プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2006年04月

ざらり・・・

「嚇しの単騎どまりが関の山か――」

 一人、上位戦線からかけ離れたラス目。オーラスを前にして点箱には赤棒一本のみ。
 
 緩手と言われても仕方がない、効率が悪いことは一目瞭然だ。
 朝から五連勝、三連勝と絶好調で迎えた十二回目の半荘。その日の勢いを象徴するかのように引き込んだ牌は 七萬 だった。

(東一局 南家 ドラ 二索

 二萬三萬三萬四萬五萬五萬赤六萬六萬六萬八萬九萬三索四索  ツモ 七萬


 好調の時は手なりで押した方が得策だ。まだ六巡目だが、手替わりや一色手を捨てて即リーの一手である。少なくとも先までの戦いではそうしていた。
 
 しかし、まだ六順目――。

 背徳の思いで切り出した 三索 に親から待ったの声がかかった。

 
 六萬七萬八萬三筒四筒五筒五筒赤五筒二索四索五索赤六索七索  ロン 三索


 痛恨の一万二千――。
 突如、ダムが決壊したかのように脇までもが和了り始める。積怨の力だろうか、チップをも面白いように攫っていく。
 手痛い攻撃を受け続けて迎えたラス前、手にした配牌は凡庸そのものだった。 

 (南四局 北家 ドラ 五萬

 一萬五萬二筒五筒七筒五索赤六索六索七索白發中北


 赤が、一枚ある。着順アップが見込めなくても、赤牌が一枚でもあれば祝儀を獲りに行くのがフリーマージャンの主流である。
 第一自模で重ねた 白 をすぐさま叩いた。

 
 これが芥ほど考えていなかった一撃決着の始まりだった。


 余分な牌を掃い、たまたま手に残った三元牌――。無論、有効牌を引いてきたらすぐに手放す心算だ。
 そこへ、ひょっこりと五巡目に 中 を引く。


 五萬五筒七筒四索五索赤六索六索七索發中  ツモ中  白白横白


 ピンズを外し、すぐに 中 が鳴けた。
 しかし、ここから手牌が六巡ほど動かない。ソーズを引き込み、手牌はホンイツのイーシャンテンになっていた。


 二索四索五索赤六索六索七索發  中横中中 白白横白


「誰もラス目のホンイツには打ってくれない。雀頭のないこの牌姿では大三元にならないし、緑発もどこかで握りつぶされているのだろう」
 
 そんな思いで自模切りを繰り返していた。他家は全員、退き気味。
 せめて聴牌を果たし、緑発単騎ぐらいにまで成らないものか。
 

「あれは――、何ていうかガリって感じだよ」

 と友人などは謂うが、私は「ざらり・・・」とした模様が指の腹全体に走る感じがする。模様が広がる感じだ。


「ざらり・・・」と来た、十巡目だ。打、 二索 。次巡、 五索八索 ではなくて、 四索 を引いてくる。
 
 十三巡目――、指先に例の感覚が走り、牌を卓に叩きつける。


 四索四索五索赤六索七索發發  ツモ 發  中横中中 白白横白


 トップまで抜け、役満と赤牌の祝儀がきた。オーラスも制して、終わってみればビックイニングの半荘になっていた。


 三年ぶりの大三元。最後に和了ったのは、プロになりたての時のリーグ戦オーラスでのことだった。

「あの時も・・・、一撃で窮地を救ってくれたな」

 帰り道、そんなことを思い出しながら指先の感覚を確かめた。三年前は、確かツルツルの牌だったが。

膝つき

「いらっしゃいませー」
「お疲れ様でした、どうぞまたお越し下さい」

「新宿S」にてセット。所謂、膝つき接客を行う店である。

 徹底したマニュアル管理、客への挨拶や受け答えにぬかりが無い。フロアには打ち子である男性スタッフの他に、客へのサービス専門の女性店員が居て、ドリンク一杯でも丁寧な対応をしてくれる。

 画一的で馴染めない――と言う人も居るが、私などは割と好感を抱いてしまうのである。従業員達のマニュアルを懸命に遵守している姿は清々しい。

 雀荘に来る客は様々だ。娯楽やスリルを求めに来る者も居れば、勝利や、それが有形化したものを求めに来る人間も居る。
 
 万人に受ける接客というのが在ればそれがベストなのだろう。しかし、不特定多数の客がひっきりなしに訪れる都心の雀荘で「なじみ接客」は難しい。人とのふれ合いを求める客は集客型の店に訪れない。

 また、従業員が客とプライベートで付き合うのは好ましくないという考えの店もある。なぁなぁの関係になってしまったり、卓上のプレーに影響がでるからであろう。

 いずれにしても、雀荘における接客の大前提は、「麻雀の妨げにならないサービス」である。

 「温かみは感じないが、苛立ちもない接客――」

 これはこれでウケているのではないだろうか。

韻律

「麻雀はリズムが大事――」

 よく耳にする言葉だが、これは如何なる理由から唱えられているのだろうか?
 時間制限が無いルール、ましてや初見の人間と打つことが多いゲームである。やはり、大半はマナーを重視した結果なのだろう。
 すると、「リズムが悪いと調子が狂う」とういうのは自己中心的な発想に他ならないのだろうか。

 私は早打ちを心がけている。どんな状況でも速く、一定のリズムで打ちたい。それは、相手に恣意的な間を読まれないようにするためと、右脳の働きを活性化するためである。場の考察やパターンの記憶は時間をかければ出来るというものではない。


(東二局 南家 ドラ 八萬

 四萬五萬七筒八筒九筒六索六索  ツモ七索 一筒横二筒三筒 南南南横


 マスターズ本戦、第三戦目。ここまでは小さいながら二着、一着で何とか成績をまとめている。五回戦終了時に現在の持ちポイントを維持していれば、次のトーナメントに勝ち進むことができる。
 
 東一局、南家のリーチを親が追っかけて、私が先行リーチの現物牌で親に放銃。親は闇でも和了れる手であったがドラスジの高目を狙っての追っかけリーチであった。裏ドラが乗って、5800点の放銃。
 こちらも嵌張待ちとはいえ5200を聴牌していた。両者の共通安牌は二枚あったが、先リーの現物牌一枚ぐらい押す。
 
続く一本場、北家がリーチをかけ、私が続けてシャンポン待ちで牌を横に曲げる。

 (東一局一本場 西家 ドラ 三索

 九萬九萬三筒四筒五筒七筒七筒七筒一索二索三索東東

 
 ピタッと親の番で進行が止まる。親が手詰まり気味に 東 を振る、おそらく対子落としだったのだろう。裏ドラが 東 でハネ満の和了。

 次局、先ほど放銃をした北家からのリーチ。こちらはノミ手で二副露している。
 北家の捨て牌は

 白北九萬西三萬四筒横  リーチ


 一発目で掴んだ 七索


 四萬五萬七筒八筒九筒六索六索  ツモ七索 一筒横二筒三筒 南南南横


 私は考えるという行為を行わずそのまま 七索 を河に置いた。

「ロン!」

六萬六萬二筒三筒四筒二索三索四索五索六索七索八索九索  ロン七索


 裏ドラは無しの3900点。
 ここからスジを追って 七筒 を抜くという選択枝は私にはなかった。後悔とか、反省はない。早打ちしたことについても。
 しかし、周りはどう捉えただろうか?

「ここで北家に安易に打つべきではない」
「何でも出るんだな」
 
 などという風に感じたかもしれない。

 最初の放銃の時は、「こいつも手が入ってるな」と受け取っただろう。そして親の少考の後のオリ打ちを見て、起ち親の戦線離脱をイメージしたと思う。ところがこの一発放銃で北家を楽にし、逆に私が軽く見られてしまったのである。
 
 放銃をしたこととの因果関係は不明だが、この局を最後に私の手牌が開かれることはなかった。でかいラスを押し付けられ、一気にマイナスポイントへ。最終の五回戦に進むことなく、足切りで今年のマスターズは終了した。

オールスター

 尋常ではないツキの偏りだった。
 配牌を開く度に赤が入っている訳ではない。しかし、赤や金牌が入った本手がことごとくベストの形で成就するのである。

 フリー麻雀では祝儀の占めるウェートが大きい。昨今では、当然ながら祝儀を重視する戦術が採られている。

 「赤一枚ある手を自模ると、素点にして一万5千点相当」

 などといったように、実際の収支を点棒やポイントに換算し、着順との兼ね合いを考えた上での合理的な作戦が必要だ。
 しかし、この日はそんなバランスを破壊するほどの突出した寄りを見せていた。
 
 高くて赤くて、それが半荘の決定打。そんな一撃を何度くり出しただろう。
 
 
 (東一局 西家 ドラ 七萬


 三萬四萬五萬赤七萬七萬三筒四筒五筒赤四索五索赤  六索横五索赤七索 (一枚は金5ソー)


 こんな手で聴牌する。チーテンの高め倍満である。

 そこへ、上家がリーチをかけてきた。こちらはオリる心算は全く無いので、一発目に無スジを叩き切る。すると、下家が中抜き気味で合わせ打ち。親が一発消しのような表情でチーを入れ、下がってきた牌が 三索


 三萬四萬五萬赤七萬七萬三筒四筒五筒赤四索五索赤   ツモ三索  六索横五索赤七索


 「4000・8000の五枚オール」
 
 皆が口元をゆがませながらチップを放ってくる。
 上家から出和了っていたら祝儀は五枚止まり、二枚オールを自模るよりも少ない。それが親の鳴きのお陰で十五枚の実入り。この日のチップは安くない。


 また、オーラス、和了りトップという局面でこんな配牌がきた。

 (南四局 北家 ドラ 三筒

 
 二萬五萬五萬赤三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒四索六索七索八索

 
 タンヤオか平和手か、いずれにしても早い。そこへ第一自模が黄金色の牌・・・
 役有りだったがダブリーをかけた。そして他家からアタリ牌が出る前に自模ってしまうのである。


 五萬五萬赤三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒四索五索赤六索七索八索  ツモ三索 (赤5ソーは金牌)

 
 その後も和了と赤牌が上手く絡み続ける。リーチをかけて自模れば赤が入っている。祝儀で鈍いダメージを与え続けると相手の心は折れやすいことがある。
 極めつけにこんなこともあった。

 (東一局 東家 ドラ 九索

 
 四萬五萬六萬二筒二筒二筒四筒四筒五筒赤六筒六筒二索四索


 出来れば嵌 三索 を入れて、 四筒 七筒 三筒 の三面張でリーチと行きたい。ここへ、自模ってきた牌は 七筒 。親ということもあり、嵌 三 でリーチをかける。
 一発目、さして期待もせずに牌の腹をなでると、異物感が指先に走る。

「ゴリっ?」


 四萬五萬六萬二筒二筒二筒四筒四筒五筒赤六筒七筒二索四索  ツモ白


 一発自模のみ有効の白ポッチを引き当てた。親満のチップ二枚オール。
 
 そして、続く一本場。下家がメンバーが早い巡目でリーチをかけてきた。
 こちらは赤ドラ含みのタンピンリャンシャンテン、十巡目に聴牌にこぎつける。

(東一局一本場 東家 ドラ 七索


 五萬赤六萬三筒三筒三筒四筒五筒五索赤六索六索七索七索八索 (赤5ソーは金牌)

 
 ダマでも跳満あるが、一発や裏ドラ次第では下家をトバしてトップを確定できる。
「決められる時は決めに行く」――トビ有りのルールでは鉄則だ。

 脇はオリて、勝負は二人のめくり合いとなった。下家が中々 四萬 七萬 を掴まないまま、終盤にさしかかる。こちらも彼のアタリ牌を掴まない。そのとき、サイドテーブルの携帯が鳴ったが、それどころではないのでそのまま放置。
 河底二巡前、私が引き和了った。


 五萬赤六萬三筒三筒三筒四筒五筒五索赤六索六索七索七索八索  ツモ四萬


 裏が一枚のって、四枚オール。その後、オーラスまで行くことなく、トビが出て終了。携帯をチェックすると他愛も無い用件のメールだった。

 
 精算を済ませ、従業員が次のゲーム代を集めに来る。店には言っていなかったが、実はこれがラスト二回の半荘。必然的にラス半コールを告げなければならない。
 席を立ち辛いとは思わないが、流石に少し同卓者の視線が気になる。
 
「すみません、次ラス半で。用事が入ってしまったんで」
 
 携帯をいじるような素振りをしながら一言付け足した。
 

疾風

 
 土曜の昼下がり。慣れぬ正装に身を包み、日比谷駅に程近いビルのエレベータに乗る。狭い箱の中に次々と黒尽くしの男達が乗り入れてきた。
 着いたフロアは二十卓はあろうかという広々とした雀荘。おそらく週末の夜には勤め人の逸遊の場として賑わうのであろう。
 
 入り口には黒山の人だかりができ、店内はえもいえぬ熱気がこみ上げている。
 日本プロ麻雀連盟主催のタイトル戦「マスターズ」のプロ予選である。プロ麻雀界は春先から秋にかけてのタイトル戦が多く、私自身、久しぶりの公式戦だ。

 受付を行うと、どうやら本会場のキャパを超えているようで、私は新橋にある別会場での対局となった。
 新橋の会場に着くと、お馴染みの大脇プロや松崎プロといった顔ぶれが待ち構えている。

 この日のシステムは半荘四回を打ち、トータルポイント上位十八名が勝ち上がり。会場人数が四二人なので、およそ四割強――通過のボーダーはプラス二〇ポイント前後であろうか。
 一発・裏ドラ有りでウマが1・3(オカは無し)のマスターズルール、トップ一回分浮いていれば通過は間違いないだろう。
 
 タイトル戦の予選で誰もが意識すること、それは最終戦を前に当確が取れるかどうかである。最終戦は同卓者の様々な思惑が衝突する。

「ラスを喰っても大丈夫」

 矮小な発想だが、このセイフティーリードを持って最終戦に臨むのがベストである。こそこそ逃げ回るだけの麻雀でも良い、当確を取れず苦い思いをしたことは何度もある。
 ことタイトル戦の予選最終戦に限っては、勝ち方よりも勝ち上がり続けることに意義があるのだ。今日のルールであれば、三回戦を終えて八十ポイントぐらい持っていれば安全圏と言えるだろう。

 迎えた一回戦、下家には松崎プロの姿が。不思議と連盟系のタイトル戦に出ると必ず同卓になる。
 
 細かいジャブの応酬で東四局まで進み、私の親番。点棒は平たい。
 三巡目にドラの 五萬 を重ね、好機を掴む。

 (東四局 東家 ドラ 五萬 ) 

 五萬七萬九萬二筒三筒五筒六筒七筒七筒九筒三索東東  ツモ五萬

 すぐに上家から 東 が出て、次巡、残した嵌 八筒 が埋まる。六巡目に上家から 一筒 が出て親満の和了。


 五萬五萬二筒三筒五筒六筒七筒七筒八筒九筒  ロン一筒 東横東東


 ドラの少ない短期決戦のルールでは、どうしても打点より速度を重視する和了が飛び交う。そんな中、親番でナチュラルに高い打点になる手牌が来るのは望ましい展開だ。
 二着目で迎えたオーラスの親番でも、松崎プロのリーチを掻い潜って値千金の7700の和了。

 (南四局 東家 ドラ 二索 九萬

 九萬九萬三筒四筒六筒七筒八筒  ロン二筒 五筒五筒五筒横 發發發横發横


 トップ目を捲り、幸先良く五万点を超えのトップスタートとなった。


 面子が変わって行われる二回戦。
 東場から一人、奔る。
 鳴き仕掛けとダマテンで三局連続して和了を重ね、南場でも


 一筒二筒二筒三筒三筒四筒四筒六筒七筒七筒九筒九筒白


 という縦・横融通の利く手牌から 七筒 を叩いて、嵌 五筒 待ちの聴牌。
 一筒 四筒 三筒 九筒 引きの手代わりを思索する間もなく 五筒 が河に打たれる。


 一筒二筒二筒三筒三筒四筒四筒六筒九筒九筒  ロン五筒  七筒七筒七筒横

 一回戦と同じく五万点超えのトップで二連勝。


 三回戦、やはり東場と南家に満貫手を成就させ、難なく逃げ切りトップ。

(東一局 南家 ドラ 一萬

五索六索七索八索九索西西  ツモ七索  南南横南 東東東横


(南一局 南家 ドラ 五筒
 
二萬三萬四萬二筒二筒五筒五筒六筒六筒七筒一索二索三索  ロン七筒 


 三回戦を終え、ポイントは早くも百五十ポイントを超えている。ここまでリーチと放銃は0回、速く・打点的にも闇で和了れる手が寄ってきているのが窺える。如上の当確は確保できたわけだが、実は会場のトータル一位・二位には秋に行われる王位戦のシード権が与えられる。今日のような過酷な予選が二回もシードされるのだ、これは是が非でも取っておきたい。
 上位者のポイント確認すると、私が暫定一位で、三〇ポイント離れて一人、次いで五十ポイントほど離れてもう一人いる。最終戦、二着条件。三着でも下位者の成績次第では入賞に食い込めるだろう。 


 四回戦 東二局、北家の早いリーチに安牌があるところから放銃。値段は2600どまりだったが、親がリーチ宣言牌を叩き、無スジの牌を飛ばしていた。自分の親番はまだ先、親が前に出る姿勢を顕わにしていたのだから、一〜二牌自重して勝負を預けてもよい局面だった。
 飄々と戦っていた今までの三戦と異なり、自分でも少し肩に力が入っているのが判る。

 親番も軽く落ちて、東四局。

 (東四局 北家 ドラ 發

二萬三萬四萬五萬五萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒五索六索


 五巡目に平和手でリーチをかけた。早いし、手替わりも無いのだから当然曲げる。しかし、先ほどまでの戦いと違い、和了れる確証もドラも無い。在るのは巡目での優位と原点に戻したいという想いのみ。
 すると、こちらの焦燥を咎めるかの様に親から重厚な捨て牌でリーチが入る。


 六筒七筒北六筒東八索横


「五分以下の勝負か・・・」
 
 気合の入った追っかけ宣言。放銃をしたら痛手は免れないだろう。
 しかし、まだツキが残されていたのか、 七索 が先に一枚いてくれた。


 二萬三萬四萬五萬五萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒五索六索 ツモ七索


 裏ドラが一枚のって、1300・2600の和了。
 親は 一筒 四筒 待ちの三色手だったらしい。この和了でだいぶ気が楽になった。南二局の親に猛連荘されるも、放銃を避け聴牌料で二着をキープする。

 迎えた親番。
 トップ目の上家が早々と仕掛けてくる。こちらは

 (南三局 東家 ドラ 二索

 二萬四萬五萬七萬八萬四筒二索四索五索七索七索八索九索


 こんな手に 三索八索二索八索 と引き込んで下のイーシャンテンに。


 四萬五萬二索二索三索四索五索七索七索八索八索八索九索


 上家が二つ目を仕掛けたところで、こちらに 九索 が入り、すぐに上家からアタリ牌がこぼれた。


 四萬五萬二索二索三索四索五索七索七索八索八索九索九索  ロン六萬


 オーラスでラス親に捲られるも、充分浮きのある二着。結果、会場二位の通過で副賞のシード権も獲得できた。


 タイトル戦は長く、本当に過酷な戦いだ。今日のように追い風が続くとは限らない。
 
 勝って、残る。負ければその日で終わり。ここで終わるか次で終わるか。
 
 それでも一つでも先に進むために邁進して行くしかない。
 

奇行

 気が狂ったように東風戦を打つ日があってもいいじゃないか。
 東風戦のフリー打ちへ。100の2000・4000、祝儀が500(金 五索赤 のみ1000)。

 遡ること八年前、東風戦を連続して105回連打という愚行をやった。最後の方はもう良く分からない世界の住人になっていたが。

 初戦、一度の放銃が響いてラススタート。一勝負が四局から多くて六局のスプリントレース、影響しない放銃など無くて当然だ。
 しかし、赤と金入りのルール。当然、祝儀の占める割合はデカイ。赤二枚や金があったら基本的に全押しだろう。自模ればワントップに近い収入があるのだから。

 一度、こんなオーラスがあった。
 私は33000点持ちのトップ目。21000点の三着目がリーチをかけて来ている。二着目のラス親は食いタンで仕掛けていたが、早々に店仕舞い。
 ウマが2000・4000なので、私は放銃さえしなければ実入りがある。しかし、赤牌と金牌が戦闘的な意欲を掻き立てる。


(東四局 南家 ドラ 七筒

 二萬四萬六萬七萬五筒五筒赤六筒四索四索五索赤五索赤五索六索
(*5ソーは赤と金)
  
 一発目、 二萬 を重ね無スジの 四萬 を強打。リーチ者の 五筒 を叩き、やはり通っていない 六筒 を河にねじ込む。

 二萬二萬六萬七萬四索四索五索赤五索赤五索六索 五筒赤五筒横五筒


 現物の 八萬 を鳴き、打 五索 。ここまで派手にやったお陰で、脇はベタオリだ。こちらにとってはその方が好都合。
 流局間際まで突っ張り通し、海底で 六索 自模。

  
 二萬二萬四索四索五索赤五索赤六索  ツモ六索  八萬横六萬七萬 五筒赤五筒横五筒
 
 トップ二回分の実収がきた。


 その後も強攻策と退きのメリハリが冴える。久しぶりの東風だが、赤有りの叩き合いならばちょっと自信がある。
 途中、下家の帽子に四連勝されたが、内二着を三回キープ。籠の中に順調にチップの塔を築いていく。


 東風戦は総じて早打ちの人が多い。一時間で五半荘消化することもある。食わず嫌いをしていた配牌全自動卓「アルティマ」のスピードも手伝ってか、夕刻から朝方まで打って打荘数は三十回を超えていた。

 これでシメという三十四荘目。
 オーラス、四万点持ちのトップ目。南家と西家とは一万数千点差のセイフティーリード。恐いのは親にデカイのを振り込むことのみ。
 八巡目に下の聴牌。

 
(東四局 北家 ドラ 二筒
 
 三萬四萬四萬一筒二筒三筒四索五索赤六索六索八索南南 ツモ南 (*5ソーは金)
 
 
 無論、 七索 引きがベストだったが、引いてきのは一枚切れの南。
 場にソーズの 三索七索 は0枚、 二萬 は二枚切れ。
 
「打 八索 ?いやいやそんな馬鹿な!」

 当然、曲げる。金があるから、自模れば8000点プラス1000
オールで3800の増収だ。

「リーチ」

 二着目の南家は現物牌を並べ、三着目の西家が多少押してくる。
 そこへ、親が一牌自模ってきて手を止めた。
 ポイポイと発声していた中年男性だ。

「鳴いてばかりの麻雀だったが、ここでリーチが入るか・・・」
 
 タイミングとしては最悪だが、こちらも強攻策を採っている以上、リスクは承知の上だ。
 しかし、最後の半荘。やはりお持ち帰り分が目減りするのは身をえぐられる思いだ。
 
「リーチッ!ん、待って、開いちゃお!」

オープンリーチ宣言だ。当然、待ちの部分を晒す。

「あ、二枚にしておいて・・・」

 しかし、中年男性はバタバタと手牌の八枚を倒し始める。


一筒二筒二筒三筒三筒四筒五筒六筒裏裏裏裏裏

 
「成る程、ドラ跨ぎの三面張か。しかし、 一筒 は表示牌とこちらの手中で残り一枚のみ。 四筒 は一枚切れ、 七筒 も一枚見えている」
 枚数的にはこちらと同等か。しかし、こちらは開いていない分、僅かながら脇からの出和了りも期待できる。

「持ってきてしまったら・・・さして熱くないフリでもして自模切るか」

 そんなことを考え終わらない内に指先に走るまあるい感触。
 親の手牌は倒され、私はチップの塔を一つ鷲掴みした。


雀竜位決定戦

(南三局一本場 東家 ドラ 一萬


三萬四萬五筒六筒一索二索三索四索四索五索六索中中  ツモ五索

 
 四巡目で上記のイーシャンテン。

 もともと、


 三萬四萬九萬五筒六筒二索三索四索四索五索六索中中


  とターツが確定していたところへ 一索五索 と連続してソーズを引いてきた。

「何処を外す・・・?」


 「雀竜位決定戦」 のニ日目。
 初戦、トータル三位の鍛冶田プロが大きなトップを獲り、四者の命運は未だたゆっていた。

 ニ戦目もラスト走者の鍛冶田プロが南場の親番で2600オールを自模り、トップ目の福田プロを除く三者がニ万点前後での争いに並ぶ。
 続く一本場。

(南ニ局一本場 南家 ドラ 六索

 
七萬三索四索八索八索二筒三筒三筒五筒六筒八筒南南  ツモ 南

 
 三巡目にダブ南を暗刻にし、面子候補のターツが確定した小倉プロ。次局が自らの親番、ラス親はトップ目の福田プロだ。ここで喉から手が出るほど満貫自模が欲しいのが解る。

 すぐにドラ表の 五索 を引き入れてシャンテンに。


 三索四索五索八索八索二筒三筒三筒五筒六筒南南南


 場には 一筒 がニ枚、 七筒 も一枚切れ。

「まだ、狙える」
 
 面前でリーチと行き、満貫を狙いに行くだろう。

 しかし八巡目、福田プロが打 四筒 、藤田プロも 一筒 を自模切り、一気に心もとなくなる。
 九巡目、 七筒 を引いての聴牌。残る待ち牌は四枚。

 聴牌直前の 一筒 四筒 連打。嫌な気持ちになって当然だ。

 全員がタンピン傾向の捨て牌、ピンズの中牌はまだ手中にありそうだ。一筒 四筒 は、あって山に残り二枚か。
 さらに、トップ目の福田プロがドラの 六索 を切っており、終盤は全員が彼の打牌に同調する展開になるだろう。

「福田プロの河に合わせてダマか?闇でも自模れば4300点の収入、ドラの振り替わりもある」

  一筒 四筒 ピンが薄くなった。加えて場にトビ始めている筋である。序盤ならばまだしも、リーチをかけたらもはや誰もがイージーに振ってくる牌ではない。

「リーチ」

 微塵の迷いも無くリーチを打つ小倉プロ。この無神経な凌ぎが彼の生命線と言っても良い。
 すぐさま福田プロが追っかける。
 
 流局間際、福田プロの自模和了。裏ドラが一枚で1300・2600。


 四萬五萬六萬七萬八萬五筒六筒七筒二索三索四索七索七索  ツモ九萬


 実は福田プロのリーチ一発目に親の鍛冶田プロに 一筒 が流れてきていた。小倉プロがダマに受けていればすんなり河に放られていた牌だ。
 結果論だが、この和了りで福田プロの持ち点が四万点を越える。
 そして、リーチ棒を出し、親っかぶりの鍛冶田プロと同等の失点をした小倉プロの親番。

 
(南三局 東家 ドラ 五索

 一萬三萬六萬七萬八萬二筒三筒五筒六筒七筒四索五索五索北


 これが配牌である。ドラヘッドのイーシャンテン、 一筒 四筒 引きでも即リーと行くだろう。
 
「ポン」

 小倉プロの第一打目を北家の鍛冶田プロが仕掛ける。
 小倉プロの自模は 三索
 当然の打 一萬 、しかし次巡自模が 二萬 。その後も空振りが続き、五巡目に 八筒 を引き入れるも、ここまでの捨て牌は

 一萬二萬北三萬九索
 
 と、歪に牌が並ぶ。
 
 西家の藤田プロ、南家の福田プロも仕掛け始める。一人、動かない手牌に苛立ちを感じているのが解る。
 六索 を引き入れた時には、福田プロはソーズの一色手で 二索 を余らせ、藤田プロはその仕掛けに対しドラの 五索 切りと、もはや一番出遅れていた。


 六萬七萬八萬二筒三筒五筒六筒七筒三索四索五索五索六索


「鍛冶田プロにピンズが高く、どの聴牌形が入ってもあまりおいしくない。 一筒 四筒 が入っても、ソーズ勝負のソーズ待ちか・・・」
 
 そこへすんなり自模ってきた牌は 二筒

 すぐに 七索 が福田プロから出て、デバサイの12000点。


六萬七萬八萬二筒二筒五筒六筒七筒三索四索五索五索六索  ロン七索

 
 結果は最良だが、今ひとつノリきれていない。勝負の世界に生きる人間ならば、誰もが独自のソナーで違和感を察知する局面というのがある。
 小倉プロはここまでの展開をどう捉えているだろうか?
 
そして、迎えた冒頭の手牌。


  三萬四萬五筒六筒一索二索三索四索四索五索六索中中  ツモ五索

 
 セオリーからいけば、やはり打 一索 だと思う。裏目の 三索 六索 引きでも一盃口が確定するし、 二索 五索 引きでタンピンへ移行できる。

「が、ソーズの寄りをどう捉える?!」
 
 その是非はともかく、トッププロの間でも「動かないターツは嫌え」、「後から来た牌を残せ」という考えが根強く支持されているのは事実だ。
 
 しかし、何事も無かったように小倉プロは打 一索 。次巡、 二萬 を引き入れて、電光石火の 四筒 一発自模――


 ネット麻雀で雀力を向上させてプロ入り。昨年、一年目のチャレンジで最下層のC級予選から雀竜位制覇という偉業を成し遂げた小倉プロ。
 この一年、彼の麻雀をずっと見てきた。決して恵まれた環境ではない中、己の信ずる真理だけで勝負してきたのを知っている。

「牌の流れなんて存在しない、自分のベストチョイスだけを信じる」

 小倉の小さな背中からそんな意思を感じた。
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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
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第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
VS研究会 第7期、第8期連覇中


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