「あんな放銃、吉田クンらしくないな」


 卓を抜けた鬼塚が赤ラークを咥えながら言ってきた。

 私は下を向いて溜息をつく。


(南3局 南家 ドラ 四萬:麻雀王国


裏:麻雀王国裏:麻雀王国裏:麻雀王国裏:麻雀王国     五索横:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国  白:麻雀王国白:麻雀王国白横:麻雀王国  北:麻雀王国北:麻雀王国北横:麻雀王国


 「 二萬四萬中中 のテンパイ形に 中 を引いて、ドラの 四萬 単騎に。そこからホインツになる 九索 に待ち変えだよね…。上手くやられたよ」



 鬼塚とはここ最近、よく麻雀の話をする。

 初めはチーマーである彼の存在。そしてたまにやって来る彼の仲間達が怖かったが、今はもう慣れた。


 普段、先輩や大人の客ばかりを相手にする私にとって同い歳の友人は貴重だ。
 仕事が休みの日などは、共に街に繰り出すようになっていた。

 不良という同じ匂いが心を許すのか、佐々木も鬼塚を可愛がっている。
 

 鬼塚は麻雀のキャリアの浅さを気にしてか、仕事中に私をよく“立てて”くれる。
 そして、熱心に麻雀の質問などもしてきてくれた。

 私は、「今日は一本取られたよ」と正直に言うことで彼が喜ぶかと思った。

 しかし、彼の表情が妙に暗い。


 どうかした? 私がそう尋ねると彼が口を開いた。


「実は、俺――。今週で飛ぼうと思ってるんだ。せっかく仲良くなれたのに残念なんだけど…」


 “飛ぶ”という行為。
 この時の私がまだ知る由はないが、麻雀店においては日常茶飯事だ。


 流れ者が多い世界である。様々な事情があるのだろう。
 
 また、もう一つに“アウト”という要因が大きい。
 その所為で店に借入があったり、出走金から抜いてからでないと先立つものもない。

 綺麗に退職する者の方が少ないのが実態だ。


 だが、鬼塚は実家暮らしだし、借金も無いはずだ。
 彼がポツリポツリと私に事情を話してくれた。


 ギャングチームに在籍する鬼塚。
 だが、それは若気の至りであり、もうチームを抜けて真面目に働きたいらしい。


 つい先日も――、鬼塚が疲れた表情で話す。


「対立するチームとの抗争のため、相手のたまり場に乗り込んだんだ。
 顔も知らない、恨みもない奴を全力で殴るんだぜ?」


 チームの全員でゲームセンターに殴り込んだと言う。


「その帰りに国道で追いつかれてさ、鉄パイプで頭を殴打されたんだ。
 もう、やってられねぇ」


 待て待て待て。
 喧嘩をしたくなければ行くなよ。何のためにするんだ?


 私が問い詰める。


――命令なんだ。とにかく暴れて、チームの名を上げろ。人数を増やすんだって。


「嫌ならチーム抜ければ良いのでは?」


――抜けるには、上の組織に30万円を支払う必要があるんだ…





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*当物語はフィクションです