プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2009年09月

刮眼(掘

 
 ヤマウチ君はどうやら腰を据えて麻雀でしばらく凌ぐことを選択したらしい。
 私にフリーで勝つコツを教えて欲しいと申し出たのだ。

 この道を他人に勧めることは絶対にないが、正業を捨て、傷を負ってまでなお踏みとどまろうとするヤマウチ君の姿勢は見上げたものだ。
 だが、こればっかりはそう簡単に人に教えられることではない。

 別に勿体つけているわけではないが、半端に伝えたところで本当に真剣に取り組まなければ身につかないし、そうまでする人間はごく稀であることを私は知っている。
 しかし、借を返すためにとった彼の行動は人格を信頼するに充分な要素であるし、何よりも彼が東風戦に嵌った“ある切っ掛け”――。私と出会ったこと、に少し負い目を感じていた。

 
 そこで私は彼に二つのことだけを伝えた。


 一つ目は卓内で人格を放棄すること。

 感情を一切捨て、滔々と麻雀にだけ取り組まなければならない。

 局面局面での雀力にそう差などありはしない。
 年間にしたら数千回という半荘、数万局という戦いをいかに100に近い集中力で戦えるかに懸かっている。

 仮に仕上がりそうな客がいても、負けがこんでいるメンバー仲間と同卓していたとしても、絶対に手は抜けない。
 ある意味、自分以外は全員“客”である。
 
 強いか弱いかは関係ない。
 この半荘で仕上がるか二週間後に仕上がるかの違いだけである。


 そしてもう一つは、次の食いタンの待ちを当てて欲しいと伝えた。



(東ニ局 北家 ドラ 南


 北八索白二萬二筒東
 八萬六筒南四萬二索


 
 裏裏裏裏裏裏裏     三索横四索五索  六筒横五筒赤七筒




 *東 六筒 四萬 二索 はツモ切り

 *上家の河

 九索南北六筒一筒三索
 一索東八筒六萬南



 
 




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刮眼(供

 
 借を背負ったメンバーの大半はアウトを抱えながら退廃的な生活を長く送ることとなる。

 無理もない話だ。
 コレしかやらない生活を夢見て飛び込んできている訳だし、他のギャンブルを打つ人間と同様に日常生活や交遊にかかる出費を抑えようという感覚はないのだから。

 どこかで日の目を見て再び浮上するか。
 または、この業界で生きることを断念せざるをえない逼迫した状況に追い詰められるか。
 二つに一つの結論が出るのにそう時間はかからない。


 そんな中、ヤマウチ君は東風戦から足を洗い、点5の店でメンバーを始めたのだ。
 まだ腕が拙いといえども、客の多い店ならば出走も抑えられるので幾許かの給料は確実に持って帰ることができるだろう。

 経験は浅いが、東風戦の波に揉まれただけあって彼はそう簡単には負けなかったようだ。
 思うに、一度スッと身を退いてレートを下げた分、肩の力も抜けたのだろう。

 そして非番の日はコンビニエンスストアでアルバイトをし、日銭を稼いだ。


 そうして彼は見事、半年かからずに借を返し終えたのである。
 他から借りて用立てたものもあるようだが、立派な立ち回りである。


 ギャンブルはとても贅沢な遊びである。
 あのギラギラと神々しく輝く華やかな世界で誰もが主役であり続けたい。だから、人はなかなか退けなくなる。


 しかし私が思うに、彼は堅気の仕事の経験が手伝って主役に固執が少なかった分、すぐにクールダウンが出来たのだと思う。
 それでも実際には勝てば王様、負ければ地獄という魅力的な世界に居た人間が安い麻雀に身を窶し、深夜のコンビニでアルバイトをするのは辛かったと思う。


 そんなヤマウチ君がある申し出を私にしてきたのだ。








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刮眼

 
 私の後輩でヤマウチ君という男が居る。
 彼はまだ大学を出たぐらいの年齢だが、とある飲食店の店長職を任されていた。

 都内に店舗展開しているその料理屋は“売り”である比内地鶏をメインに、質・価格ともに街の居酒屋よりも上質のものを提供していた。
 私も何かの折に訪れたことがあるのだが、“普段使いの店よりもワンランク上の空間”として人気を博しているのも頷けるクオリティだったと思う。

 そんな店で若くして店長に抜擢されるということは、それに見合った人格と才能を兼ね備えていたのだろう。


 ヤマウチ君は麻雀を覚えて二年ほどで、たまに点5のフリーに顔を出して牌を握っていた。正確な成績は本人しか知る由がないが、勝ったり負けたりの繰り返しだという。


 そんなヤマウチ君があることを切っ掛けに東風戦に嵌り、半年で50万円ほどの借を作った。


 台が安くとも東風戦は波の荒いルールだ。
 また、娯楽の粋を超えた回数を打てば否が応でも成績は実力どおりに反映する。

 
 ヤマウチ君ぐらいのキャリアであれば当然の結果かもしれないが、麻雀がときに見せるあまりにも残酷な一面が垣間見える。

 例え一発や裏ドラがあろうとも、トータルでの麻雀の勝ち負けにはギャンブル的な不安定要素など介在しえない。
 一定の環境で長い時間打てば、必ずや実力差や寺銭(場代)という負担が圧し掛かってくる。


 ヤマウチ君も初めのうちは雀荘に訪れる他の客のように一日単位の勝ち負けに一喜一憂していたと思う。
 だが、この道に片足を突っ込んでしまったら、その日の勝ち負けなど数字が収束する前の一時的な途中経過に過ぎない。


 ツケば勝てる、勝っていた月もあった。そういう甘い考えを引き摺った者は間違いなく蟻地獄行きだ。

 
 ヤマウチ君はそのときには既に飲食店を退職し、東風戦のメンバーとして働いていた。
 それもそうだ。彼が一日働いて手にする金がほんの15分で動いたりする環境にいるのだから。

 
 後は長い時間底辺でもがき苦しむか、どこかで花火を打ち上げるか…。

 そんな選択がヤマウチ君にも迫っていたはずだが、そこから彼のとった行動は私が予想だにしていないものだった。
 







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設問

「RMUリーグ」であった古久根英孝プロの手牌です。
 南一局、目下8000点ほど浮いたトップ目。

 場に動きはなく、強いて言えば筒子が高いという状況。
 また親と下家が序盤に 四筒 を捨てており、捨て牌バランス的に筒子の上の搭子または面子を持っていそうです。

 まだ南の一局なので、“交わし”は考えなくて良いでしょう。
 和了易さと打点を念頭において何を切るか…。難しいところです。

 なお、自分の捨て牌には 二萬 が捨ててあります。
 皆さんだったらどうしますか?



(南一局7巡目 西家 ドラ 七筒















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設問

 下の三色とイッツーが見える手牌。
 
 何が正解というよりも、好みによって選択が分かれると思います。


 皆さんの回答と理由を聞かせて下さい。




(東一局 東家 6巡目 ドラ 一筒













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遡上(掘

 

 五萬六萬東東東南南南西西     ロン  七萬   北北横北



 あまりにも強烈な牌姿と衝撃の出来事に私の瞳はしこりのように硬くなった。
 

「まだだ――」


 幸か不幸か対局はまだ始まったばかりである。
 たかだか四倍満を打っただけだ。勝負は下駄をはくまで判らない。

 
 しかし相手との距離感を完全に失い、更なるエラーを犯すことを畏れた私は攻めきることが出来なかった。
 結局その半荘は大きく箱を割ったラスで、その後も勝負どころで競り負けて3、3、3着という戦績に終わった。

 
 自分の麻雀も、今日という時間を造ってくれた人たちとの戦いも全て開局に放った一手で壊してしまった。


 惨劇の原因は全て己の中にある。
 ここ一年ほど頭で理解していることに身体が反応できず、緩手を打つことが目立っている。
 精神論ばかりに目が行き、頭脳やフィジカルの鍛錬を怠けている証拠である。

 
 今回は誰の期待にも応えることが出来なかった。
 今日という日を私は一生忘れない。それほどの出来事だ。


 麻雀という競技の性質上、全ての期待に応えることは難しい。
 
 だが、自分に降りかかる全ての試練を乗り越えることは出来る。


 麻雀が私の中で最も優先すべきことであるならば、その為にどんな努力もできるはずだ。
 







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遡上(供

 
 私の起ち親で始まった東一局。
 時間のかかりそうな配牌を手にした私をよそに、散家が積極的に動きを入れてきた。

“アウェイ”という状況で最も手を焼くのは、“人読み”が効かないという点だ。
 そして素点の多寡を競うルールにおいては、仕掛けの意図や間合いが大きく物を言う。

 一発や裏ドラがない分、どうしても翻牌やホンイツの比重が重くなるので、こういった高い仕掛けに打つわけにはいかない。
 しかし、本手以外の仕掛けに対して退くことも許されないのだ。
 和了そのものの価値が高いルールであるし、ノーテン罰符の上下もデカい。


 開局早々から仕掛けるのか。
 押した牌と手牌のバランスが取れている打ち手か。
 ヤメ時はどのあたりなのか。

 知った面子であれば、仕掛けや打牌への対応で間合いが計りやすいのだが、テキの情報が少ない場合はこの辺りのせめぎ合いが微妙になる。
 

 だが、いつだって戦いは一対三である。
 どんなルールでも辛くタイトに打って自摸和了を狙うだけだ。


 三者が各々仕掛けを入れて、私もそれに呼応して鳴きを入れた。


(東一局 東家 ドラ 八索


四萬五萬六萬二筒二筒四筒五筒六索八索西中     白横白白


 充分形とは言い難いが、トップ目もしくは全員が鳴きを入れた際には動いて場に参加した方が牌の流れを掴むことがある。
 “合わせ”といった感じの鳴きだ。


 場には筒子が非常に安い。
 自分が和了を見る局であればここを厚く残して行くのだが、如上の理由による仕掛けなので全員に通りやすい筒子を切り出していく。
 とくに 二筒 はノーチャンスの安全牌でいつでもここに頼ることが出来る。


 各人の手が進み、私も場に出た牌に合わせて手を進めていたときだった。
 表示牌によって割れていたドラが重なり、萬子の一色手である下家が序盤に切っているということもあってタイミングよく上家から鳴くことが出来た。


 四萬五萬六萬七萬二筒二筒西        八索横八索八索 白横白白


 一発・裏無しでの12000は大きい。
 しかし私は萬子がくっ付いたとしても聴牌を取る気はなかった。

 卓に着いてから一分半ほどが経過している。
 各人の牌の扱いや打牌を見る限り、土田プロが発破を掛けたのが頷けるレベルの高さのようだ。

 そして三者のかなり強気な押し。
 複数の者に高い聴牌が入っていると見てよいだろう。


 下家は萬子のチン。そこまで好形とは思えないが、一向聴よりは聴牌に近いかもしれない。
 ドラを鳴かした上家は萬子の中頃か索子の上での二面聴牌。
 そして西家。ドラでも色でもない西家のこの押しは翻牌を活かした対々和と見て良いだろう。



 そんな風に読んでいた私に少し思いがけない牌が入ってきた。


 四萬五萬六萬七萬二筒二筒西  ツモ  二筒     八索横八索八索 白横白白



 どうする――。
 手を止めて少考した。

 最初の方針通り、あくまで 二筒 を落とすか。
 または積極策に出て聴牌を取るか。

 聴牌を取るならば 西 を勝負するべきだ。
 萬子のノベ単も決して和了易いわけではないが、対々和に打てない牌の単騎で待つために萬子を勝負するのはナンセンスだ。


 そう、普段であれば身体がスッと正着を選んでくれるはずだった。
 だが、土田プロや対局者の期待、観戦者の目。それらを全て意識しすぎた。


 西家の手は読めている。
 ここで 西 を打って嘲笑されたくない。
 私は身体で間違っているのを理解しながら、 七萬 を打ち出しての 西 単騎にとった。


「ロン――」


 声をかけたのは上家である。
 その声はやや上擦っていた。


 そして開かれた手を見て私は思わず絶句した…。



 五萬六萬東東東南南南西西     ロン  七萬   北北横北









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遡上

 
 打ち手を張っている以上、負けられない戦いの繰り返しである。

 公式戦、ストリートの勝負、セットでの戦い。
 名前とプライドを持って戦う以上、常に最善を尽くし、最上の結果を追い求めなければならない。


 土田浩翔プロの計らいで参加させて頂いた「北海道最強位戦」。
 何十期にも亘って道内の精鋭たちにより開催されている伝統あるリーグ戦である。

 今回はその内の一節にゲストとして参加し、一日4半荘の結果を争う形だ。

 参加選手は16名。一発・裏ドラは無く、ウマは4000点−12000点。
 満貫以上は切り上げにならず、一翻につき2000点ずつの加点になるやや特殊な計算方式を用いている(5翻は10000点)。


「結果はその日の運にもよるが、過去に東京から連れて行った一流プロも苦汁を舐めている。気を張って戦って欲しい」

 土田プロにかけられた言葉、ゲストとしての使命、そして背後で観戦をして下さる方の視線。
 それらを全て乗り越えて自分の麻雀を貫く。


 そんな想いで卓に着いた私を待っていたのはあまりにも過酷な試練だった。










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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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