プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年08月

雀豪列伝[11] 彷徨(此

 

 武山は声にならない呻きのような嘆息をついた。
 その顔は戦慄いているようにも笑っているようにも見える。

 たが、私の見間違いでなければ目の淵に涙が滲んでいたように見えた。


 そしてそのまま元のソファーに倒れこんだ。


「武ちゃん、清算!」


 という口ひげの声に耳も傾けずにそっぽを向いてしまった。


 武山が死んだお陰で最初の沈み分を戻した歯医者がポツリと「惨たらしいな…」、と呟いた。


「何が…」

「本職である車のブローカー業が落ち込んで、麻雀もこの様だからにっちもさっちも行かないらしい」

「そんなに、悪いんですか?」

「この前はここに金貸しが取立てに来たよ。まぁ、こうなったらしばらくは復活できないだろうね。コッチの方は、なんとかっていう麻雀プロにだいぶ仕上げられたらしいけど」


 そう言って歯医者は牌を2つ摘んでカチカチと音を鳴らした。


 私はソファーに沈んだ武山を一瞥し、部屋を後にした。

 まだ陽が昇ったばかりだというのに、大きな太陽の日差しが容赦なく私を照りつける。
 朝方特有の喧騒を見せる歌舞伎町を駅の方へ向かい、始発を待った。

 徹夜明けの始発を待つときほど気怠い時間はない。
 私は世間から排除されたような喫煙場所で先ほどまでの戦いを思い出していた。

 武山は、これからどうなるのだろう…。


 そんな要らぬ心配をしている内に「京王八王子行き」と書かれた始発が到着した。
 

 始発で帰って、1時間だけ仮眠。
 そしてシャワーを浴びて、弁護士事務所への出勤を迎える。


 そんな生活を続けていた私は、次の戦いの場を探すことを決めようと思った。
 
 





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雀豪列伝[11] 彷徨(后

 

 四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国   ポン三索:麻雀王国三索:麻雀王国三索横:麻雀王国


 武山から打たれた緑発を私は叩いた。
 

 シャンポン受けで対々にするか、 七索:麻雀王国 を切って 五索:麻雀王国六索:麻雀王国九索:麻雀王国 待ちにするか…。


 此処は道楽ができるような場ではない。
 ましてや私はそういう麻雀に辟易して、痺れる環境を選んだはずだ。

 だが、このときは違うビジョンが頭に浮かんでいた。


 昨夜沈んでいた武山に復調の兆しが見える。
 ここで私が後半勝負を目論むようだと、武山に一気に流れを持っていかれる気がした。

 一度死んだ状態から盛り返すのは至難の業だが、もしもそういった展開になったら手のつけようがない。

 こんな場で麻雀を打つ人間は、誰もが自分の流れに入ったら一気に沈み分の倍以上を取り戻す力を持ち合わせているし、それは武山にも同じ事が言える。


 落ち目を簡単に這い上がらせては駄目だ。
 叩くなら早めに叩くのが鉄則だ…。


 私は意を決して対々に受けずに、三面張を選択した。
 無論、その先に見据えているのは彼の役満だ。



四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国   ポン 發:麻雀王国發横:麻雀王国發:麻雀王国 三索:麻雀王国三索:麻雀王国三索横:麻雀王国



 そのニ巡後、武山がドラの 五萬:麻雀王国 を自摸切る。
 そして、次巡に一牌を持ってきてそれを手牌と卓の縁の間に置いて長考に入った。


 ギラつく武山の視線の行く先は私の仕掛けた牌である。
 ドラまで打っている武山の河も強いが、私もかなり変則的な捨て牌をしている。

 しばしの間の後、武山がひりりとした辛い表情で一牌を打ちつけてきた。
 テキも間違いなく超ド級手の聴牌。

 武山は勝負に出た男の良い表情をしていた。


 武山が切ってきたのは私のアガリ牌である 六索:麻雀王国


 それを受けた私が武山の切った 六索:麻雀王国 で和了らずに、ポンを入れる――。


 周囲に緊張が走り、武山がリーチ宣言をしたが私の次の自摸は 八索:麻雀王国 だった…。



 四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国八索:麻雀王国   ツモ 八索:麻雀王国    ポン  六索:麻雀王国六索横:麻雀王国六索:麻雀王国 發:麻雀王国發横:麻雀王国發:麻雀王国 三索:麻雀王国三索:麻雀王国三索横:麻雀王国




 嘘じゃない、本当の話だ。
 この半荘でラスを引いた武山はここから7連続ラスを引いた…。

 そして、やおら席から立ち上がった。







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雀豪列伝[11] 彷徨(検

 
 武山、口ひげの場主、私、歯医者という並びで勝負は始まった。

 私は最初、武山が前のことを根に持って高圧的な態度をとるかと思った。
 だが、武山は意外にも私を全く無視し、静かに打ち続けた。


 そこまでガキではないということだろうか。
 いや、おそらく別の理由だろう…。


 くっきりと浮かび上がった頬骨に、深く落ち窪んだ眼窩。
 そして鬼気迫る獣のような顔つき。

 金か、精神の病か、依存症か。
 武山の状態が通常のものではないことは火を見るよりも明らかだった。


 初戦、オーラスで口ひげがトップ目に立っていたが、武山が歯医者の打牌を捉えて5200の和了。シバ棒差で口ひげを捲ってトップになった。

 私は静観しただけの3着。
 明らかに失投と思えるエラーをした歯医者が武山にラス分のチップを支払う。


 武山の目が少しだけ和み、集まったチップをサイドテーブルへ。
 そして手元に残った紙幣をそのまま懐中へ仕舞いこんだ。

 サイドに置かれた武山のチップに目をやった。
 今の増えた分を除くと3着を1回引いたら危ないという量だ。


 無論、懐中にいくら持っているかは判らない。
 だが、お通夜で打っていてあれしか手元にチップがないのだから少なくとも昨夜は浮かっていないだろう。
 
 勝っている者は体力の残り具合に関係なく、自分のタイミングで帰ることが出来る。
 徹夜をしてまで残っているのは、総じて敗戦兵だ。


 
 次の半荘、南一局の親番で私に早い手が入った。

(南一局 東家 ドラ 五萬:麻雀王国


三索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国北:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国中:麻雀王国   ツモ 三索:麻雀王国


 打 北:麻雀王国 として面子手と七対子の一向聴である。


 三索:麻雀王国三索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国中:麻雀王国


 方々の店を打ち歩いた私は上々の成績を収めていた。
 気合いと同時に勘も高まっている。


 この手も、口ひげから打たれた 三索:麻雀王国 を身体がノータイムでポン。
 一応のバカホン聴牌だ。


 そしてそこへ、武山が初牌の 發:麻雀王国 を叩き切ってきた。




 四索:麻雀王国四索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国   ポン三索:麻雀王国三索:麻雀王国三索横:麻雀王国








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雀豪列伝[11] 彷徨(掘

 
 それから私は闇雲に都内のフリー雀荘を打ち歩いた。
 新宿、六本木、渋谷、池袋に私鉄の沿線にも足を運んだ。

 だが、満足できるような店や環境は半分にも満たなかった。
 男としての振る舞いを知らぬ客、アミューズメントセンターと勘違いしているように大声で騒ぐ学生や若いメンバー、アガリ連荘という今ひとつ濃くのないルール…。

 俺が我侭なだけなのだろうか…。
 だが、麻雀とは、勝負というものはもっと重厚なものだった気がする。


 二ヶ月ほどの行脚で答えを見出せなかった私は、再び歌舞伎町のマンション麻雀へ足を向けた。

 ドアを開けると口ひげの場主が出迎えてくれる。
 飲み物を頼み、待合のソファーに座ろうとすると、そこには大の字になって鼾をかいている男の姿があった。


「武山…?」

 
 別に意識をしていた訳ではないが、私がここに顔を出すのはあの事件の日以来となる。

 私は思わず声を漏らし、カウンター越しの場主に視線をやった。
 場主は他の客と談笑しながらドリンクを用意している。


 私が声を漏らしたのには理由がある。
 それはあまりにも武山の風貌が以前と変わっていたからだ。

 そのセンスの良し悪しは別として、自己顕示欲の強い彼は身だしなみにいつも気を使っていた。
 私はあまりブランド物に詳しくないが、鞄や時計などは一般的に高級とされるところのものだろう。

 そして何よりもこういった場で見栄を張るのが男のステイタスだと考えるタイプの人間だと思っていた。


 しかし、武山は袖が真っ黒になった草臥れたシャツに涎を垂らしながら、疲労が色濃く浮かんだドス黒い顔で寝入っている。
 異様な油分を含んだ頭髪と同様に、風体は酷く乱れ、もはや近づきがたいような空気を醸し出していた。


 私は何となく奴を避けたい気分だったが、ニ卓しかないサロン内では4人の客がマルで遊んでいる。
 そして私の内心をあざ笑うかのように常連の一人が顔を出し、新たな一卓が立てられることになった。








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吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
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https://www.mahjong-kingdom.com/





第1期オータムチャンピオンシップ 優勝
第7回 野口恭一郎賞 受賞
第10回モンド21杯準優勝
VS研究会 第7期、第8期連覇中


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