「昼飯を普段食べないとこで食いたい!」
そう思い立った団吉さんはチャリで羽田空港まで行った事があります。

「レディス&ジェントルメン」というアナウンスの流れるロビーで別に飛行機に乗るわけでもなく、家族を見送るわけでもない空港に無用の人が、無表情でカレーを食らう、というシチュエーションをやってみたくなったんです。

環8をひたすら下れば着くんですけど、空港までラスト5キロ(モノレールの駅でいうところの天空橋駅あたり)からまともな歩道が作られてなかったんです。「歩いてまで空港行くバカいねぇだろ?飛行機乗る金あるんだから電車賃ケチんじゃねえよファック。」という道路を設計した人のまことに勝手な思い込みですよね?めげずに団吉さんは進みました。

最後の難関は道自体が無いという事です。正確には言うとあることにはあるんですが、高層ビルの影に隠れた細い階段がそれです。団吉さんは人っ子一人いない(車はビュンビュン通ってる)その道で小沢健二の痛快ウキウキ通りを全力で歌いながら進みました。

やっと着きました。空港ロビーです。目の前にはゴロゴロバッグを引きづる女性や修学旅行生が見えます。お腹がすいたので早くカレーが食べたいと思った団吉さんは、自転車を止める駐輪場を教えてもらう為に側に会った交番でおまわりさんに聞きました。

「この辺に駐輪場ありますか?」

「あ〜〜〜ここらへん駐輪場ないんだぁ。ごめんねぇ」

……どういう事だ。この人、このセリフに馴れてる感じだ。あきらかに初めてじゃない。

そう。おそらくいままでにもこのポリスメンは幾度となくチャリを追い返したのだろう。
「ここまでよくもまぁ来なさったな。でもあなたの愛チャリを止めるように羽田空港は考えてないんだ。ごめんよ。」の感情が読みとれた。
あと、そこ一体に「駐輪禁止!」の看板、貼紙が数多くあるのが何よりの証拠だ。

団吉さんは仕方なくカレーを諦めて引き返しました。帰りのテーマソングは平井堅の「瞳をとじて」です。もちろん全力で歌いました


以上、団吉さんの淡い恋物語でした。