プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2008年01月

居合

 最高の牌を引いて、聴牌を果たした。

(東一局一本場 東家 ドラ 七筒


三萬三萬五萬一筒一筒一筒六筒七筒五索五索南南南   ツモ  五索赤


 闇で回し、機を窺っている内に筒子の一色手模様の上家から 三萬 が打たれた。
 刀を抜くなら、ここかなと思った。
 
 牌を横に曲げ、主導権を取るべきか。
 斬り合いを避ける者、鍔迫り合いを挑んでくる者、多種多様だろう。
 だが、その結果として討ち死にしようが見事ハネ満と仕上げるかに賭けてよい聴牌だ。

 結果は次巡リーチをかけて、その三巡後に自摸和了を果たした。


 三萬三萬一筒一筒一筒六筒七筒五索五索赤五索南南南   ツモ  五筒赤

 
 点棒と祝儀を掻き集めていた時だった。
 上家の青年が私の河と手牌にねっとりとした視線を投げ掛けてきた。
 若い――。と、それまでは気にも留めていなかったがよく見てみると随分と若い。
 まだ年端も行かない身でこんな勝負に身を投じているのか、と少しだけ思ったが若くても強い奴はいくらでも居る。あとは、環境次第だ。


 それから数日後、その雀荘に再び出向いていったときのことだった。
 腹拵えをしてからと、その店の傍にある蕎麦屋の暖簾をくぐると偶然にも先日の青年の姿が飛び込んできた。
 別に避けるわけではないが、喋ることも特にない。向こうが気付いたら会釈ぐらいして通り過ぎるのが普通だろう。
 だが、青年は私に素通りをする暇も与えず、人懐っこい顔を向けてきた。

「この間は、どうも。今日もこれからご出勤ですか?!」
「ああ、こんにちは」
「さっきまでお通夜で打ってたんですよ。吉田サン、この前の手ですけど――」

 青年の屈託の無い笑顔に負けて、隣のテーブルに腰を落とした。
 磊落な性格なのか、青年は素性や麻雀歴などをあれこれと話しかけてくる。表情は明るいが目の下に濃い隈が走っている。だいぶ長いこと打っていたのだろう。
 天せいろを店員に頼み、彼の話に耳を傾ける。

「あの三暗刻は、リーチなんですね」
「え、ああ。 六筒 が表示牌に捲れているし、 五筒 八筒 は悪くなさそうだったから」

「あれで、あの日はガタガタでした」
「たまたまでしょう」
「いえ、間合いを完全に壊されました…。僕は、こんな手だったんです」


 三筒三筒四筒四筒五筒赤五筒六筒六筒七筒西  中中横中


 ここに、 二筒 を引いてきての聴牌。


 二筒三筒三筒四筒四筒五筒赤五筒六筒六筒七筒西  中中横中


三筒 を切っての 西 単騎か、 西 切りの 三筒 六筒 か」
西 は吉田サンが前巡に捨てて何処からも声無し。中盤の声無し翻牌だから山生きの可能性が高いですよね。掴んだら誰でもノーケアで振ってくるし、仮に対子で持っているとしたら鳴かなかった以上、後で落とししてくるかもしれない」
「確かに。 三筒 六筒 待ちじゃ勝ち目がないし」
「そこで、リーチを打たれてしまったんです。あと少し、いやあと一巡リーチが遅ければ 西 単騎に受けたんですが…」

 反芻をしてみると、確かにそれから直ぐ南家が 西 を自摸切っていた。


「最高の、間合いでした。表示牌と合わせて五枚見えの 三筒 六筒 を一発で切ることが出来なかったです」
「だから、たまたまですって」
「今日は、これから?」
「そう。戦いの前の腹拵え」

 考え込むような表情をして、唸る青年。
 まさか、と思う。

「よし、もうフラフラだけどいいや。僕も行きます、一緒にってください」

 そう言って再び屈託のない笑顔を向けてきた。








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沈鬱

 狐のような顔をしたその男は、頻りに貧乏ゆすりをしていた。
 五十半ば、いや実際にはもう少し若いのかもしれない。
 眼窩は落ち窪み、顎には贅肉が全くついていない。嫌な痩せ方だと思った。

 店内は一卓しか稼動しておらず、四人も居る従業員は手持ち無沙汰な様子だ。
 いつもは顔見知りの場主と従業員が二名。
 そして、今日から入った新人の狐男。

「昼の主任の○○です、よろしく」
「あ、Yと申します。宜しくお願いします」

 卓で打っている私の耳にそんな遣り取りが流れてくる。
 言葉遣いこそまともだが、明らかに風体は崩れており、いかにも流れ者といった感じだ。
 言葉は悪いが、あまり仕事が速そうな感じではないし、鋭い麻雀を打つようにも見えなかった。


 お座りの数半荘、立て続けにラス、3着と引いた。どうもここのところ、立ち上がりが悪い。
 挽回を図ろうと帯を締めなおしたところで、客が席を立ち、対面に初見のご婦人が座る。

 凛とした、涼しい目元の婦人だ。堅気ではないだろうが、水商売といった具合でもなさそうだ。

 こんな場に顔を出すくらいだから、やはり腕は拙くなかった。
 しかし、ちょうど私の上り調子のところと手がぶつかってしまい、彼女は3着、トップ、3着、3着、3着という成績だった。
 次の半荘も東一局に満スリーを打ち込んで、溶けたトップ分の他に鞄から取り出した財布から大きな札を出す。

 その後、上家の客が席を立ち、主任が座る。
 Yは婦人と主任の後ろで立ち番をしながら観戦をしている。

 そして、すぐに下家の客も席を立った。
 今度は場主が卓に入る。
 Yは、今日が初出勤ということで出走を控えさせるということだろうか。
 彼は仕事は確かに遅かったが、とても低姿勢で、小まめに私のドリンクを差し替えてくれてなどいたのである。どんな麻雀を打つのかちょっと興味があったのだが。

 対面の婦人が厠に立ち、瞬間的にスリー入りとなる。
 客の入れ替わりや片づけでごたついていた所為もあって、Yの摸打は一打しか見られなかった。
 すぐに婦人が席に入って勝負再開。

 並びは、私、場主、婦人、主任。
 すると、逆両替と片づけが一段落したのか、Yが場主に対し「出前じゃなくて、コンビニで買ってきますね」というジェスチャーをして店を出た。
 場主と主任はさきほど寿司の出前をとっていた。おそらく彼だけ食事がまだだったのだろう。
 私にもメンバー経験があるから判るが、私と婦人はもうしばらく遊戯をするから少々の時間なら一人外に出ても大丈夫だということなのだろう。

 その半荘はやや長引いて、場主がトップ。婦人は二着。ドベは、私。

 次の半荘。
 東一にマスターに親満を打った婦人が、東二の親番でも場主にハネ満を打ち込んであっという間にラストとなる。
 主任が、まだ戻ってこないYに変わって日計表を書き込みに行く。
 最初にいたもう一人の従業員は夕方に帰ったようだ。

 すると、ラスを喰った婦人が戦慄くような声を出した……。

「ない――!ないわ!」
「えっ、どうしたんですか?」

 婦人が顔を真っ青にしながら、大きな鞄をまさぐる。

「さっきまであった筈の財布が無いの――!」

 婦人が鞄から財布を取り出したのは確かだ。
 どうやら半荘中のチップの支払いだったため、そのままサイドテーブルに出したままにしたらしい。

 椅子やサイドテーブルをどかし、卓周りに落ちていないか探す。
 場主が、厠の中をあらために行く。
 だが、どこにも財布は見当たらない。時計に目をやると、Yが食事に出てからずいぶん時間が経っていた。

 電話――、と店の受話器を場主が取り上げる。
 そして、二度と出ることがないであろう履歴書に書かれた携帯の番号を鳴らし続けた……。








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咎人

 麻雀は、本当に面白い。

 善戦を重ねて迎えた初白星の後の東一局、手牌は確かに寄せてくれと云っていた。

(東一局 北家 ドラ 一索


一萬三萬五萬五萬赤三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒九筒二索三索  ツモ  一索


 聴牌取らずの打 一萬 とした。
 筒子を伸ばして即リーチを打ちたい。

 そこへ次巡に持ってきた牌は序盤に切っている 八萬


 三萬五萬五萬赤三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒九筒一索二索三索   ツモ  八萬


 自摸 四萬七萬 での聴牌の優劣は明らかだ。
 また、序盤に飛ばしている牌の“引き戻しくっつき”は相手からも出易いことが多い。

 次巡、萬子の上を持ってきた。九萬 ではなく、 七萬 だ。


 五萬五萬赤八萬三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒九筒一索二索三索   ツモ  七萬


「アレ――」
 
 と思わず口を開きそうになった。
 そこには静かに 九筒 を切って闇に構えている自分の姿があった。

 ここ数日のブランクが体を鈍らせてしまったのか。今の反射神経がその程度のものなのか。
 動け、動かなきゃ駄目だろ――。
 そう思いながらも、次巡、その次も自摸切りリーチを打つことができなかった。

 上家が親から出た 七索 をポンする。私がリーチをかけていたら打たれなかったかも、仕掛けなかったかもしれない牌である。
 直ぐに対面が 九萬 を自摸切った。


 五萬五萬赤七萬八萬三筒四筒五筒赤六筒七筒八筒一索二索三索   ロン  九萬


 せせら笑うかのように三人の視線が私の手牌に注がれる。
 誰が見たって強い形が出来ているのにこの局の結論を、運命を恐れて闇討ちに構えたことは一目瞭然だ。

「鳴きが無ければ自摸ってたんだ」

 此れ見よがしにそんな科白が飛んでくる。


 東二局、三局と簡単に親が落ちない。
 緩手を打った私を咎めるかのように三者が簡単に局を進ませてくれない。
 ノーテン罰符と本場で私のリードは菲薄なものに成りつつある。

 それでも卑しく仕掛けて何とか二着目から1000は2500を和了り、トップ目でオーラスを迎えることに成功した。
 各人との差は7500、7600、17800点。

 微差の三着目である上家が仕掛けを入れた。
 一鳴きなのでトップまで見た仕掛けなのか二着狙いなのか判らない。

 赦してくれるというのだろうか…。
 私は和了の見えない手牌を捨て、オリを決めた。

 この半荘、トップが獲れるかどうか。
 それを決める権利はもう私に無いような気がした。獲れるとしたらそれは自力ではなく、誰かがそうしてくれるだけだろう。
 それほどの大罪を犯している。
 良くて、トップ。おおかた捲くられ二着。何処かに打ち込んで三着という最悪のシナリオだけは避けよう。そして、次の半荘からまた造り直しだ。

 残り五巡というところに差し掛かった。
 伸び悩む両脇をよそに、ラス目の対面が牌を横に曲げた。 
 手牌の傍らに 二筒 三筒 を晒し、リーチ棒を二本放った。


 一発目、上家が私の手牌に暗刻の 八筒 を打ってきた。
 無理をして喰えば一発は消せる。その代わり貴重な流局までの二人の現物を失い、巡も伸ばすことになる。いや、そうでなくても喰う気はなかった。

 対面が牌山に手を伸ばす。
 私は、それに魅入ってしまった――。

 自摸って、欲しかった。
 勝負はこの局、この半荘だけではない。きっちりと自分のやったことの結論を肌で経験したかった。


 二萬三萬四萬五萬五萬赤六萬七萬八萬二索三索四索 二筒三筒   ツモ  四筒



 これだから、麻雀は面白い。








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咀嚼

 人間の脳というのは非常に食いしん坊な臓器らしい。
 麻雀に集中し、思考をフル稼働させるためには充分なブドウ糖を要する。

 年明けから東戦を35回、33回、33回とぶっ続けで打った。
 長く、早い展開の東風戦では集中力がモノを言う。打ち終わった後は神経と集中力を磨耗し過ぎて何も考えたくなくなる。

 無論、食事はその間一切摂っていない。どうせ勝負の最中は摂食中枢が作動しないから何か胃におさめたいとも思わない。
 麻雀打ちをやっていればメシ抜きで卓に着きっ放しなんて良くあることだ。
 
 だが、脳を活性化し集中力や記憶力を高めるためには炭水化物に含まれるグルコースが必要となる。
 よく脳の疲れには糖分が利くともいうが、私は甘いものを一切口にしない。数ヶ月に一度、気が向いたり何かの機会に洋菓子かなんかを食する程度だ。糖分の入った飲み物も好まない。

 だから勝負の前は必ず朝食を摂ることにしている。
 というよりもそれが習慣となり、そして毎日牌を握るのだから朝食を抜くことは無い。


 10時間、12時間が経過し血中から脳に回るブドウ糖が枯渇したら――。
 あとは気合と煙草で馬力を充填するだけである。

 


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四聖

「最初に四勝したお客様に、お店から10,000pキャッシュプレゼント――」
 
 そんなイベントを謳ったポスターが壁に掲げられている。
 正月休みの最終日ということもあってか、店内は人影は少ない。

 東戦の四勝を狙うは、私と対面のY氏の二人。二分の一なら悪くない勝負だ。

 緒戦、牌勢に恵まれた私が足を使って四局で先ず一勝目を挙げる。ものの十分とかかっていない。
 とそこで、雀荘の扉がゆっくりと開かれた。

 おや――。
 と顔を見てみると、最高位戦プロ麻雀協会に所属するTであった。

 Tが卓に着き、私、T、Y、店長の並びで半荘が開始される。
 二戦目はY氏がトップを獲って、これでイーブン。
 三戦目はお返しとばかり私がトップ。四戦目、五戦目は店長がトップで、これはハウスサイドの勝ち星になるので、カウントはされない。

 六戦目はTが初トップ、そして七戦目に私が再びトップを獲って四勝に王手をかけた。

 起ち親の私は2000オールを自摸って、次局三巡目リーチ。

(東一局 東家 ドラ 二萬


二萬三萬四萬六萬六萬六萬六索六索三筒四筒五筒赤六筒七筒


 このダイヤ入り親満リーチに追っかけを打ったTが飛び込んで、13500点の千両。
 これで私の持ち点は45000点を越えた。仮に三本場で親満を和了るようだと、六万点終了で四勝達成となる。

 ここまでの勝ち星は私が三勝で、Y氏とTが一勝で並んでいる。
 ここでY氏が執念を見せ、店長から3900は6900を和了り、更にTの親番では私とのリーチ合戦を制して3000・6000の自摸和了。
 そして自身の親番でダマ2900をTから和了って飛ばしのトップを取った。

「今ので決められないようだと、縺れるかな――」 

 三人にそんな軽口を叩いて、次の半荘に気を入れた。


 捲られたとはいえ、私の牌勢に陰りは見えず立て続けに和了をモノにする。
 オーラス、私はラス親でTとY氏を大きく引き離したトップ目に立っていた。
 問題は、3700点差で二着につけている店長だ。

 十巡目――。
 仕掛けて聴牌を入れていた私を一瞥し、店長が牌を横に曲げてきた。

(東四局 北家捨て牌 ドラ 四萬


發一索北三筒八萬八索
一萬六筒發七萬横   リーチ


私はドラを二丁抱えた嵌張聴牌。

 
 四萬四萬五萬六萬六萬四筒四筒七索八索九索  中横中中


 先刻取り零した星をどうしてもここで挙げたい。
 だが、和了牌よりも先に無スジの牌を持ってきてしまった。


 四萬四萬五萬六萬六萬四筒四筒七索八索九索   ツモ  三萬  中横中中


 鎌首を上げて、リーチの捨て牌と場況を見渡してみる。
 萬子が一様に高く、そして店長の最終的な手牌に萬子が関連しているのは明らかだ。
 この牌は打てない…。
 というよりも打つべき牌ではない。

 リーチ棒が出て、差は4700点。
 私の一人ノーテンでもトップは変わらない。逆に直撃で打ったら条件無しでほぼ捲られてしまうだろう。

 私は現物を抜いてオリた。
 脇の二人も手にならないようだ。勝負は四勝戦だけではない、二人がリーチに差すようなこともないだろう。

 淡々と場が進む中、三巡を残して私の手牌から安全牌が枯れた。


 三萬四萬四萬五萬六萬六萬四筒四筒六索九索   ツモ六筒    中横中中



 直撃は、拙い…。
 焦りと先刻の影響も手伝ってか、私はここからとんでもない牌を抜いてしまった。


 三萬五萬赤二筒三筒四筒七筒八筒九筒一索一索一索二索二索 ロン  四萬


 跨ぎの 三萬 六萬 の方が脇に濃いと読んでの一打だが、これでまたもやゴール寸前でアウト。

 次戦はTがトップでY氏と並んで二勝目。
 どちらかにもう一度トップを獲られたら勝ち星も精神的にも私のアドヴァンテージは消え去る。

 その次の半荘もY氏とTが和了を重ねる。オーラスでトップ目のY氏の親番。僅差でT。
 私は二人のどちらかが勝ち星を伸ばすことを覚悟していたが、なんとここで店長が二人抜きの跳満を自摸っての大捲り。

 勝負の綾というか、数奇な流れというべきか。
 店長の敢闘で次戦は私に流れが傾いて、悠々とトップ。四勝戦の幕を引いた。


 正月早々、今年初めての小さな勲章を手中に収めた。




 六本木駅 6番出口徒歩1秒
 若手プロ雀士と打てる店

 フリー麻雀荘「麻くん(まーくん)」
 TEL 03-5411-0678

 毎週 【土曜日 PM19時〜】
     【日曜日 AM11時〜】 から四勝戦を開催中。 

 


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双拳

 翻牌を引っ掛けて聴牌濃厚な北家から打たれた 六萬 に親が腰を残した。
 数秒の逡巡の後、二面で開いて 七萬 を打ち出す。


 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏  六萬横四萬五萬


 その日初めてトップ目に立った私は 七萬 を喰えば満貫手の聴牌。


(東三局 南家 ドラ 二筒


 四萬四萬四萬六萬八萬二筒二筒二筒四筒六筒六筒六索六索


 局面はラス前である。
 仕掛けて――、どちらに受けるべきか。
 シャンポンに受けて自摸れば鳴き三暗刻の出来上がりだが、ここは和了点に拘る必要は全くない。

 北家の捨て牌には 三筒九筒 が在る。そして、喰いタンと思われる親は前巡の 三筒 には動きを入れなかった。

 先に聴牌を入れていると思われる者が二人居る。
 嵌張とシャンポン受け。自分の和了易さは甲乙をつけることができない。ならば必然的に受けを考えた打牌を選ぶべきだ。

 ここは嵌張に受けた。


 四萬四萬四萬二筒二筒二筒四筒六筒六索六索  七萬横六萬八萬


 だが、この 六筒 に北家から声がかかった。
 そして、僅かに遅れて親も口を開いた。


 三筒四筒五筒五筒赤七筒四索四索北北北  ロン  六筒  發發發横


 三萬四萬五萬赤四筒五筒赤二索二索四索五索赤六索九索九索   ロン  六筒  六萬横四萬五萬


 卓内の祝儀牌が全て顔を覗かせている。
 虎の子の点棒を吐き出した私は、初トップどころかラスに転落した。
 

 次の半荘。
 序盤で満貫を二発モノにし、再びラス前を迎えて私はとどめの聴牌を入れていた。


(東三局 南家 ドラ 五筒


 四萬五萬赤六萬三筒三筒五筒赤六筒八索八索八索  七萬七萬七萬横

 
 ダイヤ入りの満スリー聴牌。
 しかも待ち牌の片方である 七筒 が相当に良い場況になっている。
 この手を和了れば、いやこの局が落ちさえすればようやくトップが見えてくる。

 とそこへ、親が牌を横に曲げてきた。
 内心で舌打ちする間もなく、南家が追っかけリーチを打ってきた。

 
 ご苦労さん――。
 とは行かず、私の自摸はドラの 五筒 だった…。


 四萬五萬赤六萬三筒三筒五筒赤六筒八索八索八索   ツモ  五筒  七萬七萬七萬横


 自分が居ると読んだ待ちを取りこぼすのは、大罪だ。
 行く牌は行く、そう心に決めている――!

 ノータイムでドラを河に置いた。

 木霊する二つの声に、先ほどの痛みがフラッシュバックする。
 奇しくも再び同じ手牌が同時に開かれる。


 六萬七萬七萬七萬八萬三筒四筒七筒八筒九筒三索四索五索   ロン  五筒


 三筒四筒八筒八筒三索四索四索五索赤五索六索七索八索九索   ロン  五筒


 その半荘も、ラスだった。




 


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初陣

 今年一発目の勝負と意気込んだ東風戦は散々な幕開けとなった。

 お座り二周半、手も足も出ずにただ座っているだけの木偶となる。笊に穴が開いたかのようにサイドテーブルのチップが姿を消し、次の一周も連に絡まないようだと弾丸を補充するために席を立たなくてはならない。

 いずれにせよ、明日の野暮用のために金を用立てなければならなかった。
 しかし、一度頭を冷やすために早めに抜けようかと思う反面、この程度で不細工なことをしたくないとも思う。

 所詮、勝負事は栄華と凋落の繰り返しだ…。
 長い目で見れば負けはどこかで必ず補填する。どれだけ不調であろうが、いずれ風は吹くんだ。最後の弾丸が尽きるまでに風が吹くかどうか、試してやればいい。

 そんな吹っ切れた気持ちで臨んだ十一回戦目。
 下家の失投にも助けれて、親満をモノにしてトップ目でラス前を迎えることができた。


 配牌を開くと紅白の対子が目に映った。


(東三局 西家 ドラ 三筒


 六索白三筒一筒四筒四筒中白四萬中三筒一索九萬


 第一自摸は緑発――。打 九萬 とする。
 そして、第二自摸も緑発だった。


 四萬一筒三筒三筒四筒四筒六索白白發發中中


 親から打たれた白板を仕掛けると、直ぐに 二筒 を引き込んだ。


 一筒二筒三筒三筒四筒四筒發發中中   白白横白


 二筒 五筒 が出れば、素直に仕掛けるつもりだった。トップ目のラス前、三元役をつけた混一色で十分だ。

 だが、二筒 五筒 よりも先に親から緑発が出た。

 叩いて、もちろんこう来れば自摸専の大三元に受ける。


 一筒二筒三筒四筒四筒中中   發發横發 白白横白


 誰かに役満が入るとき、勝負は必ず縺れる――。

 そんな格言どおり、上家が場に高い筒子を叩き切ってリーチときた。
 こなくそっ、と思いながら牌山に手を伸ばす。テキは赤か、ダイヤか?ここで退くようだったら今日はご終了だ。

 指先に四角い彫りが引っかかったのと同時に、そのまま手牌の横に置いた。


 一筒二筒三筒四筒四筒中中   ツモ  中    發發横發 白白横白


 祝儀を掻き集め、六万点終了の合図とともに次の半荘へ。
 その半荘も、次の半荘もトップを獲った。

 ここまで流した血はこんなもんじゃない…。
 そう思いながら全力で席を立つことなく疾走した。

 結局この日は35戦やって10回トップ。
 初陣を白星で飾ることが出来た。


 栄華と、凋落。
 まだまだ5000半荘中の35回が終わっただけである。





 


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第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
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