プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2008年11月

昵懇

 久しぶりに池袋西口の歓楽街へと足を踏み入れた。
 今でこそ新宿界隈で遊ぶことが多くなったが、東京に出てきて初めて借りたアパートは池袋沿線のちっぽけな駅にあり、活動の拠点はいつもこの街だった。

 城北地区最大の都市。
 北関東からの玄関口である池袋はいつだって活気があり、最先端の文化や情報を発信しつつもどこか垢抜けない感じがして心が休まる。
 私にとっては青臭い思い出がたくさん詰まった街である。

 当時の私は麻雀をもう一生やらないと決めていたので、あまりこの辺りの麻雀屋には馴染みがないのだが、それでも街並みは知った店ばかりが軒を連ねている。
 飲み屋に食事処、客引きの姿すら懐かしい。

 ロサ会館に入っている知り合いのJazz bar「Hot pepper」を脇目に目的のビルを目指した。
 案内役を買って出てくれた最高位戦の浅埜哲平プロに連れられて向かった先は、スピードバトルが売りの雀荘「JIGEN」である。
 同じく最高位戦の曽木達志プロがマネージャーを務める店だ。


 初戦をトップで飾った二半荘目。
 荘家の私はタイミングよく翻牌を重ねてこんな手になった。


(東一局 東家 五巡目 ドラ 西 西


一萬一萬二萬二萬二筒三筒中中西西    發發横發發


 場風は東と西が利いており、私の加槓で西がダブルのドラとなった。
 直ぐに上の曽木プロから 一筒 が打たれ、敢えて果敢に喰い付いた。


 一萬一萬二萬二萬中中西西     一筒横二筒三筒  發發横發發


 普段であればふかす、、、牌だ。
 しかし、場は翻牌やドラが重い捨て牌相で、先に仕掛けられるとなかなか前に出辛い。好調な滑り出しとなった初戦の威光も借りて相手にプレッシャーをかけてみようと思った。


 私の捨て牌は筒子が一番高く、場には 一萬 が一枚飛んでいる。
 打点のみに頼ったかなり窮屈な仕掛けだ。少しでも細工をすべく、打 二萬 とした。

 次巡持ってきた萬子を自摸切ると、浅埜プロが初牌の 中 をいとも簡単に勝負してきた。
 やや慌てて叩き、 二萬 を打つ。


 一萬一萬西西      中中中横  一筒横二筒三筒  發發横發發


 マズいことをしたな…。
 そう内心で舌打ちした。

 完全な受け間違いである。
 予想外の牌が出てきてエラーを犯してしまった。

 捨て牌に萬子が安いのだから辺張に受けるべきであった。


  一萬二萬西西     中中中横  一筒横二筒三筒  發發横發發
 
 
 これならば萬子の下はただ掃ったように見え、河が強くなったときに間違いが起きやすい。
 手出しで 二萬 の対子落としをしたら、残った部分はそれよりも必要な牌、若しくは待ちやすい牌ということだ。
 一萬 は無警戒に振ってくる牌ではない。


 私の凡ミスを咎めるかのように上家の曽木プロがリーチをかけてきた。
 ちなみに、白板は場に顔を見せていない。
 換言すれば、曽木プロのリーチは親の仕掛けに立ち向かえるほどの大物手であるということだ。

 震える思いで牌山に腕を伸ばす。
 得てしてこういうときはエラーを犯した者が一発で掴むものだ。
 
 だが、幸運にも望外の牌が居てくれた。


  一萬一萬西西     ツモ  西     中中中横  一筒横二筒三筒  發發横發發


 この8000オールが効いてその半荘もトップで終了。
 結局、1123という成績で纏めることが出来た。

 店を出て駅へ向かう途中、以前顔を出したことがある雀荘が何件か目に飛び込んできた。飲食店だけではなく、やはり雀屋も知った店があることを思い出した。

 そういえばこの街は昔から麻雀の相性が良かった。
 ツキで勝ったり、たまたま好調時を迎えていた時期が多かったような気がする。

 きっとあの不慮の牌は久しぶりに足を伸ばした私への褒美だったのであろう。







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告知

 麻雀上達コミュニティ「何切る!?」に毎週問題を出します。
 「何切る!?」は麻雀の「何切る」問題でつながるコミュニティです。

 もし良かったら皆さんの回答や意見をお聞かせください。


 日本プロ麻雀協会
 吉田光太






















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克己(供

 勢いに乗りかけた親からのリーチ。


(東一局 東家 ドラ 白


 中二索發發二筒横   リーチ

 
 ここを一発で落とせるようだとデカい。
 三索 六索 だ。 三索 六索 になっちまえ――。

 歯を食い縛って自摸牌に手を伸ばした。


  一萬一萬三萬四萬五萬五筒赤六筒七筒四索五索七索八索九索  ツモ  一索 


 これは行かなくてならない牌だ。身が切り裂けるような思いで打ち出した。

 北家が私の切り出しを一瞥して慎重に字牌を打ち出す。

 親の一発目の自摸は 九索 で空振り。

 南家は先ほど手出しした字牌の対子落とし。
 この局に対する全員の見解が一致している証拠である。
 親に楽に和了をさせてはいけない。形になった者のみが立ち向かい、それが叶わぬようなら流局を祈る。

 次の私の自摸番。
 今度は萬子の無スジを持ってきた。


  一萬一萬三萬四萬五萬五筒赤六筒七筒四索五索七索八索九索   ツモ  四萬


 この牌は…。
 
 別に下スジの四枚使いだからというわけではない。
 だが、この牌が私の手元に舞い込んできた意味を確かめるべきだった…。

 同卓者に頭を下げ、少考に入った。
 まだ通っていないスジは無数にある。この牌がアタる確率は5%にも満たないだろう。
 オリに回るといっても、いま親が切った索子を抜いたところで次が続くかは判らない。

 四巡目聴牌の平和・赤一。曲げて3900、裏が乗れば満貫。
 こちらの待ちが弱いわけではない。
 むしろ親を叩くならここが好機なのかもしれない。
 行け、行ってやれ――。


 威勢良く牌を横に曲げ、点箱を開いた。
 だが、私がリーチ棒を出し終わらぬうちに親の唇が動き、手牌が倒された。


 二萬二萬五萬赤六萬四筒五筒六筒四索五索赤六索七索八索九索   ロン  四萬


 鉄槌の一撃を浴び、慙愧の思いが溢れてきた。


 親の攻勢を感じ取り、受けるためにリーチをかけなかったはずである。

 この手の命は“私が親のアタリ牌を引く前に脇が打ってくれる”二巡の間だけだったのである。二巡だけ踏ん張り、命懸けで退くべきであった。

 この 四萬 を行ったら引き返せなくなる。それならばただの捲りっこと変わらない。

 私が先にリーチをかけようとも親の手牌進行が変わることはなかっただろう。
 追っかけをくらって高目を掴むか、ダマで雌伏し針穴のタイミングで退くか。
 それがこの局の結論であったはずだ。

 セオリーを捨ててまでダマに構え、そして放銃。
 そのシナリオだけはまるで意味がない。

 この手をダマにした直感の意味。
 それをもっと探るべきであった。


 さしたる情報もない六巡目。
 そこまで不利な勝負をした訳ではないが、結果は最悪の18000放銃。しかも、自分が最も警戒を高めていた相手にである。


 今日は最初に感じた自分の直感に殉じることができなかった。
    
 牌は、いつだって私に己の弱さや未熟さを教えてくれる。







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克己

 感覚を活かして打つことが正しいのかどうかは判らない。
 しかし、打ち手の仕事は最大限の集中を卓上に注ぎ、僅かな歪を機敏に感じ取ることだ。
 何かを感じ取ろうとすることの結果、卓に集中でき、それが良い麻雀に繋がることもある。


 立ち上がりの第一戦目。
 対面のお兄さんが他家の勝負手に競り勝って5200を和了し、そこから三局連続で和了をモノにした。
 次局は点棒を減らした脇のエラーとも呼べる牌で。
 オーラスの和了は打っても二着だという二番手の打牌を捕らえたものだった。
 自力で和了を創造できたのは一局のみだったはずである。 

 次の半荘、東一局。
 荘家は対面の兄貴だ。

 私は配牌から早い平和手の三向聴だったが、この局は序盤のポイントになると思っていた。


(東一局 西家 ドラ 白


一萬一萬三萬四萬五筒赤六筒四索四索五索七索八索東發   ツモ  九索


 私は手牌を進める上で、“牌の優劣”を決めておくことが多い。
 この手牌でいうと、埋まって欲しいのが 七筒 五萬 三索 という順だった。

 これは、場況や感覚から 三索六索 が一番強く、 四筒 七筒 が最も和了し辛いということだ。
 今回のケースでは各人の切り出しの情報がまだ少ないので、端牌の切り出しと、その色が場に高いか安いかぐらいの判断基準しかない。

 弱い受けや感覚的に引けないと思っているところが最後まで残った場合は、例え早い聴牌でも闇テンに構える。
 況してやこの局が序盤の剣が峰だと感じているのだから尚更だ。

 ここで兄貴に簡単に和了させると今日はしばらく持っていかれるような気がした。
 そして、最短距離での衝突を挑んだら牌勢の良い者が勝つ。
 この局は無理に主導権を握らずに“受け”から入るのが常道だ。

 従って、翻牌を絞って索子を削いで行った。


 一萬一萬三萬四萬五筒赤六筒四索五索七索八索九索東發


 自分の牌姿が良かったり早いときは翻牌など積極的に切り飛ばして行けば良い。
 しかし、和了者や聴牌者の順序を変えたいのであれば翻牌も数牌もぎりぎりまで絞るべきだ。
 ツイているときは誰だって和了れるし誰だって勝てる。だが、そうではない時間にいくつ勝負できる局面を作れるかが肝心だ。
 
 麻雀はポーカーなどの他の競技と異なり、“見”けんが認められていない。
 誰だって不利な時間や弱いカードでの勝負は避けたいだろう。

 毎局、毎巡参加の麻雀は逃げ道が無い。だが、麻雀にはその代わりに“絞る”という選択が在る。

 
 その後、立て続けに二枚有効牌を引いてきた。


  一萬一萬三萬四萬五筒赤六筒四索五索七索八索九索東發   ツモ  七筒


  一萬一萬三萬四萬五筒赤六筒七筒四索五索七索八索九索發   ツモ  五萬


 理想通りの順序で牌を引いての四巡目聴牌。
 以前であれば、頭で理解していても目の前の誘惑や道理、若さに負けてリーチと行ってしまっていたかもしれない。

 だが、綻びや亀裂はこういったところから生じるものだ。
 感情を殺してきちんと闇に構えることが出来た。

 しかし、その次巡だった。
 危惧した通り、親の兄貴からリーチが入った…。


 中二索發發二筒横   リーチ





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触発

 頑ななまでに感受性に蓋をしていた以前と違い、最近は様々な刺激を取り入れようとしている。

 少し前の話になるが、プロ野球の日本シリーズをテレビで観戦していた。
 先に四勝をした方がシリーズ優勝という争いの中で勝負を分けたのは巨人三勝、西武二勝で迎えた第六戦目だったように思えた。

 巨人の先発投手は初対戦では見極めるのが非常に難しいといわれる魔球・シンカーの使い手、高橋尚成選手。
 日本シリーズでは過去に獅子奮迅の活躍を見せ、今回も優勝請負人としてマウンドに上がったわけだが、その尚成投手が西武の若き大砲・中島裕之選手と中村剛也選手に対して引け腰のピッチングで二回を持たずして降板。その試合を落とした巨人は最終戦でも敗れ、優勝を逃した形となった。

 ポイントは尚成投手が中島選手に対して真っ向勝負を避け、四球を出したことではないだろうか。誰の目から見ても腕を振り切れていないことが明らかだった。
 確かに今回のシリーズで目を見張る活躍を見せており、存在感と一発がある強打者である。しかし、例えホームランキングであっても本塁打が出る確率は一割にも満たない。ましてや中島選手はフルスイングも侭ならない手負いの状態だったのだ。

 勝負の帰趨を決する序盤戦。
 勝負事として考えれば例え打たれたとしても、こちらが相手を畏れていることを悟られるのは避けるべきだ。
 どんな勝負であれ、自分がプレッシャーを感じていたら相手も同じぐらい苦しい。
 決して隙や弱みを見せて相手を得意にさせてはいけない。

 しかし、あれほど経験があり優秀な投手ですら相手が繰り出す幻像や圧力に屈して弱い心を見せてしまうのだ。
 改めて勝負事の厳しさを知った。


 その翌日は友人のライブを鑑賞するため、下北沢にある「mosaic」へ。
 麻雀打ちも喰えないがアーティストの世界もそう簡単に恵まれるものではない。
 だが、良い顔を見せてもらい、新たな活力を戴いた。


 翌週は第33期最高位戦決定戦の観戦へ。
 飯田正人プロ、金子正輝プロの二大巨頭と、今期Aリーグを首位で飾った佐藤崇プロ、最高位二連覇中の張敏賢プロ(五十音順)という面子だ。

 十年間、プロの世界に身を投じてこの舞台で戦うことを渇望しつ続けた崇の初挑戦。
 ここに来るまでの道中で身に付けた数々の経験と引き出しを駆使して戦う崇の姿勢を見て思った。

 此奴はこんな重圧の中で戦っているのだ。負けてられないなと。
 

 今は、自分の触れるもの全てが私を高めてくれるような気がした。







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怠慢

ドラ八

 北13五┿
 東5

 白一南2┯
 
 
 91東



 八九九ΝЛ┃┃34中中中

融合(掘

 件の手牌を成就させた翌日。
 日本プロ麻雀連盟の主催する王位戦へ。

 数あるオープン参加型のタイトル戦の中でも最大級の規模を誇る同大会。
 私はプロ枠の中で一番下のプロ予選からの参加となった。

 一発・裏ドラ無し。オカも無しで、ウマが5−15の王位戦ルール。
 140人で半荘5回戦を行い、28人がネクストステージとなる本戦に進むことが出来る。
 通過率は実に五分の一。ちょっと他には類を見ないほど過酷な予選である。
 
 だが、タイトルを目指す上で大した問題ではない。
 どうせ頂点に立てるのは一人なのだから。

 自分を表現するために麻雀プロを生業としている。
 シードが無かろうが出場できる大会はエントリーをするし、通過率に不満を漏らす気は一切無い。

 だが、通過のボーダーは50p近くまで跳ね上がることが予想された。これはトップ二回分弱に相当する。
 この高い設定のハードルと、50分打ち切りルールという時間制限が思いのほか私を逸らせた。


 一回戦目。
 早いリーチを二つ空振りした。


 三萬四萬五萬二筒二筒二筒三筒四筒五索五索五索發發


 二筒二筒三筒三筒四筒四筒七筒八筒九筒一索一索五索六索

 
 これが私の焦りに拍車をかけ、供託と積み場を獲りに行くために再び和了れないリーチをかけせられた。
 愛の無い闇雲リーチがことごとく流局し、悪戯にエネルギーを使った私は今さら後に引くことが出来なくなっていた。

 それでも何とか門前でプレッシャーをかけ続けたことが幸いし、相手のミスから親番の三本場で和了をものにすることが出来た。


(東三局 東家 ドラ 八筒


一萬二萬三萬二筒二筒七筒八筒九筒五索五索六索六索七索   ロン  四索


 この後も強引な攻めを咎められることは無く、一回戦は+38pのトップで終了。
 だが、こんな場当たり的な麻雀で良いはずはない…。

 押し引きも何も無い。
 ただ、牌勢と少々の和了力で押し切っただけだ。

 次戦は運任せの乱打戦で負け目を引き、一回戦のトップを帳消しにするラスで終わった。


 ここで私の戦いは終わったに等しい。
 今日、勝ち上がれるかどうかは判らない。
 出切ることならばプロ連盟の猛者たちや、現王位である若き旗手、タッキーこと滝沢和典のステージにまで辿り着きたい。

 しかしこんな大事な舞台で自分の麻雀を打つことが出来なかったのだ。
 何かの本で読んだことがあるが、人は想いを強く持ったりそれに向かって努力をすればするほど、そのぶん敗北のプレッシャーが心の中で芽生えてしまうらしい。心理学でいうところの「努力逆転の法則」というやつだ。

 席を立ち、短い休憩の間で自分自身に言い聞かせた。
 何度、同じ過ちを繰り返せば気が済むのかと。
 気負いを捨て、自分の打ち方を取り戻すんだ。

 刀を高く構え、重く、時に鋭く振りぬくために、自らの間合いで戦うこと。
 自分の麻雀を貫き通した上でポイントや時間が足りなかったらそれは仕方が無いじゃないか。

 気を取り直し、自分のフォームで打つことだけを考えて三回戦目の卓に座った。
 すると東ラスで一つ染め手をものにし、放銃無のままトップで終えることが出来た。

 次戦は浮きの二着で終了。
 結果はたまたまだが、自分が納得の行く戦いが出来ている。


 最終戦、二着条件で臨んだ半荘。
 序盤のジャブの応酬を制し、微差のトップ目に立った。

 しかしそこからダマの6400に放銃し、ラス目が二着目から18000を和了って私は三着に転落した。
 放銃をした6400はほぼ仕方の無い牌の巡りだった。
 これは二回戦の無駄な放銃とは違う。


(東三局 ドラ 中


 五萬六萬八萬八萬八萬七筒八筒九筒東東東中中   ロン  七萬


 最期まで粘ったが上位陣を崩すことが出来ず、私は34000点の三着で終了した。


 第34期王位戦は見事一次予選での敗退となった。
 あんな麻雀を打っているようでは当たり前である。
 だが、三回戦目以降は良い麻雀が打てた。

 理論と感性、そしてそれをどんな状況でも発揮できる精神的な強さや余裕。
 それら全てを磨き、融和させることで強さというものが出来上がって行くのだろう。








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融合(供

(東四局 南家 ドラ 一筒


 五萬赤六萬一筒二筒三筒二索二索二索三索三索四索六索七索   ツモ  三索


 聴牌効率と二着への条件クリアのために最適な打牌は打 四索 だ。


 五萬赤六萬一筒二筒三筒二索二索二索三索三索三索六索七索


 四萬 七萬 五索 八索 五萬 六萬 六索 七索  8種28枚の一向聴である。

 
 私は遊びの打牌というものを一切しない。
 というよりも麻雀を初めてから一度もしたことがない。

 例え十万点持っていようが、卓上に何も懸かっていないとしてもそれは変わらない。
 牌の道を選んだあの時から、常に麻雀に対して敬虔であり続けなければならないという強迫観念のようなものに駆られている…。
 
 そんな自分がセオリーに反する選択をした。

 
 どう、形容したら上手く人に伝わるだろうか。

 索子の入り方に何か感じるものがあったというのではない。
 ただ、ラス目がかぶった二枚の 七萬 を見たときから感じていた。

 正確には判りきったことだから最初から決めていた。

 この 四萬 七萬 は埋まらないと。


 何の躊躇も無く 六萬 を打ち出した。


 五萬赤一筒二筒三筒二索二索二索三索三索三索四索六索七索


 次巡の自摸で 四索 が滑り込んできた。電光石火の速さで牌を抜き、リーチを打った。


 一筒二筒三筒二索二索二索三索三索三索四索四索六索七索   リーチ


 脇から出たら見逃さざるをえない2600リーチだが、私は自分の勝利を予感していた。 

 五索 八索 は場況的に優秀な待ちだ。この待ちを自摸ってくることは判っている。
 そして難関の 四索 が埋まってのリーチである。
 
 若しも 五索 八索 よりも先に 四萬 七萬 を引いてくるようであれば、それは私が牌を置くべき時かもしれない。


 手出しで赤入り塔子を掃った私の捨て牌を他家が訝しげな表情で見つめている。
 各人の切り出しも慎重だ。
 オーラスの三着目からのリーチとあって、場の緊迫状態は最高潮に達している。

 そして、三巡後。
 ラス目の対面が手の内から 四萬 を四枚晒して暗槓をした。


 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏  裏四萬四萬裏


 私の予感は確信に変わった。
 親指に広がる索子の模様を確認し、静かに自摸牌を手牌の横に置いた。


 一筒二筒三筒二索二索二索三索三索三索四索四索六索七索   ツモ  五索


 槓裏が三枚乗り、跳満の和了となった。
 遠目で後ろから見ていた後輩が目を見張りながら、残り二枚の 七萬 は上家に対子だったことを告げてきた。


 今日は今までに体得した経験を活かし、一つ良い麻雀が打てた。
 だが、感性と理論を融合させるためにより大事な要素が存在することをその翌日に教えられることとなった。





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理合

 お

融合

 麻雀の極みは“理論”と“感性”の融合だ。

 十何年ものあいだ毎日のように牌を握り、麻雀のことを想い続けている。
 全ては己の感性を徹底的に磨くためである。
 
 牌に対する感覚と実戦での対応力。
 日々ひっきり無しに訪れるシーンは、掛け替えのない数々の引き出しを私に授けてくれた。


(東四局 南家 ドラ 一筒


 五萬赤六萬二筒三筒二索二索二索三索三索四索六索七索北 


 よく周囲に誤解されるが、私は流れ一辺倒論者ではない。
 当たり前のことながら牌理やデジタルといった類の考え方を取り入れて作戦を立てている。

 「曲学阿世」という言葉がある。

 これは真理と異なる説を唱えて世間や大衆に気に入られようとすることである。
 例えば、敢えて定石やセオリーに反する采配をしたり、無為な根拠で奇を衒った策に走ってたまたま成功した際に得意顔になるというものだ。

 毎年毎年、気が遠くなるような回数を打つ中で成績を残そうとしている。
 基本的な牌理や損得勘定を疎かにするようでは一年も持たないだろう。


 上掲の手牌だが、現在三着目の私は二着まで3600点差、トップとは13300点差だった。

 ウマが20000-40000点の東風戦である。
 オカの20000点を加味すると、順位点は60000-20000-20000-40000点となる。
 ちなみにウマが10000-30000の東南戦の場合は、50000-10000-10000-30000点である。

 この数字の並びを見れば一目瞭然であるが、所謂2-4の東風戦の場合はどの着順間も順位点の差が均等なのである。
 ここで特筆すべきは二着からのトップ昇格と三着転落の順位点差が同じという点である。
 東南戦よりもウマが大きく、ラスに転落するようだと60000点も上下で違ってくる。
 従って、二着維持若しくは二着を獲ることに非常に価値が出てくるのだ。
 

  五萬赤六萬二筒三筒二索二索二索三索三索四索六索七索北   ツモ  一筒


 六巡目にドラが埋まり、3900の一向聴となった。
 トップ者へは跳満自摸若しくは満貫直撃が必要だ。

 四萬七萬五索八索 。どちらが入っても闇に構える。

 トップを獲るために自摸って一発や裏一条件のリーチをかけるぐらいなら出和了二着を取りに行く。
 リーチをかけるのは出和了や自摸った時点でトップ条件を満たす場合のみだ。
 全体的な展開や並びを作為的に操作したい緊急の局面でもない。


 勝負事とは自分の信条を機械的に徹底できるかどうかだ。
 

 戒律のように自分に言い聞かせながら次の自摸牌を持ってきた。
 その刹那、恐ろしいまでの速さで私の脳の中に或るイメージが広がった。

 一局あたり十巡あるとしたらその一巡一巡に牌の廻りが存在する。
 誰かが信じようが信じまいが関係無い。
 今日まで刻んできた何百万という局面が私の感性を働かせて奇跡的なイメージを実現させることが出来た。


 五萬赤六萬一筒二筒三筒二索二索二索三索三索四索六索七索   ツモ  三索







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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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