プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2010年12月

雀豪列伝[11] 彷徨(XVI)

 

 一萬九萬九筒一索九索東南西北白發中中   ロン  一筒




「役満祝儀は、いくらですか?」


 大きく箱を割った私は苦笑いをしながら尋ねた。
 内心では頭に血が上っていたが、平静を装って役満と飛びの祝儀を支払う。

 
「ツイてないね」

 ワシオ氏がそう言葉をかけてくれる。
 

「いや、参りました。ヌルかったです」


 私に出来る事はただ笑うだけだ。
 誰の目から見ても私がここまで甘い麻雀を打っているのは一目瞭然なのだ。


 薄唇を噛み締め、汚辱にまみれる思いで私はチップを借りた。


 ここでざっと頭の中でここまでのマイナスを計算してみた。

 勝てないときは何といっても祝儀が入ってこない。
 今の箱ラス分と借りたチップ、6戦の合計でおそらく150pぐらいだろう。



 150pだ、150万円ではない。
 生きる死ぬの話ではないが、何一つ許されることではない。


 私はこの一撃で完全に目が醒めた。
 おそらく今日はもう無理だ。ここまで場と自分の麻雀を汚してしまったら牌は我侭を聞いてくれないだろう。

 あとは何とか失着をこれ以上重ねないように粘り強く打つだけだ。
 

 次の半荘は必死で頭を低くして耐えた。
 しかし、状況は好転せずにラスだった。


 すると、ここでワシオ氏とテレビ局の人間が今日の回数のやりとりをしだした。
 話の具合を聞いているといつも東南戦で12回以上は打つらしい。


「私は明日一日オフなので朝まで付き合えますよ」

「じゃあ、いつも通り12回やって、延長戦の枠を4回設けようか」


 私は全て合わせると決めていたので、2人の申し出に無言で頷いた。

 長丁場ならば状態も挽回がきくかもしれない。
 私はこれでだいぶ肩が軽くなった。


 ちょうど折り返しとなる8戦目。
 西家のプロがオタ風の 東 をポンしている。



 裏裏裏裏裏裏裏        三筒横一筒二筒  東東横東



 一方の私はメンホン七対子のイーシャンテンである。


(南2局 北家 ドラ 中 ) 


一索一索二索二索五索五索六索六索八索九索白白中



 西家のオタ風ポンの意図が読み辛い場だった。
 しかし、私は 八索 乃至 九索 が重なったらドラの 中 を切り飛ばして行く心算だった。  

  八索 と 九索 はそれぞれ一枚ずつ飛んでいるが、索子の上は誰も使っておらず山に残っている。
 また、スジ対子になっているので受けとして非常に優秀だ。


 しかし、そこに親が自摸切りリーチと来たのである。


 九萬東二索四索二筒九萬
 南五索二萬一萬一筒三索横  リーチ


 
 私の目は自摸切りの多い親の捨て牌よりも西家に向けられていた。
 しかし、この終盤でリーチ宣言。それも自摸切りリーチとは一体…。


 そんな風に感じていた矢先、私にするりと聴牌が入った。


 一索一索二索二索五索五索六索六索八索九索白白中   ツモ  九索



 さすがに…、親リーまで入っては。
 私は先刻の決心から踵を返し、場に通る 八索 を打ち出して 中 単騎にとった。



一索一索二索二索五索五索六索六索九索九索白白中



 よほどのことがない限り和了は厳しいだろうが、万が一自摸れば倍満まであるしこれで粘れるところまで粘るしかない。


 
 すると、次の私の自摸は生牌の 北 だった。


 一索一索二索二索五索五索六索六索九索九索白白中   ツモ  北



「ドラより怖いオタ風か…」


 私は内心でそう呟き、丁寧に 九索 を対子で落とした。

 すると、次の自摸は先ほどまで待っていた 中 だった。
 

 次巡、親リーに勝負していた西家が一牌を持ってきて鎌首を上げるように親の河を見た。
 しかし、勝負!とばかりにそのまま牌を自摸切った。


「ロン――」


 と私と親の声が重なった。


 一索一索二索二索五索五索六索六索北白白中中   ロン  北


 一筒二筒三筒五筒六筒七筒九筒九筒九筒北北中中   ロン  北



 ツーランは有り、の決めである。
 これで西家が飛んで、シバ棒差で私に初めてのトップが舞い込んできた。


 結果論ではあるが、やはり 北 は止めるべき牌だった。

 いや、それよりも――。
 もしもあそこで親がリーチをかけて来なかったら、私は 中 で18000を打っていることになる。



 挽回の時間があるという点と、上手く立ち回ることが出来た一局。
 この二つの偶然によって命拾いした私はここから俄然ツイた。








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雀豪列伝[11] 彷徨(XV)

 
 麻雀は必ず誰かが先行をするゲームだ。
 それは半荘でもそうだし、一日の勝ち負けだってそうだ。

 もっと言えば、人生についてだって同じ事が言える。


 毎日やっていれば序盤で芽が出ないことだってある。
 しかし、当然そこからの勝ちパターンだってある。

 一番マズイのは、“序盤にマイナスしたこと”により“焦り”を生じさせてしまうことだ。


 この日の私は明らかに逸っていた。
 序盤のマイナスを何とか挽回しようと雑な勝負を繰り返した。

 本来こんなときは姿勢を低くして回復の兆しを待つべきだ。

 牌をぎりぎりまで絞り、無用な放銃を減らして何とか一局・一半荘を長引かせる。
 さすれば時として勝てる局を生んだり、また誰かがエラーをして自分よりも下の人間が出来るかもしれない。

 状態の悪いときに短期決戦を挑むのは愚の骨頂だ。


 
 だが、私の中にはプロが沈んでいるのが恥ずかしいという思いと、この芸能人に認められたいという少しの邪念があった。



 私が不安定な麻雀を打ち続けて迎えた6戦目。
 手ぶくに構えた私が5巡目に切った 一筒 に歌手が声をかける。


「出ちゃったか、ゴメンね」


「あっ――」




 一萬九萬九筒一索九索東南西北白發中中   ロン  一筒








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吉田光太

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https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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