私が参っていたのは高熱だけではない。
 
 金曜の夜から、いま月曜日まで一睡もしていないのだ。


 普段であれば卓を抜けて休憩をしたり、ゲン爺やオーナーと交代して仮眠ができる。
 しかし、折り悪く今日は交代の人間が居ない。

 
 クソっ、と洗面所に立ち、冷水で顔を洗い喝を入れる。
 

 体調がなんだっていうんだ。
 気合で吹き飛ばせ。

 俺はこの道のプロだ。
 これでメシを喰っている。苦しい時に発揮する力を実力って言うんだろう!


 そう言い聞かせ席へ戻るも、激しい頭痛と悪寒が止むことはない。
 熱が40度近くまで上っているようだ。


 折り悪く……。
 この日の客層が最悪だった。


 客の紹介で現れた新規の二人組。
 どうも素性、というか人間性が怪しい。


 土曜日に来たこの二人はかなり負けがこんでいる。
 ここはいつも半荘キャッシュだが、この二人は最初に帳面麻雀で打たせてくれと言ってきた。


 普段はオーナーの許可がないと出来ないのだが、そのオーナーの電話が繋がらない。
 また、二人組は紹介者からオーナーへ後精算で構わないと話が通っていると言う。


 そして、この二人。
 私が高熱でうなされているのをニヤニヤと嘲笑しているようにも見える。


 本当に清算ができるのか……?
 沈んでいる内は決して止めないような気がしてきた。


 60半荘目ぐらいに入っただろうか。
 いよいよ私の身体は限界を迎えてきた。


 しかし、ハウス側から客に帰ってくれなどとは言える訳がない。



 私は何とかこの場を終わらせたかった。


 これが、私の敬愛する阿佐田哲也氏の小説だったら……。

 トイレで自分から警察に通報をするだろう。



 
 そんな事すら本気で考え始めていた。





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*当物語はフィクションです