プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2009年08月

告知

 4月から行っていたピンツェリーグの決勝戦が8月28日(金)に開催されます。
 決勝の面子は水巻渉、小林剛、土田浩翔、和田聡子プロの4名です。

 観戦自由となっていますので、興味のある方は是非観にいらして下さい。


 宜しくお願いいたします。




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[ピンツェリーグ 前期決勝戦 開催日時]


 8月28日(金)  14時00開始 半荘五回戦



[会場]

マーチャオ新宿店 4階室


*観戦は自由ですが、観戦のルールをお守り頂きます。
 また、会場が貸切ではないため充分なスペースがない場合があります。ご了承下さい。



[決勝メンバーおよび持持ち越しポイント]

                              
            (トータル)
水巻  渉      +180.7
小林 剛      +152.4
土田浩翔       +90.2
和田聡子       +86.8



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設問

 
 親番の手牌。
 ドラは 三筒 です。

 345の三色が見える手であり、聴牌を取るとなるとあくまで仮テンということになりますが…。

 皆さんだったらどうしますか?



(東一局 東家 5巡目 ドラ 三筒













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雀豪列伝[7] 鬼才(察

 
 捨て牌も三段目に差し掛かり、私と二着目はベタオリに徹していた。
 南家もなかなか自摸れない。やはり南家の手は高く、悪い待ちなのだろう。

 あと三巡――。
 というところで奴が来た。


(南四局 西家 ドラ 九索:麻雀王国


 九筒:麻雀王国北:麻雀王国西:麻雀王国一萬:麻雀王国五索:麻雀王国七索:麻雀王国
 發:麻雀王国二索:麻雀王国二索:麻雀王国七萬:麻雀王国八筒:麻雀王国三索:麻雀王国
 東:麻雀王国東:麻雀王国三筒横:麻雀王国  リーチ  リーチ


 
 残りの自摸は僅かに二回。

 劇画のようなふざけた一撃を決めようと言うのだろうか。
 豪気なのは結構だが、その巡目でしか追いつけないような手でラス目のリーチに押すなんて凌ぎを舐めすぎだ。

 今夜は完封できっちり仕上げてやる。
 そんな風に思いながらも、ラス目のリーチ棒を入れて出和了は6400以上、自摸の場合は1300・2600以上と、私は奴の条件を頭の中で反芻していた。


 一発目――、奴が静かに牌を自摸切る。
 記念リーチの牌がそうそう居てたまるか。


 だが、奴の目は全く諦めていなかった。
 気合とともに少し上気しているのか、目の淵に赤みが差している。


 その目は、あの日私が見たいつかの少年のものであり、そこにより情熱的な炎が加わっていた。


 夢を追い、自摸の輝きを高める――。
 混沌としたこの世界で私が自分の理として決めたことを、奴は誰よりも追い続けた。

 
 大塚の自摸には高貴な華がある。


 そして奴が黄金の左腕を振りかざして最後の自摸を引き寄せた。
 

 
三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国五萬:麻雀王国五萬:麻雀王国一筒:麻雀王国一筒:麻雀王国八索:麻雀王国八索:麻雀王国八索:麻雀王国   リーチツモ 一筒:麻雀王国



 幾度となく見せられた劇的な光景を前に、私は思わず奴とのメクリ合いの歴史を思い出していた。


 奴の引きが強ければ強いほど、それに負けじと倍の力で自摸り殺してきた。
 その翌日はこちらが完膚なきまでにヤラれたりと。


 私たちの青春は異常な環境と精神状態だった。
 だが、そんなかけがえの無い好敵手が私を成長させ続けてくれた。


 卓を抜けた奴に一言だけ言葉をかけた。


三萬:麻雀王国五萬:麻雀王国 を持ってきたらどうするんだよ? リーチをかけたら暗カンできないじゃん」


「忘れてた! リーチのことしか頭になかったんで」

「相変わらず頭が悪いな…」

「頭は悪いけど、サシ馬のカウントは忘れてませんよ――」



 それからしばらくして、彼が堅気の仕事に就くので麻雀からきっぱり足を洗うと伝えてきた。
 応援はしてみる、と伝えて彼を送り出した。


 しかし結局この道に戻ってきたと思ったら再び社会に復帰したり、はたまた私の後を追ってプロの世界に入ったりと。
 磊落な性格と生活は変わってはいなようだ。


 最近は麻雀業もプロも完全に廃業し、ようやく落ち着いたと聞く。
 やはり、彼が過剰なまでに奔放なだけであって――。


 私があの日の言葉を後悔する必要は全く無いのだ、と最近になって思うようになった。















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好転


 上家から切られた をスルー

四萬五萬六萬五筒五筒赤七筒七筒四索五索赤六索東東中

雀豪列伝[7] 鬼才(此

 厚みのある店のカーテンも閉ざされた、ある深夜の戦いだった。
 対面に座る奴と私はサシ馬を握っている。

 本来はご法度の行為なので、脇の客にその事は伝えていない。


 オーラス、私の親番。
 トップ目は南二局で倍満をモノにした私で、三着目の奴とは7100点離れている。


 私は早々に紅中を引っ掛けて、嵌張で聴牌を入れていた。


(南四局 東家 ドラ 九索:麻雀王国


二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国七筒:麻雀王国七筒:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国二索:麻雀王国四索:麻雀王国  中:麻雀王国中:麻雀王国中横:麻雀王国


 波風が立つ前にスッと和了たい。
 あまり時間をかけると対面のリーチ馬鹿にチャンスを与えてしまう。

 しかし私の和了牌が出ないまま場は進み、十一巡目にラス目の医大生崩れがリーチときた。


 八索:麻雀王国二筒:麻雀王国四筒:麻雀王国一萬:麻雀王国五萬:麻雀王国東:麻雀王国
 六筒:麻雀王国白:麻雀王国五索:麻雀王国一筒:麻雀王国二萬横:麻雀王国  リーチ  



「自摸ってしまえ――」


 そんな淡い思いで自摸山に腕を伸ばすが、持ってきたのはあろうことか生牌のダブ南だった。


 

二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国七筒:麻雀王国七筒:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国二索:麻雀王国四索:麻雀王国  中:麻雀王国中:麻雀王国中横:麻雀王国     ツモ  南:麻雀王国


「ラス目のリーチにこの牌で打ったら…。最低、8000。いやハネ満あってもおかしくはない」


 奴と二着目の河に視線を走らせる。
 二人とも手が遅そうだ。


 ドラも赤も見えていない。ましてやこちらは嵌張での聴牌。

 私は未練を断って 二萬:麻雀王国 を抜いた。


 これで私の和了は消えた。
 大塚がラス目のリーチに追いつき、メクリ合いに勝ってトップを奪うこともあるだろう。


 しかし、半荘もサシ馬もこれっきりという訳ではない。
 ここでオリるのが私のフォームだ。


 二巡後、医大生崩れが 南:麻雀王国を自摸切った。
 そして続いて大塚が 三索:麻雀王国 を自摸切る。



 いや、これでいい。
 別にダブ南がアタりそうというだという理由でオリたのではない。
 
 南一枚は勝負できても、他の牌は行けない。
 分の悪い、強引な押しは次以降の半荘も歪めてしまう。
 
 これでいいはずだ。


 私は表情の揺れを奴に悟られぬよう、そう自分に言い聞かせた。








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雀豪列伝[7] 鬼才(后

 
 この世界は自己管理が物を言う。

 酒や博打で身を崩す人間を嫌と言うほど見てきた。
 いや、そもそもがそういった経歴を持つ人間の集まった業界と言えなくもないのだ。

 退廃的な生活を送りながら麻雀で勝ち続けるというのは不可能である。
 
 最初は誰だって腕に自信を持ち、給料をたくさん持って帰ろうと己を奮い立たせて働き始めたはずだ。
 しかし、麻雀で勝ち残れるのはほんの一握りだし、自分に甘い人間の集まりである。


 一度気持ちが離れた者は仕事でも杜撰な業務を繰り返し、体たらくな戦績で満足するようになってしまう。


 私がその辺りにシビアなのは誰よりも知っているはずだ。
 分不相応な麻雀には手を出すなと言ってきた。


 その私に金の無心をしてきたということは、よほど抜き差しならない状況なのだろう。


「高い麻雀で穴でも開けたの?」

「いえ、ちょっと――」


 口を濁す奴に、私は麻雀の負け以外なら話を聞いても良いと伝えた。
 もしも麻雀から生じた債務ということであれば、それは自分でケツを拭くべきだ。


「実は知人の彼女とデキてしまって…。彼氏から身を隠したいんで、生活費なんかが入り用なんです」


 私は思わず笑い飛ばして、夜に5点だけ持っていくと伝えた。


 実は彼がこの道を選んだときに、私にはある気がかりがあった。
 それはあまりに麻雀だけにのめり込み、早く人格を破綻させてしまわないかだ。

 青春期には実社会で様々なことを吸収するものだ。
 金や生活の自立であったり、学校や職場での人間関係を構築する必要性だったりと。


 奴は17歳からこの業界しか知らず、他の事を知る前にあまりにも麻雀に傾倒し過ぎた生活を送っている。


 煙草や酒や女だっていい。
 そういった娯楽よりも先に、麻雀で凌ぐことだけを覚えるのはあまり褒められた手順ではない。


 だが奴は元来の奔放さを失うことはなかった。
 私の杞憂などよそに、スロットをやったり仲間とツルんで遊んだりと普通の青春も謳歌していた。


 そうやって三年、いや四年が経った頃だったろうか。
 全ての打ち手がそうだったように、彼もまた私を置いてこの道から卒業する時期がやってきた。













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雀豪列伝[7] 鬼才(検

 
 500夜、1000夜…。
 いったいどれだけ共に打ち合っただろう。

 当時の私はといえば12時間番が終わった後にセットを組み、休みの日でも客打ちで必ず牌を握っていた。
 それこそ眠っている時間以外は、ずっと奴と顔を会わせていることになる。


 奴は相変わらず門前を身上としたインファイトで戦い続けていた。
 しかし、良くも悪くも攻撃一辺倒でトップかラスかという麻雀だ。


 満貫を二局連続で放銃して、親ッパネを自摸り返す。
 そして天才の気まぐれなのかどうか判らないが、集中力や麻雀の出来にムラがあり、必ずどこかでポカを犯していた。


 それでも圧倒的な戦力を誇る左腕で勝ちを刻む。


 ある月、奴がテンゴの麻雀を一ヶ月打って17万円ほど勝った。
 おそらく場代が10万円を少し超えるぐらいだが、それを差っぴいても立派な戦績だ。

 それまで店のレコードは私が持つ16万円だったので、私としては心中穏やかではない。


 その店には他にもベテランのメンバーや強い打ち手がいたが、まだ21と19歳の私たちは打ち盛りの時期だった。


 その翌月に今度は私が20万円勝って、奴がまたそれに追いすがる。
 そんな繰り返しだった。


 そんなある日、深夜に奴から電話がかかってきた。
 店に行けば顔を合わせるというのに一体なんの用だろう。

 そんな事を思いながら電話に出ると、奴が弱い声で珍しいことを言い出した。


「ちょっとお願いがあって…。十万円、いや五万円で良いので回してもらえないでしょうか?」



 私も色んな人間をこの業界で見てきた。
 咄嗟に様々なイメージが私の頭をよぎる。










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雀豪列伝[7] 鬼才(掘

 
 雀荘では通常、出走順位というものが決まっている。

 これは同番の中で誰が最初に卓に入り、また回数を多く打つかを本人の希望や他の業務との関わりを考慮して定めたものだ。


 無論、その辺の規定は曖昧であることが多い。
 打ちたがりは率先して卓に入るし、役職の人間などはフロア管理やレジ業務の関係で打つ回数は必然的に少なくなる。


 私はというと、勿論麻雀が打ちたくてメンバーをやっているのでずっと一番手だった。
 しかし、大塚の加入によってその雀荘の夜番には二人の一番手が存在することとなった。

 そう、彼は結局学び舎に戻ることなく、雀荘で生きる道を選んだ。


 毎夜、毎夜、ずっと長い時間戦い続けた。
 店自体はそれなりの賑わいを見せていたが、関東のはずれにある小さな地方都市だ。街は深夜になれば静まり返る。


 平日の深夜に顔を見せる客といえば仕事が終わるのが遅い飲食業の人間、タクシーの運ちゃん、暇を持て余した学生ぐらいなものだ。
 必然的に夜番は卓に座りっぱなしになる。
 

 同じ雀荘でずっと打つ。
 これほど互いの麻雀がよくわかるものはない。


 奴は最初の月こそ少し負けたが、その後はメキメキと力をつけ、客や周囲のメンバーに畏れられるようになって行った。


 三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国五萬赤:麻雀王国四筒:麻雀王国六筒:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国八索:麻雀王国北:麻雀王国北:麻雀王国   ツモ 四萬:麻雀王国


 ドラは 七索:麻雀王国 、奴は親である。
 巡目は8巡目。役有りなのでテンパイを取りたいところだ。


 だが奴は 六筒:麻雀王国 を外す。
 いつ居るかも判らない嵌張を追うことよりも、奴はドラ塔子の取りこぼしを恐れる。


三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国五萬赤:麻雀王国四筒:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国八索:麻雀王国北:麻雀王国北:麻雀王国


 構想通り、 七索:麻雀王国 を引けばビシっとリーチを打つ。
 そして裏目の 五筒:麻雀王国 を引こうものなら躊躇うことなくリーチを打ち、一発で振聴を自摸ってしまう。


 三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国五萬赤:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国北:麻雀王国北:麻雀王国   ツモ 六筒:麻雀王国



 毎日一緒に打っているが、どうしても一発でツモってしまうのだ。


「あんな強ぇ奴、初めて見たぜ」
 

 ある晩、その店の常連がこぼした科白だ。
 彼も若い頃は歌舞伎町でメンバーとして牌を握り、この業界は浅くはない。


 どこの雀荘にも一つや二つある、ありふれた怪童の誕生話というやつだ。


 リーチをかけて、金色の左腕でしなやかに自摸和了る。
 無論、踏み込む回数が多い分討ち死にもするが、それを補って余りあるセンスと回転力を持ち合わせていたと思う。


 奴は相手を片っ端から薙ぎ倒すような麻雀でただひたすら戦い続けた。
 一年も経った頃にはあのあどけなさや幼さの面影は消え、逞しい一匹の麻雀打ちへと変貌を遂げていた。 









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雀豪列伝[7] 鬼才(供

それから数日後、メンバーとしてフロアに立っていた私は件の後ろ見をしていた青年が打つ姿を見つけた。

 先日のこともあり、少しだけ彼のことが気にかかっていた。


 何度かフリーで同卓したことはあったが、そのときはそこまで気を向けていなかったので、どういう麻雀を打つのか興味が無かったのだ。

 
 彼の手牌が見える位置に移動し、遠目で観戦をした。
 まだ全体的な牌の扱いは覚束ないが、鮮やかな摸打で小気味良く牌を切り飛ばして行く。


(東四局 東家 ドラ 九索:麻雀王国


四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国七筒:麻雀王国五索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国東:麻雀王国東:麻雀王国   ツモ 二筒:麻雀王国


 巡目は6巡目、ダブ東はまだ場に顔を見せていない。


「何処を捌く。俺ならば――」


 そんな事を考えていると、彼がノータイムでダブ東に手をかけた。


 手牌は息を吹き込まれたかのように躍動をし、5巡後に最高形で仕上がった。


 三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国二筒:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国五索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国   リーチ ツモ  五索:麻雀王国



 彼はその後、細かいエラーにより手にした流れを逸しかけたが、持ち前の回転力で他家を飲み込んで大勝を飾った。


 彼が席を洗い、両替待ちをしている私の方へと近づいてくる。

「大塚って言います。この間はスンマセンでした」

 元来が人懐っこい性格なのだろう、屈託のない笑顔を向けてきた。


「いや、そんなことよりも――。高専の子たちで強いのも居るけど、センスは君がピカイチだね」

「本当ですか!? 先輩たちにはなかなか認めてもらえなくて。光太さんに褒めてもらえるなんて光栄です」


 私は当時まだ19歳だったが、店のエースを張り、この街で一番強いのは自分だと息巻いていた。


 あそこで筒子の嵌張を恐れずにダブ東を切り飛ばしていけるほどのセンスだ。
 二十歳そこそこの子たちには理解できないだろう。

 彼は嬉しそうな顔でまた打ちに来ると告げ、店を後にした。



 そしてその翌週、約束通り姿を現した彼の右手には一通の茶封筒があった。

「それは――?」

「実は、学校を昨日で辞めてきました。光太さん、俺に麻雀を教えて下さい」


 私は思わず絶句した。
 そんな心算で声をかけたのでは無いのだが…・


「自分、まだ17歳なんで履歴書の年齢ってどうやって書けばいいですかね?」


 頭を抱える私をよそに、大好きな麻雀が出来るとあってか彼は再び屈託のない笑顔を向けてきた。


「いや、冷静になろう。親御さんには言ったのか? まだ今なら学校に戻れる」

「別にこの間のことだけって訳ではないんです。俺も、自分なりに麻雀だけで生きるって決めたんで――」



 私は自らの軽率な一言を激しく悔いた。
 いや、自分としてはそれほど大仰なことを言った心算はない。
 

 私は事の経緯をマネージャーに話し、彼のことは店側の判断に任せた。
 ちょっと麻雀を褒められたからって、17で学校を辞めてまでそんな…。

 私は彼の磊落な性格と奔放な行動に驚きを隠せない。


 しかし、これが奴と私の壮絶な凌ぎ合いの始まりとなった。








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雀豪列伝[7] 鬼才

 

 勝負の世界にいれば、一瞬の輝きのように人智を超えた強さを発揮する打ち手や、化け物のようなツキを持った相手と対峙する。

 長い雀荘生活の中で、私にも一際印象に残っている相手がいる。
 

 “引き”の怪物…。
 まさにそんな風に呼ぶのが相応しい奴だった。


 回想はずいぶんと時間を遡る。
 私が牌を道に生きることを決め、本格的にこの道を歩み始めて一年ほど経った頃だった。


 当時、その雀荘には全体から見たら数は少ないながらガクセイの打ち手も集まっていた。
 近隣の大学や専門学校の生徒、そして嘗ての私のように身分を偽って打ちに来る者。


 そしてその中には高専の生徒たちの姿があった。


 高専とは高度な学問や専門技術を教え、通常は中学卒業後に進学し五年間の修業期間を経る。

 一般的な高等学校や大学に進むのとは修業に関する年数が異なり、高専卒業時には高等学校を出て短大を卒業した年齢になっている。

 また、その後に大学の三年次に編入することが可能なのだ。


 そんな高専の学生たちの一団があった。
 みな二十歳前後、あるいはもう少し下ぐらいだっただろう。


 彼らは学生のお決まりのパターンのように最初は四人連れのセットで来店し、徐々に面子が淘汰されていく中で、そこで勝ち上がった者がフリーでも打つようになっていた。


 ある日のフリーでの出来事である。

 高専の学生の内の一人と打っている時だった。

 難しい手が来ているのか、河田という青年が長考に入る。
 若手にしてはなかなか辛い麻雀を打つ選手で、私も一目を置いていた。

 すると、後ろ見をしていた彼の仲間がいきなり手牌について口を出してきたのだ。


「こっち方がいいんじゃないの――」


 私は目を剥いて彼を睨み付けた。

 すると青年はまるで悪意がなかったかのように目を丸め、こちらの敵意を不思議がっている。
 おどけた顔立ちは幼さが残り、まだ年端の行かない身であることを感じさせた。

 私が口を開く前に、下家の土建屋がすぐに怒声を飛ばした。


「坊主、後ろから口出しするんじゃねぇ!」


 まだ彼が麻雀や賭場の作法も知らないのは一見して誰にも判った。
 土建屋の親父も科白は気色ばんでいたが、声色はどこか優しい。


 麻雀において卓に参加していない第三者が口を出すのはご法度である。
 作法や仕来たりを教えるのは先達の役目でもある。



 青年は素直に頭を下げ、その後、無言で七時間も後ろ見をしていた。











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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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