン)合同参謀本部議長と在韓米軍は緊密に協力している。
軍筋によると、シャープ司令官のコメントは「概念計画5029」に伴う対応計画を意味するもの」とみられる。

「概念計画5029」は、北朝鮮の政変による騒乱事態や北朝鮮住民の大規模脱出、洪水、地震など大規模な自然災害、北朝鮮政権の核・生物化学兵器など大量破壊兵器への統制力の喪失などの類型別対応策だ。

米オバマ政権は、北朝鮮の核がテロ組織などに流出し、米本土への攻撃に使われる可能性に備え、積極的に取り組む「対拡散対策」を打ちたてている。北朝鮮が進めている長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備について、外交的措置、経済制裁、軍事措置など多用な対策がある。


以上、シャープ司令官の発言は「北朝鮮の核保有」を前提としつつ、核が北朝鮮経由でテロ組織にわたることは許さない」という観点である。北朝鮮の核保有を認めないとする「米国の公式的見解」と異なり、米国の本音を表明している。北朝鮮が「核兵器の管理を十全に行うならばこれを認容する姿勢」とみなしてよい。

米国は北朝鮮が核兵器を保有することでメリットを感じている様子である。北朝鮮が核兵器を保有し続ける限り「日本と韓国は米国の核の傘に依存せざるをえない。日本と韓国を米国の属国にとどめおくことができる」という考えであろう。さらに、北朝鮮の核は中国の喉に刺さった棘である。「北朝鮮の核問題」で、中国に貸しをつくり自陣営に引きつける効果が期待できる。

つまり、米国は北朝鮮の核を、中国、日本、韓国を管理する手段と考えている様子である。だから、金正日体制が崩壊しないよう100万トンの重油支援を取り決め、米国単独で「人道支援」という名目で、たびたび食糧50万トンを無償で提供しているのだ。

第4:在日米軍三沢基地から韓国への戦闘機の移動
(2月11日付け韓国・中央日報日本語電子版より抜粋)

3月、青森県米空軍三沢基地のF−16戦闘機一個大隊(12機)を在韓米軍基地に移動させる。在韓米軍関係者は9日、「在日米軍35飛行団指揮下にある13大隊と400人の人余の空軍兵力が韓半島に配置され、6か月間の任務を遂行する予定だ」と明らかにした。理由は、在韓米軍所属のアパッチヘリ1個大隊(24機)を米本土に撤収する代わりだ。


以上、米国は「アパッチヘリ24機をイラク・アフガン戦線に投入するため、三沢基地のF−16戦闘機12機を韓国に移動させるという。米国が兵力を「やりくり算段するのに苦労している」様子が窺える。韓国は、アパッチヘリ24機よりもF−16戦闘機12機の方が戦力強化になると喜んでいる様子である。対地攻撃能力は高まるだろうが、沿岸沿いに侵攻してくる北朝鮮軍の高速艇群に対処する能力は低下する。

米国は当面、イラク・アフガン・イラン問題に集中して取り組むと宣言した。中東が安定するまで、米韓連合軍が「北朝鮮との戦争を始める」可能性は低い。6か月又は1年間ほど「時間稼ぎ」をしているのかもしれぬ。それまで「北朝鮮の南進」や「内部崩壊がなければ」という条件付きではあるが。


第5:米韓連合軍の北朝鮮への侵攻作戦(全面戦争)に脅える北朝鮮
(2月11日付け朝鮮総連機関紙「朝鮮新報・電子版」から抜粋)

1月31日発朝鮮中央通信が軍事消息筋を引用して伝えたところによると、米軍と南朝鮮(以下「韓国」という)軍が年初から朝鮮に対する武力を増強し、軍事演習を強化している。

(1)1月下旬から韓国軍と米軍第二師団の兵力と戦車、装甲車、砲兵戦力が動員されて、地上合同火力攻撃演習が行われた。同月14日からは、米第二師団所属戦闘航空旅団の空中火力攻撃演習が行われた。

(2)米軍は12日から17日までの間に、韓国全域を作戦舞台にして韓国駐留米軍の空軍と陸軍の大規模戦力を動員して北侵戦争演習を行った。

(3)海外基地から各種航空機が韓国米軍基地に次々と機動展開し、14・16の両日には、580余機の各種航空機が縦深対象物攻撃、近接航空支援、空中戦演習を行い、グアム島を離陸した核搭載用のB52H戦闘爆撃機が韓国上空に飛来し、爆弾を投下して基地に戻る演習も頻繁に行われている。

(4)一方、韓国軍も7日から24日までの間に、北侵作戦計画「5027−04」に伴う段階別の戦闘行動規範の完成、協同作戦の実現性をテストするための戦争演習と実践を想定した「極寒期訓練」を展開した。
14日には、延坪島海上水域を作戦部隊とした緊急出撃展開と作戦隊群の編成、火力攻撃演習を行い、20日には同水域に2隻の戦闘艦を増強した。


米韓連合軍の華々しい合同軍事演習は「北朝鮮の出方次第ではいつでも戦争できるぞ」と見せつけているのであろう。あるいは本気で「第二次朝鮮戦争」を計画しているのか?

仮に、第二次朝鮮戦争が勃発した場合、米太平洋軍が主力となって韓国を支援することになる。在日米軍(空軍14240人、海兵隊15533人、海軍4602人ー2004.9現在)に加え、グアム、アラスカから戦闘爆撃機多数が馳せ参じる。我が海上・航空自衛隊も総力を挙げて米韓両軍を後方支援する。海上保安庁巡視艇が日本海、対馬海峡を警備する。

第6:第二次朝鮮戦争又は北朝鮮動乱への介入は、米・韓・中・日・(露)の4か国連合軍が主体となる。

西海(黄海)軍事境界線上で、北朝鮮と韓国の沿岸警備艇が軍事衝突したことを契機にして、朝鮮人民軍と米韓連合軍が戦闘状態に突入する場合、米軍は、韓国・日本政府ばかりでなく中国政府と緊密な連携をとると想定される。

米韓連合軍とこれを全面支援する自衛隊が戦闘態勢に突入した場合、中国人民解放軍は中朝国境全域を封鎖すべく30万人から50万人程度の陸軍並びに戦闘機多数を配置する。米韓連合軍が北朝鮮領内に進撃するのを待って、中国軍が北方から北朝鮮領土に進攻する。日本海は米韓両軍と自衛隊艦艇並びに潜水艦が埋め尽くす。黄海は中国海軍、韓国海軍並びに潜水艦が埋め尽くす。

ロシアは北朝鮮に鉱山の採掘権や港湾の租借権を持っているから、ロシア陸軍は露朝国境から北朝鮮に侵攻、ロシア太平洋艦隊は米韓日海軍に合流し北朝鮮領海内に侵攻する。「戦後の発言権確保」を求めて動く。

第二次朝鮮戦争は、朝鮮人民軍と赤衛隊の武装解除、核兵器の廃棄、韓国の半島統一、半島の永久的非核化、善隣友好関係の構築並びに中国・ロシアの既得権保護ということになる。

(まとめ)

米軍のイラクからの撤兵、イランとの対話、アフガンにおけるカルザイ政権とタリバンとの協議の進展などを勘案すると、米国は遠くない将来、イラク・アフガンに若干の兵力を残して撤退する可能性が高い。イランとの関係も急速に改善するかもしれぬ。

オバマの目は朝鮮半島に向けられている。あのベトナム戦争への米軍介入を開始したのは、オバマが敬愛するケネディであった。米国の民主党は単なるリベラルではない。何よりも国家第一主義の伝統を持っている。さらに、軍産複合体は「大規模な戦争」を欲している。ゲリラとの戦闘では飯が食えない。

国内経済が急速に悪化し失業者が急増している中国にとっても、国民の不満を「戦争」に向けるメリットは大きい。ロシアも右に同じだ。韓国のメディアも戦争ムードを盛り上げている。首都ソウルが第一派(100・200発のミサイル)の攻撃で若干の被害を受けるかもしれぬが、北朝鮮のミサイル基地は米国の戦術用核ミサイルで瞬時に撃滅できる。

我が国もこれから益々景気が悪くなる。気分転換ばかりでなく、経済が回復するためにも戦争特需は干天の慈雨だ。潜在的な戦争待望論がある。

あとは、朝鮮人民軍がいつ暴発してくれるか?である。朝鮮人民軍を解体する程度の戦争は、イラク・アフガンの戦争が終結するのを待つこともあるまい。第二次朝鮮戦争の主力は韓国と中国の」両陸軍になるはずだ。米国は空軍と海軍が主体となるはずである。これらの部隊は、イラク・アフガン戦争の役目が終って余裕ができている。

我が国もそろそろ「有事即応」できる挙国一致の翼賛型政治体制を整えるべきである。中国の「国家転覆扇動罪」を模倣する必要はないが、内乱又は騒擾を企む朝鮮総連内過激分子並びにこれに呼応するであろう極左暴力集団を暴発前に鎮圧できる法整備に着手すべきだ。

法整備が整うまでの間、刑法第81条(外患誘致)、同第82条(外患援助)と、以上の未遂罪を規定した同第87条並びに同第87条(予備又は陰謀)を適用して断固鎮圧できる態勢を整えるべきだろう。、





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2008年09月13日

北朝鮮は金正日独裁体制から「暫定的集団指導体制」に移行した。いよいよ始まる権力闘争と内部分裂。

朝鮮労働党金正日総書記が脳内出血で倒れたとの報道が世界を駆け巡っている。中国から医師団が派遣され治療にあたっているが、術後経過については「ベッドから起き上がれない」ほどの重症説から「日常生活に復帰できる」程度の軽傷説まで諸説ふんぷんである。いずれにしても、金正日独裁体制が崩壊し、北朝鮮動乱が始まるという見解で一致しているようである。

第1.北朝鮮の崩壊を睨んだ米中・米韓協議が始まった。

1.米FOXテレビは11日、米政府高官の話として、北朝鮮の金正日総書記の重篤説を受けて、米国と中国が(北朝鮮)内部の混乱や体制の崩壊が起きた場合の対応について、協議を開始したと伝えた。

2.13日付け韓国・東亜日報ウエブサイト日本語版は、北朝鮮の急変事態に備えた韓米両国軍の対策案である「作戦計画5029」の作成作業段階に入った。韓米間の安全保障協議では、韓半島の統一過程で、韓国が主導権を行使する点を確認し、統一後の韓半島情勢や米国、中国などとの関係定立の問題も話し合われたという。(韓国)政府関係者は、米国側が「統一後の中国との関係で韓半島内の緩衝地帯が必要だという意見を述べた」と聞いている旨述べた。
(1,2は、12日付け産経ニュースより抜粋)

以上は「北朝鮮が崩壊したことを前提とした米中韓の動き」である。やや「先走り」という趣があるが、「金正日失脚」は近隣諸国の悲願であるからやむをえない。だが、金正日独裁体制が崩壊しても、即「北朝鮮が崩壊する」とはいえない。つまり、金正日独裁崩壊→集団指導体制への移行→指導各勢力の指導権争い→権力闘争の激化→内紛・内乱→北朝鮮の政治体制崩壊という順序をたどるはずだ。60年続いた金日成・金正日独裁体制の崩壊が「ある日突然」ということはありえない。


第2.金正日独裁が崩壊し「集団指導体制に移行した」と疑われる事実

13日付け韓国・朝鮮日報ウエブサイト日本語版は、12日付け朝鮮労働党機関紙労働新聞の「心を一つにして団結しよう」と題する社説を紹介している。(以下抜粋)

1.革命の首脳部(金正日総書記)を中心として、強固に団結し、首領(金正日総書記)を決死の覚悟で守りつつ、日々の闘争と生活を輝かしいものにしていかなければならない。

2.領導者(金正日総書記)を中心として、1000万国民の一心団結・主体根幹(主体思想を根幹とする体制)の象徴であり、あらゆる奇跡と変化の根本的な源だ。全党、全軍、全人民が革命の首脳部の思想と領導を、心を一つにして受け入れていかなければならない。

以上の文章で不可解なのは、括弧の部分である。おそらく朝鮮日報の記者が「金正日健在」を示すために付記したものであろう。だが、括弧に(金正日総書記)を挿入すると文意が理解できなくなる。

前記1で「革命の首脳部(金正日)は強固に団結し→首領(金正日)を決死の覚悟で守るべし」というのだ。金正日が金正日自身を守護すべしということになる。つまり括弧内の(金正日総書記)という言葉は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の原文に何者かが意図的に挿入した疑いが濃厚である。原文は「革命の指導部(暫定的集団指導部)は一致団結して、病魔と闘っている金正日を決死の覚悟で守護すべき」と主張していると考えてよい。括弧の(金正日総書記)を削除すると、それ以外の理解をすることはできない。

前記2で、金正日総書記は「領導者」とされている。つまり、金正日は主体思想(チェチェ思想)の根幹だというのだ。精神的指導者又は「神仏化された指導者」とみなしている。これを前提とした上で、「全党、全軍、全人民は革命の首脳部(暫定的集団指導部)の思想と領導を、受け入れるべし」と唱えているのだ。

現在「革命の首脳部」に権力が移行し、北朝鮮国内の混乱を未然に防止する作業が開始されたと考える。つまり、暫定的集団指導部が「金正日を神格化して精神的支柱とし、北朝鮮の全党、全軍、全人民の心を一つにまとめる作業が始まった」のだと考える。

緊急事態であるから、暫定的集団指導部は「朝鮮労働党や朝鮮人民軍内の各勢力が談合してとりあえず立ち上げた組織」だと考える。豊臣秀吉没後の「徳川・毛利・前田・石田ほかの」集団指導体制と同じだ。

第3.金正日独裁体制の崩壊による権威と権力の空白

江戸時代の我が国では「権威は天皇」「権力は徳川将軍家」と二層構造であった。だから将軍が交代しても、政治形態が揺らぐことはなかった。北朝鮮は「権威も権力」もすべて金正日が独占している。北朝鮮は金正日への個人崇拝と権力の集中で維持されている国家である。誰もこれに代わることができないシステムである。金正日も権威づけのために何十年も準備してようやく築いた地位だ。だが、権威を継承すべき後継者は育っていない。

北朝鮮において金正日は「扇の要」である。「扇の要」がはずれたならば、扇はバラバラに分解する。独裁者は自分にとって代わるおそれのある「扇の要役」を準備することは避ける。信頼できる息子でもおれば、金日成が行ったように「後継者育成」の措置をとったかもしれぬ。金正日には「おめがねにかなう」息子がいなかったのであろう。だから後継者を指名することができなかった。

第4.北朝鮮における暫定的集団指導部が分裂し崩壊する背景

1.改革開放?自力更生?

従前から、長男の正男と義弟の張成澤は中国派(改革開放派)といわれてきた。つまり「外資導入による急激な経済発展路線」である。改革開放派の主張が一部実現したが、実効性が上がることはなかった。おそらく「強力な反対勢力」が中国やベトナム方式の改革開放政策阻止に動いたのであろう。金正日は両勢力の間で「右顧左眄せざるを得なかった」といえるのではないか。だから、すべての政策が不徹底に終わった。

9月5日付け朝鮮総連機関紙朝鮮新報ウエブサイトは、8月31日付け朝鮮労働党機関紙労働新聞の「自力更生は、食糧問題解決のカギ」と題する以下の論説を報道した。(抜粋)

「国の人的、物的、技術的、財政的な潜在力を効果的に動かして活用し、社会経済生活の多くの割合を食糧および農業問題の解決に充てられるようにすることが、この事業で成果を遂げる重要な要因となる。非同盟諸国、発展途上国は集団的自力更生の原則から、南南協力をいっそう強化すべきである。」

この主張は「社会主義的計画経済を放棄して資本主義経済政策を推進している中国やベトナムを意識した」ものであろう。そして、キューバやミャンマーと同様「社会主義路線を貫徹すべし」と主張するのだ。「連帯すべき相手は、米国や日本の独占資本ではなく、非同盟諸国や発展途上国である」とする旧来の主張である。

朝鮮労働党における「改革開放派」と「自力更生派」の対立は、社会主義を堅持するか?資本主義化を進めるか?という思想的対立であるから、妥協できる余地はない。二者択一、二律背反の「敵対的な矛盾」である。倒すか?倒されるか?の闘争が始まる。「金正日という重しがとれた」から、日頃の不満が双方から噴き出す。

2.親中国派、親ロシア派、親米国派の争闘

改革開放政策の導入・促進を唱える長男の正男や義弟(正日の妹婿)らが「親中国派」であることを疑うものはいない。昨年だったが、義弟の張成澤が乗った高級乗用車が人民軍のトラックに追突される事件があった。張成澤は中国の病院で治療を受けると想定されるところ、モスクワの病院に入院して治療した。同時期、北京大学に在籍する北朝鮮留学生約50人が全員中退する事件があった。中国共産党胡錦涛指導部と金正日の間で、深刻な対立があったのであろう。だから、親中国派で、中国に知人も多い義弟であるが、中国で治療することを許されなかった。

北朝鮮人民軍は、中国に内緒で「ミサイル発射実験と核実験」を強行した。中国人民解放軍並びに中国共産党胡錦涛指導部が激怒したことはいうまでもない。「飼い犬にかまれた」と感じたはずだ。北朝鮮が核ミサイルを配備すれば、中国の大半が射程距離に入る。何より「中国の脅し」がきかなくなる。中国を宗主国と仰がなくなる。

ロシアは朝鮮半島へのシベリア鉄道の乗り入れ、鉱山開発利権獲得など着々と実績を積み重ねている。中国とは利害が競合する。北朝鮮が「中国と不和になるチャンス」を待っている。そして手を差し伸べる。

親中国派と対立する軍部(一部か、全体かは不明)は、ロシアとの連携を深めざるをえない。ロシアは在北朝鮮大使館の陣容を充実させ、虎視眈眈、チャンス到来を待っている。もちろん「親ロシア派の育成」にも注力している。

ロシアの北朝鮮接近政策は当然ながら「中国側に筒抜け」であるから、中国も必死の巻き返しを行い「親中国派の育成」に励む。

親米派は6か国協議の首席代表金桂冠外務次官を筆頭とする外務官僚であろう。吹けば飛ぶような小勢力だ。事を起こせる力があるとは思えない。

第5.朝鮮(韓)半島統一の行方

前述した如く、韓国政府は「韓国主導の半島統一」を狙った有事即応体制の整備に励んでいる。同盟国である「米国」に対して「韓国主導による統一」を働きかけている。若干「取らぬ狸の皮算用」という感じがしないでもない。「半島統一は民族の悲願であろう」から韓国政府が「逸る気持を抱く」のも無理はない。しかし、事は単純ではない。

米国政府の高官によれば中国側は「韓国が半島を統一する場合は、中国との間に緩衝地帯を設けるべき」と主張しているという。中国歴代王朝にとって半島は、国土防衛線であった。彼らは「半島は中国の藩屏」と公言した。だが、現代の戦争では朝鮮半島の藩屏としての役割が低下した。中国王朝防衛の意義が低下した。

という訳で、中国の狙いは「鉱物資源の世界的宝庫といわれる北朝鮮西北部の山岳地帯」を獲得することであろう。「平壌以東は韓国に譲ってもよいが、鉱物資源は中国が頂戴したい」というハラではないか。

北朝鮮有事を想定していたのか、中国は何年も前から「東北工程」なる少数民族史の研究を行ってきた。「中国東北(旧満州)から北朝鮮を支配した高句麗や渤海は中国の少数民族である」という研究成果を発表した。もっとも、それ以前、漢の武帝が現在の平壌付近に「楽浪郡」をおいて直轄領としたから「歴史を鑑とするのが好きな中国」から見ると「もともと半島は中国の領土だ」という認識かもしれぬ。

北朝鮮の西半分が中国の領土となれば「朝鮮人自治区」ということになろうか。東北部には現在でも「朝鮮人集落が多い」というから、中国は北朝鮮の一部を併合するにつき抵抗感がない。米国が中国と韓国の間に入って仲介し「タシテ2で割る」方式を編み出すかもしれぬ。

ロシアは不凍港を求めて、日本海沿岸部の割譲を求めてくるかもしれぬ。いずれにせよ、韓国が期待するような「半島統一」は困難といわねばならぬ。新帝国主義時代の列強は甘くはない。厳しい対決なしに「韓国主導の半島統一」が実現することはありえない。

(まとめ)

北朝鮮の権力が「暫定的集団指導部」に移行したとする。「扇の要」を失った北朝鮮は各党派に分裂し内紛を起こす。武力衝突が起こるかもしれぬ。中国、ロシアそして米国が北朝鮮の各勢力を支援して「火に油を注ぐ」から権力闘争がますます激化する。

最終段階では、中国、ロシア、米国、韓国が軍隊を派遣し「朝鮮人民軍並びに労農赤衛隊等の武装解除を行う。保有する核兵器を廃棄する。そして、周辺大国による北朝鮮の分割協議が始まる。

米中露に伍して韓国がどこまで権利を主張できるか?はなはだ心もとない。我が国は「拉致被害者の全員救出」を終えたならば、高見の見物をしておればよい。そのうち「カネと技術を出してもらえないか」と声がかかるはずだ。焦って火中の栗を拾う必要は全くない。

拉致被害者全員救出の可能性が出てきた。突然、「霧が晴れる」かもしれぬ。期待をもって経緯を観察したい。



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2008年06月20日

中国からの離脱を提言した北朝鮮の機密文書を読み解く。

中国国防大学国際戦略研究部所属の研究者である仮名、綾野(リン・イエ)が作成したレポートが「中国が予測する北朝鮮崩壊の日」と題する文春文庫版で発表された。訳者は富坂聡である。その中に標題のテーマで論じている箇所がある。(128ページ以下)

さすが、中国軍の北朝鮮に関する諜報網というほかはない。我が外務省はこれまで、「北朝鮮に影響力を持っている中国」という前提で、拉致問題の解決のため中国当局の斡旋と仲介を期待してきた。国交のない我が外務省は「中国頼み」という独立国家としてあるまじき愚行を行ってきたのである。北朝鮮に関する独自の情報収集を行わず他力本願で外交を行い、時間を空費したのであった。

「外務省不要論」が出るのは当然である。家柄の良さで採用された外務省官僚は高給をとるだけで、国家国民のために仕事をしているのか?と言わざるを得ない。起訴休職外務事務官佐藤優は外務官僚の無能ぶりを暴露しているが、彼の指摘もマユツバではないと思えるようになった。


(以下、綾野(リン・イエ)が作成したレポートを要約して報告する。)

1.2006年10月、北朝鮮の外交官と国際問題を専門とする研究者が参加する勉強会で、「中国不要論」という情勢分析レポートが共同でまとめられ、それを最高指導部に提出する動きがあった。レポートでは、北朝鮮を封じ込める国際社会の環を突破するためにも、外交政策を決める上で中国と一定の距離を置き、多角多様な全方位外交に転じるべきだ、とする驚くべき主張が記されていたというのだ。以下は、北朝鮮の提言書の概要である。

(1)中国は社会主義の看板を掲げているものの、実質は資本主義国家となりつつある。中国は米欧や日本への急接近を行っている。従来、朝中間で存在した戦略的な利害はもはや失われつつある。
(2)中国政府はここ数年、「実務外交」と「全方位外交」の方針に転換、いとも簡単に長年の盟友(北朝鮮)を裏切って国際社会に迎合した。例えば、中韓国交樹立であり、黄長華という祖国逃亡犯への対応並びにミサイル発射実験・核実験後の共和国(以下「北朝鮮」という。)に対する中国側の言動である。
(3)「朝中両国間の戦略的同盟関係」を理解する長老政治家や軍人が世を去り、相互理解のチャンネルが消えてしまった。現在の中国共産党指導部・外交当局は目先の国益を重視する功利主義者ばかりになった。
(4)朝中間の血と命で築いてきた友好関係はもはや戦略的意義も現実的意義も失われた。
(5)中国はいま露骨に対北朝鮮政策を見直し、北朝鮮との関係維持をアメリカや日本への外交カードとして利用している。
(6)中国経済が急速に成長し、拝金主義が国内に蔓延、朝野にはアメリカに媚びる風潮が満ちるようになった。それにつれ北朝鮮の存在を馬鹿にするような言動が、最近とくに目立つようになった。
(7)中国の北朝鮮に対する経済援助はアンタイドで行われてきたが、いまではさまざまな条件が付加されるようになった。さらに、経済援助の停止や削減というカードをちらつかせて政治的圧力を加えるようになった。
(8)北朝鮮はもはや、これまでのように中国の顔色を窺いながら外交を行うことはできない。中国に頼るばかりでは局面の打開ができない。中国側は朝鮮半島の統一も、朝米関係や朝日関係の改善も望んでいない。
(9)北朝鮮が新たな外交の勝利を得るためには、従来の対中政策を清算し見直さなければならない。中国と少し距離を置き、独自の外交路線からアメリカ等との国々と付き合えば、そこから得られる実利は中国を通じてえられるものよりはるかに大きい。
(10)たとえ朝中両国が反目し関係が悪化して最悪の状態に陥ったとしても、軍事衝突に発展するとは考えにくい。
(11)中国の経済援助に頼る割合は年々減っている。一方、外交政策を転換し、国際社会においてさまざまな駆け引きを行うなかで、中国から得た援助の何倍にも相当する経済援助を引き出すことに成功した。とくに南朝鮮(韓国)やアメリカ、日本には期待できる。

2.以上の提言書に対し、(親中派の)外務省首脳らは慎重な意見を述べたとされるが、金正日を含む最高指導部ではかなりの支持を得たともいわれる。この中国支配外交への反感は、早速、外務省人事になって現実のものとなった。

3.北朝鮮外務省中国課の幹部人事及び朝鮮労働党や軍の中国貿易担当者は従来親中国一色だったが、中国語さえも分からない幹部をあてるようになった。その最たるものが、6か国協議北朝鮮代表の首席代表人事である。第1ラウンドの首席代表は金永日外務次官で、中国の外務官僚のトップとも親しい親中派であった。第2ラウンドになると、首席代表は突如「金桂寛外務次官」に差し替えられた。

4.金桂寛外務次官は外務省アメリカ担当最高責任者である。金正日からも絶大なる信頼を得ているとされる。外務省内での金桂寛外務次官は、省内の多数派である親中派とは一線を画し、常に米朝関係の重要性を強調し、正面交渉の必要性を主張しつづけてきた人物である。「高ぶらず、卑屈にならず」といった堂々たる態度で交渉する。交渉の相手としてはなかなか扱いに困るタイプであり、中国の若い外交官は「古だぬき」とあだ名をつけている者もいる。


以上、中国軍の国際戦略研究所研究員(現役陸軍大佐級)のレポートから抜粋した。

北朝鮮外務省や専門家集団が練り上げた提言書びに同提言書に対する金正日や北朝鮮外務省首脳の見解等を中国側はいつ頃つかんだのか?おそらく2007年初めには把握していたのではあるまいか。

とすれば、中国外務省は「北朝鮮は中国の思惑どおり動かない」と認識していたはずだ。だが、「北朝鮮の宗主国である中国」を売り物にしている中国としては、この事実を隠ぺいし、米国や日本に「思わせぶりな態度」をとって、北朝鮮に対する中国の指導力に期待を抱かせ続けてきたというべきである。米国も「中国の調整力に期待して丸投げした」ほどである。

我が外務省は「拉致問題を進展させたい」と焦って中国外務省に泣きつき「北朝鮮との仲介」を懇願したのであった。中国外務省は、日本外務省の見識のなさにあきれると共に、だが本音を秘匿したまま「よしよし、分かった。努力してみる」とかいって、日本に貸しをつくったのである。我が外務省幹部は感謝感激「よろしくお願い申し上げます」といって、「この借りはいずれお返ししますから」という態度を示したに違いない。

中国外務省は「宗主国の役割を演じるにも忸怩たるものがあった」であろうが、そこはそれ、日本との駆け引きで有利に立つための小道具と思えばハラは立たない。何しろ「口約束」ほど安いものはない。元手はゼロである。口約束は正式な契約ではないから「ウソも方便」何とでも言い逃れすることができる。


我が外務省は、北朝鮮に関する情報収集も行わず、「他人(中国)のふんどしで相撲をとろう」というのだからあきれる。厚顔無恥とはこのことだ。我が外務省は我が国のインテリジェンスのなさを世界に宣伝して回る官庁といっても過言ではない。という経緯から判断すると、我が外務省が6か国協議の北朝鮮首席代表が金永日から金桂寛に交替した政治的背景、つまり北朝鮮の外交が「中国からの離反」と「対米協調」に路線変更したと理解していたとは思えない。

(中国に馬鹿にされる我が国の外交とインテリジェンス)

前述した綾野(リン・イエ)は日本の北朝鮮外交を「日本にはいまだに独自の北朝鮮情報収集システムもなく、情報を共有するという形でアメリカや韓国から提供されている。対北朝鮮外交の舞台にしても、ほとんど指定されるがまま北京で行うため中国の協力も不可欠である」と指摘してくれる。御親切にも「可哀想で見ておれない」と同情してくれている。

一方、北朝鮮に対して綾野(リン・イエ)は「日本には少なくとも2000人以上の北朝鮮の情報工作員がおりさまざまな形で潜伏して活動を行っている。北朝鮮の工作員には日本人、在日中国人、在日アメリカ人もいる。」という。

北朝鮮の工作員が2000人以上だとすると、中国の工作員は1万人以上いるのではないか。中国の対日工作員は、我が国を相手にしているだけでなく、北朝鮮、米国、ロシア、韓国など、日本で活動中の世界各国の工作員を監視する役目もあるのだろう。だから、綾野(リン・イエ)は北朝鮮工作員の国籍を例示して見せたのだ。

(まとめ)

米朝協議の経緯を見ると、2006年10月の北朝鮮外務省の提言書の線に沿って動いていることが分かる。おそらく北朝鮮側のリーダーは、金正日の密命を受けた知米派の金桂寛外務次官(6か国協議北朝鮮首席代表)であろう。

金桂寛外務次官は、北朝鮮外交を180度転換させるべく米朝協議に臨んでいるのではないか。狙いは「中国の服属国からの脱却」と「北朝鮮のベトナム化」であろう。米国や日本との国交回復を実現し、欧米や日本の大企業を誘致、合弁企業を立ち上げることで、飛躍的な経済発展をめざすという路線ではないか。

北朝鮮が米国や日本との国交回復に動く時、中国の立場は微妙である。北朝鮮が日米側に取り込まれることは中国にとって「中朝分断工作」と見える。北朝鮮権益を独占できなくなる。だから中国が「妨害したい」と思うのは自然である。しかし、米国や日本との貿易で食っている中国としては露骨な方法による妨害工作を仕掛けることはできない。

中国は北朝鮮に向かっては「日米との緊密な経済関係を持ったならば、金正日体制は崩壊する」と脅迫する。日本に向けては「横田めぐみさんは処刑された。北朝鮮は1000人程度の日本人を拉致する予定であった」と宣伝し、日本国民の北朝鮮への憎悪を誘発すべく攪乱工作を仕掛ける。

中国歴代王朝と同様共産党王朝も「孫子」を数千数万回熟読し、諜報・謀略戦では世界1であろう。だが、諜報と謀略を駆使しても歴代王朝が崩壊したように、滅びる時は滅ぶのだ。大河の流れを諜報や謀略という「小細工」で挽回しようと思っても土台無理な相談だ。


北朝鮮が「中国の服属国家から脱出する」のは自然の理である。北朝鮮は中国の呪縛と幻影から脱することで、新たな道を切り開くことができる。当面の課題は、カルト的専制国家から軍主導の「開発独裁型国家」への転進である。

何十年先かは不明であるが、北朝鮮が韓国との経済格差を縮め、民主主義システムを導入する段階に達すれば、北朝鮮と韓国が話し合いで統一できる道が開ける。体質が違いすぎる国を無理矢理合体させれば「生体不適合反応」が発生し個体は死ぬ。60余年間のブランクは小さくない。

北朝鮮が生き延びる方法は一つしかない。中国から自立して、欧米・日本との経済関係を発展させるベトナム型である。その意味で、金桂寛外務次官の手腕と力量が試されている。

天国から地獄にぶら下がった蜘蛛の糸は1本しかない。無理をすると切れる。

白髪爺 at 21:51|PermalinkComments(0)clip!

2008年06月14日

日朝協議の合意事項「よど号ハイジャック犯人の引き渡しと経済制裁の一部解除」の意味を考察する。

我が国におけるハイジャック事件の先駆けとなった「よど号ハイジャック事件」は1970年3月31日に発生した。その概要はおおよそ以下のとおりである。

1.共産主義者同盟(共産同)赤軍派の結成(1969.8)

共産同赤軍派は共産党や社会党など左翼の「平和的手段による社会主義革命路線」に飽き足らず、武力によって日本革命を実現せんとする妄想的暴力革命路線を選んだ。東京・大阪・北海道などの警察署や交番を爆破する事件を繰り返し人心の動揺を狙った。大阪の杉本町交番爆破事件に影響された高校生が密造したピクリン酸爆弾を使って教師宅を爆破する事件も発生した。

1969、11、5。山梨県大菩薩峠において、非合法の軍事訓練が警察に発覚し53人が逮捕された。国内におけるゲリラの根拠地づくりが困難であることを悟ったのか、中国や北朝鮮等、当時我が国と敵対関係にあった社会主義国家に革命の根拠地をつくる「前段階武装蜂起論」に転換した。

共産同赤軍派は、無謀な暴力事件を繰り返した結果逮捕者が続出し組織は衰退した。その末流が「よど号ハイジャック事件」と、その1年半後に発生した連合赤軍による「浅間山荘事件」である。さらに、その一部はレバノンのイスラム原理主義国際テロ組織の一翼を担ってきた重信房子率いる日本赤軍である。

2.「よど号ハイジャック事件」の概要

1970年3月15日。赤軍派議長塩見孝也が「H・J」と書かれたハイジャック計画に関するメモを所持したまま逮捕された。公安警察はこのメモを「よど号ハイジャック計画」とは理解することができず事件発生を未然に防止することができなかったという。だが、責任者を逮捕された赤軍派は警察にハイジャック計画が発覚するのを危惧し、ハイジャックを前倒し実行した。

(よど号ハイジャック実行犯)

田宮高麿・・・赤軍派軍事委員長。1995年11月平壌で病死。
小西隆裕・・・北朝鮮在住(国際手配中)
田中義三・・・2000年6月日本警察に逮捕され、懲役12年。2007年1月肝臓がんで死亡。
魚本公博・・・北朝鮮在住(国際手配中)
吉田金太郎・・・1985年病死(強制収容所送致?)
岡本武・・・・1988年日本人妻と共に土砂崩れの事故で死亡。死因の真偽は不明
若林盛亮・・・北朝鮮在住(国際手配中)
赤木志郎・・・北朝鮮在住(国際手配中)
柴田泰弘・・・1988年日本警察に逮捕され、懲役5年。1994年満期出所。

なお、ハイジャック実行犯の日本人妻、森順子および若林佐喜子はスペイン等で日本人を拉致した容疑で国際手配中である。

(よど号ハイジャック事件の被害者等)

日本航空351便(ボーイング727−89型機。通称「よど号」)。乗員7人、乗客131人。日航機を強奪した罪(強盗)、乗員・乗客を略取・監禁した罪。

ハイジャック犯人は「無罪帰国を求めている」というが、刑事訴訟法第255条により国外逃亡時に時効が停止しているから、我が政府は「無罪帰国」を認めていない。

(以上の事実は、ウイキぺディアを参照した。)


第1の問題(なぜ「よど号ハイジャック犯引き渡しの合意」がなされたのか?)

6月14日付け日本経済新聞は1面トップで「よど号犯ら6人、引き渡し協力」と題する記事を掲載している。「よど号ハイジャック犯の引き渡し」に応じた北朝鮮の意図を同紙は「米国によるテロ支援国家指定の解除につなげる狙いがあるとみられる」と解している。

北朝鮮は大韓航空機爆破事件、日本人・韓国人拉致事件、朴大統領襲撃未遂事件等のテロ行為を実行してきた犯罪国家である。さらに、日航機ハイジャック犯人を長期間匿い保護してきた。日本人拉致の手足として利用した。さらに、イラン、シリアなど中近東諸国に対し核関連施設の輸出や同技術者の派遣を行ってきた。イスラム原理主義テロ組織への武器輸出も頻繁に行ってきた。北朝鮮が「テロ国家であり、テロ支援国家である」ことを疑うものはいない。

テロ国家又はテロ支援国家と認定されたならば、世界各国と正常な国家関係を持てないことはいうまでもない。「朱に交われば赤くなる」とみなされるのは嫌だから、各国とも北朝鮮との関係に深入りするのを避ける。テロ支援国家の本家本元である中国は子分の北朝鮮と抵抗なくつきあっている。中国は北朝鮮に経済支援をする見返りに、鉱物資源の採掘権確保や日本海沿岸羅先港の長期租借権を入手するなど、犯罪国家である北朝鮮から権益をむしり取る等やり方がえげつない。

北朝鮮が正常な国家に生れ変わるためには、「過去から現在まで続けているテロ行為やテロ支援行為」の清算を迫られているということだ。隠ぺいすることのできないテロ支援行為の一つが「よど号ハイジャック犯人を匿い、保護している」という事実である。

金日成の北朝鮮にとって「よど号ハイジャック犯が北朝鮮に亡命を求めてきた」ことは青天の霹靂であったろう。当時、北朝鮮は日本共産党と蜜月関係にあり、日本共産党と敵対する共産同赤軍派を匿い保護すべき理由はなかった。金日成が「よど号ハイジャック犯」を受け入れ、匿うことに決定した背景は以下のような事情があったとみなすことができる。

当時北朝鮮は「アメリカ帝国主義とこれに追従する日本の保守反動勢力」を打倒すべき敵とみなしていた。そこで、日本の暴力革命を企てる共産同赤軍派は思想的背景は異なるものの、広義に解釈すれば「共産革命を推進する仲間」とみなすことができた。世界の赤化革命を主導したいと考える金日成は革命家(亡命者)を受け入れ匿うことで、社会主義陣営や革命闘争を行っている世界中の団体・個人から「頼りになる北朝鮮。尊敬できる北朝鮮」と評価してもらえるメリットがあった。このような理由で北朝鮮は「よど号ハイジャック犯人」の受け入れを認め、特別待遇で厚遇したと見ることができる。

共産主義陣営が崩壊し、世界の赤化革命の幻想が潰えた現在、北朝鮮にとって「よど号ハイジャック犯人」を匿うメリットがなくなった。有害無益な存在になった。だから「対日交渉の手駒」に利用した。

第2の問題(「拉致問題の再調査を約束」と出し渋る北朝鮮の思惑を読み解く)

「よど号ハイジャック犯の引き渡し」は、我が国民大衆にとって、感謝感激する話題ではない。忘れ去られた亡霊の如きもので、国民大衆の関心外である。もっとも、我が警察にとって共産同赤軍派(連合赤軍・日本赤軍)は、警察や交番を爆破した不倶戴天の敵である。しかも国外逃亡して「時効が停止している」から、犯人検挙に意気込むのは当然である。

我が国民の最大関心事は「拉致被害者」の問題である。もちろん、北朝鮮も日本国民の感情は熟知しているから「人質を高く売りつけよう」と考えている。

日朝平壌宣言の合意が「とんとん拍子」で想定以上にうまく運んだから、金正日は、気が緩んで気前よく「蓮池薫さんほか」を日本に帰国させた。結果、何の代償を得ることなく人質を日本に取り返された。日本国民の圧倒的多数が北朝鮮を悪意の目で見るようになった。加えて、北朝鮮の日本支店である朝鮮総連に対する度重なる捜索、朝鮮総連関連施設への固定資産減免措置の取消しを行う地方自治体が続出した。在日朝鮮人の金城湯池であったパチンコ業界も「賭博性が高い」という理由で出玉の制限が厳しくなり客足が大きく減少、経営が悪化した。万景峰号の入港禁止でヒトとモノの往来ができなくなった。祖国との交流を断たれた朝鮮総連は離脱者が相次ぎ、組織崩壊の危機に追い込まれている。

以上が、北朝鮮の心境であろう。北朝鮮が「日本に経済制裁を解除してもらい、朝鮮総連や在日朝鮮人への特別待遇を継続又は復活させてもらいたいと考えている」ことは間違いない。それ以上に、「凍結中の日朝平壌宣言の趣旨に沿って大規模な経済支援を早く実行してもらいたい」と願っているのは明らかだ。北朝鮮がベトナムと同じように経済発展するためには、日本の経済支援と我が国を含む欧米企業を誘致する以外にないと考えているはずだ。

北朝鮮は焦っている。昨年の大洪水の被害で、本年は大規模な食糧難が予想されている。いつまでも6か国協議を続けている訳にはいかない家庭の事情がある。だが、日本人拉致問題では「日本側に騙され酷い目にあった」という心理的外傷体験がある。日本を信用して「拉致被害者を一時帰国させたら」、そのまま日本に残留してしまった。何の代償もなく人質を取り返されてしまった。二度と同じ過ちはできない。という訳で、「確実な保証がない限り、日本人拉致問題を交渉のテーブルに乗せることはできない。日本側と交渉できる最後の切り札を手放すことはできない」という心境であろう。

今回の日朝協議で北朝鮮は「拉致問題の再調査をする」と態度を若干変えた。北朝鮮が「手間と予算をかけ、危険を犯して拉致した日本人」の所在や現状を把握していないということはあり得ない。常に厳重な監視下に置いているはずだ。だから「再調査」しなくとも、いつでも資料は出せる。要するに「日朝平壌宣言」を日本が確実に履行する見通しが立つまで、拉致問題という切り札を出す訳にはいかないということだろう。

最近、朝鮮総連広報誌「朝鮮新報」ウエブサイトで「日朝平壌宣言の推進」なる記事が増えた。韓国李明博政権への非難が増えているのに対し、我が福田政権への非難記事が消えた。北朝鮮も「日朝平壌宣言を早く実行段階に移行したい」と考えている証拠かもしれぬ。

敵(金正日)は我が国を警戒している。「また騙されるのではないか?」と疑っている。だが「先立つものが欲しい」とも考え、アンビバレントな心境にある。心の動揺を隠すために「日本なんぞ関係ない。6か国協議に参加する資格はない」などと強硬姿勢を示し虚勢を張っている。

その日暮らしの貧乏国家、犯罪に手を染めことでようやく生存できている破産国家北朝鮮が、世界第1位の債権国家日本、世界第2位の経済大国日本と対等な交渉を行うためには「虚勢を張る」ことと「日本人拉致問題」で粘るほか手段がないのだ。

今回の日朝協議での合意点は、交渉の入口に立ったということだろう。北朝鮮は「日本に騙されないように」と用心しているから、一度に話が進展することはない。徐々に「外堀を埋め」懐柔することで良いのではないか。

最終的には「日本人等拉致被害者全員の救出」「北朝鮮に対する大規模な経済支援」と引き換えに「北朝鮮国内の鉱物資源の共同開発」を実現すべきであろう。

我が国が全面的に支援できる態勢が整った時、北朝鮮もベトナムと同様「高度経済成長が可能となる」というべきであるから、我が国が焦る理由は全くない。後は「敵の出方」を見て判断し決断すればよい。

今回、政府が行った経済制裁の一部解除は「おおむね妥当」といえるのではないか。勝負はこれからだ。「敵も焦っている」から安易な妥協は控えるべきだ。






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2008年05月25日

日米韓三国軍事同盟の影におびえる北朝鮮。韓国・李明博大統領誕生で破綻した「北主導の南北統一」。動揺したか?金正日

5月23日付け朝鮮総連機関紙「朝鮮新報ウエブサイト」は、20日付け朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が掲載した「朝鮮再侵略を狙った危険な動き」と題する論評の要旨を掲載した。以下1,2,3,4,5,6は朝鮮新報ウエブサイトが報じた内容の抜粋である。


1.フランスのAFP通信は、4月に行われた南朝鮮(韓国)の李明博大統領の訪日を契機に、日本の執権層が南朝鮮との包括的な軍事協定を締結しようとしていると暴露した。協定の具体的内容と日時は確定していないが、今年予定されている日本の国防大臣の南朝鮮訪問中に実現するという。日本が南朝鮮との軍事協定締結を通じて狙っているのは、われわれに対する米国、日本、南朝鮮による三国軍事同盟の構築である。

外国通信社の取るに足りないガセネタを針小棒大に解釈した独断と偏見並びに被害妄想にかられた文章である。朝鮮労働党が得意とする煽動文であるから、わざわざ論じるほどのこともないともいえる。だが、彼らが「日米韓軍事同盟の影」に脅えるのにも理由はあるから検討しておきたい。


2.冷戦終結後、米国、日本、南朝鮮の三角軍事同盟体系の戦略的重点は、冷戦時代のソ連との対決から朝鮮との対決に軌道修正された。米国は、三角軍事同盟を強化し日本と南朝鮮を対北朝鮮侵略政策の突撃隊として利用しようとしている。一方、日本の反動層は米国の侵略的な対朝鮮戦略に便乗することで、海外膨張実現の突破口を開こうと企図している。

この分析枠組は「アメリカ帝国主義とこれに追随・加担する日本独占資本」という旧来のものである。古ぼけた共産主義者の発想を羅列しただけにすぎない。なお、冷戦終結後「ソ連に代わって北朝鮮に狙いを変えた」というのも、誇大妄想といわねばなるまい。日米韓三国が「北朝鮮程度の弱小国家を主要な敵と位置づける」はずはない。彼ら特有の「朝鮮民族中心主義の固定観念に毒された」症状というほかはない。帝国主義時代の朝鮮半島の位置づけは、米・中・露が邂逅する接点に過ぎないのであって、朝鮮半島の帰属がそれ自体として世界政治の主要なテーマである訳ではない。日清・日露戦争前後も、そして現代も、朝鮮半島の戦略的位置づけが大きく変化している訳ではない。


3.(北朝鮮と韓国の)歴史的な6.15宣言と10.4宣言が採択され、我が民族同士の理念に従って統一の熱気がかって高まるなど、朝鮮半島で肯定的な情勢の変化が起こったことで、米、日、南三角軍事同盟体系はその存在自体がぼやけてきた。米国はこの事態に不安を隠せなかった。

韓国・金大中とノ・ムヒョンの容共左派政権の10年間で、韓国の軍・警察・教育を初め、国家機構全体が「親北」になった。韓国民の意識も「北朝鮮と戦争するより米国と戦争すべき」とするものが多くなる等、韓国における赤化政策は着々と成果を上げていた。ノ・ムヒョン前大統領が米国と合意した「戦時作戦統帥権を2012年に韓国軍に還収する」のも、米軍を韓国から追い出す戦略の一環であった。

金大中とノ・ムヒョン政権の中枢は、北朝鮮労働党秘密党員又はシンパで支配されていた。朝鮮労働党の傘下にある民主労働党や同党系列の民主労組はその影響力を強めていた。金大中とノ・ムヒョンが「太陽政策」という名前で米国を騙しながら、実態は金正日独裁体制に対する莫大な経済支援を行ってきたのは周知の事実だ。金大中とノ・ムヒョンの対北経済支援がなかったならば、北朝鮮の核開発は進展しなかったであろうし、何年も前に金正日独裁体制は崩壊していたのではないか。

金正日は、もう一歩のところで、韓国を懐に入れるところであった。容共左派政権がもう一代継続すれば、北朝鮮が主導して「平和的朝鮮半島統一を実現できた」と思っていたに違いない。その意味で、ハンナラ党李明博大統領が誕生したことは、金正日の野望と夢が潰えたことを意味する。韓国という大魚を釣り上げる寸前で釣り糸が切れた訳である。


4.日本と南朝鮮の軍事協定は小規模かつ不規則的に行われてきた。南朝鮮との2国間軍事協定締結のため骨を折ってきた日本は、2005年にも南朝鮮側に協定締結を提起したが拒絶された。日本が南朝鮮で政権が交代した最近になって「ついにその時が来た」といわんばかりに軍事協定締結を推進しているのは、彼らの熱意がどれほどのものかをよく表している。

日本側が「日韓軍事協定締結をしつこく働きかけてきた」とみなす北朝鮮の分析が正しいのか否かは不明である。2005年に「南朝鮮(韓国)が日本の提案を拒絶した」というから、軍事協定締結という大袈裟なものではなく、それなりの働きかけはしたのかもしれぬ。そして、ノ・ムヒョン政権中枢に巣くっていた金正日の手先である朝鮮労働党秘密党員又はシンパ勢力が、日本側の提案を拒絶したと絶賛しているのだ。


5.日本と南朝鮮との間の軍事協定が締結された場合、三角軍事同盟の構築はもちろん、それが侵略的な対朝鮮戦略の実現につながることは明らかだ。そうなれば、朝鮮半島は、世界の危険地帯になるだろう。日本の反動層の無謀な三角軍事同盟構築の策動によって朝鮮半島情勢は重大な戦争の局面に入っている。

「対決と戦争の危機を煽り、戦意高揚を図る」といういつもの手口である。これまで北朝鮮は韓国を恫喝する手段として「ソウルは火の海になるぞ」という言葉を使ってきた。それに比較すると「穏便な表現」といえるかもしれぬ。むしろ「北朝鮮国内向け」の煽りかもしれぬ。


6.われわれは自国の安全と社会主義制度を侵害しようとする敵対勢力の無分別な軍事的策動を決して傍観しないし、当然の警戒心を高めざるをえない。

要するに、金正日カルト独裁体制、換言すると「金正日一族と軍並びに労働党特権幹部」の利権を守るだけの社会主義制度を防衛しようといっているにすぎないのだ。目新しい主張は何もない。

本来であれば、例えば「米・日・南が攻め込んできたら殲滅できる体制を整えている」という威勢の良い言葉を羅列したいのであろう。だが、力関係の差は歴然としている。いかに空想的、誇大妄想的な北朝鮮であっても、米・韓・日を相手にして戦争しても勝てるとは思っておるまい。金正日独裁体制下で洗脳教育を受けた北朝鮮の軍や国民大衆だって荒唐無稽な話は信じないと分かっているから、威勢の良い言葉を使うことができないのだ。

だから、せいぜい「敵の策動を傍観しない」とか「警戒心を高めざるをえない」とかの歯切れの悪い話しかできないのだ。これでは、朝鮮人民軍や北朝鮮労働党員の戦闘意欲を高揚させることはできまい。むしろ、「もうダメか」と意気消沈するのではあるまいか。

仮に、朝鮮半島で戦争が勃発した場合、北朝鮮はロシアや中国の支援を受けれるとの幻想は持っておるまい。中国は米国や日本との関係改善を図ることに政権の運命を託している。ロシアが介入するメリットは皆無だ。朝鮮人民軍は単独で、米国・韓国・日本軍と対峙することになる。戦争が勃発すれば、おそらく1か月以内に、朝鮮人民軍100万は壊滅する。北朝鮮の国民弾圧機関も消滅し、金正日並びに一族は、自決又は亡命する以外にない。

朝鮮人民軍の一部過激派が衝動的に韓国領内に侵攻するならば、これを奇貨として朝鮮人民軍を掃討する作戦を実行すべきである。2200万北朝鮮国民は「その日の食事に追われ戦争どころではない」し、下級兵士も、生活優先で麻薬取引に手を染める等規律弛緩が顕著である。まともに戦争ができるとは思えない。

米国務省は北朝鮮に米50万トンの緊急援助をするとのことだが、その利敵行為の意味は理解できない。押しつぶした方が早いのではなかろうか。主権国家であるイラクを攻め滅ぼした米国にとって、北朝鮮を攻略する材料に不足することはない。北朝鮮は先般、中東の国際テロ組織と緊密な関係を有するシリアに核関連物資を供給した。イスラエル空軍に施設が破壊されたからその証拠は米国にも伝えられているはずだ。

かって米国は「北朝鮮が核関連物資を国際テロ組織に移転させた場合、北朝鮮の名前が世界地図から消えることを覚悟すべきだ」と威勢の良い話をしていた。それが、現在では沈黙している。不可解というほかはない。

北朝鮮有事は我が国の安全保障にとって重大な影響があるから我が自衛隊が防衛的関与をすることは当然である。航空自衛隊、海上自衛隊並びに海上保安庁は総力を挙げて米韓両軍の後方支援を行うべきだ。我が自衛隊が総力を挙げて支援すれば、北朝鮮国民を金正日の圧政から短期間で解放できる。

「日本人拉致被害者救出のため」自衛隊特殊部隊を数千名出動させ、我が国民を安全に救出する戦術を練っておくことも忘れてはならない。





白髪爺 at 11:10|PermalinkComments(0)clip!


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