プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2006年06月

勝ち組?

 「今夜は23時からどうですか?」

 ギャンブル編集者カゴタニ氏からのメール。
 毎週恒例化しつつある水道橋セットのお誘い。「今夜は」でなくて「今夜も」である。

 意気揚々と乗り込むも、どうもこのところ東風戦での押し引きがチグハグになっている。
 この夜もそんな不調を露呈する局が多かった。
 
 朝方まで24回戦を打ち果たして散会。
 
 「吉祥寺行き 6:26」

 朝帰りのときの電車待ちほど懈い時間はない。
 
 本来であれば――、不調の時ほど押し引きを慎重にしなければならいんだ。
 瀬戸熊プロとシライシ氏の牌勢が良かった、それ自体は構わない。カゴタニ氏と自分はどちらがツイていたか解らないが、彼の方が出入りをしっかりやっていた。
  
 世間に排他されたような喫煙場所で、電車を待ちながら反省にふける。


 逆流する胃酸を抑えながら帰宅し、昼ごろまでトロリと眠る。
 布団を跳ね除け、何度も寝返りを打つ。
 初夏の陽射しと気温が疲弊しきった身体を虐めるが、不思議と夏の徹夜明けの床は嫌いじゃない。
 
 麻雀打ちにとっての風物詩?そんな大それたものではないが、冬はあまり好きではない。
 卓で手がかじかむアノ感覚、朝方、負けて氷のように冷たい布団に潜る侘しさ。
 それに比べたら夏の方がずっといい。


 昼前に起きて、次のセットのために西川口へ。
 半荘五回戦だったが、充実した闘い。
 しかし、一度だけ気の抜けた失投をしてしまった。

 
 気分良く巣へ帰還するが、いつのまにか床でうたた寝してしまう。
 まだ――、宵の口。

 やはり夏は寝苦しい分、眠りが浅いのか。はたまた歳なのか。 
 徹夜の多いこの生活、熱帯夜ならぬ熱帯昼の克服が勝ち組への道とも思える。

 

日本オープン開催のお知らせ


 今年も繰り広げられる熱い闘い・・・・・・

 プロ・アマ混合のタイトル戦「第5期 日本オープン」の開催のお知らせです。
 詳しくはコチラ。

 http://www17.ocn.ne.jp/~npm/nihon-open.htm

修羅の男

 ギャンブル編集者のカゴタニ氏、シライシ氏とのセット。東風戦 200・4000-8000(1000)。
 
 もう一人はカゴタニ氏の連れてきたナカジマ氏という方。

 手牌は来ている。しかし、どうもオーラスでの競り負けや展開が悪い。
 序盤戦、トップ一つ分先行していたが、三件リーチのメクリ合いで親ッパネと3900のダブロンを振って、大きなラス。
 
 牌勢を建て直し、途中で五回連続二着をキープした。
 ウマが大きいので二着でも実入りがあるのだが、如何せん四局しかない東風戦。
 全てもう一差しでトップが見えたのである。
 それでも体勢を崩さぬよう懸命に打った。

 下家のナカジマ氏は表情を動かさず飄々と打牌を繰り返している。

「いつもはどれ位のレートでアソんでるんですか?」

 シライシ氏がナカジマ氏に尋ねる。
 このナカジマ氏とは初対面だったが、私の知り合いである某氏の読み物に登場しており名前は聞いていた。

「最近はだいたい、1000点 5000でやることが多いかな」

 オプションや祝儀を聞かないと解らないが、台は高い。
 ここの麻雀だって走れば一晩で大卒の初任給ぐらいトブことがある。
 彼は一つ上の住人らしい。


 折り返し地点を過ぎたあたりで、それまで凌ぎの麻雀だったナカジマ氏が起親で七対子をツモった。

(東一局 東家 ドラ 三筒
 

 三筒三筒四筒四筒五筒赤五筒七筒七筒八筒八筒五索五索赤北  ツモ北


8000と二枚オールの和了。
 彼のリーチ宣言牌は 七筒
 八筒五索 のシャンポンも悪い受けではない。

 この辺の嗅覚は流石と言うべきか。
 非凡な感性と強いハート、両方を兼ね備えていなければ超レートでは生き残れないのであろう。

 

無双位戦決勝(2)

 勝負の南場――。
 まず、たろうプロがドラスジの 六萬九萬 待ちでリーチを入れるも流局。中嶋プロとの二人聴牌。
 
 次局も中嶋プロとたろうプロが果敢に仕掛ける。
 親の仕掛けに対し、 西 バック1000点の手でドラの 五索 を切り飛ばすたろうプロ、しかし和了は中嶋プロ。1000は1100オール。
 足が止まって苦しい鈴木悟プロと横山プロ、しかしこういう局面で放銃をしないからこそ、ここまで勝ち上がってきたのだろう。

 中嶋プロの持ち点が四万点を超える。
 しかし、南二局の鈴木悟プロの親番。ついにアノ男が来た。

 (南二局 南家 ドラ 南


 六萬三筒一索一索三索四索七索八索九索九索南南北


 配牌で連風牌のドラが対子。九巡目、無理に色に走らず下の聴牌を入れて即リーチ。


 三筒四筒一索一索一索二索三索四索七索八索九索南南


 静かに気合を込めて山に手を伸ばす、たろうプロ。
 大事な決勝の舞台でここまでノー和了なのだ。

 流局間際、ツモってきた 二筒 を綺麗に卓に牌を打ち付けた。
 
 
 三筒四筒一索一索一索二索三索四索七索八索九索南南  ツモ二筒


 逃げる中嶋プロ、追うたろうプロ、そして一万点差で好機を窺う鈴木悟プロと横山プロ。
 ギャラリーは瞬き一つせず、卓上に視線を注いでいる。

 そして迎えたたろうプロの親番。

(南三局 東家 ドラ 一萬


 一萬六萬六萬七萬八萬一筒二筒三筒七筒八筒五索五索六索  ツモ五索


 七巡目ぐらいだったと思う。ドラの 一萬 は生牌。
 たろうプロの捨て牌には 九萬 がある。

 しかし、迷うことなくドラを打ち出す。

六筒 九筒 に自信が無かったから、 五萬七萬 を引いたとき、萬子の形が強くなるようにフォローを入れておきたかったんだ」
 と彼は後述する。

 すぐにトップ走者の中嶋プロからリーチが入り、たろうプロも 九筒 を引き入れて、 六萬 を勝負して追っかけリーチ。

 だが、鈴木悟プロの打牌が強い。彼もこの局が勝負所と感じたのだろう。
 乾坤一擲の手牌とばかりに、気合とともに 七索 を横に曲げた。

「ロン!」
「ロン!」

 顔を上げ、対面の顔を見る中嶋プロ。たろうプロの頭ハネである。


 六萬七萬八萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒五索五索五索六索  ロン七索


 中嶋プロを捲って、たろうプロがトップ目に立つ。

 一本場は横山プロが1100・2100の和了。彼女も、まだ死んでいない。
 

 長い戦いの終焉を告げるオーラス――。
 たろうプロは和了りトップ、各家トップまで中嶋プロは1800点、横山プロは8000点、鈴木プロは18000点ほど。

 たろうプロが根気で重ねた特急券の緑発を叩く。

(南四局 北家 ドラ 八萬

 
 七萬八萬三筒四筒四索四索五索九索九索西  發發横發


 しかし、八巡目に横山プロがリーチを入れる。


 六萬七萬九萬九萬三筒四筒五筒五筒六筒七筒六索七索八索


 彼女は和了りヤメのないラス親。とりあえず叩けるところまで前に出るしかない。

 このリーチを受けて、たろうプロの出方が難しくなる。
 ラス親が和了る分には終局しない、放銃をして中嶋プロの下になるのも好ましくない。
 が――、自分が和了ればその瞬間に頂点が決まるのだ。
 
 雀頭の 九索 が現物だ。
 少し回るかな、と私は思ったが、親リーに対し中嶋プロが一発で無スジの 四筒 を強打。
 非常警報が鳴ったと同じである、既に逆転手が入っているかもしれない。

 終盤、たろうプロも 三索 を引き込み 六萬九萬 待ちの聴牌を入れる。
 中嶋プロは相変わらず突っ張る、有利と思われた横山プロの待ち牌もなかなか居ない。

 三者の気合の入ったメクリ合い、結果は流局だった。
 中嶋プロは 三索六索 待ちの2000点、親リーチの時点で既に聴牌が入っていたらしい。


 三萬三萬四萬四萬五萬五萬四索五索七索八索九索西西

 
 私の後ろで誰かが小さく息を吐いた。
 食い入るように見つめる観衆の熱気が壮絶なオーラスを物語っていた。


 運命の南四局一本場――。
 四者はこれからの麻雀人生においてこの局を背負っていくことになるだろう。


 一巡目、たろうプロが上から出た 八萬 に下の十三枚から食いつく。

 (南四局一本場 北家 ドラ 二索


 二萬三萬六萬七萬九萬三筒三筒五索五索八索八索北發


 上家が条件の厳しい鈴木悟プロなので、この鳴きによって多少の絞りが予想される。
 
 横山プロ、中嶋プロは面前で手を進める。
 
 ここまで厚く構えて面前を通したのが流れを呼び込んだのか、横山プロの手牌がウィニングロードを進むかのように纏まりを見せる。
 ドラの 二索 を対子にし、嵌 七萬 を入れて六巡目で下のイーシャンテン。


 六萬七萬八萬二筒二筒六筒七筒七筒八筒二索二索七索八索


 次巡ツモが 三筒 、そして――ツモ 四筒
 一巡回してリーチと行った。
 高目をツモれば8000オール、上二人と32000点差返るのはでかい。

 誰しも、感覚というのがある。
 私は目に見えないものを信じている。
 それは、己が今まで海馬に溜め込んできた「経験」という記憶を活かした「勘」だ。


 この手はツモれると思った。高目をだ。
 

 一発目、たろうプロがあの手牌で追いつく。

 
 二萬三萬三萬二筒三筒四筒四索五索八索八索  ツモ三索 八萬横六萬七萬


 横山プロの捨て牌には 四萬 が在る。
 しかし、たろうプロは少考の後、 二萬 を勝負した。

 激しくメクリ合う二人。

 数巡後、たろうプロが観衆に見えないぐらいのスピードで牌をツモ切った。
 覗きこまなくても判った、 四萬 である。

 山に五〜六枚生きであった 六索九索 は横山プロとたろうプロのツモをすり抜ける。
 
 十三巡目、中嶋プロが回しきって追っかけリーチにきた。
 他の部分は解らなかったが、ソーズ部分が

 三索三索六索六索七索八索九索

 という形の 三索六索 のシャンポン待ちだ。
 たろうプロの待ち牌である 八索 は、もう無い。

 放銃することの恐怖を忘れ、トランス状態になって「山」という運命をめくる三人。

 
 流局まであと僅かのところで中嶋プロが掴んだのは、たろうプロが辺 四萬 を取りこぼした筈の牌だった。


 三萬三萬二筒三筒四筒三索四索五索八索八索  ロン 三萬   八萬横六萬七萬


「1000は、1300」


 激闘を制し、第十四期無双位の栄冠に輝いたのは鈴木たろうプロ。
 私にとってはプライベートで共に凌ぎを削り、リーグ戦で標的になるであろう男だ。

 惜しみない拍手が四者に送られる中、私は複雑な心境で立ち尽くしていた。 
 

無双位戦決勝(1)

 四者全員がトップを獲れば優勝。
 ベスト三十六から決勝までワンデーマッチで行われる無双位戦らしく熱い、壮厳な決勝戦となった。

 東家から中嶋プロ(最高位戦)、鈴木悟プロ(棋士会)、鈴木たろうプロ(協会、以下「たろうプロ」)、横山プロ(協会)。

 東一局、北家の横山プロがストレートにテンパイを入れて、幸先良く満貫の和了。

(東一局 北家 ドラ 七索

三萬三萬二筒二筒二筒三筒四筒五筒五筒六筒六索七索八索  ツモ七筒


 親の追っかけを振り払っての和了りに勢いを感る。

 野球で言うところの「勝利の方程式」と同じように、麻雀にも勝ちゲームのパターンというものがある。
 リーチ棒を含めて九千点のリードを獲った北家。次二局は場を長引かせずに進めることをテーマに戦うことが出来る。

 しかし、昨日の予選から十二半荘を勝ち上がってきた猛者たちの膂力がそうさせるのか、独走は許さない。
 東二局、鈴木悟プロが横山プロから2900を出和了り、一本場は中嶋プロがたろうプロとのメクリ合いを制して3100・6100の和了。場は一気に混沌と化す。

 東三局、たろうプロの親番。

 (東三局 東家 ドラ 七筒

 五萬五萬五萬六筒六筒二索三索  中中横中 東東横東


 出遅れ気味だった手牌を纏めて7700の聴牌。中嶋プロからリーチが入り、索子の下が安い場となったが 一索四索 は場に顔を見せず流局。
 たろうプロが聴牌料でこの半荘初めて点棒を増やす。

 冷静沈着に正着打を放つことで定評があるたろうプロ。ここ数年の付き合いだが、彼の玉際の強さには何度も舌を巻いた。彼には圧力と凡人が持ち得ぬ「何か」がある。
 しかし、ここまでは決して彼のゲームとは言えない。

 東四局、たろうプロの親を落とし、リーチ棒と供託点をモノにした横山プロに親満の聴牌が入る。

(東四局 東家 ドラ 五萬

二萬二萬三萬五萬五萬七筒八筒九筒二索二索二索六索七索  ツモ五萬


たろうプロに索子が高いが、八巡目での聴牌。威勢良く牌を横に曲げる。

 北九索九萬六萬一索三萬
 六萬三萬横  リーチ
 
 
 一発目、西家の鈴木悟プロが少考して無スジの 三索 を強打。対子選択をしている親リーに対しての宣戦布告、並々ならぬ手を感じさせる。
 その 三索 にたろうプロの手が止まる。


 一索二索四索五索七索北白發中中  九索九索九索横


 一枚ずつの字牌は全て死牌。元より遠いところからの仕掛けであった。
 鈴木悟プロの打牌を受け、嵌 二索四索 でチー。打 一索 とした。
 勝負を二人に任せる心算でも、一発は消しておくということか?


 次巡、横山プロがツモ切った 一萬 を鈴木悟プロが捕らえる。


 一萬一萬五萬六萬七萬四筒四筒五筒六筒七筒五索六索七索  ロン一萬


 5200点の和了。
 萬子の下は良い受けだし、筒子の横の変化も利く手だ。横山プロからしてみればチャンス手で大きな失点、一萬 はかつて入り目となる筈の牌だった。
 この時、たろうプロの鳴きで下家に流れた横山プロの一発ツモは 五索
 勝負を決定付けるかもしれぬ6000オールが一つの鳴きで水泡と帰す。

 
 親リーを受けて、無失点での点棒脇移動。
 たろうプロの内心でほくそ笑む声が聞こえてきた。

惨劇

 ウマが2000-4000の東風戦。
 大荒れとなった回の東三局、二着目の親からリーチが入る。


 南白二索九萬五萬七筒横 リーチ


 トップ目は西家で五万点越え、親が三万点持ちで、私は一万点持ちの三着目。
 北家が残り2000点でトビの危機に瀕しており、ヘコみ続きだった西家に初トップのチャンスが訪れている。

 次が私の親番とはいえ、この局で終局の可能性が高い。どうせ二着浮上は難しいのだから、ウマの2000を守りに行く局面だ。
 北家が 六筒 を暗槓しており、表ドラ・裏ドラ共に二枚。
 親リーに打ったら、こちらがトんでしまうかもしれない。


 しかし、リーチの一発目。振る牌がない。


(東三局 南家 ドラ 六索 九索

 三萬四萬五萬赤六萬二筒三筒三筒九筒九筒九筒六索六索七索  ツモ三萬


 五萬は金牌で祝儀が1000つく。先刻までは攻めッ気全快だったが、親リーが入って状況が一変した。
 唯一の現物である金五萬は抜きたくない。仮に下家に食われてツモられでもしたら、チップ二枚分の祝儀が出ていくのだ。
 台(レート)は100なので、ツモられ賃の他に一万点相当の支出になる。

 それでも、金牌を抜くのが正着打なのかもしれない。
 
 また、リーチを受けて 三萬 ツモというのもしっくり来ない。この手であれば、萬子は横に使いたかった。
 勘だけを信じ、よっぽど 三萬 ツモ切ろうと考えた。一応、五萬 のツーチャンスであるし、三者とも手牌の不要な筒子が出切っている感じなので、他の二色の中牌を持っていそうだ。もしかしたらワンチャンスぐらいかもしれない。
 

 その時、ふと親の仕草を思い出した。
 七筒 を切ってリーチをかける際に、視線が少しだけ暗槓された 六筒 に流れたのである。作為や悪意によるものでなく、瞳が少しだけ揺れた気がした。

 三筒 は場に二枚切られ、 三筒 六筒 はもう無い。果たしてそんな薄いところで曲げてくるだろうか?
 しかし、親に限っては一番積極策が採れる立場なのだ。トップ目を捲るチャンスがあれば狙いに来るだろうし、トバしの祝儀がチップ二枚なので何処からでも和了りやすい。
 しかし、今さら待ちに関連する 六筒 をチラ見するだろうか・・・・・・

 柄にもなく悩んでしまった、こんなもの考えたって名解答は出ないのだ。
 感覚で打っての放銃ならば救われる。だが、理で打ってしまった。

三筒 !!」

「一発!!」


七萬八萬九萬四索四索四筒五筒七筒八筒九筒中中中  ロン三筒


 裏ドラが乗らなければ生き残れるが、一縷の望みはすぐに打ち砕かれた。
 表示牌をめくるとそこには二枚の 發

「え〜と、親倍に一発とトビを合わせて・・・・・・九枚?」


「入り目は――、コレ?」

 自分の手の暗刻牌を倒して尋ねた。

「そう! 九筒 なんだ!」


 自分のヌルさに苦笑するしかない。
 一二枚目の聴牌を入れた相手に感服し、チップを放る。

 ハコ割れの分の精算も支払い、西家にお愛想で一つ頭を下げた。

反射神経

 西川口にある「P-STOCK」にてセット。第二期雀王・鈴木達也プロの店だ。面子は大脇プロ、田中太陽プロ、ロコモコプロでアリアリルールの八回戦。

 沈みで迎えた三戦目、ようやくトップ戦線に立つ。
 ラス前を迎えて自分と田中プロが四万点弱、大脇プロとロコモコプロが一万一千点ほど。

(南三局一本場 西家 ドラ 二索

三萬九萬九萬四筒一索二索二索五索七索南北中中


 お世辞にも好配牌とは言えないが、翻牌とドラが対子で在る。次局が田中プロの親番、下が怖くないので積極的に仕掛けていく局面だ。


 何処でこの気持ちが切れてしまったのだろう。
 序盤、ドラを暗刻にし、ラス牌の 一索 を力強く引き込む。中 が出ないまま場は進み、手牌は急速な纏まりを見せた。


 三萬九萬九萬一索一索一索二索二索二索五索七索中中  ツモ六索


 八巡目、場に高いソーズの嵌張を引いての聴牌。
 ふと、今打たれたばかりの 九萬 に目が止まる。


 中 は初牌で、 九萬 は残り一枚。

 何故――、あんな牌に目が止まってしまったのだろう、と思う。初志と裏腹に「慎重策」という脆弱な檻に囲まれることを選択する。

 牌が指から離れ、すぐに「あっ!」と思う。

「何やってンだ!こんなのリーチじゃないか」

 闇に受けたからといって、必ずしも 中 が出易いとは限らない。九萬 での出和了りを放棄することも思慮して、どちらの方が和了に近いかは判らない。
 これはアリアリルール。ラス親の田中プロは和了りヤメも出来るのだ。この手が成就するかどうかは神のみぞ知るところだが、リーチをかけて点棒の無いところから 中 で和了れば、裏ドラ一枚でラスト。トップを確定できるかもしれない。


 だが、次巡、その次も体が動かなかった。ツモ切りリーチがかけられない。
 
 四巡後、田中プロのリーチに呼応してようやく牌を曲げるも、親も追いついて三軒リーチ。安牌に窮した大脇プロが田中プロのアタリ牌を抜いて、ドラ暗刻の手牌はあえなく終焉。

 オーラス、田中プロに親マン放銃とは話が出来すぎかな。+5の二着って。

  

ため息の夜に

「何してるの?」

 何気なくかけた一本の電話。所用があって大脇プロに電話を入れたのだが、ここから大の男四人が集まれてしまうことがスゴイ。月曜の真昼間なのだ。

 池袋Jにてセット。ヘッド博士、大脇プロ、田中プロ。
 
 今、手元にプロになってからのセットを簡単に記録したファイルが有る。

 三年間で290回ほど、短いものや記録していないものを含めると300回を超えるだろうか。公私ともに良く顔を合わせる四人だが、意外にもこの組み合わせは初のマッチアップだ。

 と、書いたところで思い出した。
 そう言えば一年半ほど前にライターのモト氏を交えてこの四人で対戦している。
 あのときは――、ヘッド野郎に軽く剥かれて、その金で酒を奢ってもらったハズだ。 

 半荘八回戦の勝負は大打撃戦。
 一発大きい手が炸裂というよりは、毎局満貫クラス手の応酬。事実、相当の和了数が出たがハネ満以上は大脇プロが二回と博士が一回のみ。

(大脇プロ)

三萬四萬五萬赤四筒四筒四筒七筒八筒九筒四索五索赤九索九索  ツモ三索

一筒二筒三筒五筒赤六筒七筒八筒九筒五索五索赤六索七索八索  ロン四筒


(ヘッド博士)

四筒五筒赤五筒六筒六筒七筒五索赤六索九索九索  一発ツモ四索 裏九筒九筒裏 
 

 私はチップを絡めた中堅手が上手く成就し、田中プロは放銃少なく間隙を突くといった展開。

 卓上に威勢良く打牌が飛び交う。
 五時間半で半荘八回戦が終了。テンポが良いせいか、疲れが全くない。


 その後、大したことのない居酒屋へ連れ立ち、大したことのない肴で乾杯。
 当然、大したことのない文化レヴェルの話題で持ち切りとなる。
 
 二十四時過ぎに散会し、W杯の結果を聞かぬよう青服を避けるようにして終電に飛び込んだ。

断九公の日

 喰っていってハネ満。

 鳴きチンイツをハネ満にするあと一役は何が一番多いのだろう。
 ドラ、イッツー、タンヤオ、トイトイ・・・・・・純チャンは少し難しいだろうか。

 雀王リーグ 第三節、何故か対局は雨の日が多い。
 二、二、一着で迎えた四半荘目。
 東ラス、卓上のテロリスト・ケネス徳田プロから5200を和了って三万点超えの二着目になる。
 迎えた南一局の親番。


(南一局 東家 ドラ 二索

 二萬二萬四萬六萬六萬七萬八萬八萬八萬九萬四索七筒八筒  ツモ三萬


 場に二枚切れの 三萬 をツモって、打 九萬 。ソーズで横のターツを作り、萬子を下ろしていく展開を思わせる趨勢だ。
 次巡、一牌ツモってきて手を止めた。


 二萬二萬三萬四萬六萬六萬七萬八萬八萬八萬七筒八筒四索  ツモ四萬


 一萬 は場に三枚切れ、三萬 も四枚目が場に放たれていた。
 
 素直に 二萬 を切って、手を広げていこうと考えたが・・・・・・

「萬子はもう残り枚数が少ないが――、アレとアレが鳴ければガッチャだな」

 意を決し、打 四索 とした。周辺のソーズを引かないことを願って。

 すると上家からすぐに最初のアレが出た。

「チー!!」


 二萬二萬三萬四萬六萬七萬八萬八萬八萬七筒八筒   五萬横四萬六萬


 嵌張で鳴いて、 八筒 を外す 。
 
 すぐにドラの 二索 を引いてきた。内心、舌打ちをして 七筒 と入れ替える。
 だが、すぐに対面からもう一つのアレが出た。 二萬 である。

「ポン」

 語気を高めないように声を発し、ドラをリリース。
 そのドラを上家がポンした。私は 七萬 をツモ切り。

 ガッチャ、かもしれない。私は途中で九萬 もカブっている。他家は親の1500ないし2900の仕掛けよりも満貫手の上家をマークするだろう。協会ルールの公式戦、ドラは四枚しかない。
 上家の現物牌でポンカスのスジ、これは出る。あとは上家の和了牌とどちらが先にいるかの勝負。

 すると対面が一牌ツモって、ドラポンと私の仕掛けを僅かに一瞥。

 そのままツモ切った牌が河につくのと同時に私は手牌を倒していた。

 
 三萬四萬六萬七萬八萬八萬八萬  ロン二萬  二萬二萬横二萬 五萬横四萬六萬  


「親で、18000――」
 
 強引ながらタンチンの完成である。
 この和了がものをいって、最終戦は六万点超えのトップ。


 よくよく考えてみると、タンヤオは割と稀かもしれない。過去の一色手を反芻してみてもそれほど記憶にない。
 やはり――、一番多いのは「チンイツ・赤一」のハネ満か。

優勝

「もう優勝じゃん、適わないよ」

 友人の口癖である。
 人がファインプレーをしてトップや勝利が近付いたときに言ってくる。
 腹の底では「待ってろよ、捲ってやるからな」と思っているくせにこんな台詞を吐く。一種の煽り。

 「優勝」の意味が良く解らないが、彼の中では「勝ち」のようなものらしい。


 先日、対局であった局面。
 オーラスを迎えて、満貫出和了り条件。

 (南四局 北家26400点 ドラ 二索

 六萬八萬二筒三筒一索二索三索四索四索七索九索中中
  

 トップ目の西家と、それを追うラス親が激しく仕掛けている。

 (東家 31600点)
 裏裏裏裏裏裏裏 六萬横五萬七萬 六筒横七筒八筒

 北九索南白八索九萬
 七筒一筒發八索五萬八萬
 六筒

 (南家)
 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏

 七索七索六筒四索九筒六筒
 七萬五索一筒四筒白八筒
 
 (西家 31800点)
 裏裏裏裏  四筒横三筒五筒 七萬横五萬六萬 七筒七筒横七筒

 五筒八萬西三索八筒九筒
 七索九索七萬三萬三萬八索
 九索


 両者とも喰いタン、西家は変則待ちだろうか。
 和了りヤメのないルール、出来れば親に和了ってもらいたい。
 ところが、そんな思いをよそに 五索六索一筒 と立て続けに有効牌を引いてきた。

 
 一筒二筒三筒一索二索三索四索四索五索六索七索九索中中

 
 トップへの条件を満たすためには満貫出和了が必要。
 イッツーで曲げるか、 中 に賭けるか・・・・・・

 八索 は場に三枚切れだが、残りの一枚は山生き。リーチといっても親と西家は切ってくるだろう。
 
 しかし、親は普段腰の思い堅実な打ち手。七枚目の 四索 七索 は打てない。
 腰重な打ち手の喰いタンに対しては、ドラよりもドラ跨ぎやドラ雀頭の他の待ちが怖い。
 萬子を外していったのも 四索 七索 を軸に回ろうと考えたからだ。
 
 大事な勝負、大事な半荘だった。迷いもした。
 しかし時間をかけて考えた挙句、 九索 手出しでリーチと行きたくない(ソーズの連続系を読まれてしまうため)。  


 「リーチ!」


 すぐに意を決し、 九索 を横に曲げた。

 明らかに何を切るのが正しいとか、どちらが優位という状況ではないのだ。
 四分六、ないし五分五分だったら今通る牌を切るのが自分の中のセオリーだ。

 親が無スジを強打し、西家が良い顔で 八索 を打ちつけてきた。
 しかし、一番強い勢いで一発目の牌を卓に叩きつけた。


 一筒二筒三筒一索二索三索四索四索五索六索七索中中 ツモ 中


 息を吐き、顔を上げて親に一言だけ尋ねた。
 
四索 は?」 

 「チー」

 ということは、 四索 切りのイッツーに受けると 八索 が下がってくることになる。


 「どっちでも優勝じゃん」


 疲弊のあまり頭の中でこんな台詞を呟いていた。
 
 まずい、気をつけよう。
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吉田光太

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