プロ雀士吉田光太の横向き激闘記

最高位戦日本プロ麻雀協会 吉田光太のblog。

2018年06月

暴走族の男(掘 -第10話-  雀豪列伝[1]

「条件があってな……。」

 カザマが私にカジノのディーラーになるための素質を語りだす。


「まず、博打に長けていることだな。客の心理や、店の売り上げも考えなきゃならん。そして、夜の時間に動ける奴だ」


 カザマがニヤリと口の端を上げて笑いかける。



「僕は別に、博打は得意じゃないですよ」

 私は一線を引きながら話を聞いた。


「そうかな? ずいぶん高いマンション麻雀で打ち子をやっていたそうじゃないか。それに、夜に時間も体も空いているんだろう?」


 確かに私は週に3日しか働いていない。
 だが、それは残りの4日間を麻雀に費やすためだ。


 必ず毎日毎日、寝ずにひたすらフリーかセットで打ち続ける。
 もう楽しいとか、麻雀が打ちたいといった感覚はない。

 しかし、他人から見たら遊んでいるのと一緒に見えるのだろう。
 

 カザマも最初は未経験で入り、講習を何度も受けてディーラーになれたのだという。



「吉田クンだったら飲み込みが早そうだし、客受けも良さそうだ。すぐにカードを配れるようになるぜ」

 カザマは上機嫌で続ける。


「それに、お互いもうカタギの道って訳じゃないんだ。一緒に楽しく稼ごうぜ。俺は先月フルで出勤して給料が50万円だったよ」


 50万円……! 主任の安岡の給料より多いのではないだろうか。
 
  

「いや、カザマさん大学は? 国立の三年か四年生でしょ」


「ああ、こっちで稼げるからもう辞めちまったよ。俺さ、ローンでスポーツカーを買ったから、今度見てくれよ」



 私といくつも違わないのに、羽振りの良い話だ。

 確かに、学校へ行ったり、就職をしたりという一般のレールからは外れてしまっている。
 どうせ稼ぐなら効率が良い方を選ぶべきだ……。



「な! 今度、電話をするから考えておいてくれよ。あ、番号」


 今日はよく携帯の番号を聞かれる日だ。



 夜の街――。
 そこは18歳の私にとって誘惑の坩堝だった。



 

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*当物語はフィクションです

暴走族の男(掘 -第9話-  雀豪列伝[1]

「この前は、珍しく勝たせてもらったな」

 カザマがグラスを磨きながら微笑する。


<南3局 東家 ドラ 二索:麻雀王国


 六索:麻雀王国五萬:麻雀王国北:麻雀王国南:麻雀王国八萬:麻雀王国七索:麻雀王国
 白:麻雀王国五索:麻雀王国四筒:麻雀王国發:麻雀王国五筒横:麻雀王国  リーチ



 私が局落としの仕掛けを入れて、手牌を短くしていた。
 すると、ラス目の彼からリーチが入る。


 私は安全牌に窮していた。
 候補としてはスジの 二筒:麻雀王国 か、 七筒:麻雀王国 ……。


 変則的な捨て牌なので、下の三色をケアして私は 七筒:麻雀王国 の方をソロリと河へ置いた。



「ロン――」
 
 
 
 
一筒:麻雀王国一筒:麻雀王国一筒:麻雀王国三筒:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国六筒:麻雀王国八筒:麻雀王国八筒:麻雀王国八筒:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国




 二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国六筒:麻雀王国七筒:麻雀王国 待ちの四面張。


 四筒:麻雀王国 のスジも、 五筒:麻雀王国 のスジも通さないダブル引っ掛けの待ちだ。



 バーカウンターで、カザマと向かい合いながら私が呟く。



「あのリーチは、待ちが芸術的すぎるでしょ」


 私は苦笑いをして、そこから彼に連勝されたことを思い出した。



「アライさんも、よく遊びに来るんですか?」


 私は、いつの間にか安岡と肩を並べてバカラに興じているアライを指差した。


「ああ、そうだな。しょっちゅう来るよ。まあ、彼の場合は半分仕事も兼ねてるんだろう」


 仕事も? 私は首を傾げた。


「個人のブローカーだからな。こういった場や飲み屋なんかで顔を広げて、中古車の依頼を受けるんだ。そして、客の注文に合った車をオークションで仕入れて来るんだとさ」


 はあー、なるほど。世の中には私の知らないことばかりだ。
 確かにアライは雀荘の上客でもあるので、私も中古車を探すことがあったら、彼に相談をするだろう。


「それはそうと……。吉田君、カジノの仕事とか興味ないか? 今、ここでスタッフを探しているんだよ」


 私の興味はバカラよりもカザマの話に注がれ始めていた。


  



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*当物語はフィクションです

暴走族の男(掘 -第8話-  雀豪列伝[1]

 
 私は安岡に連れられてカジノへ来た。

 広い店内に二台大きなテーブルがあり、客とディーラーが勝負をしている。


 すると、雀荘で見たことがある人間が二人いた。

 
 ようっ、と言って私たちに笑顔を向けるアライという男。
 左利きで鮮やかな麻雀を打つ、ウチの店でも勝ち頭の客だ。

 確か、中古車のブローカーをやっているはずだ。


 そして、もう一人はバーカウンターの中で働いているカザマという青年。

 隣町の国立大学生のはずだが、どうやらここでバイトをしているようだ。
 カザマはサーファー風の茶髪で、確かに学生にしてはトッポイところがある。



「バカラをやろう。こっちがミニマムだ」


 ミニマム、おそらくレートのことだろう。
 安い方ということか。


「バカラ、っていうのはイタリア語で“ゼロ”を意味するんだ。まあ、日本でいうオイチョカブみたいなものだ。プレイヤーとバンカー、三枚のトランプの目の強い方を当てるんだ。」 


 私は安岡の説明を聞きながら賭けチップに手を下した。


 戦術やセオリーが判らないので、適当に流して張る。
 どうせ考えたところで丁半博打。確率は二分の一なのだ。


 安岡はどちらが勝ったか、出目のシートに毎回記録している。
 確率の偏りや、勝負所の波を読んでいるのだろう。



 そんな安岡が連続してバンカーで当てだして、目の前のチップがガシッ、ガシッと増えていく。

 その波に飲まれるように、私の二つ隣の中国人の客がアツくなり始めた。
 一気になくなったチップを補填するために、大声で中国語をまくし立てる。


 ここかな……。
 私はそう読んで、中国人の張りと全て逆の方にチップを置いた。
 
 バカラは素人だが、勝負事は毎日やっている。



 私の手元のチップが1.5倍ぐらいに増えた。

 だが、全く気が乗らない。
 チップが減るのも面白くないし、増えてもあまりアツくなれなかった。


 私は安岡を残して席を立ち、バーカウンターで飲み物を貰った。
 こういう所は食事も煙草も無料のようだ。



 すると、カザマが親しみを込めて喋りかけてきた。






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暴走族の男(掘 -第7話-  雀豪列伝[1]

 夜、20時。
 私は安岡を迎えに寮へ向かった。
 
 部屋に着いてノックをするもなかなか返事はなく、安岡はまだ眠っていたようだ。
 シャワーを浴びるから待っていてくれという。


 夜番が飲みに行くときは、いつもこんな具合だ。


 身だしなみをバッチリ決めた安岡の後に従って、街に繰り出す。
 すると、一軒の小料理屋の前で立ち止まった。


「おし、ここで飲んでいくぞ」

「あれ? キャバクラへ行くんじゃないんですか?」


 首を傾げる私に安岡が渋い表情をする。


「いきなりキャバクラへ行って飲む奴がいるかよ。あそこはメシも無いし、まずは居酒屋で勢いをつけてから行くんだよ」


 初めてのことだらけ、というのは新鮮だ。
 
 小料理屋は安岡の顔馴染みの店らしく、カウンター席で大将と談笑をしながら飲んだ。


「よし、行くぞ!」


 安岡がしこたまビールを飲み、充電完了といった様子で店を出る。


 キャバクラのエレベーターで安岡が言ってきた。

「いいか、会計はいくらでもお前は5000円だけ払ってくれれば良いからな」



 エレベーターを降りると、ラウンジという言葉が似あうような上品な店だった。


 安岡の隣に目当ての嬢がすぐやってきた。
 そして、こんなことを言う。


「いま、ちょうどNO.1の子が空いたから、お兄さんの方につけてあげる」



 NO.1という嬢が私の隣に来た。
 一見して驚いたのは、その若さである。


 細身で、ラフな格好。確かに色白で綺麗な子だ。
 そして何よりも圧倒的に若い。


 NO1.というから、私は派手なドレスを着たお姉さんが来るものだと思っていた。


 お嬢は私の隣へドスンっと座った。
 かなり飲んでいるようだ。


「ようやく抜けられたー。すごく飲まされちゃって。私、リサって言います」


 私が曖昧に頷くと、リサが顔を寄せて聞いてきた。


「お兄さん、幾つ? お父さんと来たの?」


 私は違う、上司に連れて来られた。
 歳は、たぶん君と同じぐらいだ、と答えた。


「そっか、そっか。じゃあ、リサと同じ18歳ぐらいだね」


 そう明るく返してくる。
 なるほど、おそらくポップな感じとその若さで店の人気者なのだろう。


 年齢が近いという親近感から、私は気を使わずに話すことが出来た。
 安岡の視線を忘れ、会話を楽しむ。


 しかし、リサはだいぶ酔いが回ってきたようだ。



「ねぇ、連絡先を教えてよ」


「良いけど、俺もう来ないから無駄になるよ」


 リサが口を尖らせながら聞いてくる。


「どうしてもう来ないのー」


「金が無い」


「じゃあ、お店じゃなくて外で遊べば良いじゃん。同じ歳なんだし」


 酩酊状態のリサが絡んできた。


「お金が無いなら、私がアナタの時間にお金を払うから遊ぼうよ」


「金が無いってのは、ここで遊ぶ金がないってだけだ」


 じゃあ、大丈夫だね、と言いリサが携帯電話を取り出した。
 まぁ、営業だろうなと思いつつ、私たちは電話番号を交換した。



 そして時間が来たようで、安岡に促されて席を立つ。



「吉田、付き合ってくれてありがとうな」


 安岡がエレベーターの中で言ってきた。


「いえ、いつもお世話になっていますから」


 キャバクラに抵抗はあったし、もう来ることはないが、安岡の役に立つならそれで良かった。
 今日は安岡と遊んだと思えば、それはそれで楽しい。


 私のそんな想いを知ってか知らずか、安岡が切り出してきた。


「もう一軒――、次はトランプ捲りに付き合ってくれ」





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暴走族の男(掘 -第6話-  雀豪列伝[1]

「キャバクラへは行きません!」


 私は安岡の頼みを無下に断った。


「ナゼ?」


「行きたくないし、興味がないからです」


「そこを何とか頼むよ、吉田」


 安岡が手を願い事のようにかざして頼み込んでくる。


 18歳の私と、40代の安岡。
 普段、良くしてもらっているので、こうなるとキツい。


「関根さんか、反町さんと行けば良いじゃないですか。自分みたいなガキにはまだ早いですよ」


 そう答えたが、関根と反町はニヤニヤして私と安岡のやり取りを面白がって見ている。


「コイツらはなぁ、昨日つき合ってもらったんだ……」


「き、昨日……!? どうしてそんなに行きたいんですか?」


「狙っている子が居るからに決まってんだろ!」


 安岡がまた弱い表情で頼み込んで来る。
 いつも卓上で見せる暴君のような威厳はどこへ行ったのか。


「いやいや、でも高そうだし。嫌ですよ」


「お前、店に入ってから女と遊んだか? 毎日毎日、麻雀ばかりじゃ体に悪いぞ」


 
 言われてみれば、この半年ほど女と会っていない。 
 というよりも、女と会話をした記憶がない。

 毎日、家と雀荘の往復だけだ。
 ましてや、夜番の私が女と接する機会など皆無だ。


「でも、なんか嫌なものは嫌なのでお断りします! すみません」


「判った、判ったよ、吉田。じゃあ、こうしよう」


 何が判ったのか判らないが、安岡の力説は続く。
 “力説”とは、本当にこういうものなんだと思った。


「次、ツー欠けのあそこの卓だ。1半荘の着順勝負で頼む」


「仕事中にサシ馬っすか……」


「あれ、なんだ? 吉田は真剣勝負の申し出を断る男だったかな?」




 勝負は途中まで私の圧勝だった。
 しかし、オーラスの安岡の親番。

 4000オール。4100オールと強引にツモられてマクられてしまった。


三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬赤:麻雀王国一筒:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国三筒:麻雀王国三筒:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国   リーチ・ツモ 中:麻雀王国





「じゃ、夜の20時に寮に起こしに来てくれ!」


 安岡は飛び切りの笑顔を私に向けて、帰宅していった。






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プロフィール


吉田光太

吉田光太

最高位戦日本プロ麻雀協会


池袋「麻雀ひろばキングダム」
に居ます
ホームページ
https://www.mahjong-kingdom.com/



<獲得タイトル>

第1期オータムチャンピオンシップ 優勝

第7回 野口恭一郎賞 受賞


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