プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年05月

告知


この度、iPhoneのアプリが発売されました。
携帯にダウンロードして頂き、「何切る問題」をクイズのような感覚で楽しんで頂けます。


「プロ雀士 吉田光太の何切る問題集 初級編」
http://nnkr.jp/iphone/book/


ss_1










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価格は115円でApp Storeから一度ダウンロードして頂ければ、半永久的に遊べます。
携帯版の何切る冊子とゲームが合わさった感じです。


内容は・基本手順、・メンチンクイズ、・牌効率、・受け入れ枚数クイズ、・オーラス編に分かれて100問を収録。
初心者の方が判りやすいように詳しい解説や、麻雀に関するコラムなどが付いています。


デザインにもこだわっており、インターフェースを使いタッチ形式で問題を解いていきます。iPhoneユーザーの方はぜひ試してみて下さい。









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告知

 
 秋葉原にあるノーレート競技麻雀サロン「雀友倶楽部」にゲストとしてお邪魔します。

<日程>
 6/2(水) 13時〜23時
 6/7(月) 13時〜23時
 6/16(水)13時〜23時
 6/23(水)13時〜23時


 雀友倶楽部はノーレートながら初心者の方から競技ファンの方まで真剣に麻雀を楽しむことが出来ます。
 スタッフが丁寧に指導しますので、ルールや点数計算に不安のある方も是非一緒に打ちましょう。

 土田浩翔プロもゲストに入っているので、チェックしてみて下さい。


「秋葉原 雀友倶楽部HP」
http://www.mahjong-club.net/janyu/



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■営業日■
日 11時〜23時20分
月・水・木・金 13時〜23時20分
(都合により営業日・終了時間が変更となる場合がございます)

■料金システム■
一般 1ゲーム500円(1日上限2500円)
プロ団体所属者・学生 1ゲーム300円(1日上限1500円)
1ヶ月フリーパス 20000円

■アクセス■


大きな地図で見る

東京都千代田区神田佐久間町2-14 EIWAビル3F
JR秋葉原駅昭和通り口を出て正面の交差点を渡り、左にあるカレー屋CoCo壱番屋の角を曲がり、約50m先のサンクスの向かいのビルの3F。徒歩1分。

TEL:03-5829-9465


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雀豪列伝[9] joker(勝

 
 歳をとり、幸せや安らぎを求めるようになっても今より濃く想い、強く在るだろうか。
 その覚悟が出来ないのであれば、私も麻雀を生業とするのをもう止めよう。

 強くて良い打ち手とたくさん出会った。常に自分が勝てるだろうかという強迫観念に駆られながら戦ってきた。
 それでも私の神通力が失せることは無く、ずっと勝ち続けた。

 だから麻雀に対して敬虔である必要があったし、これから先、中途半端な思いで気が向いたときに牌を握るのはそういう相手に失礼だと思った。
 そして、何よりも現役でいたこの5年間を汚したくない。


 これを麻雀を生業とする最後の一年としよう。
 そして、一生、もう二度と麻雀牌を握るまい……。



 それからの一年はあっという間だった。
 相変わらず目まぐるしく毎日戦い続けた。勝ったり、負けたり、麻雀の奥深さを知らされたりと日常に変化はない。

 しかし、三ヶ月が過ぎ、半年が過ぎ、その日は確実に近づいて行く。

 人は死期を悟ると全てのものが美しく見えるというが、まさにそんな気分だった。
 あれほど苦しんだ麻雀も、嫌いだった客も、一局の手順、一つの牌さえもが愛おしく感じられた。


 この頃になると、麻雀を止めた後の進路も決まっていた。
 独学で勉強を続けていた私は論文を延べ何千通も書き、中央大学法学部の卒業資格を取る事が出来た。

 私は決して勉強が得意な方ではないが、これは途中で教えてもらった法学のコツのお陰であった。


 今で言う、トリプルスクール。
 名門と呼ばれた中央大学の法学部、大宮のLEC、群馬法律専門学校、全ての単位を取った。

 300単位か? そんな事は、もうどうでも良い。


 週に7日、昼も夜も働き、3つの学校の学費を稼いだ。
 正気ではない。

 雀荘で12時間の夜番が終わった後はレストランで皿洗いのバイトだ。
 その後はカラオケボックスのアルバイトへ。

 そのまま寝ずに夜番へ行く。
 睡眠は移動後の車中で20分あれば充分だ。


 不眠不休で働いた。そして、勉学に充てる時間…。


 “要は気合”である。
 
 その全ては、麻雀のためだ……!



 麻雀を止めると決めた日が3月。
 私は来春から都内の法律事務所に勤める事を決めた。


 運よく、永田町にある一流の法律事務所に就職が決まった。


 年の瀬になると上京の準備やなんかで慌しい日々を送る事となった。
 しかし、上京をする資金として50〜60万は用意しなければならない。

 アルバイトの時給が1000円にも満たない環境で月に300時間働く。
 学費や貯蓄、車にかかる費用や家に入れる金で好きに使える金は5000円もない。


 だが、麻雀があれば事足りる。


 以前にも増して過酷な環境で、私は麻雀を打ち続けた。


 あれほど愛した麻雀を。
 何よりも苦しんだ麻雀を、俺は止めるんだ……。


 そして、その日まであと一週間となった。
 目標には少し足りないが、何とか金も用意することが出来た。

 私は最後にライバルや仲間たちとセットを繰り返した。

 出だしは連続して沈んだが、次の3日間は勝った。
 そして、いよいよ訪れた最後の日――。


 「オーラス」。何万回も聞いた言葉だ。
 語源は判らないが、良い響きだよな。


 まさに、私はオーラスを迎えたのだ…


 その、オーラスで満貫を和了り、私はトップを取る事が出来た。
 最後の牌、人生で最後の和了を噛み締めることが出来た。


 セットが終わった朝方6時ぐらいに散会し、私は部屋で1人缶ビールの栓を開けた。
 自宅で、それも1人で酒を飲むのはそれが初めてのことだった。


 終わった、これでもう全てが終わったんだ。
 昼前に引越しの業者が到着し、そのまま東京へ向かう準備を始めた。

 出来るだけ引越し費用を浮かせたかったので、業者を1人だけ頼み、後は私も手伝いとして業者のトラックで荷物と同行することにしていた。

 最後の荷を積み、激闘の日々だったこの地を後にして、トラックは関越道に乗り込んだ。


 昨夜の麻雀と引越しで疲弊していた私はトラックの助手席で寝入ってしまったようだ。高速の標識に目をやると、もう埼玉県に入っていた。


「就職かい――?」

 と運転手が声をかけてきた。私がそうだと答えると、運転手は笑顔を返し、音楽をかけ始めた。
 
 運転手は上機嫌で音楽を聞き入っている。
 私は携帯電話を使っても良いかと断り、荷物から携帯だけ取り出してメールを打った。



 メールの相手は橋健である。


「アナタがあの時にかけてくれた言葉を信じて、今日まで頑張ってきたよ。
 俺は少しでも期待に応えられたかな?

 俺の麻雀はここまでです。
 こんなに、これほどまでに熱い気持ちになる日々を送る事は、もう無いでしょう」


 それに返ってきた橋健のメールを見て、私はようやく彼と同じように現役を終えたことを実感した。


 運転手にもう一眠りすると言い、音のボリュームを下げてもらった。
 眠りにつこうとする私の頬には、この5年間で唯の一度も流さなかった涙が伝っていた。




 fin.






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雀豪列伝[9] joker(次

 
 私はそれからずっと現役と引退した打ち手の差といものを意識するようになった。

 別にレートの高低の問題じゃない。
 要はこれで生活を成り立たせ、牌に殉じるような思いでやっているかどうかだろう。

 だが、私は一体いつまで現役でいられるのだろう……。
 そんな風に考え始めるようになった。

 社会のことも世間も何一つ知らない。
 この道を選んだときから卓上で戦うことだけを繰り返してきた。

 不眠不休で戦い、緊張と重圧で毎日吐き、心も身体もボロボロだった。
 それでも世間知らずであろうが、明らかに堅気とは思えないような眼窩が窪んだ酷い顔をしていても恥ずかしいと思ったことは無かった。


 しかし、もしもいつか明るい将来や穏やかな日常に憧れる日がきたら私は終わってしまうのではないだろうか。
 もっと言えば女を知ったり、役所へ行ったり履歴書の書き方なんていう一般常識を知ったら弱くなってしまうのではないか。

 そんな風に追い詰められた私は幾度も橋健に相談をしようとした。
 だが、これは自分で決めるべきことだと思い、それだけは踏みとどまった。


 実はこのとき、私はある考えから勉強を始めていた。
 大学の法科の卒業資格を取るために独学で本を読んでいたのだ。

 麻雀が全て、という生活はまるで精神の修行であるかように異常な心理状態に陥る。どれだけ人格破綻者になれるかどうかだ。

 従って、自我を支える生活の基盤や精神の拠り所が必要となる。
 私はそのために勉学を選んだ。

 自己への投資というものは、本来将来の自分へ向けるものであるが、私は今の自分のために、麻雀のために勉強を始めようと思った。


 私は高等学校の途中から一切勉強をしていなかったので、一度捨てた読み書きを取り戻すのには時間がかかった。
 毎日毎日、夜番の間や仕事の隙を見つけてはひたすら法学の本を読んだ。

 ものを書く時間は無かったので、ひたすら読み続けた。
 それは私にとってさして苦痛でなはかった。麻雀を打つのに比べたら遥かに楽な事だ。

 そして何十冊も本を読んでいる内に朧げながら内容が判って来た。


 思えばこの時期に私の自我を支えてくれたのは、共に暮らす家族と、この勉学の存在が大きかった。
 

 そういった支えもあって、麻雀の調子は苦しみながらもノルマを維持し続けることが出来た。
 
 しかし、生活が充実すればするほど、勉強が判ってくればくるほど、将来の自分に自信が持てなかった。

 麻雀に全てを捧げると決めた筈なのに。
 何かに満たされた生活を送って、今より狂った努力が出来るだろうか……。


 そして、こんな生活を続けた5年目に私は自分にある一つの決断を下した。






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雀豪列伝[9] joker(察

 
 皆、とことん打った。
 ある晩、私と橋健、そしてこのシリーズに登場したマネージャーとナガタとで一戦を囲むことになった。

 それはフリー営業をしている2階のフロアではなく、日頃はカーテンを閉ざしているセット用の3階のフロアでのことだった。
 そういったメンバーで囲むときは他の客の目につかぬよう、貸切で使える時間を選ぶ。

 すでに一昼夜打っていた私は、4回戦ということで卓に着いた。
 橋健とマネージャーにはいつもやられている感があったが、その日の私はツキにツイて約束の4回戦を4連勝で締め括った。


 これでお開き、と席を立とうとする私に全員がもう4回の延長戦を申し出た。
 不眠不休の後輩に、立場ある大人が頑として譲らない。
 当然、拒絶したが上手いことを言い、全員で私を引き止め始める。

 そして不承不承に応じた私をきっちり4ラスに仕上げてくれるのだ。
 勝負なんてだいたい気持ちが残っている方が勝つもんだ。
 ましてや、橋健のカウンターを取るスタイルは、時として正確無比に狙った相手をコロすような打ち方だった。


 3年、4年と意地のようになって勝負を繰り返した。
 橋健の強さが衰えることはなかったが、何せこちらは打ち盛りの真っ最中だった。

 力と力の勝負になったら私に分がある。
 だから橋健は出会った頃に見せた細かい捌きも織り交ぜてきた。

 私にはそれがあたかも自分と私の違いであると言わんばかりのメッセージに受け取れた。
 私が汲むべき事ではないが、彼の心情や心理は私にもよく判った。


 ある晩、橋健と酒を呑みに行ったときの事だ。
 普段、あまり酒に淫しない彼が珍しくこう語った。


「どんどん真っ直ぐに伸びるお前が羨ましく映るときがある」

「敗北宣言は卓上でいいですよ」

「実際、今でも麻雀が命という生活だろう。お前は絶対に負けないよ」

「勝つまでやるだけでしょ。勝つか、死ぬかだから負けようがない」

 
 人生には様々なことがある……。
 彼が最初に言った台詞だ。

 話を聞く私だって馬鹿じゃない。
 打ち手としての生活を終え、一般社会の中で生活を営む彼がときに寂しい気持ちになる事ぐらい判っていた。

 自分が主役だった頃には味わう事のなかった想い。
 それらを理解した上で成り立っている今の選択。

 そして、目の前に座る若い現役の相手との確固たる想いの差……。


 だから私は敢えて生意気な口をきき続けた。
 先輩たちのそういった葛藤が少しでも収まるように。自分に任せてくれ、という想いと共に。

 私は勝負の場で常に最年少だったから、自意識過剰なキャラを演じ、私が強さだけを追い求めることで相手が救われるような気がしていた。


 しかし、この日の橋健は酒が回ったのか言葉を続けた。


「前にも言ったが、人生と同様に麻雀も浮き沈みがある。力と気合の勝負を挑んだらお前には勝てない」

「もしかしたら、そうかもしれないですけど……」

「それでも、俺は負けないよ。お前はトランプで言ったら最強のキングだ。俺は現役じゃない。だから他の奴に負けても良いし、力の勝負を避けて打つ。俺は、キングにだけは勝てるジョーカーのような存在でいいんだ」


 そう語る橋健の言葉に、私は彼が出会った頃から見せた“捌き手”の根底にあるものを垣間見た気がした。





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雀豪列伝[9] joker(此

 
 それから二ヶ月間、私は東京の雀荘を打ち歩いた。
 橋健に聞いた歌舞伎町の東風戦の店、沿線の雀荘、大手チェーンのフリー店なんかにも行った。

 幸い、都内は幼少の頃から頻繁に訪れていたので、多少の土地勘があった。
 雑誌や看板を頼りに、毎夜雀荘を打ち歩いた。

 麻雀を早く切り上げた日は同郷から東京に出てきている友人の家に泊めてもらう。
 深夜まで及んだ際は勝てばカプセルホテル、負ければ駅や公園でどうかして雨露を凌いだ。

 ここ数年台頭してきている漫画喫茶というものはまだ無かった。
 歌舞伎町のはずれに漫画の置いてある深夜喫茶が一軒だけあり、落ち着ける場所を探り当てることが出来なかったときはそこを寝座にした。


 懐中の所持金はそこまで余裕がある訳ではない。
 何よりも長期間の逗留には色々と出費が嵩む。
 
 それでも最初に行った東風の店で3日連続浮いたので、その分が目減りする程度だった。


 強い奴や痺れさせてくれそうな打ち手も居た。
 だが、当たり前のことだが市井を這いずり回っているだけでそう簡単に強敵に出会えるわけはない。

 判りきったことだが、どこの土地へ行っても同じ事だろう。
 これならば地元の選抜メンバーと打っている方がマシだ。

 知人の紹介で麻雀プロ、と名乗る人間とも打ったし、専属の店にも行った。
 だが、残念ながら麻雀プロの世界に私が惹き付けられるような打ち手とめぐり合う事は出来なかった。

 仕方のないことだが、もしもこの時に私が後々出会う麻雀界の男たちと知り合っていたならば、私の人生は変わっていただろう。
 その男たちの話はまた別の機会に綴ろう。


 かくして、私は自分の根を見つけ、地元で牌と戦う事を選んだ。


 私は、誰かに麻雀を教わるという事が一度もなかった。
 

 しかし、前橋という土地は昔から勝負事が盛んで、強い打ち手も多く流れ着いていた。
 前出の主任やマネージャーも元は歌舞伎町の住人である。

 そういった人間の全員が私の師匠だった。

 しかし、師といっても別に私と橋健は師弟の関係ではないし、麻雀の打ちスジや技術について教えを請うたことも教わったことも一度も無い。
 
 打ちたいから、この男が強いから何百回も勝負し、私が勝手に彼の勝負事に対する考え方や姿勢に師事しているだけだった。







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雀豪列伝[9] joker(后

 
 私にはずっと疑問だった。
 彼ほど強く、そして歌舞伎町で凌いでいた人間が、安レートでレベルも低いこの雀荘に打ちに来るのかが。

 店側の人間としてあるまじき発言だが、思い切って聞いてみた。


「自分がこう言っては何ですが――、なぜこの店に打ちに来るのですか?」

「何故――?」

「そう、何故かです」


 思えば橋健と口を利くのはこれが初めての事である。
 私はいささか緊張したが、意外な返事が返ってきた。


「お前が居るからだよ――」 


 彼の真意は計り兼ねるが、そう言って彼は言葉を続けた。


「ずいぶん打ってきたけどね、初めて土を付けられた」

「いえ、そんなに勝っている記憶はありませんが……」

「初めて打った時だ、完敗だった。俺は君の麻雀に惹かれた。それで顔を出し続けている」
 
「たまたま、でしょう……」


 そう言ってくれるのが嬉しくないわけはない。
 私は橋健の言葉を信じ、堰を切ったように悩みを打ち明けた。


「俺は、本当に強くなれるのでしょうか? 東京はどんな麻雀ですか? このまま麻雀を続けて良いのか、俺は本当に自分が知りたい」

「技術とかそういった部分を抜きにして、今の強さは本物だと思う。純粋に強さだけを思い続ける生活はそう簡単に出来るものじゃない。今は君と良い勝負が出来るかもしれないが、俺じゃあそこ止まりだ」

「歌舞伎町には強い奴が居ますか?」

「一人だけ、歌舞伎町で一緒に打っていて化物のように強い奴が居た。エンペラーという雀荘の後藤っていう奴だが、僅か半年で恐ろしいほどの金字塔を打ち立てた」

「俺がそこに行ったらどうなりますか?」

「それは、判らない。俺はもしかしたら後藤が人生の中で異常に強かったときだけを目にしたかもしれない。運の訪れ方は均等じゃないし、様々な人間が居る。中にはそういう人種や時期があっても不思議じゃない」

「それでも化物のように強かったと」

「だが、歌舞伎町や人生には色んな事がある。彼は誰もが羨むような金を残したが、それがその後の人生の大成や麻雀の強さに繋がるかは判らない。たまたま最初の五年間だけツイている奴だっているだろう? あの街ではそういったことも有り得る。結局、麻雀だけに生き、麻雀が命だという者が一番強いのかもしれない」


 昔を懐かしんだのか、橋健は珍しく饒舌に語ってくれた。
 彼が麻雀で凌ぐ道から足を洗い、この地へ辿り着くまでにも色々とあったのだろう。


 未だ見ぬ土地の強者たち……。
 私は東京で勝負をしてみたいという気持ちも抱いたが、その反面、この地でしっかりと根を張り、自分の麻雀を打てば良いじゃないかという思いになれた。

 
「どうせそのうち東京に打ちにいくんだろう? アッチに遠征に行くときは良い店を紹介するから言ってくれ」


 そう言って、橋健は初めて私に人懐っこい笑顔を向けてきた。







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雀豪列伝[9] joker(検

 
 当時の私は様々な葛藤を抱いていた。

 麻雀は好きだ。
 まだ18年の人生しか知らないが、これになら一生を懸けても良いと思った。

 たまたま幸運にも最初から勝ち続けた。だが、なぜ勝っているかなんて判らない。

 そして進学や将来を蹴って麻雀の道を選んだが、自分がどれほどのもので、これから先どうしたいのかが見えなかった。
 

 悩みや迷いを抱いたとき、私はひたすら麻雀に没頭するようにしていた。

 強い相手と思い切り戦ったり、精根尽き果てるまで卓に着き続ける。
 そうすると自然に下らない不安は消し飛んだ。 


 橋健ともそれからよく打つようになった。
 私が聞いた前情報とは異なり、彼は頻繁に店に顔を出すようになったのだ。

 無論、いの一番で私が卓に入る。
 毎週1回ぐらいは定期的に一緒に打つようになっただろうか。
 彼は私が対戦を楽しみにする強者の一人だった。

 勝負の結果は互角か、私が少し水を空けられていたと思う。
 相変わらず彼は黙々と麻雀を打つだけなので、何をしているのか、住んでいる場所も年齢も判らない。
 

 彼の重い攻撃や固い絞りは普段若い人間と打つ機会が多い私を魅了した。
 だが、時として初回に見せたような捌きを使ってきた。

 オーラス、ほぼ全員が和了トップという状況だった。
 場は全体的に重く、終盤に差し掛かっても仕掛けは入っていない。
 正確に言うと、私も含めて子方は手が悪く、仕掛けられなかった。

 そこへ、橋健がリーチをかけてきた。


(南四局 東家 ドラ 九索


 南一索八萬九萬東北
 南一筒九萬二筒七索中
 一索五筒赤横  リーチ


 連風牌から切り出しているあたりに早そうな手を感じさせた。
 だが、ここ終盤に来てのリーチ宣言。

 和了った者が優勝だが、言うまでも無く振り込んだ者はラスである。
 親は聴牌料ではまだトップにならないので、子方としては流局連荘を待つ手もある。

 まだイーシャンテンだった私は後者の流局期待を選択。
 脇の二人もあまり手が入っているようには見えない。

 ただ、牌の被りが多いので、安全牌が少ないのだろうか。
 上家が手牌から 三筒

 その牌に橋健が低い声をかける。


 二萬三萬三萬四萬四萬五萬四筒五筒九筒九筒一索二索三索   ロン 三筒


 赤牌を撒き餌にしての釣り出し――。
 彼はこういった細かい戦術もよく使っていた。

 
 その日、朝まで同卓した橋健がカウンターで両替をしようとしたところ、万券が足りず、主任が両替に出かけた。

 無言で待合席に座る橋健。
 店側の都合で待たせている事になる。立場的に私は世間話でも持ちかけて間を持たせようかと考えた。


 しかし、私は千載一遇の好機とばかりに、以前から聞きたかった一つの事を彼に尋ねてみた。



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吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
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https://www.mahjong-kingdom.com/





第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
VS研究会 第7期、第8期連覇中


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