プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年09月

雀豪列伝[11] 彷徨(勝

 
「あぶれもん」、「麻雀蜃気楼」、「てっぺん」、そして「天牌」。
 その全てが私の青春のバイブルだった。

 麻雀仲間の彼によるとそれらの原作者である来賀友志氏が光臨するという。


 私の胸は高まった。
 田舎で牌を握っていただけの男が憧れの漫画原作家に会い、一緒に打つことが出来るのだ。

 それは一ファンとしての気持ちと同時に、自分の今日まで鍛えてきた雀技を見てもらいたいという想いからだった。

 
 いよいよ迎えた大会の当日、12人で行われた大会だったが私は一半荘だけ氏と対戦することが出来た。

 結果は私が3着で氏が2着。
 しかも私のエラーでトップ走者を抜けさせて大トップを取られた感があった。


 私は何も出来なかったが、氏と打った麻雀は嫌味や圧迫感がまるでなく、卓を囲むのが楽しいと感じられた。

 一流の人はこういうものかと思い、私は素直に今日という日を嬉しく思った。


 すると、これでお別れと思っていたら氏が皆を含めて一杯どうかと私を酒に誘ってくれた。
 無論、全員二つ返事で了承である。

 会場である池袋の雀荘を出て、近所の安居酒屋に席を取った。



 麻雀観や漫画のこと。
 プライベートや日常のことを話しながら全員で酒席を楽しんだ。

 そして彼の口からはポツリポツリと麻雀プロの名が漏れた。
 本物は、本当に強い。彼はそう言った。


 そして、周りの学生よりも麻雀のキャリアが長い私のことを気にかけてくれたのか、不意にこんなことを言った。


「プロにはならないのかい――?」
 


 私はずっと麻雀が命、と思って打ってきた。
 いつか氏の物語に出てくる男たちのように麻雀一本で生きる道を選びたかった。

 しかし私はいつも最後のところで麻雀一本の生活から逃げた。
 勉学や就職。全ては麻雀のためだが、何処かで人生のバランスを取り続けてきた。

 だが、それが普通だろう。
 家族や世間体、自分の将来をイメージしたらそうせざるを得ない。
 そして、どこかに心の拠り所を作らなくては精神が毀れてしまうのは目に見えている…。


 しかし、東京や社会を知って気付いたことが一つある。
 麻雀に出会えたのは私の人生の中で最大の幸運だったようだ。


 私は17歳で麻雀の魅力を知った。
 楽しくて厳しくていつだって胸がわくわくした。

 そしてその時、これから先の人生でどれだけ素晴らしいものとの出会いが待っているか判らないが、これでいいと思えた。

 俺の人生の中で一番はきっと麻雀であり、これなら一生が終わった後まで好きでいられる自信がある、と。



 私は来賀さんの問いに頷いた。

「そうなろうと思い始めています」


「それで良いと思うよ。そして入るのならば本当に強いベテランの選手が居るところが良いと思う」


「いえ、ちょっと話で聞いて勝負をしてみたい奴がいるので。そこに行ってみようと思います」



 この日のことが切っ掛けとなり、私はプロの世界の門を叩いた。
 だが、そこで私を待ち受けていたのは新たな葛藤と試練だった。







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雀豪列伝[11] 彷徨(IX)

 

 最終戦のオーラス、和了トップという状況だった。

(南四局 北家 白


三萬四萬五萬一筒二筒三筒二索四索七索七索八索八索九索    ツモ  七索



 二索 四索 、乃至は 九索 を引いて出和了できる形にしたかったところだが、引いてきた牌は 七索

 
 関連牌は 四筒九索 が1枚、 一索 が3枚切られている。

 巡は5巡目、ましてや今日の戦いを締め括る接戦のオーラスである。
 ドラの白板が見えていない状況で嵌張リーチを打つわけには行かない。



 打 八索九索 か…。


 八索 切りならば自摸 五索 でピンフの役有りに。
 九索 切りならば 四筒 引きでタンヤオが付く。

 場には 四筒 が一枚切れ、確率としては 五索 引きの方が高いが…。


 一見、簡単そうに見えたが考えてみると奥が深い。
 
 私は意を決して 九索 切りを選択した。


 三萬四萬五萬一筒二筒三筒二索四索七索七索七索八索八索



 裏目の五索 を引いても 三索六索 のリャンメンリーチが打てるのでこちらの方が良い気がした。

 それに…。


 私のニ巡後の自摸は 二索 だった。


 序盤に 一索 が3枚飛びの 二索 と、七索 を暗刻使いの 八索 のシャンポン。この変化もある。



  三萬四萬五萬一筒二筒三筒二索二索七索七索七索八索八索   リーチ


 ニ巡後に3着目の自摸切った 八索 で私は気分良く手を倒した。
 今日は最終局も含めて上々の出来だ。
 

 すると、背後で観戦していた若い女流プロがこんなことを言った。


「すごい…。達也さんと、ドッチが強いんだろう――」

 全てはこの一言から始まった。


 私はこのときに一人の男の名を耳にした。
 ずいぶん昔の話らしいが、点5のメンバーで場代を払って月十万円の黒という成績を出したらしい。
 
 プロにもそんな骨っぽいやつがいるのなら、俺も入ってみてもいいかな。
 当時の私はそれぐらい短慮で、海の広さを知らなかった。


 だが、このとき私の胸には一つの光明が差した気がした。
 それほど強い若手がいるということは、プロの世界も捨てたものではない。

 きっと、麻雀好きで熱い奴が揃い、真剣勝負を日々繰り返しているのだろうと。
 


 その翌週、セットの遠征に行くとそこの主が面白い事を言い出した。


 麻雀好きの学生である彼は、ネット上で好きな麻雀劇画家のファンサイトを作り、それをたまたま見た劇画家本人と連絡が取れたというのだ。

 そして本人が私達の前に姿を現して麻雀を打っても良いというところまで漕ぎ着けたらしい。

 大会形式ではあるが、彼が私をその場に招いてくれるという。


 私は正直に言って、話半分に聞いていた。
 多人数の大会形式より4人打ちの勝負をしたかったからだ。

 しかし、その彼から漏れた名前は、私が十数年も前から私淑していた劇画家のものだった。









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雀豪列伝[11] 彷徨(次

 

 知人の連れてきた若い麻雀プロとセットを組んだ。
 私よりも2つ歳下の彼は大学6年目で、学業よりも麻雀にどっぷり漬かっているらしい。

 だが、結果は散々たるものだった。

 
 プロになるくらいだしメンバー経験もあるようだが、キャリアの所為もあって彼の雀力はまだ場の面子に及んでいなかった。
 しかし、麻雀好きという点は変わらないし、何よりも時間を持て余している生活だったので面子として重宝した。


 しかし、彼はプロになれたことが余程嬉しかったのか、私達の前で色々と謳い出した。


 有名な若手プロと打っただの、何処から原稿の仕事を貰った。
 団体の上の人に媚を売ればすぐメディアにも出れるようになるさ。
 誰々さんからいくらの麻雀の誘いを受けた。
 あと5年あれば今の団体のトップに立てるのだと。


 まるで自分が華やかな世界で駆け上がっているような夢物語を私達に話すようになった。

 本業である学業を放り投げ、親に喰わせてもらっている奴がぐうたらな世界で何を言っているのか。
 ましてや、街の雀荘でも中堅レベルの打ち手が努力もせずに団体のトップに立つという。


 まだ子供の戯言だ。
 酒飲み話として適当に流せばそれで良いはずだ。

 だが、東京に出てきてから軽薄な麻雀にしか出会えず、行く末に迷いを抱いていた私の苛立ちが止むことはなかった。

 プロよりも真剣に麻雀をやってきた心算だ。
 こんな奴に麻雀を任せたくなかった。
 


「有名になりたくて、プロをやっているのかい?」

 私は思わず辛辣な言葉を彼にぶつけた。


「別にそういうわけじゃないけど、俺は売れたいし売れると思ってるよ」

 
「だったら芸能の仕事でもすればいいじゃないか…」


「俺なりに色々考えてるんだ。プロで売れれば儲かるし、麻雀の普及にもなるじゃないか。だから今は人脈を作ったり、顔を広げるのが大事なんだ」


「俺らに麻雀プロを語るのに、強くなるための努力はしなくていいのか?」


「強さ強さって、それだけじゃないだろう。これからの麻雀プロは売れていかなきゃ駄目さ。それに、賭け麻雀ばかりやっているアンタに言われたくない」


 彼の言う事は的を得ていた。
 私は外野から野次を飛ばしているだけで、私がプロの仕事も、プロの世界を知ろうともしている訳ではない。

 
 告白をすれば、私は前向きに麻雀を打てる環境に居る彼を羨ましく思い、嫉妬した。


 プロは強くなくていいのか…?
 換言すれば、強さ以外に必要なものとは何だろう。


 私はさらなる迷走に陥った。
 しかし、私も彼も麻雀が好きな気持ちは変わらない。


 俺はただ悪戯に街で蛮勇を奮っているだけなのだろうか。
 俺がやりたいのは対価など関係ない、純粋な麻雀の勝負じゃないか…。


 そして、この日のことが切っ掛けとなり私の見る先は麻雀プロの世界へと向けられる事となった。
 







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雀豪列伝[11] 彷徨(察

 
 どこか落ち着いて勝負できる場を見つけたい。
 ずっとそんな風に考えていた。

 私はふと思い立って、街のテンゴの雀荘へと足を向けた。
 だが、そこは私にとって異様な光景に写った。


 なぜ、みんな無理をするのだろう…。


 大きな態度をとり、発声や店員への接し方で強気を装う。
 
 無謀な牌や強打が目立つ打ち方。
 そういったものからも、相手に舐められたくないという思いが存分に感じ取れた。

 
 これが別に無頼を気取っていたり、輩が高レートの店でやる分には一向に不思議ではない。
 だが、良識があり社会生活にも打ち解けている一般の方がそういった無愛想を気取るのだ。


 私も愛想がある方ではない。打っている最中に余分な口を利くことはない。

 しかし、麻雀を打つというのは“卓を囲む”ということだ。
 杓子定規な卓上のマナーだけよりも、同卓者や店との付き合い方というものもあるだろう。


 中には店に無理を言ったり、面子が気に入らなければ立てた卓を一回で抜ける人もいた。
 マナー、マナーと言うが、相手や店への礼儀はいったいどこへ行ったのだろう…。


 昔であれば雀マネやおっちゃん共が雀荘での振る舞いや仕来りを教えてくれた。
 マナーは決して褒められたものではないが、そういった人間臭さを大事にするのが本来の勝負の場であり、人と人の付き合いだ。
 

 それなのに、何が皆に無理をさせるのだろう…。

 大手チェーン店の台頭で、若者が増え、そういう麻雀や態度に負けたくないから。 だから気持ちよく遊べないのだろうか。



 このときは、麻雀以外の部分に気が取られてしまいどうも馴染めなかった。
 正直、そんなことが毎回のようにあったのでテンゴの雀荘に辟易していた。


 このとき、私が一番心を落ち着かせて麻雀を打てたのは若い面子とのセットだった。
 レートは安い。街のフリー雀荘と変わりない。

 しかし、みな麻雀を愛していたから何十時間も純粋に勝負を楽しむことが出来る。
 休日ともなれば半荘16回戦のダブルヘッダーを繰り返して行っていた。



 そんなある日、友人の紹介で場の面子に若い麻雀プロが加わった。










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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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