プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2008年09月

造反(供

 
 前掲の手牌に二枚有効牌を引き、こんな手格好になっていた。


 一萬四萬六萬七萬九萬一筒七筒九筒一索南西北發   ツモ  白


 捨て牌には布石として序盤に被った公九牌を無数に散りばめてある。
 場死にの字牌待ちになった場合にはリーチをかける。そのためにも牌の振り順は大切だ。 

 先ずは 四萬 で萬子の裏スジを演出し、次手は 七筒 、最後にドラ塔子の 七萬 六萬 を打ち出すことを決めていた。無論、その間の不要牌は全て自摸切る。

 字牌待ちになったとき、こんな捨て牌相になっているのが理想的だ。


(東二局 南家 ドラ 六萬


一筒中八索四萬發七筒
二筒七萬一索六萬横 リーチ

 すると、五巡目に切った 四萬 に下家が喰いを入れた。


 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏     四萬横三萬五萬赤


 今日、卓内で勝ち頭の下家。
 この局もドラか赤か、いずれにしても喰っていける手が入ったようだ。

 喰いタンだとすれば嵌 四萬 から喰って、なお萬子の受けがあるケースは絞り込める。
 七萬 が喰われるとしたら、元が 三萬五萬赤六萬八萬 や、 三萬五萬赤六萬六萬八萬 といった形。
 六萬 が喰われるとしたら 三萬五萬赤六萬六萬 の形だ。

 これらのケースよりも筒子の 七筒 を喰われる方が怖い。
 私は路線を変更し、萬子を先に打ち出してぎりぎりまで筒子を絞った。


 屑手に見えた配牌だったが、場の鳴きも手伝って公九牌の油田を引き当てた。
 そして迎えた十巡目――。

 
 一萬六萬九萬一筒七筒九筒一索南西北白發中   ツモ  九索


 先打ちした公九牌が振り聴となっているが、実質上の国士聴牌に辿り着いた。
 ここでドラを放し、次巡 一筒 を持ってきて命懸けで絞った 七筒 を放った。


 ここまでの捨て牌はこうなっている。


 一筒中八索四萬發七萬
 三筒一萬六萬七筒


 すると下家がその 七筒 喰った。
 こちらの待ちである 東 は初牌だが、私は何となく下家が掴むような気がした。

 
 次巡、一牌を入れた下家が手出しで 東 を打ってきた。


「ポン――」


 と親の口が開くのと同時に私は和了の宣告をし、手牌を倒した。


  一萬九萬一筒一筒九筒一索九索南西北白發中   ロン   東  



 国士無双は確かに自分の手牌と自摸牌が噛み合えば聴牌を果たすかもしれない。
 そして序盤の迷彩によって切り遅れの牌が出来たり、取りこぼしが出てくることもある。

 だが、それでも私は河や場況をケアしながら手を進めることを心掛けている。
 公九牌の多い配牌は番度ましっぐらに国士狙い。それではプロの麻雀とは呼べないだろう。


 遠い記憶の中で聞いた一流のプロには到底及ばなくとも、ちっぽけな矜持を捨てずに苦境の中で抗い続けよう。







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造反

 厳しい戦いの日々が続いている。
 台はそう高い勝負ではないが、毎日やるとなったら上下の差は大きい。
 
 先月末から訪れた冷え込みが長く続き、この三週間で大学出の初任給ほどの負けを刻んだ。
 今さらこの程度のことで揺れはしないが、長い劣勢は首を絞つけられているかのような苦しみだ。


 朝から座りっぱなしで迎えた27荘目。
 今日も大軍のように押し寄せてくるテキの当たり牌を抑えきることが出来ず、大ガミを喰っている。

 東パツに先行した上家の親番、東二局。


(東二局 南家 ドラ 六萬


一萬四萬六萬七萬九萬一筒七筒一索八索南西北發   


 溜息交じりに本日数十回目となる屑配牌を一瞥した。
 そして第一自摸は 一筒 だった。


一萬四萬六萬七萬九萬一筒七筒一索八索南西北發    ツモ  一筒


 局数が少なく祝儀牌の比率が高い東風戦である。
 大技を狙うのはセオリーに反している。

 だが、少しでもこのジリ貧を回避すべく私は国士無双に狙いを定めた。
 不調時に奇を衒った策に走るのはとても危険だ。だから本当のここ一番でしか狙うことはしない。

 迷彩も兼ねて、 一筒 をそのまま自摸切った――。
 
 
 今から十年以上昔の話だ。
 田舎の雀荘で牌を握っていた私は、東京で凌いでいた経歴を持つベテランの麻雀ゴロにこんな質問をしたことがあった。

「麻雀プロって強いの――?」
「一度後ろ見をしたプロが国士を狙って、終盤に和了り切ったんだ。そのとき、下家が食いタンで仕掛けていて、そのプロが一打でも切り順を違えていると和了れなかったんだ」

 その先輩が人を誉めるのは珍しいことだった。

「それは、下の仕掛けを読みながらやっていたってコト?」
「それもあるし、聴牌した巡目に出やすいように河も細工していたんだよな」
「ふーん」
「確か金子、金子正輝って言ったかな…」


 初手に放った 一筒 を瞳に写しながら私はなぜかそんな話を思い起こしていた。
 
 


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尊厳

 戦うということは素晴らしいことだ。
 例え陽の当たらない場所であろうが、人様に誇れる生き方じゃないとしても、戦える場所があるということを、自分の人生を賭してまで表現しようとすることがあるのを誇りに思うよ。

 麻雀に真剣になることや戦って傷を負うことなんて少しも恥ずかしくないし怖くない。
 だって自分を信じ、それに投資しているようなものだろ?


 プロ連盟の石渡正志プロ、最高位戦の佐藤崇プロ、協会の小倉孝プロとのセット。

 惨敗を喫した私はその代償として大枚を支払い、プライドを失った。


 だが、今日のセットで一番勉強をしたのは自分だと信じている。


 頑ななまでに一つの遣り方に拘っていた私に或る先達は言った。

 自分のスタイルが出来たと思ったら、そこから崩してまたゼロからの積み重ね。
 その繰り返しだから、と。


 色々と調整を計っている私はいま大きくバランスを逸している。

 だが、安いものだ…。いつの日か今日私に土をつけた強敵たちすら手の届かない場所へ辿り着くための肥やしなのだから。


 ここまで来たら今日までの麻雀人生は他の誰かの主役のためのものだったとは思うことは出来ない。
 例えそうだったとしても、ここに来るまでに費やしたものが大きすぎてそう割り切ることは到底出来ない。


 自分の目指す物のために、その投資のせいで人生や健康や将来を犠牲にしているのは判っている。誰よりも理解しているつもりだ。
 

 それでも目指したいと思わせる物があることを私は誇りに思う。





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灯火(供

 歪んだ展開はそう簡単には元に戻ってくれなかった。
 
 これで最後という三回戦目。
 またしても親番で竹中プロに対々和の親っかぶりをさせられた。


(東三局 北家 ドラ 北


一萬一萬中中   ツモ  中   一索横一索一索 九筒九筒横九筒  發發發横


 今度は二役と混老が付いて跳満だという。

 その後も私の手が纏まりを見せることはなく、三者が交互に和了を重ね無常なまでに局が進んで行く。


 迎えたラス前の親番。
 トータル四着でこの半荘もラス目。トーナメント3ではここで龍が舞い降りてくれた。

 何度もここで入れてきた。
 だから勝ち残ってきた。
 そう自分に言い聞かせて配牌を取ったが、この二年間連勝を支え続けた見えざる力が私を後押しすることはもう無かった…。


 迎えたオーラス。
 絶望的な点差をカウントし、条件確認に入った。
 
 三倍満自摸、若しくは竹中プロからの倍満直撃。
 それが私に課せられた使命だった。

 配牌を取る。
 十三枚の並びに希望は、ない…。


(南四局 北家 ドラ 八萬


六萬八萬二筒二索三索七索七索八索西西北北發


 だが、諦める訳にはいかない。一つ小さく深呼吸をし、下腹に力を込めた。 
 このタイトルを獲ったときに、こんな苦しい戦いもあった――。
 そんな追憶の一局にしてみせる。そう思い込んだ。

 執念が牌に乗り移り、配牌から六牌連続で有効牌を引いた。


 一萬一萬二筒二筒七索七索八索西西西北北北   ツモ  一萬


 リーチをかけ、自摸山に腕を伸ばすたび、今まで起こしてきた劇的な牌史が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
 不思議と祈る気も願う気も起こらない。
 もしもこの手を自摸れるようなら、それは運命だと思った。


 流局間際、死に物狂いで連荘に賭けた澤村プロが手牌を倒した。

 今回の私の挑戦はここで瓦解した。
 灯した火は熱をもった灯芯だけを残し、儚く消え去った。


 酒を飲む気にもならず、早々と帰宅して部屋で体を休めていた。
 このタイトル戦に出るために予定をやり繰りし、今月に入ってから三週間は休みをとっていない。
 
 すると夜になって最高位戦の友人から一通のメールが届いた。
 良い手合いを揃えたから、来週の空いてる日にセットをやろうというものだった。

 ほんの少しだけ躊躇し、すぐに快諾の返事を送った。

 
 勝負の世界に生きることを選んだのだ。
 どれだけ傷つこうが、この胸の裡で煌々と燃え続ける火種だけは消すことができない。








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灯火

 第三期オータムチャレンジカップ。
 今年もこの季節がやってきた。

 同一面子で三半荘を打って上位二名が通過となるトーナメント形式の予選。
 初日、トーナメント2を二、二、四着で関西の澤村和孝プロと勝ち抜け。

 引き続き行われたトーナメント3は最終戦で須田良規プロとの競り合いを制して四、二、二着で辛くも福井仁プロと勝ち抜け。

 二戦連続してマイナスポイントでの勝ち上がりという苦しい戦いだった。
 第一期から続いている予選の無敗記録を10にまで伸ばし、ベスト12に勝ち上がった。

 第一回大会優勝、第二会大会決勝進出。
 タイトル戦の予選はそう簡単に勝ち進めるわけではない。だが非常に思い入れのある大会だ。俺は負けない、この大会だけは絶対に負けない。

 この灯火はそう簡単に絶やすわけには行かないんだ…。
 


 運命の準々決勝。
 スーパーシードの四名を加えて十六人での争い。

 同卓の面子は竹中慎プロ、吉田基成プロ、澤村和孝プロ。

 たった一投、ほんの一打で勝負の趨勢は決まってしまった。

 じっくりと腰を据え、追い上げを見せてトップ目に立った南二局。
 こんな手牌になっていた。


(一回戦南二局 東家 ドラ 九索


二萬三萬四萬五萬八萬九萬四筒五筒七筒八筒九筒七索九索   ツモ  七索


 トップ目とはいえ、前に出れるところまで行く手牌だ。
 場に 七萬 が二枚切れだったため、打 九萬 とする。

 すると先ほど私が技ありを一本取った相手、ラス目の竹中が手の内から 九萬 を二枚開く。
 捨て牌に視線を走らせると色ではない。そしてやや変則的な捨て牌は対子手を思わせる。場には 中 とダブ南 が顔を見せていない。

 次巡、私の自摸は危惧したその牌だった。


 二萬三萬四萬五萬八萬四筒五筒七筒八筒九筒七索七索九索   ツモ   南


 安易に打 八萬 とした。
 今世紀最悪の緩手である。
 
 打てない 南 を抱えながら、何処かに対子の受けがありそうに感じてる 八萬 を切ったのだ。


「ポン――」


 と竹中が口を開く。


 裏裏裏裏裏裏裏  八萬横八萬八萬  九萬横九萬九萬


 こういのを決められると、決勝点になってしまうものだ…。
 胸の裡で呟いた。

 現物牌を抜き、なんとか流局か脇移動を祈ったが流局間際にイメージしたとおりの展開になった。


 二索二索中中南南南   ツモ  中     八萬横八萬八萬  九萬横九萬九萬



 初戦はこの綾が効いてトップどころかラスで終了。
 二戦目は辛うじて二着に踏みとどまったものの、トータルラスで最終三戦目を迎えた。

 ここまでの首位は基成で、私が彼を捲くるのは難しい。
 何とか二着目の竹中と三着目の澤村プロを捲くって基成と勝ち抜け。
 
 このシナオリに賭けるしか私が勝ち上がる道は残されていない。
 
 


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流転

 昔の友人に偶然会って風の便りを耳にしたのが切っ掛けだったと思う。
 どちらから連絡を取ったかは忘れたが、高校時代に少しのあいだ付き合っていた女と再会することになった。
 
 頭のてっぺんから爪の先まで麻雀にどっぷり漬かり、鬼の子のような顔つきで来る日も来る日もただひたすら戦い続けていた21歳の夏だった。


 彼女は高校の同級生で音楽家の家の出だった。

 とはいっても私の高校は自由奔放な校風で有名な私立学校だったので、一緒に街で飲んだりしている内に親しくなっていった。
 聡明で明るく可愛い子だったと思う。


 付き合いはそう長く続かなかったが、もともと仲間付き合いしていたせいもあって、その後も友人としてフランクな間柄だった。
 高校卒業後、彼女は音楽を専攻するため都内の音大へ進学し、私は地元に残り麻雀で生きる道を選んだ。
 

 彼女の住む駅のターミナルである池袋で待ち合わせた。

 都心へは私の住む地方から電車で一時間ほどであるし、私も月に数回は都内へ遊びに来ていたから地理はある程度理解している心算だった。

 しかし、いざ私が待ち合わせ場所として辿り着いたのは猥雑とした街並みの北口で、彼女の待つ西武池袋線方面の出口まで出るのに一苦労した。

 遅かったね、という彼女に見栄を張って用事があったのだと言った。


「大学は、夏休み?」


 気の利いたカフェで対面に座る少しだけ大人の女性になった彼女に尋ねた。


「そう、でも毎日課題とバイトでね。アナタは?」


「麻雀」


「まだやってたんだ! だってもう三年ぐらい経つよね」


「そうだね…」



 三年という月日が長いのか短いのかは判らないが、三年ぶりに会った彼女はやはり明るくて優しい口調で話しをしてくれた。


「今年の夏は海とか行った? 私はもう三回行ったけれど、来週からアルバイトで貯めたお金で友達と海外に行ってくるの」


「海とか、そういうのはやってない」

「…? じゃあ休みの日や友達と遊ぶときは何をしてるの?」


「麻雀」

「そう…。あ、そう言えばわたし今度知り合いと会社を立ち上げるの! っていっても私は名義上役員になるだけなんだけどね」


「そっか、何かすごいな…」 


 私は彼女の話を聞いている内に自分がとても矮小な存在に思えてきて仕方がなかった。
 彼女は積極的に色々なことをやり、そして様々な人間に出会っている。


 きっとその経験や出会った人たちからとてもたくさんの物を吸収してきたのだろう。
 このかけがえのない青春期においてどれほど素晴らしいことであろうか。


 それに比べて自分は麻雀しかやっていないし、他の世間も知らない。
 彼女の周囲にはきっと器用で頭が良くて、そしてきっと根もいい奴らが揃っているに違いない。
 

 そう考えると急に店のウェイトレスや隣のテーブルの男たちの視線が気になった。
 

 顎は薬物でもやっていそうなほど痩せこけ、窪んだ眼窩と厳しい険。
 そして全身これ煙草の匂いだらけ。
 

 こんな自分がこの店に、彼女と一緒に居てもいいのだろうか。


 そんな私の顔色を窺ってきたのか判らないが彼女が尋ねてきた。


「私と話ししてて楽しい?」


「いや、もちろん会えて良かったけど。正直、少し引いてる。君は俺の知らない素敵な物をたくさん見つけてるみたいだから」


「たぶん、アナタの勘違いよ」


「…?」


「東京に心から馴染んでいる子なんて居ないし、みんな本当にやりたいことが見つからないからふわふわと色んなものに触れてみようとしているんだよ」


「そう、なのかな」


「むしろ、そこまでのめり込める物がある光太が羨ましいけど」


「…ありがとう。なんか弱気になってた、らしくないな」


 友人として言ってくれた彼女の言葉のお陰で少しだけ自分を取り戻すことが出来た。
 彼女が微笑みながら言ってきた。



「うん、それと一緒にいるときはもう少し笑ってね――」



 あれから様々な道を歩み、随分と時間が経った。

 最近、笑顔が増え、表情が優しくなったと人に言われる。
 ずっと麻雀以外の時間や他人との交わりは隙以外の何物でもないと思っていた。


 それが間違っているとは思わないが、それ以外の形もあると今は信じている。


 もしもう一度彼女に会う機会があったら、そのときはあの日もらった言葉への礼を今の自分なりの笑顔で言ってみようと思う。








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弛緩

 まるでタイトル戦のオーラスのように長い東一局となった。

 荘家である建築の社長がリーチをかけ、子方がオリる。
 その繰り返しだった。

 三本場。
 親のリーチに対し、 五萬 八萬 だけは切らないと決め、下の手から 七萬 を喰って 五筒赤 をすっ飛ばした。


 四萬五萬六萬八萬五筒赤一索二索三索六索六索   中中横中

 リーチが入った後に引き戻した 八萬 を上手く使い切ったが、終盤に 二萬 を持ってきてやめた。
 テキの待ちは上の穴 八萬 だった。


 私と後輩の中林も幾度か牙を入れたが互いにぎりぎりのところで身を引いた。
 西家もかなりしぶとい。
 聴牌料に目が眩んだ押しではなく、その手が和了れるかどうかで押し引きが出来る手合い達だ。


 三本場、四本場と連荘が続くが和了は出ない。
 テキに和了られれば一本1500点の本場地獄がついてゲームは早々に決まってしまう。換言すれば誰かに和了らせさえしなければ本場はいつか自分のモノになるのだ。

 親に和了られたらゲームが決まってしまうし、子に振って局が進むようだとラスが濃厚となる。
リーチにも闇テンや仕掛けの安手にも打つことは許されない。

 まるで真っ暗な湿原に潜む地雷を避けながらの戦いのようだ。


 五本場、再び親がリーチときた。


(東一局五本場 東家 ドラ 六索


一萬九索白九萬二筒一索
五萬横   リーチ


 和了を完成させるには至っていないが、まだストレートに聴牌が入る。状態はやはり此処が一番上のようだ。

 一方、私の手牌は配牌からオリを見据えての七対子だった。


 一萬一萬五萬赤五萬一索一索二筒四筒南西北北發   ツモ五索


 これでこの局も私の和了は無くなったわけだが…。
 他家がオリる際になるべくヒントを与えぬよう切り出すという仕事がまだ残っている。
 
 現段階で最も苦しいのは北家の中林だ。
 早和了を目論んで一つ仕掛けた手牌はおそらくまだ整っていない。早々に退くだろう。
 その際に一つのワンチャンス壁をも作らぬよう、情報を与えないことによって他家が間違えるよう、私は牌を打ち出さなければならない。
 
 例えば上記のリーチに対して 五萬 の対子落としをしたら、四枚目の 五萬 が見えた者は萬子が全てリーチに通せるという事が判ってしまう。
 

 一索 の対子落としから始め、他家の手変わりを見逃さぬように現物牌を並べた。
 中林と西家もやはりオリたようで現物の対子落としやリーチのスジを頼りに切り出してきた。

 だが、勝負も終盤に差し掛かり、手牌が十枚しかない中林がやや際どいところを拝み打ちしてくるようになった。おそらく手牌に安全そうな牌が少ないのだろう。
 私は徹底して中張牌を切らない。端の現物牌と字を並べ続けた。
 実戦ではこういった細かい戦術で差がついたりする。

 残り一巡というところで親が通っていなかった場イチの 四筒 を自摸切り、南家の私の手牌はこうなっていた。


 四萬五萬赤五萬七萬二筒四筒七筒七筒八筒六索九索中發   ツモ  四筒


 今までの作戦通り、先ほど通ったばかりの 二筒 を打つ心算だった。
 しかし前巡に西家と中林が手変わりをしている。
 牌の切り出し、雰囲気から確実に手バラにしてオリているとは思うが…。


 物理的にアタりようがない牌は別として、この世で最も安全な牌は直前に打たれた牌だ。
 テキが楽にオリられないようにするためとはいえ、7500点という本場がついたこの極限状態で万に一つでも自分が他家に振るわけにはいかない。
 普段であればテキに形聴を入れさせないこともケアするが、聴牌料云々よりも先ず和了を発生させないことが優先される状況なのだ。

 そんなことを考えながらやや安易に絶対安牌である 四筒 をそのまま自摸切った。


 西家が手の内から安牌を切り、中林が胸を撫で下ろすように一牌を手牌から摘んだ。
 それは私が先ほど切った牌と同じものだった。

 あっ――、と顔を上げた瞬間に最後の自摸に手を伸ばした親が歓喜の声を上げた。


 六萬六萬五筒五筒赤五筒六筒七筒八筒三索四索八索八索八索   ツモ  五索


 均衡を破る4000は6500オールの和了。
 
 仮に安牌に窮している中林が 四筒 を持っていたら喜んで切ってくる筈である。
 もし私がもう一巡あの 四筒 を堪えていれば中林からポンを入れて残り一幢の親の自摸を飛ばすことが出来たのである。


 出来る出来ない、親が和了る和了らないは別として、一つの発想が抜けていたのは完全に私の油断である。

 消せたかもしれない和了――。
 次局、4000は7000オールの和了が更に私を汚辱にまみれさせた。
















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贖罪(供

  
 南白九索一萬八索七筒
 北六萬


 裏裏裏裏       三筒横四筒五筒  七索横五索六索  裏二萬二萬裏


 私がその前に切った 五萬 には声をかけなかったから萬子は 五萬五萬六萬 や嵌 五萬 受けはない。また 二萬 が全て見えて嵌 三萬 受けも無い。
 残った形にもよるが流石に萬子が雀頭候補だったら 六萬 よりも 北 を取っておくだろう。

 やはり萬子は 五萬六萬六萬 からの切り出しが濃厚で、あとは 八萬 の単騎もしくはバッタ待ちぐらいだ。

 喰い延ばしは考え辛く、 四索七索 はノーチャンスだから、他に二面の可能性があるのは 三筒六筒 のみだ。

 面前を身上とする石野プロにしてはやや軽い仕掛けだが、全ては私が安易に見せた 五索 が起因している。
 和了易い 六萬九萬 待ちの未練を捨て、ここはシャンポンに取った。


 五索六索七索七萬七萬東東東白白       六筒横七筒八筒


 すると次巡、すぐに 七萬 が居た。
 当然、温い鳴かせをさせた私の方にではない。


 五萬六萬八萬八萬   ツモ  七萬     三筒横四筒五筒  五索横六索七索  裏二萬二萬裏


 
 実は、 三筒 を仕掛ける前の石野プロの 七筒 は手出しだった。
 嵌 六筒 受けに 四筒 を引いて入れ替えたのだろう。

 すなわちあの時点で私が 五索 以外の牌を切っても鳴かれることはなく、またあの巡目で 五索 を見せなければ石野プロもこんな被せるような仕掛けはしなかっただろう。


 悔恨の一打で場を歪めた私のせいで2600オールを自摸られ、その後四本場まで積まれた。
 私の持ち点は僅か四千点にまで落ち込んでいる。
 全員のための半荘をたった一打でトップを確定させてしまったのである。

 その半荘こそ何とか二着に食い込んだものの、最終戦は地蔵のままのラス。
 1、1、2、4着という結果だった。


 狂った歯車はもう戻らないかもしれない。
 好調だった三節目以降は、

 第四節 1、4、4、3
 第五節 2、4、4、4
 第六節 1、4、3、4
 第七節 2、1、2、5
 
 と、総崩れな有様だ。 
 ここまでの戦績は+100pほどで、トップから13回、3回、4回、12回という歪なピラミッドを築きあげている。


 全ての原因は自分の中で抱えているものにある。


 雀王Aリーグへの昇級枠は僅かに二名。
 そして上位二名は快進撃を見せて500pオーバー。その差、実に400pあまり。

 
 残された半荘は8回。
 年間での目標である+200〜300pポイントに少しでも近づけた上で昇級を目指し、自分のしたことの結果を受け止めてこよう。











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贖罪

 たった一牌の切るタイミングで、せっかく積まれた山と半荘を壊してしまった。
 第六期雀王戦B汽蝓璽亜‖菷節。

 1、1着と連勝で迎えた三戦目。
 三巡目という早い段階で暗槓が入り、ドラ表示牌の 五索 に加えて新ドラにも同じく 五索 が捲れた。

(東一局 北家 ドラ 六索 六索


 五索五索六索五萬七萬八萬三筒七筒八筒東東白白   ツモ  七索


 ドラドラに翻牌が二つのこの手牌。
 打ち出しにやや迷いが生じてしまった。

 局や面子作りの核となるキー牌は極力見せないようにするべきだ。
 麻雀はただ単に聴牌効率を上げたり相手の安牌を残すだけのゲームではない。相手に和了り易い手作りをさせないことや、自分が聴牌をしたときに和了易い手格好や河を目指すことも大事だ。
 実戦ではそういった細かいところで差がつく。
 したがってダブルドラの隣牌であり、他家から見たら三枚目となる 五索 は今切るべきではない。

 しかしあまり早く萬子の裏筋を見せたくないし、筒子の下は良いくっ付きになりそうな感じだった。 
 何処かから動きが入ったら攻守を兼ねた戦術として、字牌を一組落としつつ筒子の下で勝負というのも悪くない。 

 何が正着かは判らない。しかし今、何を切るべきだったかと問われたなら 五萬 と答えるだろう。


 ところが私の打牌は 五索 だった。
 その牌に親の石野豊プロが動く。


 裏裏裏裏裏裏裏      五索横六索七索  裏二萬二萬裏

 
 四巡目の二面チー・・・。
 私が温い打牌をしてしまったのだろうか。

 その後、私も動きを入れて 三筒 を打ち出した。
 すると石野プロが 四筒五筒 で開いて打 六萬


 南白九索一萬八索七筒
 北六萬


 裏裏裏裏       三筒横四筒五筒  七索横五索六索  裏二萬二萬裏
 

 東一局からかなり積極的に来ている。
 おそらく私の切り出しに呼応してのものだろう。


 そして私も同巡に聴牌を入れた。


 五索六索七索七萬七萬八萬東東白白   ツモ  東  六筒横七筒八筒


 二面に受けるかバッタに取るかであるが、この 七萬 は…。








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吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
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https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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