プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2007年04月

餞別

「仕事には――、もう慣れた?」
「ええ、もうバリバリ働いてますよ」

 かつての戦友がネクタイ族となって顔を現した。
 若いときからメンバー業一本だったらしいが、この度めでたく堅気の会社員となったのである。
 
 週末までの勤務を終え、気の遠くなるような時間を過ごしたこの空間に、今度は息抜きをしに現れたのだ。
 仕事のことを語る彼の声色は高く、その精気に満ちた表情から今の生活が充実しているが良くわかる。
 頑張れよという気持ちと、少しばかりの嫉みの気持ちが私をただ曖昧に頷かせる。


 その友人を迎えての一戦。

 第一戦、二戦と彼が連勝を飾る。
 展開も手伝ってのトップだが、順調な滑り出しである。
 
 万に一つにも、現役の人間が引退した人間に負ける訳にはいかない。
 とまでは云わないが、この気持ちを失くしたらお終いだ。


 第三戦目、小刻みに和了を重ねて彼のペースを乱すことに成功した。
 ラスト走者が二着目の親に大きいのを打って箱割れとなったが、私は二着。彼は、三着。

 四戦目。
 今度は私の半荘となった。
 勝負所で競り勝って、トップ目で迎えたラス前。

 八巡目に聴牌が入り、リーチをかけた。

(南家 ドラ 三筒

八筒二索四索三索二萬二索
發九萬横 リーチ


 対面の彼が、一発で引いた牌をそのまま河に放る。
 それは、場に二枚切れの 西 だった。


「ロン――」


 一萬九萬一筒九筒一索九索東南北北白發中   ロン  西



 私は、18で麻雀の世界に身を委ねた。
 数多くの同年代の友人と出逢い、数多くの人間が先に卒業して行った。

 何一つ、社会生活で役立つようなアドバイスを出来はしないが。
 気合でも執念でも、何か一つでも良いところを見せたいという気持ちだけは抱き続けている。




ブログランキング グレー
 blogランキング  
 





辣腕

 四萬 七萬 を先に持ってきたら、それは私が牌を置くときかもしれない。


 朝から一進一退を繰り返し、ようやく籠の中のチップが増え始めてきた。
 ラス前の親番を迎えて、点棒は平たい横一直線。

 その日の帰趨を決めかねない局だった。

 
 立て続けに有効牌を引いて、早い聴牌が入る。

(東家 五巡目 ドラ 八萬


 一萬三萬五萬五萬六萬三筒三筒三筒一索一索發發發   ツモ  二萬


 もしも、一つだけ。
 私に他者よりも秀でている物があるとしたら、それは今日までの数万荘の中で培ってきた自摸牌に対する感性である。
 この感性だけを頼りに累々と勝ちを積み上げてきた心算だ。

 その唯一の武器が、答えは一つだと言っていた。
 この牌の寄りはシャンポン受けであると。

 
 迷うことなく、 六萬 を横に曲げた。


 一萬二萬三萬五萬五萬三筒三筒三筒一索一索發發發  リーチ


 すぐに他家から暗槓が入り、九索 がめくれる。

 それを見た北家が追っかけリーチときた。

 しくじれば、致命傷とも成りかねない。
 だが、どんな勝負でも自分のヴィジョンや景色になったときは、そこにリミットまで張れば良い。

 そう信じつつも、自摸る手に力が入る。
 追っかけリーチの和了牌もいない。

 めくり合い、勝負は海底まで縺れ込んだ。


 そして、そこにはヴィジョンに映った黄金色の牌が眠っていた。


 一萬二萬三萬五萬五萬三筒三筒三筒一索一索發發發  ツモ  五萬赤


 裏ドラにも 九索 がめくれて、12000オールとチップ十二枚の和了。

 
 会心の和了に一人酔い痴れるも、ここ最近の不倶戴天の敵である役満には遥か及んでいないことに気付くのにそう時間はかからなかった。



ブログランキング グレー
 blogランキング  
 




 

虎口

 今月に入ってからの未曾有の役満見舞い。

 辛くも、自摸和了による成就により致命的な被災だけは免れているが。


 四者決め手を欠いたまま迎えたラス前。
 挟み撃ちにあった私の手牌は悲鳴を上げていた。


(西家 ドラ 七萬


四萬五萬七萬一索二索二索三索三索四索六索八索九索九索  ツモ  九索


 南家のリーチに安牌は皆無。
 
 親は早々に筒子を引っ掛けて、リーチに怯むことなく前に出てきている。


 裏裏裏裏裏裏裏  七筒横六筒八筒  二筒横三筒四筒


 そして、北家のアニキは三元牌を叩いてこちらも全闘体勢。


 裏裏裏裏裏裏裏  白白横白 中中中横


 緑発の在り処は明らかになっていない。
 
 親は、食いタン。
 おそらくドラか金牌があるのだろう。

 リーチは――。
 判らない。緑発を殺しているのだろうか。


 リーチの現物牌は 一索 の一枚のみ。これは親にも通る。
 だが、北家のつい先ほどの最終手出しが 五索赤 であった。捨て牌バランスから思索するに、策子の上下が待ちに絡んでいる可能性は存分にあった。

 次いで、手をかけるとしたら 二索 である。
 これはリーチ者のスジ牌である。
 そして 一索 が二枚見えのため、嵌張待ちはツーチャンス。
 

 麻雀とは、一牌切り出すたびに他家からの放銃抽選を孕んでいるものだ。
 何処かに書いてあったそんな言葉が頭の中を去来する。

 だが、手詰まりだろうと何だろうと何かを捨てなければならない。
 祈るような思いで一牌を切り出した。


 「一索 !!」


 どこからも声はかからない。
 通った。

 すると、同巡にリーチ者が自摸り和了る。


 四萬五萬赤六萬七萬二筒二筒二筒九筒九筒九筒六索七索八索   ツモ  四萬


 親に訊くと、ドラ雀頭の嵌 四萬 待ちだという。

 そして北家の手も覘いてみた。


 一索三索發發發北北     白白横白 中中中横


 そこには、煉獄の闇が私を手招きして待っていた。

 刻一刻と、その時は近づいているのかもしれない。



ブログランキング グレー
 blogランキング  
 




 

 

暗雲

 荘家の二巡目。

(東家 ドラ 四筒


 二萬三萬七萬八萬九萬七筒八筒九筒一索七索八索九索九索  ツモ 六索


 聴牌取らずの打 六索
 次巡、 一索 を重ねての聴牌。


 二萬三萬七萬八萬九萬七筒八筒九筒一索一索七索八索九索


 トップ目の南家と西家の河は萬子の下が安い。
 闇に構えた。

 数巡の後、ドラまたぎの 六筒 を自摸切ると、仕掛けていたトップ目の南家が二面で開く。
 トップ目が掴むはずだった 一萬 を西家がそのまま自摸切って18000の和了。


 二萬三萬七萬八萬九萬七筒八筒九筒一索一索七索八索九索  ロン 一萬


 トップ目が鳴ける筒子を持ってきてしまうあたりが弱い。


 その後、トップとは大きく離された二着目で迎えたオーラス。
 トップ目のリーチに対し、ラス親が追っかける。

 三着確保の上家がその宣言牌を引っ掛ける。
 私は、静観。
 強いて言えば雀頭の 七萬 を下ろして、三着目に刺しても良い。

(西家 ドラ 九筒


 四萬五萬赤五萬七萬七萬四索五索六索七索八索  ツモ 三筒  六索六索横六索


 しかし、トップ目がラス親に打てば私にも再び芽が出てくる。
 ここは水を差すべき局面ではない。

 だが、無常にもトップ目が 一萬 を手元に引き寄せる。


 一萬一萬二筒二筒二筒六筒六筒九筒九筒九筒五索五索赤五索  ツモ 一萬
 


 止まない雨は無いと云うなれど。
 森羅万象、その全てが確率上起こり得ることではあるけれど。

 私の頭上に立ち込めた暗雲はいったい何時過ぎ去るのであろうか。



ブログランキング グレー
 blogランキング  
 




 

艶女

 対面に座った御嬢の、たった一牌に惑わされてしまった。

(西家 ドラ 二索


一萬一萬一萬六萬七萬八萬九萬七筒八筒二索二索七索八索


 ドラが対子で、三色含みの一向聴。
 
 今思えば、不思議なほどクリアに場況を把握できる捨て牌相だった。
 六筒 がポンされているものの、入り目となる二面はいずれも山生きだ。 

 そして、“9”の付く牌をツモ切るであろう者が二人居たので、片和了の仕掛けも視野に入れていた。そのため、 六萬 ないし 九萬 は先切りできない。


 ストレートに打てば迷いがないものの、私は引いてきた 七萬 に手を止めてしまった。
 ダブ東を叩いた御嬢が、ポン出し 五萬
 しばし自摸切りの後、手出し 七萬 ときた。

 捨て牌が御嬢の聴牌濃厚を物語っており、打 七萬 が手牌に関連しているのは明らかだ。

 六索 九索 は早く、 六筒 九筒 はフィニッシュ用、そして自摸りに行くなら 五萬 八萬 も悪くはない。
 そんな風に把握していた私が選んだのは筒子のターツ外し。

 次巡、目論見どおり索子を引き入れてリーチ。


 一萬一萬一萬六萬七萬七萬八萬九萬二索二索六索七索八索


 この選択が、全ての明暗を分けた。
 九筒 を通され、 六筒 を怒りに震えた指先で河に打ち出す私。

 親に後で聞いたところ、 五萬七萬八萬八萬東東 からの仕掛けで、萬子は雀頭になったらしい。

 
 今日も、独りよがりの敗北感を噛み締めながら家路についた。
 御嬢のあの一打に惑わされさえしなければ……。


 女性の対戦相手ということで思った。
 世の中には男性を虜にしてやまない艶女というのがいる。

 私を惑わせ続ける艶女。
 もう随分長いこと首っ丈にされているが、これだけは止められない。 



ブログランキング グレー
 blogランキング  
 




 

怒号

 トップを満貫一つ分の差で追う二着目。
 ラス前に早い七対手が入った。

(北家 ドラ 白


七萬二筒二筒五筒五筒六索六索七索七索九索北白發   ツモ  白


 第一自摸でドラを重ねての一向聴。
 
 捨て牌というのは、強く創るべきである。
 七対子を狙う際は、捨て牌に傷を作らないようにしている。

 同じ四枚を河に並べるのでも、並び順によってその意味合いが大きく異なるからだ。

 七萬九索北發横 リーチ


 北發九索七萬横 リーチ


 場見えの牌でなければ、重なる確率は一緒である。
 仮に、次巡に聴牌することが約束されているならば、 七萬 よりも 北 単騎で曲げたいから、こちらを残す。

 だが、そんな保証は何処にも在りはしない。
 いつも通り自風である 北 から切り出した。


 ところが、次巡にすんなりと 發 を引いて聴牌。


 七萬二筒二筒五筒五筒六索六索七索七索九索白白發   ツモ  發


 七萬 を打ち出し、取り敢えずの 九索 単騎を選択。 


 二筒二筒五筒五筒六索六索七索七索九索白白發發


 この 九索 がなかなか場に零れない。
 気分良く有効リーチを打てそうな字牌も引くことが出来ない。

 調子の良いときは、端牌でサクッっと和了れてしまうものだが、場に打たれる索子は掠るばかり。
 こんなことなら、 北 を残しておくべきだったと思った瞬間、二枚目の 北 が私の河に並ぶ。


 八巡目。
 生牌の 西 を引くも、今さら字牌単騎に出来ず河に放る。
 

 すると、次巡。南家と西家から同時にリーチが入る。
 私の自摸は二人に無スジの 四筒
 

  二筒二筒五筒五筒六索六索七索七索九索白白發發   ツモ  四筒


 もはや、局の主導権を私が握っていた時間がとうに過ぎ去っているのは火を見るより明らかだ。

 場枯れの 白 打ちという選択が出来なかった私が選んだのは、配牌から抱えていた 九索 勝負。

 バタッと南家の手牌が倒される。


  二萬三萬四萬四萬五萬赤六萬四筒四筒七索八索西西西   ロン  九索


 裏ドラが二枚乗って、ハネ満の二千五百両だという。


 何という間の悪さ。
 そしてイージーな選択であろうか。

 久々に後頭部の辺りで何かが弾ける物凄い音がした。



ブログランキング グレー
 blogランキング  
 




 

磁場

「ツモ!8000・16000!!」


 九萬九萬一筒九筒一索九索東南西北白發中   ツモ  一萬


 卓から聞こえるそんなラストの声と共に席に着いた。


 迎えた東二局、私の親番。
 今度は先ほど国士を自摸った対面の上家が、やっているのである。


 五萬八萬二索二索四萬二筒
 八萬六索六索四索
 

 中盤、私と北家が仕掛けて聴牌を入れていたが、どうやら下家も入ってしまったようだ。次々と九公牌を自摸切る。

 そして、私が三枚目の 九萬 を掴んでオンリしたところで、無常にも下家が自摸った緑発を引き寄せた。


一萬九萬一筒九筒一索一索九索東南西北白中   ツモ  發


 その、翌日。
 最小限のトップとラスで何とか耐え凌いでいた十半荘目。
 起ち親が急に闇テンで手を開く。


五萬五萬七萬七萬七萬六筒六筒發發發中中中   ツモ  五萬

 
 八巡目自摸和了の16000オールだという。


 私の周辺で、いったいどれ程の磁力が働いていると言うのか。
 役満付いているにも程がある。

 
 得てして、こういう出来事は暫く続くものだ。
 何処かで断ち切らねば。




ブログランキング グレー
 blogランキング  
 


餌食

 対面に座った、初顔の御仁の連勝で迎えた半荘。
 その東三局、私に早い手が入った。

(東三局 南家 ドラ 七索


二萬三萬二筒二筒二筒三筒四筒六筒七筒四索五索赤七索八索


 近い将来、ターツ選択を余儀なくされるであろうが、そう悪い手ではない。

 ところが、突如北家の御仁が牌を横に曲げてきた。


 八萬五筒二萬三索二索横 リーチ


 「リーチしようか」
 先刻まで余計な言葉を全く発さなかった彼が、顔を上げてそんな台詞を言ってきた。


 親も勝負手なのか、自摸ってきた 一筒 をそのまま卓に打ち付ける。

「ウン――。ご免ね」


 もしや――。
 と思う間も無く、御仁が綺麗に手牌を倒す。


一萬九萬一筒九筒一索九索東南西北白發中


「ダマじゃ悪いかなと思って――」


 そんな御仁の言葉は彼に届いているだろうか。
 放銃をした親はすっかり打ち拉がれている。
 
 だが、こんなものは如何しようも無い。
 持ってきた牌が不要な九公牌だったら誰だって一発で打つ。
 強いて言うならば、“並び”が悪かっただけだろう。
 
 
 卓上のざわめきが収まらぬ中、ひょいと山に手を伸ばし自分の次の自摸を確認してみた。
 
 手にした 一筒 を片手に、私は自分の手牌を凝視した。




ブログランキング グレー
 blogランキング  
 


QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ
プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


bnr_kingdom200x200


















麻雀 ブログランキングへ







連絡先



bnr_asami





bnr_hanamura






bnr_nozoe





bnr_emori





bnr_hazuki





bnr_mikoto





bnr_hinata






bnr_ishii





bnr_sugawara





bnr_higuchi






アクセスランキング
アクセスランキング