プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2007年08月

先見

 仲間内で麻雀の話に興じていた際、ふとしたことから、麻雀の対局の様子をweb上で動画配信できないだろうかという話が持ち上がった。

 例えば、タイトル戦の決勝なんかはそれなりに需要があるのではないだろうか。
 スポンサーが付いている大会は少ないから、民放や衛星放送で時間をとって流すのは難しいし、また、観戦というのは立ち位置を移動しづらく、手牌がよく見えるのは最前線の数人のみだ。

 その点、ネット配信ならば費用も抑えられ、ダイジェストをクローズアップすることもできる。
 
 インターネットの世界は今後、動画の普及が進んでいくであろうし、麻雀好きの人口層とネットはそう遠い関係でもない。


 ここ、「麻雀倶楽部」の動画サイトでは他に先駆けて麻雀に関する動画を配信している。

 麻雀ポータルサイト 麻雀倶楽部
 http://www.mahjong-club.net/doga/doga.htm


 タイトル戦やリーグ戦。若手の研究会やセットなんかでも良いと思う。
 とかく、外の世界に向けて自分たちの商品である麻雀を発信する機会の少ないこの業界にとって、インターネットという媒体は救世主となりうるかもしれない。
 
 最小限でもニーズがあるのであれば、私も何かを発信してみたいし、試みてみようと思う。







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作法

 先日、とある場所で打っていたときのこと。
 後ろで観戦していたウェイトレスの女性が、私とリーチ合戦をしていた親の手牌について局の途中で口を挟んだ。

 彼女はここでは立ち番専門だが、他所のもっとアミューズメント要素の高い雀荘では仕事で牌を握るらしい。
 別に待ちに関することではないし、彼女からしてみたら大したことではないと考えたのだろう(ただし、山に残された牌には影響がある発言だった)。
 しかし……、と思う。

 私は、第三者が局の進行中に手牌に関連することを口にするのはご法度だと教わってきた。

 「兄ちゃん、後ろで見るなら絶対に口は噤んだままにしておけよ」

 一昔前の鉄火場であれば、その道の先達がいろんなことを教えてくれたものである。その口調は決して綺麗なものではなかったが、大事なことだったと思う。

 また、まだ学生の、麻雀を覚えて二、三年だという打ち手と打っていたときに、彼がリーチをかけて自摸和了って裏ドラを捲る際、ぐしゃっと隣の牌を崩してしまった。左右の牌がずれ、下山の牌が周辺に乱れる。
 だが、それを全く意に介する様子もなく、颯爽と裏ドラらしき牌を捲る彼。
 そして、彼の手牌にあった暗刻の牌が裏ドラの表示にめくれた。

 決して安い勝負をしているわけではないのだ。一日の上下で天国も地獄も見る。
 勝負事にはルールやマナーの他に仕来りというものがあり、全員でそれを遵守することによって初めて大枚のやり取りが成立するのだ。

 裏ドラを崩したこと自体は仕方がない。
 だが、その牌で合っているかどうか。仮に、誰も真偽が解らなければその牌を裏ドラとしてめくって良いかどうか。彼はそれを事前に確認するべきである。
 彼に悪気はないのだろうが、そのあたりの意識がひどく希薄だと私は感じた。

「そんなの払えねーよ!次からはちゃんと確認してから捲れよ」

 先輩達のそんな懐かしい怒声が私の脳裏に響いてきそうだ。





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札幌 HeartLand[ハートランド]

 8月26日、最強戦のゲスト及び運営として札幌のフリー雀荘「Heart Land」にお邪魔してきました。


 店内と大会予選の様子

 てんない








て3









 決勝戦とお店のスタッフの方々

け1







け2







け4


 






 北の大地における麻雀熱の高さを窺い知ることが出来るようなお店です。

 殊にお客さんのマナー、雰囲気が他に類を見ないほど素晴らしい。
 そして、そんなお店作りに貢献しているスタッフの方々の仕事意識も目を瞠るものがあります。


 JR札幌駅から徒歩三分。
 全卓最新鋭の自動卓「アルティマ」と多数の空気清浄機が完備された店内は、快適に麻雀を楽しむことが出来ます。

 Heart LandのHP
 http://www.e-heartland.co.jp/




奪取

 雀王リーグ戦第八節。
 第七節終了時点でのポイントは250.1p。首位とは350pも離され、昇級ラインの四位までは120p差の三番手である。

 http://npm2001.com/jannou/jannou-b2.html


 緒戦、一時間半に及ぶ耐久戦をオーラスでトップ目を捲くり白星スタート。
 続く二回戦目は東場で花火を打ち上げた上家を6000オールで猛追するも、一歩及ばず二着。
 三回戦目、小場のスプリントレースを制してトップ。

 1、2、1と相変わらず出だしは順調だ。
 いつもの急失速を危惧しながら臨んだ最終半荘。十四枚の配牌を手にした私は、索子へ走った。

(東一局 東家 ドラ 三筒 ) 


七萬九萬六筒一索五索五索六索八索八索九索九索西白白


 すると、するりするりと有効牌を引いて、八巡目にして門前混一色の聴牌が入る。


 一索三索四索五索五索六索七索八索八索九索九索白白   ツモ  白


 待ちである 八索 九索 は場に顔を見せておらず、 一索 が二枚、 四索七索 が一枚飛びといった具合だった。
 このまま場が進行すれば、どこかから零れてきそうな感覚だ。

 手牌変化についても思考を働かせておく。
 まず、 七索 を引いてきた場合の待ち取りについて。


 三索四索五索六索七索七索八索八索九索九索白白白

 三索四索五索五索六索七索七索八索八索九索白白白

 三索四索五索五索七索七索八索八索九索九索白白白

 三索四索五索五索六索七索七索八索八索九索九索白白

 次いで、 六索 を引いてきた場合。
 

 三索四索五索五索六索七索八索八索九索九索白白白   ツモ  六索


 九索 の釣り出しを考えての自摸切りか、一口盃やよもやの七対子も見て打 三索 とするか。

 また、 二索 を引いてきた際の選択もある。



 そこへ、対面からリーチが入る。


 九萬發北一索五筒九萬
 一筒西三萬横   リーチ


 水面は、波立った。
 私は内心舌打ちをしたが、勝負はこうなった方が面白い……。

 一発目、勢い良く打ち出された上家の 六索 を一瞥しながら山に手を伸ばすと、私の自摸は 七索 だった。


 三索四索五索五索六索七索八索八索九索九索白白白    ツモ  七索


 前巡までの状況であれば、打 五索 の闇テンを第一に考える手である。
 しかし局面というのは生き物だ。
 現にこの五秒足らずの間に状況は激変している。

 リーチ棒を放り出し、追っかけリーチを打った。局面に自然と身を委ねて。
 奇を衒う要素は一つもない。

 リーチ者が自摸切り、私は一発自摸の牌を手元に手繰り寄せた。


 三索四索五索五索六索七索七索八索八索九索白白白   ツモ  五索


 この僥倖ともいえる6000オールが利いて、最後の半荘もトップ。

 第八節は1、2、1、1で+180pほど。
 これでトータルで+430p。
 今期初めての大立ちとなり、ボーダーの四位に大きく水を開け、暫定二位に食い込むことができた。


 あと、170p――。
 最善を尽くし、残り二節で捉えてみせる。





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前兆(供

 フラフラになりながらも何とか耐え凌いで迎えた七戦目。
 初めて私にチャンス手が入った。

(東三局一本場 東家 ドラ 東 ) 


 四萬五萬六萬六萬五筒五筒赤二索三索三索六索七索東東


 ドラのダブ東が対子で、赤が一枚。

 一万二千点持ちの西家が一人へこみで、その点棒を三者で分けている形だ。
 この手をものにすれば初トップが見えてくる。
 
 逆に、仕損じは許されない……。


 七巡目、指先に異物感が走った。
 ダイヤの彫られた 五筒赤 だ。


 四萬五萬六萬六萬五筒五筒赤二索三索三索六索七索東東     ツモ  五筒赤


 これで一向聴。
 完全に、景色が先ほどまでとは違う。

 次巡、直ぐに 東 が飛び込んできた。
 

 四萬五萬六萬五筒五筒赤五筒赤二索三索三索六索七索東東   ツモ  東


 ダマッパネの聴牌だ。
 今日のこの局まで、一週間近く劣勢が続いていたが私の身体はまもとに反応してくれた。


 一瞬の躊躇も無く、いつもと寸分違わぬモーションで牌を横に曲げる。


 五索 八索 は場に三枚見え。
 相手の手中に二枚程度。三枚よりは一枚か。
 聴牌者はゼロ、一向聴が二人に二向聴が一人。
 闇に構えて五巡以内に 八索 が打たれる体感は15%ぐらい。
 

 この待ちは自摸れる……。
 いや、自摸ってみせる。
 

 例え、曲げたことによって和了を逃したとしても、和了れなかったことにより更なる地獄を見るとしても、後悔をしない確率は100%だ。


「自分の景色になったときは、行ってこいだ……」


 東風戦、ラス前の接戦とはいえ、この手をインパチの四枚で終わらせるほどまだ地に落ちちゃあいない。
 

 すると、リーチの三巡後だった。

 盲牌をする牌のへりに朱色が差した。


 四萬五萬六萬五筒五筒赤五筒赤三索三索六索七索東東東   ツモ  五索赤  


 裏ドラは、 五索

 対面が飛び、トビ賞と店からレッド3の祝儀も入り、12500オールとチップ18枚の和了となった。

 
 結局この日はその後二十戦ほどやって、最後の三着分だけ沈み。
 寺銭分まで戻しきることは出来なかった。


 それでも週末のリーグ戦、そして来週の凌ぎに一筋の光明が差したかと思うと、今日の帰り道は少しだけ肩が軽くなった。





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前兆

 どうせ毎日、そしてこれから先も勝負は続くのだ。
 ほんの短期間の浮き沈みで一喜一憂することにどれだけ意味があるというのだろう。

 それでも不思議なもので、ウカっているときはまるで自分が王様にでもなったような気持ちになる。

 やること為すこと万事が上手くいき、ただ自然に身を委ねるだけである。
 あとはポンプに汲み上げられるかのようにチップが集まってくる。

 勝負が終わったあとは、高い酒を飲んでタクシーでご帰還。

 そんな風にウカったあぶく銭を湯水のごとく使うなんてのは読み物の世界だけだ。


 神経や人生を切り売りするかのように磨耗して稼いだ金は大事に抱いて寝る。


 その逆。
 酷い魔道に入り込んでしまったときは、地獄の苦しみを味わう。


 ひと月やふた月分の生活費をたった一週間で失うことだってある。
 はち切れんばかりに膨れていた財布はすっかり威光を失い、口をへの字にして帰路につく日々が繰り返される。


 その日、私は卓に着いた瞬間、不覚にも弱気の虫に侵されそうになってしまった。

「今日は、今日こそは大丈夫だろうか。これ以上の冷え込みは、洒落にならない……」


 恐怖という名の蛇が私の心臓をぎゅっと締め付ける。 
 ここ最近、ひたすら牌に弄ばれるような展開が続き、長い連敗を喫しているのだ。


 お座り一発目で迎えた、何切る問題。

(東一局 東家 ドラ 六筒


二筒三筒四筒四筒六筒八筒八筒五索六索六索六索七索七索   ツモ  五筒


西家と北家が序盤から仕掛け、南家からはリーチが入っていた。


(南家 捨て牌)

 發南三萬九索一筒一萬
 八筒四筒九萬八萬白一索
 九筒八索横   リーチ


 中盤までの切り出しや牌の合わせ方を見ると、西家と北家と比べて南家の手牌進度は見劣りしていた。
 その南家がしばしの自摸切りの後、手出し 八索 でリーチときた。

 そして、やや迂回気味に手牌を進めていた私にも如上の聴牌が入ったのである。


  二筒三筒四筒四筒六筒八筒八筒五索六索六索六索七索七索   ツモ  五筒


 手を止めて場を検めてみた。

 場には 七索 が二枚、 八索九索 も三枚見えている。
 ということは、南家は手牌に 七索 が存在しないのにも関わらず、 八索 をあそこまで引っ張ったことになる。
 六索 もこちらが三枚使い。周辺の牌が雀頭や暗刻になることはない。
 おそらく、手の内に 五索六索 という受けか 四索六索八索 という受けが残った、若しくは埋まったのだろう。


 そう読みを決めたはずだが、ここ最近の連敗がふと頭をよぎる。

「体勢がよくないのだから、まず先取点を獲られないことを第一に考えるべきではないだろうか……」

 六索 を振ろうとした瞬間、そんなことを思った。


「しかし、これで行かないんだったらいつ勝負をするってんだ。第一、南家には通るだろ――!」

 
 バタッ、と手牌を倒したのは南家の男だった。
 

 一筒二筒三筒七筒八筒九筒一索二索三索四索四索四索六索   ロン  六索


 裏ドラも乗って、5200の二枚だという。


「これだから……」

 と胸の中で呟く。


 その後も陵辱されるかの如く、三人に徹底的に叩かれる。

 だが、焦りはなかった。
 元より波の荒いルールに手をだしているのだ。今は冷静に、ひたすら自分の型で打てば良い。


 一番怖いのはパンクすることではなく、自分の読みを曲げてしまうことだ。


 そう信じ続けた私にこの日初めてチャンス手が入った。


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敗北

 先日仕事でお世話になったゲームプログラマーのS氏とH氏を招聘してのセット。
 脇を固めるは、プロ協会史上初となる四度の昇級に王手をかけている小倉孝プロ。

 簡単な挨拶を済ませ、骰子しゃいつが振られる。
 対外セットは今までも数え切れないぐらい重ねてきたが、この心地良い緊張感はいつになっても良いものだ。

 観察をする訳ではないが、まず初対戦となる二人の牌捌きと卓上での瞳の動きに視線を走らせる。とくにH氏の瞳の動きが良い。かなり打ち慣れているようだ。
 視線が卓上でふと絡み合う。そのときになって、ああ、こちらも値踏みされているのだなと気がつく。


 序盤四回戦は私と小倉の熾烈な和了競争だったが、次第に小倉の和了力が私を凌駕し場のペースを掴み始める。
 一方の私は、急激に歯車が狂いだした。手牌に弄ばれ、悩ましい展開が続く。
 そんな私を尻目に小倉が強烈な一撃を炸裂させた。

 
 一索一索三索四索四索五索五索六索六索七索八索八索八索   ツモ  二索


 先制リーチのH氏を追っかけての一発自摸。しかも裏ドラを捲ると 七索 が顔を覗かせた。
 “リーチ・一発自摸・門前清一色・裏三”でトリプルの四枚オールというやつだ。
 12000の係は、私である。

 南場の親番でも跳満を親っかぶりして、6000点の放出。
 それでも小刻みに和了を重ね、ラス前で何とか二着を狙える位置につけていた。

 持ち点は親番のH氏から順に 23000-10000-21000-46000点といったところ。
 八巡目で私の手牌は一向聴に。

(南三局 西家 ドラ 二萬


三萬四萬五萬五萬二索三索三索四索四索五索七索七索八索


 私が今、最も欲しているのは実戦での場況と手牌とを整合させる力であり、それこそが最強へと道へと信じている。
 それが、誰よりも研鑽し、集中した状態で一所懸命打つように心掛けようとする理由だ。

 この手牌は、和了れる……。
 九索 が序盤に私が捨てたものを含めて三枚場に飛んでいるが、最も和了が狙えるのは 六索九索二萬五萬 というコースだ。
 先にドラでも引くようなことがあれば、振聴リーチを打って 六索 と心中してもよい。
 次いで和了が早そうなのは 六萬 を引いての 四萬七萬 待ち。早い段階でこの聴牌が組めれば悪くない計算が成り立つ。
 逆に、 四萬 を引いての 三萬六萬 は少し時間がかかりそうな感じだ。
 場況を読んだ私の身体が、そう告げていた。


 ところが、九巡目に南家のS氏からリーチが入る。


 北一萬東九索八索八萬
 三索七筒五筒横   リーチ

 
 一発目に引いてきた牌で、私の手が止まる。

 
 三萬四萬五萬五萬二索三索三索四索四索五索七索七索八索   ツモ六筒


 私は 四筒八筒 を掃っている。
 自分が和了れると思っているのだったら、こんな牌の五個や十個堂々とすっ飛ばさなきゃ駄目だ。自分の介在しない、相手の恣意によって己の読みと手牌を曲げることはない。

 しかし、それまでの歯車のずれが、私を篭絡した。
 手が止まった私は、有ろう事か点棒表示に視線を落としてしまった。
 
 この牌は、行かない方が得かもな……。
 
 そんな馬鹿げた基準で、 八索 を河に置いた。
 
 今日という日の敗北が決まった瞬間である。
 自分の読みに殉じきれないのであれば廃業した方が良い。

 
 私の手牌の右端に並んだ 六索二萬 が俯瞰するかのように、静かに私を見据えていた。 





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粗相

  私が足を運んでいる六本木の雀荘にも、これまた化物のように強いご老翁が居る。

 ごのご老翁、とにかく攻め味が鋭く、そして粘り強い。
 つい先日も私が五万点持ちのトップ目で迎えたオーラス。おきなは残り僅か300点持ちのところから連荘を重ね、三十分かけて私を捲くった。

 この日のオーラスでも私と四万点差近く離れていたところから、四巡目リーチで2600オール。
 次局、十五巡目リーチで嶺上からシャンポンの 五索赤 を引き和了り、裏ドラがモロ乗りの8000と五枚オールであっという間に私を抜き去ってしまった。


 二筒二筒五筒六筒七筒二索三索四索五索五索   ツモ  五索赤   裏中中裏


 ちなみに、このリーチの宣言牌はドラの 四筒
 オーラスの十五巡目なのだ。当然、場は煮詰まった状況で、喰いタンが一人、その上家の萬子に走っている二着目がドラを二枚飛ばしていた。
 
 敢えてワンチャンスを作り出す老獪さ、そしてケツからド高目を引く力強さが何とも厭わしい(事実、私の筒子部分は 二筒二筒四筒 であった)。


 脳天の痺れを抑えるため、歯を食いしばり煙草を一本抜き取る。

 この爺は、やはり強い。いや、強すぎる――。
 だがコッチもこれ一概で何とかやってきてるんだ、そう簡単には譲れない。ここで気を抜いたら一気に持っていかれてしまう。


 その次の半荘。
 荘家と南家の仕掛けに対応しながら手を進めた私は、海底の一歩前で聴牌を果たした。

(東一局 北家 ドラ 一萬 )


 九萬九萬九萬三筒五筒五筒赤五筒四索五索六索南南發   ツモ  發


 序盤に嵌 七筒 を仕掛けた親に 三筒 はまず通る。
 南家のバックを完成させる牌は両方ブロックしたので、和了目は無し。
 問題は、西家の翁だった。先ほどから親にスッ、スッと強い牌を打ち出しており、こちらもまず聴牌と見て間違いない。

 変則的な捨て牌の爺に 三筒 はちょっと振り辛かったが、一人ノーテンを回避したい。

 そっ、と 三筒 を河に滑らせる。
 声はかからない。
 しかし、海底牌が半分親の手牌に含まれようかというところになって、遅発声気味に、ゆっくりと翁が口を開く。

三筒 ――、ですか」

 ギクリと背筋に衝撃が走る。やはり駄目だったか……。
 爺がこれまたゆっくりと手牌を倒す。


 一萬一萬四萬五萬六萬三筒三筒三索四索四索五索五索六索   ロン  三筒


「ドラドラですね」

 爺の最終手出しは 四萬 。やはり七対子含みで手を進めていたようだが……。

「あの、役は?」
「え?あれ!?」
「本当だ、役がねえぞ。チョンボだな」
「あー、あー、間違えちゃったよ。和了牌が出るとつい倒してしまうんだよねぇ」


 ぐちゃぐちゃに手牌を崩し、口惜しがる様子もなく禿げ上がった頭を叩く爺。
 聞けば今週だけで四回目の粗相らしい。


 先輩、お願いしますよ。
 こちらは貴方に畏怖し、尊敬の念を抱いているのですから。どうせなら先刻の半荘でお願いします。






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告知

 来たる8月26日 日曜日。

 最強戦の運営及びゲストとして、麻雀バカ一代こと斉藤勝久プロと札幌の「ハートランド」にお邪魔します。

「ハートランド」のHP
 http://www.e-heartland.co.jp/


 近隣の方の参加をお待ちしております。
 なお、参加人数には限りがありますので、詳しくは上記のHPもしくは最強戦のHPをご参照下さい。

「竹書房 第18回麻雀最強戦」のHP
http://www.mahjong-club.net/saikyosen/kameiten.htm



 大会終了後、オープン戦での対局機会もありますので、大会に参加していない方も是非遊びに来て下さい。




 日本プロ麻雀協会
 吉田光太



眼差(供

 ゲン爺がトップを走り、私が11000点差でそれを追いかける立場だった。
 オーラス、牌配を手にした私は一直線に萬子に走った。

 澱みなく萬子を引き当て、手牌は六巡目で一向聴に。
 
(東四局 南家 ドラ 一筒


一萬一萬三萬四萬五萬六萬七萬八萬八萬九萬九萬北北


二萬七萬 が入れば、“混一色・イッツー・一盃口”で出和了りトップの聴牌だ。
 しかし、肝心の 二萬 は場に三枚飛んでいる。
 そこへ、八巡目に 三萬 自摸。ここで 北 を切り出し、門前清一色へ向かった。


 勝負も佳境に差し迫った十三巡目、三着目のラス親からリーチが入る。


 九索發東一索三索八索
 一筒二萬四筒白九索南
 三筒横  リーチ


 実は私はそのとき既に逆転手の聴牌を入れていたのだが、リーチ一発目に引いてきた牌はダイヤが彫られた 五筒赤 だった。

 
 一萬一萬一萬三萬三萬四萬五萬六萬七萬八萬八萬九萬九萬   ツモ  五筒赤

(捨て牌)

 八筒五筒六筒二索北六索
 北六筒二筒一筒北九筒


 
 これ牌だけは……。
 断腸の思いでノーチャンスの 一萬 を落とす。これでこの手はジ・エンドであるが、ゲン爺だってラス親のリーチにはオリざえるをえない。親が連荘すればまだチャンスはある。

 次巡、嫌な引っ掛かりが親指に広がった。それは 七萬 だった。
 唇を噛み締めながら、もう一枚 一萬 を落とす。

 次巡。
 私は持ってきた牌を卓に打ち伏せたまま、静かに最後の 一萬 を横に曲げた。


 八筒五筒六筒二索北六索
 北六筒二筒一筒北九筒
 一萬一萬一萬横


 切り番となったゲン爺が、穴が開くほど私の河をしげしげと見つめている。
 どうやら共通の安全牌が無いようだ。
 そして長考の後、親の現物である 四筒 を河に置いた。


 五筒赤三萬三萬四萬五萬六萬七萬七萬八萬八萬九萬九萬六筒   ロン  四筒


 満直で、文句無しの逆転である。
 
「あちゃー、打っちゃったか。痛い痛い」

 ゲン爺のことだから、いつものようにそんな軽口を叩いて自分の手でもひけらかすのかと思った。
 しかし、喜々としてリーチ棒を手繰り寄せる私をよそに、ゲン爺が酷く低い声でボソっと小さく呟いた。

「良い待ちしてやがる……」

 私は、思わずハッとしてゲン爺の、いやゲンさんの顔を見上げた。
 吐き出した煙草の煙が揺蕩たゆたう虚空を、遠くを見つめるように眼を細めて見据えるゲン爺。
 その窪んだ眼窩から放たれた光は、私がこの先追い求めるやしれない勝負の鬼のそれだった。  

 おそらく、私なんかが容易に想像つかないほど激闘の年輪を重ねてきたのだろう。
 たくさんの幸せを放棄し、麻雀に身を委ね、そして今こうして雇われの身として働かなければならない事情があるのかもしれない。そのことをゲンさんがどう捉えているのかは、本人しか知る由はないが。


 私の視線に気付いたのか、すぐにいつものゲン爺は戻ってきた。
「いや、参ったね。一発ですか、逆転ですね」
「爺さん、どっから打ってんだよ。それじゃあ給料残んないだろ」
「ほほほ。若い人にトップを獲ってもらおうと思ってオリ打ったんですよ」


 ここにも、牌に取り憑かれし雀鬼が一人。
 ゲン爺様、尊敬申し上げます。






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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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