夜、20時。
 私は安岡を迎えに寮へ向かった。
 
 部屋に着いてノックをするも返事はなく、安岡はまだ眠っていたようだ。
 シャワーを浴びるから待っていてくれという。


 夜番が飲みに行くときは、いつもこんな具合だ。


 身だしなみをバッチリ決めた安岡の後に従って、街に繰り出す。
 すると、一軒の小料理屋の前で立ち止まった。


「おし、ここで飲んでいくぞ」

「あれ? キャバクラへ行くんじゃないんですか?」


 首を傾げる私に安岡が渋い表情をする。


「いきなりキャバクラへ行って飲む奴がいるかよ。あそこはメシも無いし、まずは居酒屋で勢いをつけてから行くんだよ」


 初めてのことだらけ、というのは新鮮だ。
 
 小料理屋は安岡の顔馴染みの店らしく、カウンター席で大将と談笑をしながら飲んだ。


「よし、行くぞ!」


 安岡がしこたまビールを飲み、充電完了といった様子で店を出る。


 キャバクラのエレベーターで安岡が言ってきた。

「いいか、会計はいくらでもお前は5000円だけ払ってくれれば良いからな」



 エレベーターを降りると、ラウンジという言葉が似あうような上品な店だった。


 安岡の隣に目当ての嬢がすぐやってきた。
 そして、こんなことを言う。


「いま、ちょうどNO.1の子が空いたから、お兄さんの方につけてあげる」



 NO.1という嬢が私の隣に来た。
 一見して驚いたのは、その若さである。


 細身で、ラフな格好。確かに色白で綺麗な子だ。
 そして何よりも圧倒的に若い。


 NO1.というから、私は派手なドレスを着たお姉さんが来るものだと思っていた。


 お嬢は私の隣へドスンっと座った。
 かなり飲んでいるようだ。


「ようやく抜けられたー。すごく飲まされちゃって。私、リサって言います」


 私が曖昧に頷くと、リサが顔を寄せて聞いてきた。


「お兄さん、幾つ? お父さんと来たの?」


 私は違う、上司に連れて来られた。
 歳は、たぶん君と同じぐらいだ、と答えた。


「そっか、そっか。じゃあ、リサと同じ18歳ぐらいだね」


 そう明るく返してくる。
 なるほど、おそらくポップな感じとその若さで店の人気者なのだろう。


 年齢が近いという親近感から、私は気を使わずに話すことが出来た。
 安岡の視線を忘れ、会話を楽しむ。


 しかし、リサはだいぶ酔いが回ってきたようだ。



「ねぇ、連絡先を教えてよ」


「良いけど、俺もう来ないから無駄になるよ」


 リサが口を尖らせながら聞いてくる。


「どうしてもう来ないのー」


「金が無い」


「じゃあ、店じゃなくて外で遊べば良いじゃん。同じ歳なんだし」


 酩酊状態のリサが絡んできた。


「お金が無いなら、私がアナタの時間にお金を払うから遊ぼうよ」


「金が無いってのは、ここで遊ぶ金がないってだけだ」


 じゃあ、大丈夫だね、と言いリサが携帯電話を取り出した。
 まぁ、営業だろうなと思いつつ、私たちは電話番号を交換した。



 そして時間が来たようで、安岡に促されて席を立つ。



「吉田、付き合ってくれてありがとうな」


 安岡がエレベーターの中で言ってきた。


「いえ、いつもお世話になっていますから」


 キャバクラに抵抗はあったし、もう来ることはないが、安岡の役に立つならそれで良かった。
 今日は安岡と遊んだと思えば、それはそれで楽しい。


 私のそんな想いに気付いたのか、安岡が切り出してきた。


「もう一軒――、次はトランプ捲りに付き合ってくれ」





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*当物語はフィクションです