プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年04月

雀豪列伝[9] joker(掘

 
 連絡を受けた私は知らぬ顔を装い、店に姿を現した。
 いくら麻雀が好きとは言え、こんな時間に息を弾ませて男を追っかけ回しているのもどうかと思う。

 主任が気を利かせてくれ、主任と私、そして橋口は同卓となった。


 私の言葉があったからかどうか判らないが、主任もいつもより慎重に打ち、橋口の打牌に値踏みをするような視線を投げかけている。

 相変わらず隙のない構えで順調に勝ちを伸ばしていく橋口。
 だが、私も負けじと後を追う。


 勝負は拮抗していたが、主任と入れ替わりで入った鮨屋の兄さんが私の親リーに打って東場で飛んだ。
 私はそれを契機に連勝し、次の半荘も先制のリーチをかけた。


(東一局 東家 ドラ 四萬


三萬四萬四萬五萬赤五萬九萬九萬一索二索三索四索五索六索   リーチ


 どうせ値段は萬子の窮屈な部分に集約されている。
 闇に構えたところで出易い待ちでもないので、状態が良いなら即リーをすべきだ。


 すると、私の宣言牌である 五索 を橋口が嵌張で喰った。


 裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏  五索横四索六索


 橋口の打牌は 二索 。

 リャンカンを喰って捌きの手を聴牌させたか、はたまたずらしただけか。
 いずれにしても、このまま好きには打たせないというところだろう。


 ニ巡、三巡と橋口がキツい所を押してくる。
 どうやら聴牌のようだ。

 脇も私のみならず、橋口を警戒し始めた。
 簡単に私の現物だけを振ってくる訳にはいかない。


 鮨屋がやや少考し、私の現物である 九索 を切ってきた。


「ロン――」

「えっ」


 五筒五筒赤六索七索七索八索八索中中中   ロン 九索  五索横四索六索


 私と鮨屋は思わず顔を上げて橋口の顔を見た。
 鮨屋は何か言いたげだったが、そのまま黙って2000点を支払った。

 鮨屋の気持ちも判らなくない。
 通常の手牌進行であれば、嵌 五索 を鳴いて、 六索九索 受けが残っている事はない。

 橋口は私のリーチが入る前からこの形で聴牌していたことになる。


 五筒五筒赤二索四索六索六索七索七索八索八索中中中
 

 確かに本手のリーチに対し、分が悪い嵌張からニ門に切り替わるが……。
 自摸番を一回放棄してまで、門前を崩していることになる。

 現状のまま自摸れば満貫なのだ。

 
 私は見事ななしによって一本取られた。
 しかし、捌きすぎは自分の手牌も落としかねないのでは……。

 私には彼の捌きに少しだけ引っ掛かるものがあった。


 いずれにせよ、これで五分に戻された私たちはまた戦い続けた。
 朝まで20本半荘近く打っただろうか。

 結局、あの局面がポイントとなり、私は橋口に逆転を許してしまった。


 彼がいつものように無言で店を後にし、それと入れ替わりでマネージャーが出勤してきた。
 マネージャーは引き揚げる彼を一瞥し、打ち果てていた私に向かってこう言った。


「あれ、橋健じゃないか。ウチの店に来てたの?」

 私と主任は顔を見合わせた。

「橋口健――。あだ名は“橋健”って言ってね。歌舞伎町では一時期名前の通った凌ぎ手だったよ」


 歌舞伎町の……。

 私の胸にはマネージャーの言った“橋健”という名と、彼の見せたあの捌きが印象深く残った。





 lead to the next chapter...











ブログランキング グレー
 blogランキング  
 








 

雀豪列伝[9] joker(供

「あの人は、一体何者なンですか?」

 先輩のメンバー達に、私はそう尋ねた。


「え、誰だっけ? その人」

「いや、とんでもなく強いのが一人居るじゃないですか」

「誰だろう? 昨日、来てたかな……」



 不思議なことに、その男のことを誰に尋ねても印象に残っていないと言うのだ。
 しかし、私がまだ客としてこの店に遊びに来ていた時分に一、二度見かけた事があるから先輩達が知らぬ訳はない。
 
 同卓した私の身体は彼の強さを覚えている。
 冷静な押し引きに、ここぞという局面での寄り切り。そして、一分の無駄もない摸打。

 だが、何故か彼の人物像はパッと説明が出来ず、声すらも思い出すことが出来ない。
 

 麻雀の強い奴は卓に着いた瞬間に判る、なんて言うが、確かに強い打ち手は印象も濃い。
 存在感も強いし、とかく店内や卓内でも目立つ存在になる。

 ましてやその手の類の話が大好物のメンバー間で話題にならない訳がない。

 
 昨夜の日報を掘り起こして、ようやく彼の名を見つけた。


「橋口……。そうだ、橋口さんですよ」

 しかし、返ってくる返事は一様だった。


「あの大人しいお客さんね、マナーが良いよね。でも、強いとかではなさそうだけど」

「あまり勝っている記憶は無いな」


 しかし、私の印象は全く違った。
 確かに攻めが重視されるフリー雀荘では、他人よりも突出した120の攻撃力を持っていれば勝ち易いだろう。

 相手が対応を間違えてくれる事が多いし、攻めの強さを相手に印象付けるのは悪いことではない。

 防御が70でも攻撃が120の方が強い。
 おそらく、若い学生やメンバーの価値観はそんなところだろう。


 しかし、若しも鉄壁の――。130の守備と対応力を持った人間が居たとしたら。
 そして、その男が精度の高い100の攻撃を兼ね備えていたとしたら。

 端からの見かけはともかく、実際のところのトータルでの浮き沈みに差がつくのは火を見るより明らかである。


 一般に簡単に認められやすいのは“動”の強さだ。

 
 だが、彼は“静”の強さだった。
 一晩中打ったはずだが、一切無駄な口は利かない。そして放銃もしない。

 好機が訪れなければ何時間だって甘い牌は一つも出て来ない。
 何よりも“気”や“表情”に微塵も変化が無い。

 そして、ここぞという局面では鉈で相手を一刀両断するかのような和了を見せるのだ。

 

 私は彼の麻雀を確かめるために、どうしてももう一度打ちたかったのだが、どうやら彼は二〜三ヶ月に一度ぐらいの頻度でしか顔を見せない客らしい。
 
 それを聞いて肩を落としたが、どうせ私は毎日この店で麻雀を打っている。


 私の巣はここから5分である。
 帰宅した後や非番のときでも、強いメンツや良い手合いの卓が空いたときには直ぐに連絡が入ることになっている。


 そんな非常線を張り巡らす中、意外にもチャンスは早くやってきた。
 深夜24時ぐらいだったが、店の主任から私の携帯に彼が現れたと連絡が入ったのだ。







 lead to the next chapter...











ブログランキング グレー
 blogランキング  
 















雀豪列伝[9]  joker

 
 歌舞伎町にある東風戦の店で牌を握っていたときだった。
 古参の店員に従って、私の上家に新規来店と思われる若者が座る。


 若いな……。一見してそう思った。
 18か、19歳。あるいはもう少し下かもしれない。

 穿き古したジーンズにくたびれた白シャツ。そして、片手に下げた大きなスポーツバッグ。

 その容姿や物腰は彼がまだ年端も行かぬ身であることと同時に、この辺りの地理やこういった場に不慣れである事を伺わせた。


「宜しくお願いします」


 聞き取れないほど、か細い声で彼が挨拶をする。
 私は軽く頭を下げ、親爺たちは目で頷くのみ。

 知っていて来たのか、紛れ込んでしまったのか。
 右も左も判らぬ子が打つような麻雀ではない。私はおのぼりさんのような彼の麻雀や懐中を心配した。 


 だが、いざ勝負が始まると彼の目つきが変わった。
 手馴れた牌捌きで、気合の良い摸打と和了を繰り返す。
 どうやら私の危惧は杞憂だったようだ。

 ああ、やっている子なのか。
 と、諒解した。

 荒い部分もあるが、これだけシャープな感覚ならば同年代では負け知らずだろう。
 垢のついていない、綺麗な麻雀だ。
 
 どうやら、たまたま紛れ込んだというわけではなさそうだ。
 おそらく普段は自分のフィールドで毎日戦っており、これが目的か何かのついでに一丁勝負ということなのだろう。

 今まで磨いてきた雀技、貯めてきた金。
 それらを試すために田舎から武者修行に出て来たといったところか。


  
 深夜3時に私たちの卓が割れ、ならばということで私も席を洗った。
 今日は親爺とメンバーの出来が悪く、私の大勝。だが、途中から入った若者も祝儀を稼いでいたので、いくらか釣果はあったはずだ。


 店を後にすると、続いて彼もスポーツバッグを背負って店を出て来た。
 そして宿でも探すように辺りを見回しながら夜の街へと消えて行く。

 ここは、新宿歌舞伎町。
 変なのに捕まらぬよう、宿でも案内してやろうかという気になったが、それは失礼だと思った。
 彼は自分の金で勝負の麻雀を打つ一端の男なのだ。


 俺にも、あんな頃があったな……。
 十数年前の自分と姿が重なる彼を見て、私はある男との出会いを思い出していた。






 lead to the next chapter...










ブログランキング グレー
 blogランキング  
 


 
 

 

触発

 
 秀でた技術、確かな目、揺らがぬ心。
 その全てを持っていたとしてもタイトルを獲るのは非常に難しい。

 世の中はIT化、グローバル化に伴って“選択”が多様化している。
 20年前と比較すると、私たちが日常生活の中で触れる情報量というのは何十倍にもなっているらしい。

 そんな中、牌に生きることを選んだ男達。
 そんな人間でも十年の間で決勝に残ることが出来るのは数えるほどだ。


 だが、ここ最近私の周りでは華々しい活躍が続いている。

 まずは同じプロ麻雀協会に所属する大脇貴久が雀竜戦を制覇。
 雀竜戦は半年間をかけて全リーグの選手が参加できる団体のトップを決めるタイトル戦の一つである。

 同期の桜であり、友人でもある大脇。
 公式戦で、高レートの場で、東風で、新宿で、池袋で、渋谷で…。もう数え切れないぐらいのシーンで奴と戦ってきた。

 そんな大脇が新人王以来のタイトルを見事に戴冠。


<第8期雀竜戦 観戦記>
http://www.npm2001.com/janryu/8-janryu/8janryu_1.html


 そして、私がプロに成り立ての頃から交友をしてもらっている最高位戦の村上淳プロが第8回日本オープンを優勝。

 村上プロは早稲田大学を卒業しながらも麻雀プロ一本で邁進。
 その麻雀に対する真摯な姿勢や真っ直ぐな人柄で多くの選手から慕われている。

 そんな村上プロが、プロ14年目にして初のタイトル奪取に輝いた。
 心からおめでとうと言いたい。
 

<第8回日本オープン観戦記>
http://www.npm2001.com/nihonopen/8-nop.html 


 更に、共に私設のリーグ戦に参加している最高位戦・水巻渉プロはAリーグを首位で躍進中。
 水巻プロは私がプロになったときには既にAリーグを張っていた先輩格であるが、この一年は最も酒を酌み交わし、麻雀の談義をした内の一人である。

 
 切磋琢磨という言葉があるが、私はまだ路傍の石に過ぎない。
 戦友たちから貰った刺激を励みに私も研磨を続けよう。



<水巻渉プロと打てる店 赤坂「赤まる」>
http://akamaruakasaka.web.fc2.com/








ブログランキング グレー
 blogランキング  
 







 

荘厳

(東一局 東家 ドラ 二萬:麻雀王国


三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国七萬:麻雀王国八萬:麻雀王国九萬:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国一索:麻雀王国二索:麻雀王国三索:麻雀王国八索:麻雀王国九索:麻雀王国   ツモ  九索:麻雀王国


 
「何切る問題」、と言って良いものか……。
 

 一発・裏ドラ有り、東一局の親番。ドラは 二萬:麻雀王国 である。


 巡目は絶好の7巡目、場に動きは何一つ入っていない。
 何を、どうするって問題にすらならないだろう。


 ましてや、これはタイトル戦の決勝なのだ。


 それでも私には一つの確信があった。
 私しか判らないし、私だけは判らなくてはならない。

 
 第3期RMUクラウン決勝戦。
 第4回戦目、起親の土田浩翔プロ。


 彼はここからノータイムで 九索:麻雀王国 を自摸切った。


 ここまで何とかで優勝戦線に踏みとどまり、現在トータル三位。

 非常に厳しい戦いを強いられているが、残り二連勝をすれば優勝は十分に可能だ。


 しかし、ここまでのチグハグな展開に違和感を感じていたのだろう。

 
 力業に賭けてはいけない局面…。


 状態が悪いときの、“あわよくば”に期待をしない。
 この戒律を鉄の意志で守る人間は本当に強い。

 
 だから彼はここでドラ期待の二門リーチを打たない。

 誰も見ていない戦いであろうと、タイトル戦の決勝であろうとそれが変わることはない。


 私だったら…。

 博打麻雀であれば色気を一切排除できる自信はあるが、この場ではそうもいかなかったかもしれない。



 結果は次巡に 三萬:麻雀王国 を引いてリーチ。


 九索:麻雀王国白:麻雀王国北:麻雀王国四索:麻雀王国南:麻雀王国西:麻雀王国
 九索:麻雀王国四萬横:麻雀王国   リーチ



 この魔性のリーチに、トータル首位の坂本大志プロが安牌に窮して飛び込んだ。


 三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国七萬:麻雀王国八萬:麻雀王国九萬:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国一索:麻雀王国二索:麻雀王国三索:麻雀王国八索:麻雀王国九索:麻雀王国   ロン  七索:麻雀王国



[坂本プロの手牌]


 二萬:麻雀王国二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国五萬:麻雀王国六萬:麻雀王国八萬:麻雀王国一筒:麻雀王国二筒:麻雀王国二筒:麻雀王国五筒:麻雀王国六筒:麻雀王国七筒:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国



 無論、坂本プロが手詰まったのは偶然である。
 

 それにしても常に自分と麻雀の可能性を試すような、厳しい一打である。








 
ブログランキング グレー
 blogランキング

漸次

 
 新宿にて土田浩翔プロ、最高位戦の坂本正志プロ、協会の小倉孝プロとセット。
 序盤まで少ない戦力で凌いでいたが、途中で信じられないような緩手を二つ打って不甲斐ない結果に終わった。

 自分を見てくれている人の前で、譲れない後輩に負ける。
 こんな屈辱だって何度も味わってきた。


 翌日は新宿「S」にてプロ連盟の今里之彦プロ、滝沢和典プロとセット。
 一発裏ドラ無しの麻雀を堪能した翌日はアリアリルールの東風戦セットへ。

 週末には協会の大窪貴大プロ、中林啓プロとセット。
 その翌日はRMU代表の多井隆晴プロ、女流最高位4連覇中の根本佳織プロ、坂本正志プロとセット。


 準備万全で迎えた土田プロとの再戦は、半荘4回戦での上位2名勝ち抜けを目指すトーナメント戦の形式。
 この日は自摸と場がマッチした私と協会の綱川が勝ち抜け。


 良い結果に弾みをつけるため、園田賢プロ、竹中誠プロ(共に最高位戦)、矢島亨プロ(協会)とセット。

 そして挑んだ土田プロ、協会雀王である鈴木達也プロとのセット。
 私は先月このセットで土田プロに圧巻の逆転を許している。

 この日は初戦でラスを引くも、4、1、2、1、1と上々の出来で一人浮きの結果に。
 だが、その翌日のセットでは土田プロに3連勝を許す。

 相変わらずの門前、対子、仕掛けにおける厳しい攻めに舌を巻く。
 少しは良い戦いが出来るようになったと思えば、その道が果てなく遠いことにすぐ気付かされる。


 2009年は悔しい結果の連続だった。
 今年は、競技の世界で必ず飛躍の一年にすると決めている。

 プロとしての結果やライバル達との戦いも。
 一歩ずつ成長し、一つ一つ借りを返して行くしか方法は無い。








ブログランキング グレー
 blogランキング  
 










QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ
プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/





第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
VS研究会 第7期、第8期連覇中


bnr_kingdom200x200


















麻雀 ブログランキングへ







連絡先



bnr_asami





bnr_hanamura






bnr_nozoe





bnr_emori





bnr_hazuki





bnr_mikoto





bnr_hinata






bnr_ishii





bnr_sugawara





bnr_higuchi






アクセスランキング
アクセスランキング