【デレマス】 渋谷凛「賢い二択の提示法」
    2017年01月10日 コメント(1) 長編創作・SS 
    41UU1YUIEtL
    1 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:36:10.18 ID:UTCGoW4g0

    スマートフォンの電源を落とし、顔を上げる。

    時計を見やると針は午後3時を指していた。

    おやつの時間。

    しかし、2時間後に撮影の仕事が控えているから、そうもいかない。

    はぁ、と溜息をこぼして事務所のソファに全体重を預けた。

    暇だ。

    誰かと話して、暇を潰そうにもプロデューサーは仕事中だしなぁ。

    なんて思案していると、事務所に奏がやってきた。

    「あら、凛じゃない。どうしたの? ご主人様を待ってる子犬みたいよ? ふふっ!」

    「んー、別に。奏はなんか元気だね」

    「理由、聞かせてあげるわ」

    奏はそう言って、私の隣にどかっと座る。

    どうやら何か良いことでもあったらしい。







    2 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:38:00.96 ID:UTCGoW4g0



    奏は、私の了承を得る気なんてこれっぽっちもなくて、話したいから話すって感じだった。

    もちろん、人の話を聞くのは嫌いではないし、ちょっとした収穫もあった。

    まず、奏がうきうきしてた理由は、今日の仕事帰りに奏のプロデューサーとご飯に行くらしい。

    道理で浮き足立ってると思ったんだよね。

    こんなこと言うと、奏は必死で否定しそうだけど。

    次に、収穫の方はというと、ちょっとした技術を伝授してもらったんだ。

    曰く、「実質一択の二択を提示するのがコツよ」とかなんとか。

    二人がご飯に行くことになった経緯は、奏のサインを奏のプロデューサーがばかにして、それで拗ねた奏がお詫びを要求したんだとか。

    そのときの要求が、キスor高級ディナー。

    なるほどなぁ、って感心しちゃった。

    「お詫びはキスかちょっと高めのディナー、お好きな方をどうぞ? ふふっ!」とでも言ったんだろうなぁ。

    そう思ったら少し、笑えてきた。







    3 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:39:09.05 ID:UTCGoW4g0



    撮影を終え、スタジオを出ると辺りは真っ暗だった。

    肌を刺すような寒さに思わず、マフラーに顔を埋める。

    やっぱり夜になると一段と冷えるなぁ。

    タクシーで帰ってもいいけど……ちょっとの距離だし、歩くとしよう。

    そう意を決して、通りへ踏み出したところ、軽快なクラクションが私を呼び止めた。

    プロデューサーだった。







    4 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:40:07.54 ID:UTCGoW4g0



    「迎えに来てくれたんだ」

    「丁度、ついさっき仕事終わってな」

    「ふふっ、そっか」

    助手席のドアを開けて、車に乗り込む。

    私がシートベルトを締めたら、いざ発進、のはずだったんだけど、アクシデントが起きた。

    ぐぅ、と私のお腹が鳴ったんだ。

    あ。そういえばお昼から何も食べてなかった。

    そういえば、今何時だろ。

    カーナビを見やる。

    午後7時。

    そりゃお腹も減るわけか。

    なんて、くだらない考えばかりがぐるぐると駆け巡り、その後に状況を理解した。

    「ははは、お腹空いたよな」

    プロデューサーのデリカシーのない、ひとことで恥ずかしくてたまらなくなり、俯いた。

    「お腹空くのは、当たり前の事なんだし、恥ずかしがることないだろ?」

    なら聞かなかったことにしてくれたっていいのに。

    「それにしても、お手本みたいなお腹の音だったなぁ」

    追い討ちをかけてくるプロデューサーに対して、次第に腹が立ってくるきた。

    「プロデューサーなんかもう知らない」

    ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。

    この怒りは、きっと正当なもので、空腹からの八つ当たりではないと思う。

    決して。







    5 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:40:40.12 ID:UTCGoW4g0



    しばらくプロデューサーを無視していると、遂に待ち望んだ言葉が出てきた。

    「俺が悪かったって。ほら、お詫びならするから機嫌直してくれよ」

    「ふふっ。その言葉、待ってたよ」

    「え。……あ、もしかして」

    「もう遅いから」

    さて、何を要求してやろう。

    あ、そうだ。

    覚えたての技術を使ってみるのはどうだろう。

    奏直伝の、あの技術を。

    「じゃあ、えっと、さ。二択。二択で好きな方を選ばせてあげる」

    「二択? まぁ、可能な範囲でな?」

    「その、ちゅーか……駅前の新発売の高級チョコ、どっちがいい?」







    6 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:41:26.14 ID:UTCGoW4g0



    プロデューサーは「了解した」とだけ言って、それきり何も言わなかった。

    窓の外を流れる景色はいつものものとは大きく違う。

    あれ。

    なんか間違えたかな。

    あれ?

    もしかして、まずいことになった?

    え。

    待って。

    私はどこに連れて行かれるんだろう。







    7以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 03:42:01.08 ID:xMzf8zqZO
    ワクワク






    8 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:42:40.20 ID:UTCGoW4g0



    人生で一番ってくらい、どきどきしたドライブを経て、私は、中華料理屋に来ていた。

    何故か。

    私が聞きたいくらいだよ。

    席に通され、お水とおしぼりをもらう。

    店員さんは「ご注文の方、お決まりになりましたら、お呼びくださいませ」なんて言って、無責任にも下がっていく。

    いや、店員さんに責任を求めるのはおかしいか。

    そこで呑気にメニューを捲ってるプロデューサーを問いただそう。







    9 ◆TOYOUsnVr. :2017/01/08(日) 03:44:32.91 ID:UTCGoW4g0



    「ねぇ、なんで中華料理屋に来たの?」

    「だって中華って言ったし」

    ん……?

    どういうこと?

    プロデューサーが何を言ってるのか、よく分からない。

    「え。私、そんなこと言ってなくない?」

    「いや、言ってたよ。『中華……駅前の新発売の高級チョコ』って」

    あー。

    なるほど、そういうことか。

    これは、ちょっと想定外だったな。

    「それで、中華料理屋に?」

    「チョコのがよかった?」

    「そういうわけじゃないけど……」

    「じゃあ、どういうわけなんだ?」

    「いや、あの"か"は中華の"か"じゃなくて。orの方って言うか……」

    「青菜炒め、2人前にする? 1でいいかな」

    「ねぇ、聞いてる?」

    「聞いてる聞いてる。ほら、凛は何が食べたい?」

    「あ。私、小龍包が……ってそうじゃなくて。……はぁ、もういいか」

    うん。

    もういい。

    これはこれで悪くない、というか良いし。

    高級チョコなんかより、ずっと甘くて美味しい時間が過ごせそう。

    なんてね。



    おわり







    11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 12:28:28.61 ID:AafBTymJo
    結局ちゅーするながれかと






    13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 13:45:24.23 ID:ZQ8VfCfyo
    この中華料理屋にはわっほーいって言う看板娘いたりしないかな



    中華一番(1) (週刊少年マガジンコミックス)
    講談社 (2012-12-17)
    売り上げランキング: 56,692

     コメント一覧 (1)

      • 1. 金ぴか名無しさん
      • 2017年01月10日 03:47
      • 明日の昼は小籠包にしよう
    コメントフォーム
    記事の評価
    • リセット
    • リセット

    ・コメント投稿者は投稿によって生じた結果につき、全ての責任を持つものとします。
    ・コメントは非公開、規制の対象となる場合があります。書き込みが行えない場合、IP由来の巻き込み規制の可能性があります。
      当サイトについて
      当サイトにはバナー広告とAmazonアソシエイトのリンクが含まれます。
      記事検索
      アーカイブ
      スポンサードリンク