西家スタートで始まった東一局。
 五巡目にして強烈な牌姿になっていた。

(東一局 西家 ドラ 三筒


二索三索五索東東南南發發中   ツモ  東    北横北北


 まだ、五巡目なのである。
 もう一つ重ねるか暗刻にすれば字一色が見える。または叩いていって単騎を目指す方法もある。
 だが、河に打ち出した 五索 が指から離れるまでの刹那の間、私は自分の中の戒律を思い起こしていた。

 凌ぎに道楽や自己表現ほど不要なものはない。

 この手は一歩でも手牌が前進した瞬間に紅中を打ち出して満貫の聴牌を取るべきだ。役満の祝儀があるといはいえ、これは四局しかないスプリントレース。効率を度外視した役満よりも目の前にある満貫の聴牌を最優先すべきである。


 二索三索東東東南南發發中    北横北北


 すなわち、この紅中はその時までの命なのである。
 対子の字牌が打たれれば喜んで叩くし、一索 四索 も聴牌に取る。
 字一色になるのはそれら全ての事象の前に紅中が重なった場合のみである。


 これは早い満貫聴牌のチャンス手。
 そう自分に言い聞かせた。

 一巡、二巡――。まだ紅中を手放す時機は訪れなかった。
 そして三巡後、儚い命だったはずの紅中に息が吹き込まれた。


  二索三索東東東南南發發中   ツモ  中    北横北北


 索子を打ち出し、ピシャリのタイミングで対面から手出しで 南 が打たれた。
 六巡後、 西 を自摸切り、 白 が二枚被ったときだった。

 メンホン七対子を狙っていたという下家から宿縁の牌が零れ出た。


 東東東發發中中   ロン  中    南南横南 北北北横



 否定をすればするほど、言い聞かせようとすればするほど、一枚だけの紅中を抱えながら本当は心の片隅で少しだけ思っていたのかもしれない。
 南 よ、 發 よ、まだ場に打たれないでくれと。


 滑稽な話だが、麻雀で凌いでいる身でありながら役満という浪漫を夢見てしまった。








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