プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2006年09月

天禄

 一、五、一、二着で迎えた日本オープンの最終半荘。
 四分の一通過という狭き門をくぐるために許された条件はトップのみ。

 南二局、一本場――。
 何度、点箱に視線を落としても九千点しか見当たらない。

「いったい――、トップ条件でハネ満を放銃する馬鹿が何処にいる!」
 自らを叱咤するかのように一人、胸の内で呟く。

 親番が残されているとはいえ、残りは僅かに三局。
 軋轢が生じている手牌と打点を強引に纏め上げなくてはならない。


(南二局 南家 ドラ 九萬


二萬二萬六萬六萬八筒八筒九筒九筒四索四索五索六索七索  ツモ 七筒


 一盃口と七対子を睨んで打 七索 とした。
 数巡後に 二萬 を引き込んで即リーチ。
 ツモれるかどうかなど解らない。だが、満貫の可能性が幾許かでも見えるならばここは遮二無二に行くしかない。

 七巡後、 二萬 を暗槓。
 新ドラは乗らず。

 だが、ラス目のリーチで局が長引いたのが功を奏したのか、海底間際のツモで 七筒 を引くことができた。


 六萬六萬七筒八筒八筒九筒九筒四索五索六索  ツモ 七筒  裏二萬二萬裏


 このままでも1300・2600の和了だが、裏ドラ表示牌に 五萬 の姿がこぼれた。


 そして、最後の親番。
 ドラは白板。


二萬三萬五萬一筒五筒五筒五筒五筒三索三索南白白中


 声がかからぬよう、祈りながら翻牌を切り出す。
 六巡目に 五筒 をひっくり返してシャンテンに漕ぎ着けた。


 一萬二萬三萬四萬五萬三索三索六索白白  裏五筒五筒裏

 
 新ドラは 三索 である。
 すぐに場薄の両面の引き入れて親ッパネの聴牌。

 ダマで息を殺して雌伏する。
 闇でもリン牌の 三索 を引けば6000オールだ。

 十巡目――、ツモ 四索 でリーチ。
 
 ここまでくれば大丈夫。
 ツモれると踏んでリーチをかけて居なかったことなど年に数回しかない。
 下家に一発で白板を打たれたが、二巡後にツモ和了。


 一萬二萬三萬四萬五萬六萬三索四索白白  ツモ 五索  裏五筒五筒裏


 またも裏ドラが二枚乗って、“リーヅモ・ドラ5”の和了となった。
 この一撃が効いて、最終戦はトップ。辛くも一次本戦は通過。


 大会終了後――、事の顛末を訊いたプロ仲間が云ってきた。

「しばらく予選で結果が出せていなかったようだけど、ここのところ粘り強い勝ち方ができているんじゃない?」

 そう言葉をかけてもらって正直嬉しかった。

 しかし、毎度窮地に陥っているのは自らの力量不足。
 そして、残れたのはご覧の通りの僥倖のお陰である。

 次の戦いで勝って、この天禄に報いることができるだろうか――。

 

ブログランキング グレー
 blogランキング

破滅型の男

 私の友人でT君という人物がいる。
 昼は暦とした勤め人だが、無類の博打好きで日々、高レートの東風やサンマに勤しんでいる。

「景気はどう?」
「良いですよ。ここのところの浮きが一本行きました」

 聞けば、ここ二〜三ヵ月でほぼ負け知らずらしい。
 そしてその勝ち額は何と八桁に達したとのこと。

 八桁というと、ちょっと小市民の手銭で勝ち得るのは難しい。
 というよりも単純にアソびの勝ち額では不可能に近い数字だ。

 こんな話をすると、街の麻雀なんて真面目に打てるのだろうかと思う方もいるだろう。また、勝ち額だけを聞くと、ともすれば羨望の的にもなりかねない。
 
 しかし、勝負師はこういうとき、様々なことを危惧するものだ。
 まず、どんな小さな勝負でもバランスを逸することを嫌厭する。
 因果関係など要らないのだ、誰だってつまらない麻雀で下降のきっかけを作りたくはない。
 また、ある者は己の身体や健康を案じたりもする。

 そして、そこまで登りつめたということは、当然ながらその逆もまた然り。
 八桁というのは、それに見合った弾と鋼の覚悟を持ち合わせた人間にしか辿り着けない境地なのである。

「まだ――、オリないんだろうね」
「オリませんね」

 さして熱のこもらぬふうに彼が云う。
 薄氷を踏むが如くの道を自らオリようとはしない。


 しかし、そこは凄惨で薄脆な舞台――。
 盛者必衰、栄枯浮沈の勝負の世界である。

 願わくば、彼の武運がいつまでも続くことを。



ブログランキング グレー
 blogランキング

嵐の夜

 嵐のようなツキの夜。誰にでも覚えがあるだろう。
 やること為すこと全てがうまく行き、他人の運量や小手先の技術など介在する余地がないほど突出した勢い。

 
 フリー雀荘へ初めて足を運んだ遠い夏の日の夜、私は猛烈にツイた。
 
 緊張の色を隠せないまま何ゲームかを消化し、ちょうど面子が入れ替わった半荘だった。
 まだ序盤だったと思う。親でこんな手を聴牌した。

(東四局 東家 ドラ 五索


三萬四萬五萬三筒四筒五筒赤三索三索四索五索五索五索六索七索
 
 
  二索八索 は場にそれぞれ三枚切れ。
 歓迎できる待ちではないが、先攻リーチ者のスジを頼りに 三索 を切ってリーチをかけた。
 リーチ者が私の宣言牌を一瞥しながら 三索 をツモ切る。
 ドラを勝負していれば一発でロンだった。
 しかし、その牌を横目にツモ山に手を伸ばすと、嘘じゃなかろうか私の一発ツモは何と 五索赤 だった。
 

三萬四萬五萬三筒四筒五筒赤三索四索五索五索五索六索七索  ツモ 五索赤

 
 即座に点数と祝儀を申告することもまだ侭ならない。
 必死に指を折って祝儀を数え直してみる。慌てふためいて、飛んでくる点棒とチップを収拾した。
 その半荘は七万点を超える大トップ。籠の中が初めて小銭で溢れた。


 次の半荘も好配牌がきた。
 東場の親番で早い聴牌。

(東二局 東家 ドラ 五筒


二萬三萬四萬五萬五萬五筒五筒八筒八筒八筒北北北


 よほど手変わりを待とうかとも考えた。
 しかし先刻の勢いを鑑みてここも積極的にリーチといった。
 四枚目のドラをツモれたんだ、シャンポン待ちも簡単にツモれる気になっていた。

 すると上家の一発消しでドラが食い下がってきた。


二萬三萬四萬五萬五萬五筒五筒八筒八筒八筒北北北  ツモ 五筒赤
 

 馬鹿ヅキの二連勝。
 まだ牌効率も中スジも理解しきっていない雀力でよく勝てたなと思う。
 昔から面前力には自信があったが、普段は同じ高校生同士でしか牌を握ったことはなかったのである。
 だが、五連勝、六連勝しても私の牌勢が落ちることはなかった。

 当時、この雀荘は半荘二十回を一単位としたポイントレースを行っていた。
 トップが2p、二着に1pの得点が付き、半荘二十回でのポイントを月間で争うというものだった。

 八連勝を遂げ、二着を一度挟んで再び三連勝。残り八半荘もトップ二回に二着が五回。

 自分のツキが怖かった。と、同時に店内の全ての人間が敵に見え始めた。
 店員が私の連勝を告げるたびに、同卓者からムッとした得も言えぬ空気が発せられる。
 無事に店を出られるのだろうか、勝ち金は財布以外の懐中にしまい込むべきか――。

 今でこそ笑える話だが、何か仕込みがあるのではと邪推を働かせるほどのツキだった。
 結局、その日は宵から昼過ぎまで打って、圧勝だった。
 家路につき、必死になって釣果を計算したのを覚えている。


 ポイントレースの賞金と、雀荘で勝ったという勲章を獲た私はその日を境に麻雀の世界へ一人足を踏み入れた。
 恐らくあの晩の大勝がなかったら、そこまで麻雀にハマることはなかった。
 つまり、あの日の馬鹿ヅキが私のその後の人生を大きく左右したのである。

 あの晩、はたして私は本当にツイていたのか。
 その答えは未だ探しているところだ。


ブログランキング グレー
 blogランキング
 

辺嵌張対決

 噂をすれば何とやら。
 配牌から四枚連続で有効牌を引き入れての国士聴牌。
 

 一萬九萬一筒一筒九筒一索二索東南西北白中  ツモ 發
 

 まるで、王にでもなったかのような気分になる。
 国士がアガれるとき――、ピンポイントで足りない部位に公九牌が飛び込んできてくれるアノ感覚。
 あとはそのまま息を潜めて悲運な相手から零れるのを待つだけである。


 しかし、ここで一つの疑念の種が生じた。
 これも――、リーチをかけるべきなのだろうか?
 
 下家が早々に風牌をひっかけて、索子へまっしぐらの様相。
 それに合わせて私の捨て牌も索子が最終手出しとなる。


 三筒七萬二萬二索


 場に索子は高い。
 いくら“木を隠す”といっても、これは流石に闇に構えるべきか。
 
 リーチをかけるのならば、今、堂々と曲げねばならない。
 ツモ切りや、公九牌の空切りでリーチでは怪しまれる可能性がある。
 
 しかし、いくら何でもこの場状と捨て牌でリーチはないだろう。
 迷妄を打ち消し、闇テンを選択した。
 一色手の人間がいるとき、他家は索子を先打ちしてくる場合だってある。


 どうも入らんなという顔で、普通の手を装ってツモ切りを続ける。
 だが、索子の端がなかなか零れてこない。

 六巡目、下家に入り目の緑発を打たれた。
 そして次巡は手出しで 六索 を打ってくる。
 テキも早いのだろうか?だが、今なら脇は 九索 ぐらい打ってくる。

 しかし、願い虚しく上家の切った 四索 に同じくツモ切りを繰り返していた親が手牌を倒して勝負あり。


三萬三萬三萬五萬赤六萬七萬四筒四筒三索五索五索赤六索七索  ロン 四索


 下家に手の具合を訊ねてみる。


 一索二索四索五索六索七索八索九索中中  北北横北


 こちらは辺 三索 待ちの“混一色・イッツー”聴牌。


 生涯最速の国士聴牌という大好機も、七巡目にして既に三人が聴牌。
 とどのつまり、選ばれてなどいなかったのだ、私は。



ブログランキング グレー
 blogランキング
 良かったら一票投じて下さい。

迷彩打ち

 字牌待ちの早い国士聴牌はいっそのこと曲げてしまえ。
 先日の国士リーチを一人、反芻してみる。

 私はこの考えに賛成だ。
 全員が最短距離で搗ち合うフリー雀荘では相手に相対的に打たせる方が得をすることが多いし、何よりもツモ切りをリーチによって隠すことができる。

 闇撃ちが多い国士無双。
 しかし、早い聴牌の場合、その後の中張牌を全てツモ切りしなくてはならない。
 
 せっかく音を消して早い聴牌を入れたとしても、道中で赤やドラをツモ切る羽目になった日には目も当てられない。
 そこで、あえて聴牌宣言をし、ツモ切りを選択。

 
 これぞ迷彩打ちの現代版、“森の中に木を隠す”とも言えぬだろうか。



ブログランキング グレー
 blogランキング
 良かったら一票投じて下さい。

誤謬

 対面が牌を横に曲げたのは八巡目のことだった。


 八筒八萬五筒赤三筒二筒二筒
 北北横 


 やや難解な捨て牌ではあるが、その表情や仕草に不穏な気配は漂っていない。
 
 そこへ親が威勢良く追っかけリーチ。 
 こちらは一転して捻りのない捨て牌相。


 南一萬發八索三萬一筒
 二筒東五索横 


 九巡目ともなればこちらも攻め盛り。
 安牌など持たぬスタイルの私は、まさに前門の虎、後門の何とやらに挟まれた状態である。

 ぐっと手を止めて対面の河を検めた。
 自風牌である 北 の対子落しでリーチ。 北 は場に一枚切れ、槓子落としではないから、七対子ではない。

 すると、対子系の手や一色手の対子選択か。
 また、筒子を使ってないにせよ、普通の順子手も考えられる。順子手であれば、全帯公崩れか索子のイッツー含みだろうか。

 
 幸い、一発目のツモで対子の 西 が暗刻になった。
 西 は初牌だが、親にもまず通るだろう。

 打 西 とし、この場を凌ぐ。
 だが、二巡後に北家がツモってきた 發 を静かに手元に引き寄せた。


「四暗刻、いやメンホンか――?!」


 一刹那、いくつかの牌姿が頭をよぎる。
 しかし、倒された手牌はバラバラだった。


一萬九萬一筒九筒一索九索東南南西北白中  ツモ 發


 全員の目玉がしこりのように固くなって、開かれた手牌に向けられる。

 “リーヅモ・国士・裏イチ”

 茫然とする三者をよそに、平然と裏ドラを捲る対面の姿が印象的だった。



ブログランキング グレー
 blogランキング
 良かったら一票投じて下さい。

戴冠

 先の「PRIDE無差別級GP」で超人ミルコ・クロコップが悲願の初戴冠を果たした。
 
 キックボクシングのK-1から、総合格闘技であるPRIDEへ闘いの舞台を移して四年。
 己の信ずる武器、怪刀・左ハイキック一本で敵を薙ぎ倒す侍のような男だ。

 無冠の帝王と言われるほど、ここ一番の強さには定評があったミルコだが、ここまでの道程は楽なものではなかった。
 男はあと一歩、もう一つの壁を越えきれなかった。
 何度も涙を流し、負けて大きな力を得続けてた。
 最下層ながら同じく勝負の世界に生きる人間として、「彼」という物語にカタルシスを抱かずにはいられなかった。

 
 麻雀王座決定戦。かつての阿佐田哲也杯である。
 半荘四回戦で執り行なわれた結果は、一次予選敗退。

 素点が最重視される王座戦ルール。
 いかに打点を作り、放銃を回避するかが勝負の分かれ目となる(一発、裏ドラ、ノーテン罰符、オカ・ウマ無し)。
  

 一回戦は5.3Pの浮きで終わったものの、二回戦で親マンと満貫をツモられて大きく失点。
 挽回を図るも全く手が入らず、十局中六局が流局という始末。

 それでも三回戦、四回戦はアガリを創造することが出来た。
 素点は足りたわけだ。
 しかし、三回戦に暴投とも言える一打で親リーに12000の放銃。結局、最後までこの失点が響いた。


三萬三萬一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒二索三索四索  ロン 四筒

 
 プロになってから鶴首し続けているタイトル。
 しかし、あんな牌を打っているようでは私が戴冠できる日は程遠い。
 
 今日も想いだけが強く、濃くなっていく。



ブログランキング グレー
 blogランキング
 良かったら一票投じて下さい。

出禁

 出禁を告げるのは嫌な役目だ。
 
 「パンチ」という客がいた。
 ジャラジャラとした装飾品を身につけ、常に肩をいからせて歩いているような男だ。
 眉はほとんどなく、そして頭はパンチパーマ。
 どう見ても堅気の勤め人には見えなかったが、一応歴とした職に就いているという話だった。

 彼は悪い人間ではないが、麻雀中の高圧的な態度に問題があった。
 卓内で言動や仕草で他の客を萎縮させていたのだ。
 私には周囲を脅かせる悦びというのは理解できないが、彼の日頃の風貌作りや卓内でのそういった行動には彼なりの目途があったのだろう。
 
 怖いだけでは出禁にならない。問題は彼のべしゃりにあった。

「何だよ、その仕掛け。やられたな」

 彼が悪意なく言った言葉だとしよう。
 それでも異彩なオーラを放つ彼に言われると、若い人間などは動きが取り辛くなるのだ。怖くても構わないが、客が麻雀をノビノビ打てないのは問題がある。


 ある夜、パンチの出禁が決定してから、初めて彼が店に顔を出した。
 折り悪く、出禁を決定した責任者は外出中で居ない。
 
 そこで私に白羽の矢が立った。
 彼を店の外へ押し戻して話をする。

「すんませんね、上から言われてるもんで」
「あぁ、何でだよ?」
「いや、理由はよく解りませンけど」

 しばらく押問答をし、何とかお引取りいただいた。


 出禁にすることに罪悪感はない。
 他にアソぶ店はいくらでも在るし、店側がウチに馴染まないと判断したのだから仕方がないことだ。
 しかし嫌な作業だ。
 初め、緊張しながら話していた私だが、途中で何だかどうでも良くなってきてしまった。
 だって実は彼が茶目っ気のある楽しいヤツだって知っていたからである。

 強面の彼は他の客やメンバーとほとんど言葉を交わさない。
 だが、一人だけ、メンバーの中でも一番若くて女の子のように細いスナガ君とだけは違った。
 日頃、あまり自らメンバーに注文をしない彼だったが、スナガ君にはドリンクなどを自分から頼んでいた。
 ある日、スナガ君が本走でパンチの卓に入ると、いつもの怒声の様な声でこう言うのだ。

「おいスナガ、サシウマ行こうぜ」
「ええ、マジっすか」
「ああ、負けた方が頭をパンチパーマにするんだ」

 これにはその場にいた全員が笑わずにいられなかった。



ブログランキング グレー
 blogランキング
 良かったら一票投じて下さい。

裏切りの47ソー

 上家の最終手出しは 四索 だった。


裏裏裏裏裏裏裏  北北横北 中中中横


九萬一索一筒九索七萬五萬
二索西四索


 自風である 北 を叩いての 四索 切り、テキの聴牌は明白だ。
 脇は手が悪いのか、早くも上家の捨て牌に合わせてきている。

 
 その夜――、知人と電話で一戦やらかした私は悪戯に牌を握り刀を振り回していた。

「糞、どうして解ってくれないんだ」

 他愛もない齟齬から生じた言い争いが頭から離れない。
 他人の考えは自分の思い通りにならないと判っているのに。
 自省することなく、募るのは相手への不満ばかり。そんな夜だった。


 親の私は六巡目で下の形。

(南三局 東家 ドラ 六索


五萬赤六萬八筒八筒九筒三索五索六索六索七索八索九索九索  ツモ 二索


 八筒 から掃っていって、十巡目に聴牌。


五萬赤六萬七萬一索二索三索五索六索六索七索八索九索九索


 音を消して、上家の現張りで12000。
 この局はもらったと思った。
 だが、すぐにこぼれると感じた 四索七索 がなかなかな出ない。
 その内にツモ切りを続ける私の河はみるみる弱くなっていく。

 流局三巡前、私が引いてきたのは 五索赤

 残されたツモは僅かに二回。上家にドラ跨ぎの 五索八索 で打ったら最低3900ある。
 聴牌を維持し、打 九索 で回るという手もある。


五萬赤六萬七萬一索二索三索五索五索赤六索六索七索八索九索


 しかし、これで 五索 はドラ表と序盤に切られたものをあわせて四枚見えた。
 ということは、上家は手中に 五索 がないのに、 四索 をあそこまで引っ張っていたことになる。

 安牌である前巡の 西 はツモ切りだ。
 すると、索子は 北 をポンして雀頭になったか、 四索六索八索 といったリャンカンの可能性が高い。
 手の内に索子があるとしても、単純に 六索七索 というターツでは持っていないだろう。

 こちらは高めツモ6000オール。打 八索 とした。

「ロン――」 

 上家からかかる待ったの声。


一萬二萬三萬四索四索六索七索  北北横北 中中中横  ロン 八索


 ああ、成るほど。
 黙って点棒を支払う。

 また私の独りよがりだったワケだ。 

雀聖

 便利な世の中になったなと思う。

 高校生のとき、親友に薦められて読んだ阿佐田哲也氏の小説に感銘を受けた。

 麻雀の奥深さ、ギャンブラーの哀愁を独自の世界観とウィットに富んだ文章で書き連ねた彼の作品にハマるのにそう時間はかからなかった。
 発刊されている全ての著書を貪るように読み漁った。
 何度も何度も。
 キリスト教主義教育の高校に通っていたが、鞄の中には聖書ではなく私のバイブルと化した氏の小説ばかりを潜ませていた。

 やがて私の目は絶版となった作品に向かう。
 ちょうどその頃、東京国際フォーラムで開催された氏の没後十年記念文学展で入手したパンフを頼りに彼の著書を隈なくチェックした。
 市内のあらゆる古本屋を巡り、「あ」行の棚をしらみつぶしに探す。
 東京に赴いた際には神田や馬場と言った古書街を歩き回って探した。

 店頭にあるものは総じて発行部数の多い、既読作ばかり。
 新たな一冊に出会える可能性は何百分の一だった。
 何年もの時間をかけ私の収集は一冊、一冊ずつ進んでいった。

 それが今やネットオークションで自宅に居ながらいとも簡単に手に入るのである。
 私が何年かかっても探しえなかったレア作品までもが公然と取り引きされているではないか。
 成るほど、確かにレア作品には多少のプレミア価格がついているものの元が廉価な文庫本。そう無理な値段でもない。

 本当に生きやすい世の中になったと思う。
 おかげで私もコレクションの穴を埋めることができた。

 しかし、古本屋に着いて、諦め気味に棚に視線を落としながら未読作品を見つけたときの達成感。そして裏表紙に鉛筆で綴られている「100円」という文字に対する何とも形容し難い後ろめたさ。
 あの高揚感はもう味わえない。
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ
プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


bnr_kingdom200x200


















麻雀 ブログランキングへ







連絡先



bnr_asami





bnr_hanamura






bnr_nozoe





bnr_emori





bnr_hazuki





bnr_mikoto





bnr_hinata






bnr_ishii





bnr_sugawara





bnr_higuchi






アクセスランキング
アクセスランキング