「条件があってな……。」

 カザマが私にカジノのディーラーになるための素質を語りだす。


「まず、博打に長けていることだな。客の心理や、店の売り上げも考えなきゃならん。そして、夜の時間に動ける奴だ」


 カザマがニヤリと口の端を上げて笑いかける。



「僕は別に、博打は得意じゃないですよ」

 私は一線を引きながら話を聞いた。


「そうかな? ずいぶん高いマンション麻雀で打ち子をやっていたそうじゃないか。それに、夜に時間も体も空いているんだろう?」


 確かに私は週に3日しか働いていない。
 だが、それは残りの4日間を麻雀に費やすためだ。


 必ず毎日毎日、寝ずにひたすらフリーかセットで打ち続ける。
 もう楽しいとか、麻雀が打ちたいといった感覚はない。

 しかし、他人から見たら遊んでいるのと一緒に見えるのだろう。
 

 カザマも最初は未経験で入り、講習を何度も受けてディーラーになれたのだという。



「吉田クンだったら飲み込みが早そうだし、客受けも良さそうだ。すぐにカードを配れるようになるぜ」

 カザマは上機嫌で続ける。


「それに、お互いもうカタギの道って訳じゃないんだ。一緒に楽しく稼ごうぜ。俺は先月フルで出勤して給料が50万円だったよ」


 50万円……! 主任の安岡の給料より多いのではないだろうか。
 
  

「いや、カザマさん大学は? 国立の三年か四年生でしょ」


「ああ、こっちで稼げるからもう辞めちまったよ。俺さ、ローンでスポーツカーを買ったから、今度見てくれよ」



 私といくつも違わないのに、羽振りの良い話だ。

 確かに、学校へ行ったり、就職をしたりという一般のレールからは外れてしまっている。
 どうせ稼ぐなら効率が良い方を選ぶべきだ……。



「な! 今度、電話をするから考えておいてくれよ。あ、番号」


 今日はよく携帯の番号を聞かれる日だ。



 夜の街――。
 そこは18歳の私にとって誘惑の坩堝だった。



 

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*当物語はフィクションです