プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2008年06月

撃鉄

 日本プロ麻雀棋士会主催の優駿杯。
 半荘三回を同一面子で戦って上位二名が勝ち上がりのトーナメント1。

 上家が協会の山村峰巨プロ、下家はMuの石原真人プロ。一般参加である対面の有馬氏とは友人を通して知り合い、セットやフリーで卓を囲む仲だ。
 

 一回戦、二回戦とここ最近でも類を見ないほどの出来で連勝を飾った。辛く牌を打ち出して、自摸和了をきっちり決めることができている。


 三戦目。
 石原プロと山村プロは着順勝負。有馬氏は二人を沈めてのトップ条件。

 混戦の東場を経て、南の一局で石原氏から5200の出和了。
 次局は紅中を仕掛け、六巡目に辺 七筒 を鳴くことができて大物手の聴牌。

(南二局 西家 ドラ 發


一筒二筒發發發北北    七筒横八筒九筒  中中中横

 
 幸運なことに捨て牌に偏りは出ておらず、一色手には見えづらい。
 次巡、静かに息を潜めていたところに引いてきた牌は雀頭の 北 だった。


一筒二筒發發發北北  ツモ  北   七筒横八筒九筒  中中中横 
 

 場を一瞥し、関連牌だと悟られぬようそのまま河に滑らせた。
 河には筒子の下が安く、 一筒 が二枚、 二筒 が一枚飛んでいる。
 そして、前巡に山村プロが切っている 六筒

 ここで筒子を手出しして有効かどうか判らぬ単騎を探るようなら、このままの待ちの方が瞬間的な和了れる可能性は高い。
 ましてや仕掛け終わったあとに二つも手出しをしたらそれこそ警戒を集めてしまう。

 この選択が功を奏し、次巡、やや退き気味だった山村プロから 三筒 が零れて倍満の和了。


 一筒二筒發發發北北   ロン  三筒  七筒横八筒九筒  中中中横


 これで残すは南三局の山村プロの親番と、オーラスの自身の親番のみ。
 流石に勝負ありだろう。

 次局もきっちりと流すため、親の山村プロの仕掛けに合わせてこちらも喰いタンで聴牌を入れた。
 山村プロの待ちも自分の手牌構成もかなり透けているから脇からの出和了はやや厳しそうだ。

 十二巡目――。
 場イチの 東 を引いた。だが問題ない、切っているのは山村プロなのだ。そのまま自摸切った。


「――ン」


 その刹那、親番が落ちて目無しと思われた有馬氏の唇が微かに動いた。
 銃口でも突きつけられたかのようなえもいえぬ寒気が走る。

 反射的に有馬氏の河に視線を走らせる。
 国士でも、メンホンでもない。
 しかし半端な値段で手を開ける点棒状況ではないのだ。


 九萬九萬九萬六筒六筒六筒六索六索六索八索八索八索東   ロン  東


 公式戦ではおよそ四年ぶりとなる役満の放銃。
 慌てて集計表を手に取り、オーラスの条件確認に入った。
 
 ここは序盤のリードが効いて、実質的には落ちる条件は無かった。
 トーナメント2も牌勢と展開に恵まれ、協会の中里修樹プロと勝ち抜けに成功した。


 麻雀は本当に何があるかわからない。
 月並みな訓戒だが、改めて身をもって思い知らされた。

 
 そういえば最後に役満を振ったのもこの有馬氏にだった。
 セットを組んだ際にノーケアで切った 西 にかかった48000点の声。

 同じ相手に二度も背筋が凍る思いをさせられるなんてもうこりごりだ。







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戦友

 仕事も公式戦もない久しぶりの休日。
 宿酔の頭を抱えながら上野駅に降り立った。

 そこで働く人たちが好きなのかあの一種独特の活気に惹かれるのか判らないが、私は小さい頃から商店街というものが好きだ。まだ幼い頃、母親に手を引かれながら歩いた覚えがあるアメ横を抜け、目的地である雀荘に辿り着いた。

 真っ白なフロアに足を踏み入れると、奴が少し照れくさそうな顔をしながら出迎えてくれた。


「達也さんと、ドッチが強いんだろう――」

 全てはこの一言から始まった。


 六年前――。
 ストリートでの勝負を繰り返していた頃、知り合いの麻雀プロから一人の男の名を耳にした。
 ずいぶん昔の話らしいが、点5のメンバーで場代を払って月十万円の黒という成績を出したらしい。
 
 プロにもそんな骨っぽいやつがいるのなら、俺も入ってみてもいいかな。
 当時の私はそれぐらい短慮で、海の広さを知らなかった。


 プロになって半年ほど経ち、いよいよその男と対峙する機会が訪れた。

 片や協会の発足メンバーとしてBリーグからスタート。すぐさまAリーグに昇級し、そのまま頂点に辿り着いた協会の現雀王。一方の私といえば、協会のC靴貌ったばかりで最下層の木っ端という存在だった。
 だが、はっきり言って同世代の奴に負ける気なんて全くなかった。
 プロの世界で差がついているのは仕方がない。しかしストリートでの歴史だったら自分の方が格上だろうという自負があった。

 だがそこには私がそれまで目にしたことがない類稀なるセンスの持ち主がいた。

 何だ、この男は?
 こいつの和了形は、創造力は…。本物だ。


 その日、私は一人の男に惨敗を喫した。
 それから奴と私の戦いが始まった。ヤラれたら必ずヤリ返す。そうしなくちゃ次に進めるわけがなかった。

 その後、奴は諸般の理由から勝負の場に立つことが極端に減ったが、今でも私の中では倒すべきライバルであることに変わりない。


 もう一人の男との出会いは協会に入ってすぐの第二期・新人王戦だった。
 此奴のことはなんとなく知っていた。何度か後ろ見した感じでは寡黙で、なかなか辛い麻雀を打つやつだった。

 奴は私と入会して二ヶ月で新人王戦決勝の舞台に駆け上った。
 私たち二人はその日勝つことが出来なったが、実際に奴と対戦し、同期にこんな鋭い打ち手がいるのかと思ったほどだった。

 だが、奴、大脇とは滅多に口を聞く間柄にはならなかった。

 私は誰彼かまわず徒党を組むことを倦厭していたし、奴も容易に人が近付き難い雰囲気を纏っていた。
 二年近く、会話といったらもっぱら卓上の牌を使って交わす程度だった。

 一度、私の方から勝負を持ちかけたのが切っ掛けだったと思う。
 やはり此奴は麻雀を、相手のコロし方を知っている…。おそらく自分と同じくらい長い時間、実戦で磨いてきたのがよく判った。
 それから打ったり飲んだりしている内にいつしか私たちは互いを理解し合える存在になったいった。

 だが、普通の友情ではない。
 公式戦で、高レートの場で、東風で、新宿で、池袋で、渋谷で…。もう数え切れないぐらいのシーンで奴と戦ってきた。

 私にとって奴は何でも話せるかけがえのない友人だし、一緒に馬鹿になれる数少ない仲間だ。
 だが同時に最も力で蹂躙したい相手でもある。

 逆にこいつに打ちのめされて少しだけ憎んだり嫉妬をすることだってある。そんな、関係だ。

 そして奇しくも達也と大脇は十年来の連れなのである――。
 こいつらとはいつまでも勝負をしたい。そう思える相手だ。


 店に向かう途中で、花屋に寄った。

 似つかわない空間で若々しい女性店員の視線を気にしながら色々と見て回った。だが、どんなものを選んだら良いのかなど判るわけがない。
 結局、店員に頼んで見栄えが良いものを適当に見繕ってもらった。  
 

 協会現雀王・鈴木達也と第4期新人王・大脇貴久。
 そんな二人と真剣勝負が味わえる店である。



【上野 麻雀Fun(ファン)】6/5New Open!!

点5東南戦

東京都台東区上野2-1-9 Kプラザ7F
(松坂屋上野店 斜向かい)

TEL:0366704282

 上野駅から徒歩5分
 御徒町から徒歩2分
 上野広小路徒歩0分

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http://plaza.rakuten.co.jp/mahjongfun/







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疼痛

「それは、俺が貴方より目上の人間だとしても同じ行為をするの――?」
「何だと、誰に言ってる」

 卓上に散らばった紙幣を間に、私とその男の膠着状態は十数秒ほど続いた。
 寝不足も手伝ってか、上気した男の私を睨む眼にみるみる内に赤みが差して行く。
 しかし同卓者の鼻白んだ視線に気付いたのか、男は駆けつけた場主に舌打ちをしながらチップの入った籠を差し出した。

 随分むかしのことだが、知り合いの紹介で足を運ぶようになったマンションでその事件は起きた。

 対面の男は昨夜からかなり走っているらしく、空っぽになった財布を放り出し、鞄の中の茶封筒から金を取り出して幾度も追加のチップを買い足していた。そんな彼が四ラスを引き、その後一度はトップを取るのだが再び三ラスを喰ったときだった。
 二度目の三連勝を飾った私に札を撒き散らすように投げつけてきた。

 そこで、件のやり取りが起きたのである。
 何屋なのか詳しくは知らない。だが間違っても堅気の勤め人ではないことは明らかだ。不良の、輩である。
  
 麻雀を打っていてトラブルになる事などそれほどないが、これだけは許せなかった。

 彼と私は勝負をした。

 その結果として、彼は私に何某かのものを支払う義務が生じた。
 それは途中経過の点棒であったり区切りの清算かもしれないが、そういう結果になったんだ。

 投げられた点棒や金を拾う義務は私にはないだろう。

 他人に自分の意識を全て求めるなんて浅はかなことだ。
 しかし身分や相手を選んでその対価を投げつけるなんて麻雀打ちとして、男として卑怯だと思う。
 第一、勝負そのものに不遜だろう。

 他のことだったら大抵のことは我慢するさ。所詮、麻雀を打って他人からかすりを取っているようなもんだ。
 お行儀の良いフリー麻雀店で良識のある人たちとゲームを楽しんでいるわけではない。
 長くやれば客はいずれ負ける。自分が勝ってきたとしたら、自分以外は全員客だ。長いものには巻かれ、悧巧に小銭を拾えば良いのかもしれない。

 だが、銭金だけじゃないだろう。

 麻雀をやっているんだ。
 麻雀を、勝負の結果を冒涜する行為だけは許せなかった。

 その後、ほんの少しだけ面倒なことになりかけたが、元来その男とは全く知らない仲ではなかったので奴もそこまでは固執しなかった。


 みんな、初めは麻雀が好きだったんだろ。
  
 



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名残(掘

  四回戦の組み合わせは第31期王座の萱場貞二プロ(101)と、協会同期の出本誠司、最高位戦の佐藤聖誠の“ZIPANG”コンビ。

 流局の繰り返しとなった戦いは400・700を自摸った出本プロを私が1300・2600で追い抜くと、今度は出本プロが南場の親番で7700の出和了。
 オーラスの親番で一度は私がトップ目に立つも、一本場で出本プロに和了られて再々逆転のトップを献上した。


 いよいよ最終の五回戦目、私はトータルで六位という位置につけている。
 同卓はトータル二位の橋本辰徳プロ、現在のボーダーである四位の田中巌プロ、九位の土井孝輝プロという若手最高位戦選手の面々だ。
 私は橋本プロをラスにしてトップを取るか、田中プロと二着順差をつけると卓内で一人交わすことが出来る。

 東場、巌が足を使って瞬く間に場を進める。
 積極的に主導権を握り、和了と流局で局を潰していく。安和了とはいえ、放銃と罰符がないのだから厳の点棒を減らすのが厳しい。
 私と土井プロは巌に簡単に和了らせないようにしながら、門前でぎりぎりのところまでプレッシャーをかけた。

 なんとかしたい南二局の親番。
 三巡目に下の十四枚。

(南二局 東家 ドラ 三萬


 一萬一萬三萬四萬六萬八萬一筒二筒三索五索七索東東   ツモ  二索


 ここから打 一萬 とすると手牌は横へ横へと広がり、九巡目にリーチ。


 三萬四萬五萬六萬七萬八萬一索二索三索七索八索東東   


 これを十四巡目に自摸和了って2000オール。


  三萬四萬五萬六萬七萬八萬一索二索三索七索八索東東   ツモ  六索   


 この和了で点差と並びが出来たので、巌は今までと同じように足だけを使うわけにはいかなくなった。
 反撃の狼煙、と行きたかったが、一本場で橋本プロに3900を放銃。そしてラス前で親の土井プロに2600オールを和了られ、背の肉から少しだけ力が抜けそうになる。

 ここまでか――?
 タイトル戦特有の、諦観のお時間がやってきたような気がする。

 だが、まだ終わりたくない。
 ここで、入れてみせる。

 そんなこと思いながら配牌を開く。並びは、悪くない。

(南三局 北家 ドラ 八萬


 北五索八萬二萬四筒六筒四索五筒五筒四萬六萬七筒一萬


 第一自摸でドラを重ねた。
 

 一萬二萬四萬六萬八萬四筒五筒五筒六筒七筒四索五索北   ツモ  八萬


 しばし自摸切りの後、五巡目に絶好の嵌張を引いて一向聴。


 二萬四萬六萬八萬八萬四筒五筒五筒六筒七筒四索五索北   ツモ  三萬


 そして六巡目に筒子の二面を引いて聴牌。


 二萬三萬四萬八萬八萬四筒五筒五筒六筒七筒四索五索   ツモ  三筒


 闇で満貫あるとか、三色の手替わりがどうとかは関係ない。
 厳から直撃を狙いたいところではあるが、やはり最高の順番で最高の牌を引いたときはリーチだ。

 正確な巡目は忘れてしまった。
 橋本プロ、厳に続いて親の土井プロも退いた瞬間だった。

 牌を返す暇もなく、そのまま急降下しながら手牌の横に牌の背が着いていた。


 二萬三萬四萬八萬八萬三筒四筒五筒五筒六筒七筒四索五索   ツモ  六索
 

 素点的にも値千金のハネ満で一躍トップに躍り出た。
 オーラス、粘る橋本プロが巌から大物手を和了り、私はトップこそ逃したものの卓内条件である厳と二着順つけることに成功した。

 あとは、五位の出本プロ次第である。
 彼が最終戦を連対していれば私は五位どまりのまま終了、逆に三着かラスならば下位者がよほどの大トップを獲っていない限り、私が四位に滑り込むことができる。


 人事を尽くして天命を待つとまでは言わないが、やれることはやった心算だ。
 
 運命の、結果発表。
 敢えて集計ポイントが出ているパソコンの画面には目を向けていない。

 固唾を呑んで耳を澄ませていると、別組で勝ち上がった浅埜哲平プロが声をかけてきた。彼とは準決勝で戦おうと約束をしている。

「惜しかったな〜!五位かよ!」
「五――?」
「出本さんと下出さん、最終戦に大トップを取ったらしい」

 会場係の口から一位の橋本プロ、そして阿部プロ、下出プロの順に名前が読み上げられる。
 そして、最後に出本プロ。


 条件クリアを果たしていいところまでは行ったが、さすがに総ポイントが少なすぎた。
 談笑を交えながら、浅埜、出本両プロにエールを送る。

 ここまで、か。
 いつだって悔しいという気持ちは変わらない。準決勝で待つ崇、たろうのところまで辿り着くことは出来なかった。
 だが不思議と清々しい気分だ。


 来年再びこの素晴らしい大会へ参加することを決意し、会場を後にした。

 
 






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名残(供

 三回戦目、ここまでの合計ポイントは−4.0p。

 私は起ち親を引き、南家から下出和洋プロ(麻将連合)、倉田勇志プロ(最高位戦)、そして私がプロになって以来なにかと可愛がってもらっている村田光陽プロ(101競技連盟)という顔ぶれだ。

 二回戦で二着を拾えたのが大きかったのか、ここへきてようやく手牌が動いてきた。
 東場で3900を二度ものにし、トップ目のまま南場の親番へ。

 自風の 東 を対子落としして思惑通りの平和ドラ1を聴牌。
 しかしそこからドラの 八索 を自摸切ると倉田プロが待ったの声を上げた。

(南一局 西家 ドラ 八索


五萬六萬七萬一筒一筒四索五索六索七索七索八索九索九索   ロン  八索


 結果としては手痛い放銃だが、これは行く牌だ。
 
 次局、下出プロが序盤から積極的に動く。
 私は纏まりを欠く手で追いすがる。

(南二局 北家 ドラ 五筒


 七萬九萬三筒三筒四筒七筒八筒四索六索八索八索九索九索


 五索 がポンカスだっだが、ここから打 九索 としたのが功を奏して十四巡目に2000・3900の自摸和了。


 六萬七萬八萬二筒三筒四筒六筒七筒八筒四索四索六索八索   ツモ  七索


 このままトップで逃げ切れば最終的な通過ボーダーとなる+30〜40pも充分狙うことができる。
 ラス前、倉田プロの親番。
 ある程度の打点を睨みつつ局落しを目論見たい。

 八巡目に聴牌が入った。

(南三局 西家 ドラ 一萬


二萬三萬四萬四萬五萬一索三索三索三索四索五索白白   ツモ  三索


 一発・裏無しのルールでは、“ノミ手”はダマに構えるという打ち手が少なくない。
 事実、この局に関しても観戦をしてくれていた友人や同卓者にリーチの理由を問われた。

 麻雀は、聴牌を目指して和了を完成させるゲームだと思っている。
 裏ドラ無し、和了連荘であろうがきっちりと攻めるのが自分の麻雀だ。

 ダマに構えたり白板を叩いたところで待ちが良くなるわけではない。この二面に不服はない。心中とまではいかなくても、特に対応や警戒に迫られた局面でなければ自然に身を任せてリーチといくべきではないだろうか。

 結果は次巡に持ってきたリン牌の 八索 で親の闇テンに放銃。


 一萬二萬三萬五萬六萬七萬五筒六筒七筒五索六索七索八索   ロン  八索


 またしても痛恨の失点。ゴール寸前での7700放銃はあまりにもデカい。
 どこかで違った牌の巡りを作ることはできなかったのだろうかとも思ったが、今の自分にできないことを考えても仕方がない。

 その後、下出プロにきっちりと捲くられて三万点持ちの三着で終了。
 

 残り二回戦。
 私に課せられた条件はトップ、二着。それも、ある程度素点を叩いたものということになった。

 だが、不思議と焦りはなかった。
 ちぐはぐな展開が続いているが、落ち着いて打てている。

 今日はどこかで風が吹く。
 そんなふうに信じていた。



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名残

 それはオールスターと呼ぶに相応しい豪華な顔ぶれの戦いとなった。
 第三期 最高位戦Classic。準決勝への切符を手にするためには分けられた一組の中で四位までに入る必要がある。

 総当たりの半荘五回戦。
 一発・裏ドラ無し。オカ無しでウマが4000点、12000点。そしてノーテン罰符が無く、親は和了連荘という最高戦の旧公式ルールだ。

 まだまだ偉そうなことが言えるほどの伎倆ではないが、一発・裏無しのルールは得手にしている方だ。そして曲がりなりにも協会の一発・裏無しルールの第一期チャンピオンなのだ。
 何とか良い麻雀を打って上位に食い込みたい。

 初戦、東家から鳳凰位三連覇などの輝かしい実績を持つ阿部孝則プロ(RMU)、今期から最高位戦のAリーグ入れを果たした冨澤直貴プロ、そして日本を代表するトッププレイヤーの一人である古久根英孝プロ(RMU)。
 東一局、阿部、古久根両プロの仕掛けに門前で追いついてリーチを放った。

(東一局 北家 ドラ 七萬


八萬二筒三筒四筒四筒四筒五筒六筒八索八索   ツモ  七萬    リーチ  裏三索三索裏 


 ドラ引きの聴牌にかなり手ごたえを感じたが、東々暗刻仕掛けの阿部プロに引き負ける結果となった。


 七萬八萬二筒二筒東東東   ツモ  六萬  四萬四萬四萬横 九筒九筒横九筒


 親番が落ちた南一局にも早い混一色の7700聴牌を入れるが、振ってもらうことは出来ずに冨沢プロに交わされる。

 (南一局 北家 ドラ 二索


一索二索六索七索七索八索八索九索發發  北北北横


 その後も思うように攻めることが出来ずに、私はノー放銃、ノー和了という何もできずの三着。
 誰が、何のチャンピオンだって?
 いつの日か近付くことぐらい出来るのかどうかすら判らない。


 続く二回戦は東風王決定戦。
 東家には最高位戦Aリーガーの水巻渉プロ(赤坂 「赤まる」店長)、南家に最高位戦元Aリーガーの曽木達志プロ(池袋 「JIGEN」店長)、そして西家に協会第五期雀王の須田良規プロ(大久保 「ポン」店長)。
 最高位戦の水巻、曽木プロとは共によく酒を酌み交わす仲だが、意外にも公式戦では初対戦だ。

 勝負は東場に須田プロから闇で七対の9600を和了り、親の私とのリーチ合戦を制した曽木プロが一歩リードしたまま南場へ。

 南一局、須田プロが序盤でオタ風のポンから入る。
 色は筒子か。だが、ドラの白板が一枚も顔を見せていない。このルールでのこういった仕掛けは相手にとってかなりの脅威となる。

 そこへ、親の水巻プロが乾坤一擲とばかりの気合でリーチときた。
 たかだか親番だという理由でブタを打ってくる手合いではない。間違いなく本手のリーチだろう。
 
 ここで須田プロがどう立ち回るかによって各人の対応がかなり変わってくる。
 入っているのか、遠い仕掛けだったのか。いずれにしろ彼の手が本物かどうか判るのにそう時間は掛からない。

 しかし私は須田プロの処し方をみる前にリーチ一発目に掴んだ超危険牌とも言える 七筒 を切り飛ばした。
 
 (南一局 北家 ドラ 白


 三萬三萬二筒三筒四筒四筒五筒六筒二索三索四索六索八索


 誰がどう見たって断九公のみの1300だ。
 だが、待ち牌である 七索 は満場一致でヤマ四だ。
 
 曽木プロの追っかけに振り込んだ5200が響いて、目下22000点持ちのラス目。
 柴棒が一本の、水巻プロが出したリーチ棒も一本。

 ここは、日和らない。 七索 は必ず山に居る。
 行ってこいだ…。

 無論、曽木プロと須田プロは私の切り出しを見て勝負を預けている。
 ダマで押し切った二巡後、盲牌をする指に索子の縦に抜ける感触が伝わってきた。


  三萬三萬二筒三筒四筒四筒五筒六筒二索三索四索六索八索  ツモ  七索


「500・1000は600・1100…」

 この鬩ぎ合いが影響したのか判らないが、オーラスの親番で5800を和了り、水巻プロを交わして二着に食い込むことができた。

 
 大会終了後の酒の席で水巻プロが云ってきた。

「あの、嵌 七索 の局だな――」

「たまたま、ツイてた。あそこは行かなきゃって思ってたけど、先に居てくれて助かりましたよ」
「俺は 七索 が高目三色の 四索 七索 待ちなんだ」

 私が退いていたらおそらく水巻プロの自摸和了だっただろう。


 この長く重い対局はまだ折り返し地点にも辿り着いていなかった。
 



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回生

「今年に入ってから休んだっけ?」

 他愛も無い雑談の中で、こんな質問を後輩に投げかけた。
 彼は毎日毎日、朝から夜まで仕事で牌を握っている。そしてたまの休みの日も他のフリー雀荘に顔を出し、公式戦にも参加している。

「そういえば、麻雀を休んだ日はまだ一日もないですね」
「麻雀打ちの模範解答だな」
 と冷やかす私に、彼は他にやることがないんですよと少し照れながら返してきた。

 やることがない、か――。
 正確にはこれよりも優先させるものが他には見当たらないのだろう。

 不思議なもので麻雀に没頭すると他のことを考えるのがひどく億劫になる。世間や周囲のこと、自分自身の生活や健康にも興味が失せる。
 
 私にも長い間そんな時間があった。
 麻雀と向き合い、牌だけを追うという点は今も変わりは無い。だが、あの頃はそんな生活に疑問を抱くという事がなかった。
 起きている間のほぼ全ての時間、牌を握って過ごす。それが普通で、日常。
 私はもう二度とあの日々に戻れないだろう。


 後輩が序盤にいきなり両面から喰った。

(東二局 北家 ドラ 五筒


裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏  六筒横四筒五筒


  一方の私にも手が入っていた。


 四萬五萬五萬赤六萬三筒五筒一索一索三索五索五索八索九索   ツモ  四筒


 ドラ表の嵌張を入れて一向聴。
 打ち出すのは索子の上、打 九索 とする。


 四萬五萬赤五萬六萬三筒四筒五筒一索一索三索五索五索八索


 萬子のくっ付きが薄くなったり、索子の複合二嵌受けが弱くなることだってある。 七索 の引きに備えて当然打 八索 からとはしない。

 実戦では場況に合わせてこんな“戻し”で局を制することがある。


 四萬五萬赤六萬三筒四筒五筒一索一索三索五索五索七索八索


 とそこへ、親から出た萬子に後輩が飛びついた。


 裏裏裏裏裏裏裏  七萬七萬七萬横  六筒横四筒五筒


 手出しの牌は、打 六萬
 仕掛けた形と場の状況、そして上から出て見送った牌から、誰がどう見たって満貫級の手の有効聴牌であることが判る。
 喰いタンの二副露ともなればある程度手の内に残された受けは想定がつく。まだ七巡目とはいえ、一枚たりとも甘い牌は打てない。

 私の自摸は 三索 だった。


四萬五萬赤五萬六萬三筒四筒五筒一索一索三索五索五索八索   ツモ  三索


 生業として、やっている…。
 この手、この瞬間の自分の打牌は打 六萬 のはずだ。
 
 テキの仕掛けが2000点なはずはない。そして聴牌。
 さらに残り二局のこの場で高い手を打ったらラス候補の筆頭となるのである。

 さすがに一段目から喰い伸ばしは考え辛い。
 ということは、幸い筒子の三枚は 三筒 以外通るのだから、受けて七対子をぎりぎりまで追ってみるべきだ。

 しかし、在ろうことか私は二つしか残されていない二面の和了筋となる牌を打ち出してしまった。
 後輩が面を食らった表情で手牌を倒す。


 五筒赤六筒七筒四索四索六索七索   ロン  八索  七萬七萬七萬横  六筒横四筒五筒


 大失態とも言える温い放銃をした私はこの日大負けをした。


 私は、弱くなった。
 狼のように相手に喰らいつき、麻雀のことだけを考えて生きるという生活を送ることはもうできない。
 私生活で悩みや迷いを抱えていたり、この戦いの日々に疲弊してしまっていることがある。誰かに話したり酒に逃げるだけで全て解決できることではない。

 何の道でもきっとそうだ。
 気持ちに迷いが生じているようでは良い結果は残せない。判りきったことだろう。
 

 お前以上に、俺にも麻雀しかないんだ。

 そう後輩に言えるようモチベーションを取り戻していくしかない。
 

 



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吉田光太

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第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
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