プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年03月

告知

 
 押川雲太郎さんが描く「リスキーエッジ」が「反逆の麻雀」と改題し、全国のコンビニエンスストア等で発売されることにまりました。

 3月を皮切りに毎月1冊ずつ発刊されていく予定です。
 興味のある方はぜひご覧下さい。





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反逆の麻雀リスキーエッジ背信の闘牌 (バンブー・コミックス)
著者:荒 正義
販売元:竹書房
発売日:2010-03
クチコミを見る








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徒花(供

 
 心の底から勝ちたかった。
 勝たねばならない理由がいくつもあった。

 麻雀打ちは非常に危うい立場で孤独な戦いを続けている。
 それを癒すのは戦友との交わりだったり酒であったりするが、深く、とても深く無数にえぐられた心の底の傷を癒すのは己の勝利でしかない。


 不遜と思われるかもしれない。
 だが、決勝進出を決めた後に件の綱川にこう告げた。


「理想的な勝ち方だ。決勝は1着・1着か、1着・2着で決められる気がする」


 緩すぎると鋭利な攻めを欠くことがあるし、締まりすぎても気負いを招いてしまう。
 あらゆる意味で最高の状態だった。


 しかし、たった一手。
 そう、たったの一手だ。

 ほんの一発声で私は全てを失った。


(南二局 西家 ドラ 八筒



二萬二萬二萬六萬七萬八萬四筒五筒六筒六索七索七索七索  リーチ


「なぜ、あんなリーチをかけてしまったんだ…」


 あれから、何百回も吐露した台詞だ。


 ニ連勝まであと3局というところにきて、肉薄する石橋プロとの競りに私は焦りを感じてしまっていた。
 ラス親を迎える前に差をつけておきたい。自分の自摸で決めてやる――。


 救いようのない、馬鹿な真似をしてしまった。
 守勢の手は必ず守勢を保ちながら攻めるべきだ。
 
 己の勝手な都合で愛のないリーチを打った。
 自分の全てを懸けて、リーチは失敗であると言い切れる。


「なぜ、あんなリーチをかけてしまったんだ……」


 その後に訪れる卓上で、酔い潰れた床で、電車の中で、眠りにつこうとする度に。
 後悔という十字架が私から離れることはない。


 
 心の底から勝ちたかった。
 勝たねばならない理由がいくつもあった。
 そのために努力をし、想いを切らさぬようにしてきた。


 だが、結果は最悪の目が出た。
 それでも、こう思えた。


 ここまでは、努力をしてもしなくても一緒だ。


 ここからもう一度努力できるように、ここからもう一度這い上がる気持ちを失わないために、努力をしてきたのだと思う。

 
 もしも傷つくのが嫌ならば、多くを望まなければ良い。
 私が狙っているのは栄冠であり、国士無双なのだ。


 いつの日か、今日は負けて良かったと思える日が来ることを私は識っている。
 そのときには、必ずや敗北よりも大きな経験や叡智を身に付けている。
 ここに出ることが敵わなかった選手たち、この舞台に辿り着く前に惜しくも散ったライバルたちは既に次に向けて牙を磨いていることだろう。


 二度と同じ過ちを繰りかえさないように、二度と涙しないために、この敗北は無駄に出来ない。










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徒花

 
 これで最後、という半荘。
 駄目もとで狙った国士だったが、思いのほかに手が進む。

 よこしまな捨て牌を並べ、我武者羅に公九牌を掻き集めて手牌は一向聴になっていた。


(南三局 北家 ドラ 五筒


 一萬九萬九萬一筒一索一索九索東南西北白發


 九筒 は場に二枚切れ。そして問題の 中 は親に鳴かれてポンカスになっている。


 あの手がここまで育ってくれたんだ。
 何とか紅中が枯れる前に聴牌を果たしたい。

 だが、そう簡単に 九筒 は居ない。
 誰かが自摸切りをする度にそれが最後の牌でないことを願う。


 まだか、間に合わせられないか――。
 と思っていたところに嘘じゃなかろうか、トップ目の鳴きで 九筒 が入ってきた。

 息を飲んで 九萬 を河に置く。
 大逆転のシナリオは完成した。


 ところが、山が進めど進めどなかなか紅中は顔を現さない。
 ここまで盛り上げておいて和了れず仕舞いなんてことは無いだろう。

 しかし流局間際、トップ目が500・1000を軽く自摸ってゲームセットとなった。
 

 残りの山を検めてみるが紅中はいない。
 西家と北家が国士に牌を止めた感じは無い。

 王牌をめくってみると、一生陽の当たらない場所で紅中は静かに眠っていた。


 そんな、役満のような話だ。


 大事な決勝戦で負けたときに、いつも思う。
 なぜ、勝たせてくれないのならば夢を見させるのだろうと。


 なぜ栄冠に輝けないのに、一向聴で難関な 九筒 を引かせるのだろう。


 栄冠が絶対に手の届かない場所にあるのならば、いっそ夢を見る舞台に上げてくれなければ良いのにと……。
 






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設問

 
 東一局、下家の久保雄紀プロが対面から倍満を和了った次局でした。

 ドラの 九筒 を活かしたいところで引いてきた牌は 五索 。 
 場には 一索 が2枚、 四索 が3枚切れており、私は 九索 を捨てています。


 ソーズは非常に安く、 四索 を早打ちしている二人は 五索六索 を手の中に持っていなそうです。

 巡目は終盤に差し掛かった10巡目。
 皆さんだったらどうしますか?



(東二局 東家 ドラ 九筒














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達観(掘

 
 石橋プロは決勝を見据えて、攻めの姿勢を見せていた。
 一方の私は全くゲームに参加が出来ない。

 私の争いは着順勝負だが、麻雀は二人でやるものではない。
 全く形にならない自らの手牌で足掻くよりも、卓上で利用できる情報は最大限に活かす。

 例えば、南入をしての一局である。


(南一局 北家・藤崎プロ ドラ 三萬 )


 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏  南南横南

 九索九索九萬一萬六索四索
 發發三萬八萬九索四萬
 一筒


 この藤崎プロの仕掛けに対して、親の石橋プロがスッと強い牌を手出しした。


 南九筒九筒九筒七索發
 四索七索二索六筒四索北
 二索東五筒


 この手出しを見た瞬間に私のすべきことが一つある。
 無論、ガードに徹し、出来ることならば自らも形テンを目指す方向も考える。

 そしてさらに、“仮に藤崎プロが石橋プロの危険牌を掴んだときに、藤崎プロが行き易い場況を作っておく”必要がある。


 従って、私は石橋プロの切り出しを見た瞬間に、手牌に 二索 七索 辺りがあればそれを抜き、索子を安くする。

 よもやの 三索六索九索 や嵌 八索一索 のトイツ受け…。

 仮に石橋プロの待ちが索子だった場合にその周辺を易くし、筒子一色手の藤崎プロが掴んだ際に切り易くしておくのだ。


 万に一つでしか報われないかもしれない。ましてや相手は最高峰の対応を続ける藤崎プロなのだ。
 しかし、私に出来るのはそういった伏線を張り続けることだった。
 

 こういった動きが直接的に功を奏した訳ではないが、石橋プロが藤崎プロから連続で出和了し、場のペースが平たくなった。


 そして、南二局4本場。
 私がこの半荘で二度目の聴牌を入れた。

(南二局 南家 ドラ 七筒


四萬五萬六萬七萬八萬三筒四筒五筒五索五索六索南南   ツモ  南


 勝利を確信させる牌を引き入れ、リーチをかける。
 

 四萬五萬六萬七萬八萬三筒四筒五筒五索五索南南南   一発ツモ  九萬



 この一閃で辛くもトップを取り、決勝へ進むことが出来た。

 やはり、この打ち方で良いんだ…。
 結果はたまたまだが、良い麻雀を打てたことを私は素直に喜んだ。

 昨日の呪縛や失態が消えることはないが、少しだけ溜飲が下がった。


 しかし、牌をいつだって試練を宛がう。
 この後の戦いで私は更なる地獄を見ることとなった。










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達観(供

 
 時刻は朝の4時になっていた。
 対局のため、7時過ぎには起床しなければならない。

 様々な考えが頭を巡った後、私は苦境に陥ったとき、スランプのときのことを思い出していた。

 基本に忠実に従い、決して自分と麻雀から逃げないこと。
 自分なりの訓戒だった。


 今日は酷い麻雀を打った。
 そしておそらく明日もその流れを引き摺るだろう。
 それを覚悟の上で、今日という日を消化しきるしかない。

 馴染みのbarへ顔を出し、1時間だけ話を聞いてもらった。
 不思議と、それだけのことで気持ちを切り替えられた。


 運命の予選最終戦。
 私は藤崎プロよりも上の着順ならば勝ち上がりが確定。競り負けるようだと、別卓の山井プロとの着順勝負になる。

 だが、気持ちが吹っ切れていた私に邪念はなかった。
 いつも通り牌のひじりを目指し、良い麻雀を打とう…。そう思えていた。


 撮影所に着くと、スタッフとして来ていた綱川隆晃プロが言葉をかけてきてくれた。


「どうですか?」
 
「十中八九、ダメだろうね」

 綱川が顔を見返してきた。
 彼は公私共々で信頼のおける後輩であるし、私が麻雀において冗談を言わないことを知っている。


「藤崎さんは本当に強いし、今回も内容の良さが群を抜いている。俺が勝つべきでは無いと考えているよ。ただ…」

「ただ――?」

「俺は東場を捨てて南場でのワンチャンスを狙うから、もしも東場で誰かにエラーがあれば勝機はあるかもしれない。それが来ない事の方が多いが、来た時にモノに出来るようにしておきたい」


 勝負は藤崎プロが1000・2000、2000・4000自摸和了という出だしになったが、決勝進出が決まっていた石橋、大橋プロの出方が私に功を奏することとなった。







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達観


「とんでもない事をしてしまった…」

 深夜3時、疲弊しきった表情で歌舞伎町を当てもなく徘徊し続けた。

 どう、消化すれば良いのか。
 どうすれば明日の半荘で勝って決勝へ進むことが出来るのか。

 なぜ、この大事な舞台であんな牌を切ったのか。
 何を、何をやっているんだ俺は。

 一体どうしたら…。
 
 部屋に一人でいるのが耐えられず街へ飛び出してみたが、酒を呑む気にもならない。
 ライバル、肉親、師…。誰かと話しをしてみるか。
 不覚にも、思わず誰かに電話を入れてしまいそうな程になっていた。



(南一局 南家・山井プロ ドラ 南


九萬中九索六筒三索横八索
六萬二索一筒九索四萬七萬
一萬四筒



 目下ラス目であり、予選トータル6位の山井プロのリーチ。
 この半荘を浮きで終われば決勝進出が固い私と藤崎プロを含めた全員がオリている。

 私はのこのリーチに対し、安全牌が手の内にあるにも関わらず打ち込みをしてしまったのだ。


 六萬七萬八萬一筒三筒一索一索一索六索七索八索南南   ロン  二筒


 切り間違いと言える位の大エラーである。
 私は全く行くべき手格好ではない。


 二萬四萬四萬二筒三筒四筒六筒七筒一索四索六索六索南   ツモ  二筒


 四筒 が4枚、 一筒 が3枚見えていた3枚目の二筒 だった。

 二面は言うまでもなく、シャンポンも無い。
 そして、123の三色と通貫形も無い。

 ラス目の山井プロのリーチである。ドラが連風牌の 南 だから、ドラ雀頭の嵌 二筒 もリーチは打たない。


 そして何よりも私は“手の形”を重視するように心掛けている。
 王道の手組みで、対応を織り交ぜながら正しい形で和了を目指す。歪な形ではダメだ。
 高い手はとことん高く、我慢の手は安く和了り、流局したときも安易に牌を抜かない。

 そうやって形を追うことによって“点の攻撃”から“本流となる線の攻撃”へ繋げていくのだ。
 
 オリているからと言って安易に牌を抜くと終盤の看破力がつかないし、相手にも考えさせる打牌が出来ない。


 しかし、結果は最悪の6400放銃。
 山井プロから見ると、筒子の下が安いことから早いリーチを英断させたそうだ。

 これで揺れてしまった私は打ち込みの幻影に怯え、闇雲な攻撃を繰り返した。
 そして、オーラスで山井プロに大逆転の四暗刻を自摸られたのだ。



「とんでもない事を、してしまった…」


 幾度なくそう呟き返し、ひたすら街を歩き続けた。







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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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