プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2009年07月

落日(掘

 
 終わった、とういうことなのだろうか…。


 いや、こんなことぐらいで終わる訳はない。
 それは判っている。

 だが、生まれて初めて疑いを持った。

 今日までの俺の戦績は幻かなにかで、もう一生通用しないんじゃないのだろうかと。
 この途轍もなく長い日々は所詮、麻雀打ちを気取っている安い男の夢物語だったのかもしれない。


 夜も明け切らぬ朝の五時。
 部屋までは三駅ほどあったが歩いて帰った。負けたときはとてもタクシーに乗る気にならない。


「もう、やめようか…」


 別に誰が見ている訳でもないし、誰かが褒めてくれるわけでもない。
 何のために俺は強さを追い求め続けるのだろう。

 
 誰よりも強く成りたかった。
 だが、俺はいつだって他の誰よりも弱い人間だ。


 目抜き通りから一本入った閑静な住宅街を歩いていると、朝帰りらしいカップルか若い夫婦がタクシーから降りてきた。犬のエサがどうのと談笑を交わしている。
 
 瀟洒な一戸建ての家の門にさしかかったとき、二人がこちらへ視線を向けてきた。
 今にも死にそうな貌をした、汗だくの男は彼らの目にどう映ったのだろう。

 だが、彼らの興味を惹くことはなかった。私は誰かに何でもいいから声をかけて欲しかったのかもしれない。


 そんなことを考えながらただひたすら道を歩いた。


 頭の中を巡っているのは負け牌姿と絶望感だ。しかし、先刻の夫婦のことが何故か妙に頭に残った。

 私にも今と違う生活が送れないわけではない。
 毎年毎年、卓上で神経をすり減らしながら自分の数字と戦うだけが私の人生ではない。


 ずっと戦い続けてきた。勝てるように努力し、想いを切らさぬようにしてきた。
 それは、私がとても弱い男であることの証だ。

 私は、麻雀で勝てない自分を受け入れられるほど強くない…。



 部屋に着き、シャワーで汗を流した。
 
 四の五の言っても、どうせやるしかない。
 泥のような眠りから覚めれば、また戦いの活力を取り戻しているものだ。

 そう言い聞かせながらベッドに深い口づけをした。










ブログランキング グレー
 blogランキング  
 













落日(供

 
 (南二局 北家 ドラ 一萬


 二萬三萬七筒八筒九筒一索二索三索五索赤六索七索白白   リーチ



 薄唇を噛み締めながら山に手を伸ばした。

 持ってくれば、何かが変わる――。

 絶頂期を、思い出せ。

 欲しい牌を、どんな牌だってここ一番で引いてきたはずだ。
 だから今日まで勝ち残ってきた。


 しかし、振りかざした右の腕は虚しく空を切るばかりである。


 ラス目の親が一牌を持ってきて暗槓した。
 

 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏    裏四萬四萬裏


 四萬 はもう無くなってしまったが、ドラが対子で持たれている感じは無く、この暗槓で私は逆に 一萬 を持ってくることへの期待が高まった。

 新ドラ表示牌には紅中が捲れている。


 だが、喜びも束の間、お約束のように親から追っかけが入る。
 
 ここだ、このタイミングで引けば世界の全てを変えることが出来る――。

 勝負の最中に祈ることはしない。全ては自分で選んだ道だからだ。
 だが、己の右腕以外に縋りたくなるほど苦しい。


 勝ちたい。

 だが本当は勝てないことは知っていたし、親リーに畏怖していた。
 そして、ビビらせれている自分が情けなくなった。


 萬子は萬子だが 五萬 を持ってきた。


 親は 八萬 を捨てている。暗槓が 四萬 なのでこれは通るだろう。


 否、そんなことは関係ない。
 私が失策を犯す。そしてヘボをかした。

 親から追っかけが入る。
 スジだろうがノーチャンスだろうが、私が一発で持ってきた牌が親の当たり牌なのだ。



 五萬五萬赤四筒五筒赤六筒三索三索四索五索赤六索   ロン五萬    裏四萬四萬裏



 結局その半荘もラス目を突き抜けてデカいラスを喰らった。



 連日の負け試合による疲労と、それを補填しようと過剰な半荘数の戦い。
 それらを誤魔化すために飲んだ酒による体調不良。


 全神経を使い果たした私は、次の半荘でチョンボをした。
 それは今月に入ってから二度目のことだった…。








 lead to the next chapter...








 


 

ブログランキング グレー
 blogランキング  
 










落日

 深夜のセットに出掛けるため、いつもと全く逆の時間帯に家を出た。


 私は勝負の場には無心で臨むように心がけているが、昔から何故かこの部屋を出るときが最も緊張する。

 マンションのドアノブに手をかけ、様々なイメージが頭に浮かんでくる。
 今日の面子のこと、展開、そしてトータルでの浮き沈み。

 じっとりとした暑さが残る駅までの道を歩きながら、さらにそれを膨らませて行く。

 
 鼻腔をくすぐる草木の香り、すれ違う酔っ払いたちの嬌声。
 そんな夏の夜の匂いを嗅ぎながら、思わず神妙な顔つきになる。

 ここ最近の冷え込みが嫌が応にもマイナスなことばかりを想像させるのだ。


 この日も開始から六時間ほど、面白いように対面と上家が交互に和了を重ねる。
 ならば、と思いガードの緩い下家を突き落とそうと試みるが、その下家が馬鹿みたいに高い手を炸裂させた。

 この卓上で起こりうる全ての不幸や不条理が全て自分に降りかかっているかのような錯覚に陥る。


 折り返し地点を過ぎたというのに、私はまだノートップという状況だった。


(南二局 北家 ドラ 一萬


三萬七筒八筒九筒一索二索三索五索六索七索八索白白   ツモ  五索



 親番が落ちた三着目。上の二人とはかなりの開きがある。
 巡目はまだ6巡目だが、場には吹かした 白 が二枚見えている。


 意味の無い聴牌を選択する状況ではない。
 何の躊躇もなく、 五索 をそのまま自摸切った。

 
 次巡、ねっとりとした感触が指先に走る。


  三萬七筒八筒九筒一索二索三索五索六索七索八索白白   ツモ  五索赤


 こんなものだろうな…。
 そう思いながら黒と入れ替える。


 バタ、バタ、と立て続けに 二萬 が切られたところで、ドラを引いてきた。



 三萬七筒八筒九筒一索二索三索五索赤六索七索八索白白   ツモ  一萬


 リーチは、打てない。
 白板も枯れている。


 あくまで索子の伸びに頼るか、はたまた聴牌を取るならば出和了の利くチャンタの手替わりも考え、打 五索赤 なんて選択もある。


 少考して、ドラを自摸切った。 
 索子と三萬 のくっつきで、という方針を選んだことになる。


「畜生目――」


 次に持ってきた牌は嵌張ずっぽしというやつだ。


 三萬七筒八筒九筒一索二索三索五索赤六索七索八索白白   ツモ  二萬



「リーチ――」


 先月に入ってから朝から晩まで、何百回と起きているチグハグな巡りだ。
 この状況を打破すべく、私は静かに千点棒を置いた。














 lead to the next chapter...













ブログランキング グレー
 blogランキング  
 











舞台

 新たな領域に踏み込もうと、様々な試行錯誤を繰り返して戦い続けたピンツェリーグ予選最終節。

 2、2、1、2着で迎えた最終半荘。
 別卓の和田聡子プロとの着順勝負で競り負け、決勝へ進むことは出来なかった。


 結果に満足はできないが、納得はしている。
 全体を通して酷い放銃をいったい幾つ犯しただろうか。こんな麻雀を打った奴に決勝に残る資格はない。


 第一節目で近藤プロに一発で打った満貫。これは勝ち目の薄い三色聴牌で押した結果だった。
 そして次局に振った和田プロへの満貫。先行リーチを追っかけられての一気通貫であった。


 第二節で国士無双を放銃したばかりの土田プロへの門前ホンイツ。これは勝てると踏んだ三色含みのリーチの結果であったが、ドラが暗刻で12000の失点。
 そしてその次が悪かった。三者に攻め込まれてオリ打った福田プロへの親満。安易な対子落しがメンホン七対子の餌食となった。


 第三節では近藤プロに2900を放銃した次局、親リーに一枚切れのダブ東を切ったところ、これが裏三で18000の打ち込み。
 さらに、次局に連荘中の近藤プロに八巡目聴牌の門前ホンイツを放銃。
 最終の五回戦でも和田プロの門前ホンイツリーチに打ち込んで親満の失点。


 第四節も二半荘目に大きく箱を割るラス。
 水巻プロに8000オールを自摸らえた次局、土田プロの闇テン満貫に放銃。南場には手塚プロに満貫を放銃。
 最終半荘もオーラスの二着目から小林プロにリーチの2000点、五巡目のタンタオ隠れドラ暗刻の12000を打ってラス。


 第五節は初戦、近藤プロのリーチに満貫を放銃。 


 言い訳ではなく、今までと異なる読みや仕掛けを入れることによって押し引きのバランスを失っていた。そして街の勝負でも顕著に出ている通り、十年に一度の落ち目で、テキの当たり牌が集中する尋常ではないツキの無さでもあった。

 それでも稚拙で未熟の一言に尽きる。
 強者ならば、私の知るあの強者たちならば絶対にこんな麻雀にはならなかったはずだ。


 だが、勝負手を仕上げきったり、感性を活かした和了を創造できたりした局面も多々あった。そうでなければあれだけ打ち込んで浮いている訳はないのだが…。


 五年間、全てをフリーの戦いに捧げてきた。
 その後の四年、競技の門を叩き、各団体の精鋭や業界の猛者たちととことんやり合った。
 そして三年間、野に再び降り立って東風戦を飲み込もうと戦い続けた。


 そして、いま競技ルールで自分のベストのバランスを探すこと決めた。
 この試みが何年かかるかは判らない。


 ある程度納得できるもになるまでに三年から五年はかかるだろう。
 そしてそこからきっと何十年と破壊と創造、そして進化の繰り返しだ。


 常に迷い、悩み、戦い続けるはずだ。


 だが、その初陣となったこのピンツェリーグは私の中で掛け替えの無い舞台となっている。






---------------------------------------------------------------------------------------------


[ピンツェリーグ 第五節終了時 (25/30半荘)]

                              
        (今節)   (トータル)
水巻  渉     -39.5    +180.7
小林 剛     -8.1    +152.4
土田浩翔    −39.9      +90.2
和田聡子     +101.4     +86.8
吉田光太     +69.4      +32.6
福田 聡     +102.9      +29.2
手塚紗掬     -141.5     −299.1
近藤誠一    −44.7    −272.8


上位四名が決勝(第六節)へ進出


[次回 開催日時]


第6節(決勝戦) 8月28日(金)  14時00開始




[会場]

マーチャオ新宿店 4階室


*観戦は自由ですが、観戦のルールをお守り頂きます。
 また、会場が貸切ではないため充分なスペースがない場合があります。ご了承下さい。


---------------------------------------------------------------------------------------------






ブログランキング グレー
 blogランキング  
 











混沌(掘

 上手く酔える訳もない酒に溺れる日々が続く。
 酩酊しようが素面のときであろうが頭の中を廻っているのは麻雀の戦績だけだ。

 牌を握っては負け、口をへの字にして家路に着くという日々を繰り返す。
 

 麻雀で凌ぐと言えば聞こえは良いが、並大抵の戦績で成り立つものではない。

 そう大差の無い戦術や牌効率で戦っている者を相手に、台とは到底釣り合いの取れない寺銭(場代)を払って行かなければならないのだ。


 私は自分に“数字”という足枷をつけて戦うようにしている。
 それは、街の麻雀であれば半荘にして「9p〜10p」浮くことだ。

 半荘戦を月に300回打つのならば月に+3000p。
 東風戦なら2ゲームで1回として、400ゲームで2000p。


 これに台を掛けたものが戦績となる。
 フリーを主戦場としているときは年に35000p以上、セットを主戦場とするならば半荘10回戦を年に100回開催したとして10000p近く浮かなければならない。


 毎年、毎年。
 18のときから10年以上この数字を守ってきた。
 化け物のように強い打ち手もいたし、熾烈な環境もあった。


 麻雀で凌ぐ上で、“負ける”ということは認められない。
 街の麻雀を一ヶ月打って1500pしか勝てないということも赦されない。
 仮に1000pしか勝てない月が三月も続いたら、ほとんどの麻雀打ちがパンクするのではないだろうか。

 また、前年よりも下の数字で終わるということも我慢ならない。

 
 人格や感情を破綻させる必要がある。


 負けるというのは自分の人生が全て否定されるということだ。
 今日まで身に付けた技量や、共に戦ってきた好敵手の強さも汚してしまうことになる。
 
 銭金の問題ではない。
 そんなものは後で寝ずに働けばどうとでもなる。


 
 今のこの無間地獄のような状態を打破する術を、私は一つだけ知っている。
 長い戦いの経験の中で得た、あまりにも基本に忠実な方法だ。
 
 私の自我がそれまで持ちこたえられるかどうか。
 その辺りに懸かっている。











ブログランキング グレー
 blogランキング  
 











混沌(供

 19半荘目の出鼻。

 起ち親の私からは 三萬 が二枚 、そして 七萬 が四枚見えていた。



(東一局 東家 ドラ 六索


 二萬四萬五萬六萬七萬九萬五索五索赤六索七索七索八索八索   ツモ  九索


 更に、萬子は 四萬 も三枚見えており、萬子の一〜四で塔子ないし面子を作っている者は皆無と思われた。


 しかし、萬子が先に埋まらずに、役無しの方を引いての嵌張聴牌。
 今の私の趨勢を現わしているのだろう。

 自信のある上の嵌張に取る。
 無論、リーチはかけない。状態が悪いときの空振りほど下降を助長するものはない。

 次巡、裏目の 三萬 を引いてくる。


 四萬五萬六萬七萬九萬五索五索赤六索七索七索八索八索九索   ツモ  三萬


 ここだな…。
 そう思い、いつもの速さで鞘から刀を抜いた。


「ポン――」


 私のリーチ発声に西家の声が被さる。
 やや躊躇しながら私の宣言牌を叩いた。

 そして、上家が山から持ってきた 八萬 を自摸切る。
 
 強張った表情で私が間を置く。
 何処からも声はかからない。


「もらった――」


 読み通り 八萬 は山生きのようだ。
 この 二萬五萬八萬 は間違いなく自摸れる。そろそろ風も変わる頃だろう。


「自摸――」


 案の定、すぐにその牌は居た。


 三萬四萬四筒五筒赤六筒西西發發發   ツモ  二萬  九萬九萬横九萬

 

 手を開いたのは私の宣言牌を叩いた対面。
 どうやら一発自摸の牌を喰いとったようだ。


 朝から晩まで、笊に穴が開いたかのように点棒を吐き出し続ける日々。
 こんな戦いが二ヶ月も続いていた…。













 lead to the next chapter...





















ブログランキング グレー
 blogランキング  
 


混沌

 ラス前、ドラは 三索


 二萬二萬三萬一筒二筒三筒七筒八筒八筒九筒九筒一索二索   ツモ  三索


 余剰牌となる 三萬 はリーチの現物だが、萬子の一色手で押している親に勝負を預けるため打 八筒 とする。

 点箱の中に青棒しか残っていない私はオーラスの親番に一縷の望みを託すしかなかった。
 幸いなことに筒子の上は双方の現物であり、萬子にくっ付ければ形テンぐらいは取れるかもしれない。

 と、そこへリン牌の 九筒 が入ってくる。


 二萬二萬三萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒九筒一索二索三索   ツモ  九筒


 高目の 一萬 はリーチの現物だ。
 倍満の誘惑に打ち克つことが出来ず、背徳の思いで踵を返す。

 目を瞑りながら 二萬 をそっと河に滑らせた。


 何処からも声はかからない。

 すると、親が手出しで場枯れの字牌を打ってきた。
 まだ聴牌はしていなかったようだ。ここからが捲り合いか。

 
 次巡、かつての和了牌であった 七筒 を自摸切る。
 やおら、それまで全く音無しだった西家が手牌を倒す。



 六萬七萬八萬六筒七筒七筒八筒三索三索三索六索七索八索   ロン  七筒


 何処が入っても手替わりをしたであろう仮テンに放銃。

 
 ただ、牌に凌辱されるためだけに卓に座り続けているかのような錯覚にすら陥る。


 朝から大ガミを喰い続けてようやく連に絡んだ次の半荘。
 このゲームは大事に行こうと決めていた。


(東家 リーチ ドラ 五筒


 九索白八筒三索横   リーチ


 
(南家 ドラ 五筒


 四萬七萬四筒五筒二索二索三索四索四索九索九索白北   ツモ  三索 
  


 いま入ったばかりの一盃口から中抜きしようかとも考えたが、流石に消極的すぎると思い、場イチの 北 を放ると親が勇んで手を倒す。



 五萬赤六萬七萬一筒一筒三筒四筒五筒赤八筒八筒八筒北北   ロン  北


 裏ドラ表示牌に 西 が捲れて、立て直しを誓った二分後に負け試合が決定づけられる。


 それでもエラーだけは犯すまいと耽々と最善の選択を繰り返す。
 波の荒い東風戦ではないのだ。

 比較的穏やかなルールの半荘戦。
 顔を上げなければ必ず浮上のチャンスはやってくる。


 そう信じ、19半荘目に臨むため四散した点棒を原点に揃え戻した。













 lead to the next chapter...













ブログランキング グレー
 blogランキング  
 











QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ
プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/





第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
VS研究会 第7期、第8期連覇中


bnr_kingdom200x200


















麻雀 ブログランキングへ







連絡先



bnr_asami





bnr_hanamura






bnr_nozoe





bnr_emori





bnr_hazuki





bnr_mikoto





bnr_hinata






bnr_ishii





bnr_sugawara





bnr_higuchi






アクセスランキング
アクセスランキング