「ぼんづら、って言ってね」

「えっ? 何ですか、それ」

 急に話しかけてきたゲン爺に私は尋ねた。
 

「漢字で書くと盆面。賭場で負けた時などに見せる顔のことを指すんですよ」

「へぇー、そんな言葉があるんですね」

「全部、出ますからね。麻雀には」


 確かに麻雀は性格が出るし、負けた時の振る舞いにこそ人格が出るだろう。

 ゲン爺によると花札などの勝負の場を差す“盆”から来ているそうだ。


「あの役員風の人の盆面は最悪、ということになりますね。でも、ああいうお客さんも必要なんですよ」


 そう、にこやかな顔で説明をしてくれるゲン爺。
 思えば一ヶ月ほど共に働いているが、麻雀を打つ時間が長いためキチンと喋るのは初めてだ。


 すると、今度はゲン爺が私に尋ねてきた。


「そう言えば――、吉田さんはナゼ麻雀をやってるンですか?」


 先ほどまでとは少し違った、真剣な眼差しで聞いてきた。
 60歳も年下の私に敬語というのも迫力がある。


「ナゼって、まぁ気持ち良いからですよ。麻雀が強ければ威張れるし、たいていの相手は蹂躙できる」

 
 もちろん麻雀の面白さや、勝負の奥深さにも惹かれている。
 だが、そんなに崇高なものばかりではない。


「そうですか。まぁ、そうですよね。ただ、アタシにはどうも貴方が18歳でこんな所に居る人間に見えなくてねぇ」


 同じような台詞を雀荘のママにも言われたことがある。
 何となく、大人の言いたいことは判るが、私は何も答えなかった。


 うん、うんと頷きながらゲン爺はもう一つ私に難しい質問を投げかけてきた。



「吉田サンが、この世で心の底から信じているものは何ですか?」





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*当物語はフィクションです