師匠と久しぶりに卓上で拳を交わした。

 師といっても別に師弟の関係ではないし、麻雀の打ちスジや技術について教えを請うたことも教わったことも一度も無い。
 打ちたいから、この男が強いから何百回も勝負し、私が勝手に彼の勝負事に対する考え方や姿勢に師事しているだけだ。


 東一局、先に卓に着いていた私はすでにトップギア。
 四巡目リーチを一発で自摸り上げて跳満の三枚をモノにする

(東一局 西家 ドラ 五萬


一萬一萬一萬五萬赤六萬四筒五筒五筒赤六筒六筒七筒八索八索   ツモ  七萬


 続く東二局、下家の師父が先制のリーチを打つ。


 發九萬二筒一萬八索發
 三筒一索二萬横 リーチ


 一周り後に私が二度受けのドラ塔子を埋めて追っかけリーチ。

(東二局 南家 ドラ 七索


五萬六萬六萬七萬八萬九萬六筒七筒八筒七索七索八索八索   ツモ  六索


  九索 ではなく、 六索 を入れるあたりが今の私の趨勢を現している。

 しかし、師父が力強く牌を引き寄せる。


 二萬三萬四萬五萬赤六萬五筒赤六筒七筒八筒八筒二索三索四索   ツモ  四萬


 先刻のお返しと言わんばかりの跳スリー返し。しかも振聴。
 彼の手牌進行に歪みが生じていれば、おそらくこの局は私の一発自摸だったのではないだろうか。

 卓上で気合が交錯し、互いの昂りと同時に走る腕の速度が増して行く。
 やはり、戦いといのはこういうものだ。


「俺は、指勘というものを一番大事にしている――。ぎりぎりの選択を迫られたときに信頼できるのは、自分のビジョンや感覚だけだからな」


 東京に出てきて、プロの世界で野で様々な打ち手に出逢った。
 本物も居たし、愛すべき打ち手もいた。

 そして無数の麻雀に対する思考に触れた。
 時にそれは私を迷わせたり、意見の衝突を生じさせたりもした。
 
 しかし、私は十数年前にもらったこの言葉を今、改めて噛み締めている。







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