【ぼく勉】 小美浪先輩「この前は本当に悪かった」 成幸「はい?」
    2018年10月07日 コメント(6) 長編創作・SS 
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    1以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
    ………………海での一件から数日後 予備校

    成幸 「なんです、藪から棒に」

    小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

    成幸 (紙袋? 中身は……)

    成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

    小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

    小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

    成幸 「えっ、あー……」

    成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

    小美浪先輩 「? 後輩?」

    成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

    成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

    小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

    成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

    小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ






    2以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:25:50 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「なんにせよ、それなら良かった。アタシのミスなのは間違いないからな」

    小美浪先輩 「本当に悪かった。ごめんなさい」 ペコリ

    成幸 「へ……? い、いやいやいや! 顔を上げてくださいよ、先輩。べつに気にしてませんから」

    小美浪先輩 「ん。そうか。じゃあアタシも気にしない」 ケロッ

    成幸 「切替早っ!? ちょっとしおらしいから変だと思ったけど、やっぱりからかってただけですか!」

    小美浪先輩 「ふふん。アタシに頭を下げさせたんだから、それで良しとしろよ、後輩」

    成幸 「……べつにいいですけどね」






    3以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:26:47 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「とはいえ、後輩に無用な出費をさせてしまったようだからな、」

    小美浪先輩 「その海の家で買ったとかいうシャツはいくらだった? 出すよ」

    成幸 「へ……?」 フルフル 「い、いやいや、いいですよ。俺の着る服が増えただけですから、べつに」

    小美浪先輩 「そういうわけにいくか。後輩だって金が有り余ってるってわけじゃないだろ」

    小美浪先輩 「アタシが悪いんだから、アタシが出すよ。当然だろ」

    成幸 「いや、でも……」

    成幸 (言えない!)

    成幸 (桐須先生に眼鏡を弁償してもらう時、世話になったお礼と口止め料を兼ねてシャツも買ってもらったなんて、)

    成幸 (絶対に言えない! 言ったら桐須先生に殺されかねない……!)






    4以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:28:00 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「後輩? またボーッとして、どうした?」

    成幸 「なんでもないです! 何もないです!」

    小美浪先輩 「お、おう。そうか」

    成幸 「お金は、受け取れません」

    成幸 (さすがにシャツの代金の二重取りなんてせこい真似は絶対したくない)

    小美浪先輩 「おいおい後輩。さすがにアタシもそれじゃ気が済まないぞ」

    成幸 (とはいえ、それで納得する先輩でもない。この人は意外とこういうことを気にする人だ)

    成幸 (なら……)

    成幸 「その代わり、といってはなんですが」

    小美浪先輩 「うん?」

    成幸 「明日、ちょっと付き合ってもらってもいいですか?」

    小美浪先輩 「……うん?」






    5以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:29:27 ID:w/7Zs4bc
    ………………翌朝 小美浪家 あすみの部屋

    小美浪先輩 「………………」

    小美浪先輩 「……まったく、欲がないというか、なんというか」


    ―――― 『ちょっと勉強を手伝ってほしくて』

    ―――― 『先輩の勉強時間をもらっちゃうのは申し訳ないんですが』

    ―――― 『明日だけでも助けてくれると嬉しいです。場所はうちでいいですか?』


    小美浪先輩 「べつに、改めてあんな言い方しなくても、いつも理科系科目を教えてもらってるわけだし、」

    小美浪先輩 「後輩だったら、いつでも勉強くらい教えてやるってのに」

    小美浪先輩 「……“後輩だったら、いつでも勉強くらい教えてあげるのになっ”」

    小美浪先輩 「これ、今日の別れ際にでも言ってやったらまた顔真っ赤にするだろうな、あいつ」






    6以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:30:11 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「ま、やることが勉強ってのが色気もへったくれもないが、」

    小美浪先輩 「あいつをからかうためにちょっと気合いを入れてオシャレをしすぎてしまったな……」

    小美浪先輩 「見惚れて後輩が勉強に集中できなかったらどうしような」

    小美浪先輩 「……あの真面目眼鏡くんは、そんなことに気づくタチじゃねーか」

    小美浪先輩 (……よくよく考えたら、親父のバカに付き合わされてカラオケ行ったり海に行ったりしたけど)

    小美浪先輩 (後輩の方からアタシを誘うなんて初めてかもな)

    クスッ

    小美浪先輩 (……べつに、あいつのことをどう、ってわけじゃないけど)

    小美浪先輩 (なんか嬉しいな。アタシを頼ってくれてるみたいで)

    小美浪先輩 「……なんて、あいつに言ってアタシに惚れられても困るしな」

    小美浪先輩 「さてさて、そろそろ行くかぁ」

    小美浪先輩 (……っつーか、アタシ)

    小美浪先輩 (男の家に行くのって、初めてじゃないか?)

    小美浪先輩 (………………) クスッ (……ま、男ってのが、あの後輩じゃなぁ)






    7以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:31:17 ID:w/7Zs4bc
    ………………ドアの隙間

    小美浪父 (あすみ……)

    小美浪父 (唯我くんのためにオシャレにこんなに時間をかけるなんて……)

    小美浪父 (我が娘ながらなんていじらしいんだ……!) ウルウル

    小美浪父 (がんばれよ、あすみ! パパは唯我くんとのことなら何でも協力するぞ!)

    小美浪先輩 「……おい、邪魔だぞ、親父」

    小美浪先輩 「っつーか、なに人の部屋覗いて涙ぐんでんだよ!」






    8以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:32:21 ID:w/7Zs4bc
    ………………唯我家

    小美浪先輩 「………………」

    成幸 「あっ、先輩。来てくれたんですね。ありがとうございます!」

    成幸 「早速で申し訳ないんですが、手伝ってもらってもいいですか!?」

    小美浪先輩 (男子の部屋に行くことに、少なからずドキドキしてた自分をぶん殴りたい気分だ)

    理珠 「………………」 グデーッ

    文乃 「………………」 ズーン

    うるか 「………………」 シクシク

    葉月 「おねーちゃんたち、元気出してー」 ポンポン

    和樹 「にーちゃんの嫁に来ていいからさー」 ポムポム

    小美浪先輩 「おい、後輩。なんだ、この死屍累々の光景は」

    小美浪先輩 「お前がやったのか?」






    9以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:33:11 ID:w/7Zs4bc
    成幸 「俺が何をしたってこいつらはこんなにへこみませんよ」

    小美浪先輩 (いや、いつもお前のせいで結構一喜一憂してると思うが……)

    成幸 「先週の予備校の小テストが散々だったんですよ。範囲が広がったから前より点数が落ちて……」

    成幸 「俺ひとりじゃこの負のオーラに太刀打ちできないので、先輩を呼んだんです」

    小美浪先輩 「そうかい。やれやれだな」

    小美浪先輩 (勉強を手伝ってほしい、って)

    小美浪先輩 (後輩の勉強じゃなくてこいつらの勉強かよ……)

    小美浪先輩 (……ま、いいけどさ)






    10以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:34:00 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「おーい、お前らー」

    理珠&文乃&うるか 「「「………………」」」

    小美浪先輩 「反応なし、と。じゃあ仕方ねーな。後輩、ちとこっち来い」

    成幸 「? いいですけど、なんです?」

    小美浪先輩 「こいつら焚きつけるならこれしかねーだろ」

    ギュッ

    成幸 「!? せ、せせ、先輩!?」

    成幸 (だ、抱きつかれた!? 何が起きた!? っていうか良いにおい……)

    成幸 (……って違う!)






    11以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:35:34 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「お前らー、早く起きて勉強しないと、お前らの“先生”、アタシが盗っちまうぞー?」

    理珠 「……? !?」 ハッ 「なっ、ななな、何を!? な、なぜ成幸さんに抱きついているのですか!?」

    うるか 「へ……?」 ハッ 「な、成幸!? なんで先輩とくっついてるのさ!」

    文乃 「………………」 キリキリキリ 「……葉月ちゃん、和樹くん、ちょっと水もらってもいいかな?」

    葉月 「へ? いいけど、」 和樹 「どしたの、おねーちゃん?」

    文乃 「ちょっと、胃薬をね……」 キリキリキリ

    小美浪先輩 「ほい、全員起きたぞ、後輩」

    成幸 「さ、さすがはあしゅみー先輩! 一瞬であいつらを目覚めさせられるとは……!」

    小美浪先輩 「よーし、後輩。次それで呼んでみろ? 今度はお前を永遠に眠らせてやるからなー?」






    12以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:36:30 ID:w/7Zs4bc
    ………………

    小美浪先輩 「いいか、武元。英語は範囲が広がれば当然覚える文法も単語も増える」

    小美浪先輩 「点数なんて乱高下するもんだ。それに一喜一憂してたら勉強なんか続かないぞ?」

    うるか 「ん……」 グッ 「そうですね。さすが先輩、いいこと言う!」

    小美浪先輩 「おう。ってことで……」 スッ 「ここからここまで、この範囲の単語をとりあえず覚えろ」

    うるか 「へ……? こ、ここからここまで? 単語数は……?」

    小美浪先輩 「知るか。っていうか、そこ中学生レベルの単語だからな」

    小美浪先輩 「受験英語で単語を大量に覚える必要はないが、お前の場合はいくらなんでも少なすぎる」

    小美浪先輩 「受験に範囲なんてないんだ。基本の単語くらいは覚えろ。基本以前の基本だ」

    うるか 「う、うぅ〜」 ウルウル 「小美浪先輩の鬼! 鬼畜! うー!」

    小美浪先輩 「なんとでも言え」






    13以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:37:56 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 (……にしても) ジーッ

    成幸 「……よし。前のテストの復習はこんなもんか」

    成幸 「じゃあ、一時間後に同じテストをやってみるから、それまで自習な。わかんなかったらすぐ言えよ」

    理珠 「はい」

    文乃 「了解だよ」

    小美浪先輩 (今は武元の相手をアタシがやってるからいいものの、)

    小美浪先輩 (いつもは三人まとめて相手してるのかよ、あいつ。変に器用なやつだな)

    小美浪先輩 (色々と不器用なくせにな)

    うるか 「……? あ、ねえねえ、先輩」

    小美浪先輩 「ん? どうかしたか?」

    うるか 「教えてくれるのはありがたいんだけどさ、どうして今日成幸の手伝いをしてるの?」

    小美浪先輩 「……あー」 (そりゃまぁ気になるか……)






    14以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:39:22 ID:w/7Zs4bc
    理珠 「……私も気になります」

    文乃 「わたしも、かなー?」

    文乃 (……っていうか)

    文乃 (返答によっては、成幸くん、叩く) ゴゴゴゴゴゴ……

    成幸 (……って顔してんなー。怖い)

    成幸 (まぁ、べつにやましいことはないし、話してもいいよな)

    成幸 「いや、実はこの前、海に先ぱ――」

    文乃 「――何を言おうとしてるか分からないけど言わせるかぁ!! だよ!!」 ガバッ

    成幸 「むぐっ!? むぐぐぐぐぐぐぐ!?(何すんだ古橋!?)」

    文乃 (だまらっしゃい! なんとなく想像がついたから口をふさいだんだよ!)

    文乃 (それを君が口にしたら、絶対にわたしの胃が限界を迎えるってわかったから!)






    15以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:40:27 ID:w/7Zs4bc
    理珠 「一体どうしたのですか、文乃。急に成幸さんの口をふさいだりして……」

    理珠 (というか、成幸さんとの距離が近いですよ、文乃) ジトーッ

    うるか 「文乃っちって、時々へんなことするよねー」

    うるか (うわー! 文乃っちうらやましいよー! あたしも成幸の吐息を手で感じたいよぅ!)

    文乃 「はは……はははは……」 (ただただ胃が痛い)

    小美浪先輩 「………………」 ハァ 「……大したことじゃねえよ」

    小美浪先輩 「後輩がお前たちのことを心配して、アタシに頭を下げてお願いしてきたってだけだ」

    小美浪先輩 「そして優しい優しいアタシは、哀れな後輩に力を貸してやってるってわけだ」

    理珠 「成幸さん……」 キュン

    うるか 「成幸ぃ……」 キュン

    文乃 (ありがたいことだけど胃が痛い)






    16以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:42:00 ID:w/7Zs4bc
    理珠 「……お二人がそこまでしてくれるなら、私、がんばれます。成幸さん。小美浪先輩」

    うるか 「あたしも! 凹んでなんかいられないよね! ふたりのためにもがんばるよ!」

    文乃 「そうだね。わたしもがんばるよ。ただ、その前に……」

    文乃 「成幸くん。お茶をいれたいから、一緒に来て?」

    成幸 「へ? ああ、お茶だったら俺がいれてくるから、古橋は勉強を……」

    文乃 「い・い・か・ら、一緒に来て? 成幸くん?」 ゴゴゴゴ……

    成幸 「う、うん、文乃姉ちゃん……」






    17以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:43:02 ID:w/7Zs4bc
    ………………台所

    文乃 「……で? さっきは一体何を言いかけたんだゴラァ。だよ」

    成幸 「怖いので目のハイライトをつけてくれると嬉しいんですが……」

    文乃 「あ゛?」

    成幸 「すみません何でもないです」

    成幸 「いや、実はこの前小美浪先輩とふたりで海に行ってさ――」

    文乃 「――ストップ!!」

    成幸 「……どうかしたか、古橋?」

    文乃 「その不思議そうな顔が不思議で仕方ないよ!? 唯我くん君はひょっとしたらとんでもないおバカなのかな!?」

    成幸 「お前のその容赦のない言葉、なんか懐かしい感じがするな……」

    文乃 「シャラップ! 感傷に浸ってる場合じゃないんだよ!」

    ドスッ!!

    成幸 「おぐっ……! 容赦のない手刀!」






    18以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:44:13 ID:w/7Zs4bc
    文乃 「小美浪先輩とふたりで海に行った!? どうしてそんな恋人みたいな真似をしてるのかな!?」

    成幸 「ほら、前に先輩の家で話しただろ? 恋人のフリをしてるって」

    文乃 「うん。それは聞いた」

    成幸 「それでさ、先輩の親父さんが恋人同士なのに海にも行ってないのはおかしい、って言い出してさ」

    文乃 「うんうん」

    成幸 「それで、先輩とふたりで海に行った」

    文乃 「ふーん。バカだねぇ本当にバカだねぇ成幸くんは」

    成幸 「そこまでバカにされるようなこと!? いや、まぁ、恋人のふりがバカっぽいのは分かるけど……」

    文乃 「それもそうだけれど! それ以上にそれをりっちゃんとうるかちゃんの前で言おうとするのがバカだって言ってるんだよ!」

    成幸 「……? あいつらに言ったらダメなのか?」

    文乃 「心底不思議そうな顔に殺意が湧くよ!」

    キリキリキリ……

    文乃 「……ああ、もういいよ。唯我くんがそういう人だっていうのはわかってたから」

    成幸 「なんか、すまん。お前にはいつも苦労をかけてる気がする……」






    19以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:44:59 ID:w/7Zs4bc
    文乃 「……ふぅ。まぁ、いいよ。わたしは成幸くんのお師匠様だからね」

    文乃 「とにかく、小美浪先輩とふたりで海に行ったこと、ふたりには絶対に言っちゃダメだからね」

    成幸 「理由が全然わからん……」

    文乃 「……今はまだ、わからなくていいよ」

    ハァ

    文乃 「それも恋の練習問題だよ、成幸くん。特別問題だよ」

    成幸 「特別問題! 師匠!」

    文乃 (はぁ。まったくもう……)

    文乃 (成幸くん。ほんと、手がかかる“弟”だよ。君は)






    20以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:45:58 ID:w/7Zs4bc
    ………………

    カリカリカリ…………

    成幸 「………………」

    ピッ

    成幸 「……はい、そこまで。ペンを置いて自己採点」

    うるか 「ふはぁ〜。頭がパンクしそう……」

    理珠 「でも、以前とは比べものにならない手応えです」

    文乃 「わたしもだよ。今回は自信あるよ!」

    小美浪先輩 (まぁ、そりゃ一回受けたテストをもう一回やってるんだから出来て当然だけどな)

    小美浪先輩 (……ま、今日は自信を取り戻させるのが主題だからいいのかね)

    成幸 「………………」

    小美浪先輩 (……満足げな顔しちまってまぁ。先生ってより、お母さんだな、あれじゃ)

    小美浪先輩 (あたしに理科を教えてくれるときも、)

    小美浪先輩 (きっとあんな顔してんだろうなぁ)






    21以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:52:46 ID:w/7Zs4bc
    ………………夕方 帰路

    うるか 「じゃ、あたしこっちだから。またね」

    理珠 「私もこちらですので。今日はこれで失礼します」

    文乃 「うん。またね、うるかちゃん、りっちゃん」

    小美浪先輩 「また予備校でなー」

    文乃 「………………」

    小美浪先輩 「………………」

    テクテクテク……

    文乃 「……あの、先輩」

    小美浪先輩 「んー?」

    文乃 「成幸くんから聞きました。ふたりで海に行ったって」

    小美浪先輩 「ああ。まぁ、アタシとしちゃ隠すつもりはなかったんだけどな」

    文乃 「でも、隠してくれてよかったです。あのふたりに知られたくはなかったから」






    22以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:53:53 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「……友達想いなんだな、お前は」

    文乃 「……先輩は、どうなんですか?」

    小美浪先輩 「ん? アタシがどうしたって?」

    文乃 「以前、先輩はわたしに言いましたよね」


    ―――― 『後輩のこと特別に思ってるのはお前じゃねーの?』


    小美浪先輩 「ああ、そんなこと言ったな」

    文乃 「その言葉、先輩にそっくりお返ししてもいいですか?」

    小美浪先輩 「ああ?」

    文乃 「先輩は、成幸くんのことをからかって遊んでるふりをして、」

    文乃 「――――本当は、成幸くんのこと、好きなんじゃないんですか?」

    小美浪先輩 「………………」

    クスッ






    23以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:55:01 ID:w/7Zs4bc
    文乃 「!? な、なんで笑うんですか!」

    小美浪先輩 「おいおい、笑うくらい許せよ。そんな見当違いなこと言われりゃ笑いもするさ」

    小美浪先輩 「アタシが、後輩を、好き? はっ、そんなわけわかんねーこと言われりゃな」

    文乃 「………………」

    ジーッ

    文乃 「……信じていいんですね?」

    小美浪先輩 「信じるも信じないもお前次第だろ」

    文乃 「……わかりました。信じます」

    小美浪先輩 「そうか。そりゃ何より――」

    文乃 「――――先輩、今日はいつもよりオシャレしてて、お化粧も気合い入ってる気がしたけど、」

    文乃 「わたしの気のせいだったってことにします」 ニコッ

    小美浪先輩 「………………」

    小美浪先輩 「……お前ってさ、ホント、時々めっちゃ怖いよな」






    24以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:57:18 ID:w/7Zs4bc
    小美浪先輩 「……じゃあ、アタシもちょっとお前に聞かせてもらおうかな」

    文乃 「……なんですか?」

    小美浪先輩 「アタシに細かいことはわからない。後輩の色恋沙汰なんて、これっぽっちも興味はないからな」

    小美浪先輩 「でも、お前と後輩の関係は、昔と今じゃ明らかにちがうよな?」

    文乃 「……何が言いたいんですか」

    小美浪先輩 「……“成幸くん”」

    文乃 「あっ……」 カァアア…… 「そ、それは、その、ただの姉弟ごっこ、だから……」

    小美浪先輩 「ふーん、そうかい。じゃ、そういうことにしといてやろうかね」

    ニヤリ

    小美浪先輩 「姉弟ごっこ、ねぇ。楽しそうで大層結構」

    小美浪先輩 「いつまでその“姉弟”を続けられるのか、楽しみだな、古橋」






    25以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/10(月) 23:59:04 ID:w/7Zs4bc
    ………………唯我家

    成幸 「はぁ……今日は本当に疲れた。先輩がいなかったらどうなってたことか……」

    成幸 「先輩に本当に感謝だな。何かお礼しなきゃ……ん?」

    ゴソッ

    成幸 「紙袋? 誰かの忘れ物か?」

    ピラッ……

    成幸 (紙が出てきたけど、これ、手紙?)


    『よう。お前が固辞するから、サプライズみたいになっちまったけど、これやるよ。

     アタシからのプレゼントなんて、アタシのファンなら垂涎ものだぜ?  小美浪あすみ』


    成幸 「……? あっ、これ、シャツ……」

    成幸 「わざわざ買ってきてくれたのか、先輩……」

    成幸 「あいつらの勉強も手伝ってもらったのに、なんか申し訳ないな……」

    成幸 「なんだかんだ、本当に面倒見が良くて優しい人だよな、あしゅみー先輩って」

    成幸 「今度、本当に何かお礼しないとな……」






    26以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/11(火) 00:00:10 ID:Wk/a4uWM
    ………………小美浪家

    小美浪先輩 「ただいまー」

    小美浪父 「おお、おかえり、あすみ」

    ニコニコニコ

    小美浪先輩 「……んだよ、キモいな。何をニヤニヤしてんだ」

    小美浪父 「いやな、今日は唯我くんとデートだったんだろう?」

    小美浪父 「どうだった? 楽しかったか? どこに行ったんだ」

    小美浪先輩 「アタシは小学生か」

    ハァ……

    小美浪先輩 「何もないよ。アイツの家に行って勉強しただけだ」

    小美浪父 「!? 家!? 唯我くんの家にか!?」

    小美浪先輩 「それがどうかしたかよ……」






    27以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/11(火) 00:00:41 ID:Wk/a4uWM
    小美浪父 「………………」

    スッスッスッ……

    小美浪先輩 「おい。なに無言で着替えを始めてんだ。なんで背広なんか引っ張りだしてんだよ!」

    小美浪父 「少し早いかもしれないが、挨拶をしておかなければならないと思ってな」

    小美浪先輩 「あいさつって……」

    小美浪父 「唯我くんのご家族に。娘のことをよろしくお願いしますとな」

    小美浪先輩 「は……?」

    小美浪父 「なに、心配するな。あの唯我くんのご家族だ。きっと良い方たちに決まってる」

    小美浪先輩 「……うん。まぁ、いつかは言わなきゃいけないと思ってたから、今言うけど」

    小美浪先輩 「あんま暴走しすぎるようだと、いい加減殴るぞー、親父ー?」






    28以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/11(火) 00:01:44 ID:Wk/a4uWM
    ………………幕間 唯我家

    水希 「ただいまー」

    水希 「……?」

    水希 「この匂いは、緒方さん、古橋さん、武元さん……だけじゃない」

    水希 「新しい女の匂いがする……!!」 ギリリッ

    おわり






    30以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:35:43 ID:bgRCVaD6
    >>1です。もうひとつお話を投下します。
    つたないSSで恐縮ですが、読んでいただけたら嬉しいです。


    【ぼく勉】桐須先生 「不可解。どうしたというの、唯我くん」






    31以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:36:45 ID:bgRCVaD6
    ………………海の帰り ショッピングモール駐車場 車内

    桐須先生 「一体どうしたというのかしら。地獄から帰ってきたような顔だわ」

    成幸 「……どちらかといえば、地獄に行かずに済んだ顔ですけどね」

    桐須先生 「君が何を言わんとしているのかまったくわからないわ」

    成幸 (もう二度と絶対、この人の運転する車には乗らない……。命がいくつあっても足りない)

    桐須先生 「では、行きましょうか。シャツとメガネを新調しに」

    成幸 「あ、はい……でも……」

    桐須先生 「? 何かしら?」

    成幸 「さすがに、上半身裸のまま、ショッピングモールに入るのは……」

    桐須先生 「!? そ、そういえばそうね……私としたことが、失念していたわ」

    桐須先生 (……というか、今さらなことだけれど、)

    桐須先生 (生徒とはいえ、上半身裸の男子と同じ車に乗っていたのね、私) ドキドキ

    桐須先生 「す、少し車で待っていなさい。すぐに服を買って戻ってくるわ」

    成幸 「すみません、お願いします」






    32以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:37:44 ID:bgRCVaD6
    ………………ショッピングモール

    桐須先生 (……とは言ったものの、よく考えたら私、男物の服なんて買ったことがないわ)

    桐須先生 (そもそも唯我くんの趣味も分からないし……)

    桐須先生 (どんな服を買っていったらいいのかしら……)

    桐須先生 (……もしも、もしもよ、)

    桐須先生 (私が選択をミスして、とてつもなく趣味の悪い服を買っていったりしたら、)

    桐須先生 (……ダメよ。ただでさえ彼には情けない姿しか見せていないのだから、)

    桐須先生 (これ以上教師としての威厳を失墜させることは許されないのよ)

    桐須先生 (絶対に、彼に満足してもらえる服を買って行かなければ)

    桐須先生 (ファストファッションはダメ。シンプルなものも多いけれど、変な装飾がついている可能性が高い)

    桐須先生 (メンズファッションに疎い私が選ぶのだから、こういうときは、そう……)

    桐須先生 (お高めのお店の服ならば、失敗はきっと少ないわ!)






    33以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:39:14 ID:bgRCVaD6
    ………………駐車場 車内

    成幸 「すみません、先生。助かりました」

    桐須先生 「サイズなどは問題ないかしら?」

    桐須先生 (無難。結局、お高そうなお店の店員さんにお任せしてしまったわ)

    成幸 「はい、大丈夫です」

    桐須先生 「そう。それはよかったわ」

    成幸 「ただ……」

    桐須先生 「ど、どうかしたかしら……」

    成幸 「すごく着心地がよくて、高そうなんですけど……これ、いくらですか?」

    桐須先生 「? どうしてお財布をだしているのかしら、唯我くん」

    桐須先生 「今日は海でお世話になってしまったし、それは差し上げるわ」

    成幸 「い、いやいや、そういうわけにはいかないですよ」

    桐須先生 「却下。私の教師としての体面も少しは察しなさい」






    34以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:40:38 ID:bgRCVaD6
    成幸 「でも……」

    桐須先生 「口止め料、といったらいかがわしいけれど、」

    桐須先生 「今日のことを黙っていてもらう担保だとでも思って頂戴」

    桐須先生 「それに安物の服よ。社会人の私からしたら取るに足らないお金だわ」

    桐須先生 (……本当は福沢諭吉先生が消えたのだけれど)

    成幸 「……わかりました。じゃあ、お言葉に甘えて、頂戴します」

    成幸 「ありがとうございます、桐須先生。俺、この服大事にしますね」

    桐須先生 「っ……」 ドキッ 「お礼を言われるようなことではないわ」

    桐須先生 「さ、今度は眼鏡よ。早く買いに行きましょう」

    成幸 「はい!」

    ……コケッ

    成幸 「うおっ!?」 (段差!?)

    桐須先生 「!? 危ない……!」






    35以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:42:37 ID:bgRCVaD6
    成幸 「ん……?」 (あれ、痛くない……? っていうか、やわらかい……?)

    桐須先生 「……いつまでもくっつかれていても、困るのだけれど」

    成幸 「へ? わっ……わわっ、き、桐須先生……!?」 バッ

    成幸 「す、すみません。つまずいた俺を、支えてくださったんですね」

    成幸 (や、やば……俺、桐須先生に抱きついてたよ。怒られる……)

    桐須先生 「………………」

    桐須先生 「……ごめんなさい。あなたが眼鏡をかけていないことなんて、わかっていたことなのに」

    スッ

    成幸 「へ……? どうして手を出してるんですか?」

    桐須先生 「瞭然。手を繋がないと、危なっかしくて仕方ないわ」

    成幸 「!? 手、繋ぐんですか!?」

    桐須先生 「それがどうしたというの。いいから、早くしなさい」 ギュッ

    成幸 「わっ……わわわっ……」






    36以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:44:36 ID:bgRCVaD6
    ………………ショッピングモール内

    成幸 (う、海で人目を避けていたときならいざ知らず……)

    成幸 (人がたくさんいるショッピングモールで手を繋ぐっていうのは、やっぱり、こう……)

    成幸 (恥ずかしいというか、照れるというか……)

    成幸 (桐須先生は美人だから、人目を集めるしなぁ)

    成幸 (……でも、さすがは桐須先生。まったく動じてないみたいだ)

    桐須先生 「………………」

    桐須先生 (……せ、生徒とはいえ、男性と、手を繋いで)

    桐須先生 (休日のショッピングモールを歩くなんて、これでは……まるで……)

    ハッ

    桐須先生 (……何を不埒なことを考えているの、桐須真冬。これはあくまで緊急的な措置)

    桐須先生 (私が眼鏡を壊してしまったのだから、その責任を取る。それだけのこと――)

    子ども 「あーっ。ねえ、ママ、カップルだよー」

    桐須先生&成幸 「「っ……///」」






    37以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:46:08 ID:bgRCVaD6
    ………………眼鏡屋

    成幸 (とはいえ、いざ眼鏡屋に来たものの)

    成幸 (眼鏡なんて高級品、滅多に買わないし、買ったとしても安い店のセール品だしなぁ)

    成幸 (こういうショッピングモールに入ってる眼鏡屋って、高いんだよなぁ)

    成幸 (安い眼鏡を弁償してもらうのに、高い金額を払ってもらうわけにはいかないし……)

    桐須先生 「どうかしたの? 早く選びなさい」

    成幸 「あ、はい。でも……」

    桐須先生 「好みに合わないのかしら? それなら、別のお店に足を伸ばしてもいいのだけれど」

    成幸 「本当ですか!? それなら、壊れた眼鏡を買った店に行ってもらえると助かります」

    桐須先生 「得心。それくらいお安い御用よ。では、車に戻りましょうか」

    成幸 「!?」






    38以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:47:22 ID:bgRCVaD6
    成幸 (ば、バカか俺は!? 別の場所に移動となったら車で移動することになる!)

    成幸 (桐須先生の車に乗るのはもうごめんこうむりたい!)

    成幸 「あ、いや! よくよく見てみるとー、オシャレな眼鏡がいっぱいだー!」

    成幸 「桐須先生! ここで眼鏡選んでもいいですか!」

    桐須先生 「……? それはもちろん、構わないけれど」

    成幸 「わーい、ありがとうございます、先生!」

    桐須先生 「あ、あまり、大声で先生と言わないでもらえると助かるわ」

    成幸 「あっ……」 (そりゃそうだ。生徒と二人でお出かけなんて、いいことじゃないもんな)

    成幸 「す、すみません……」

    桐須先生 「いいわ。早く選びなさい」

    成幸 「はい……」






    39以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:48:48 ID:bgRCVaD6
    ………………

    店員 「では、二時間後には完成していますので、取りに来てください」

    成幸 「はい、わかりました。お願いします」

    成幸 (……結局、できるだけ安いフレームを選んだら、前のと同じような眼鏡になってしまった)

    成幸 (まぁ、それは構わないんだけど、二時間か……)

    成幸 (喫茶店にでも入って勉強でもしようかな)

    成幸 (幸いにして、電車で勉強しようと思って道具は持ってきてあるし)

    桐須先生 「……二時間。この時間を無駄に使う手はないわ。唯我くん」

    成幸 「はい。もちろん勉強時間にあてるつもりです」

    桐須先生 「そうしましょう。では、行きましょうか」 ギュッ

    成幸 「!? ど、どうしてまた手を繋ぐんですか!? っていうか、“行きましょう”って……?」

    桐須先生 「愚問。眼鏡が完成するまで、あなたをひとりにするわけにはいかないでしょう」






    40以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:51:04 ID:bgRCVaD6
    成幸 「い、いやいや、いくらなんでも大丈夫ですって。ショッピングモールから出ないですし」

    成幸 「眼鏡の代金も払ってもらいましたし、もう先生はお帰りになって大丈夫ですよ」

    成幸 「先生もお忙しいでしょうし……」

    桐須先生 「はぁ? さっき段差でこけていた人間の言うべき台詞ではないわね」

    成幸 「うっ……」

    桐須先生 「あなたの眼鏡を壊してしまった私が責任を果たす必要があるわ」

    桐須先生 「そうでなくとも、危険な状態にある生徒を残して帰れるわけがないでしょう」

    桐須先生 「私は教師なのだから」

    成幸 (かっこいい……)

    成幸 (……かっこいいけど、それは自分の部屋をしっかり掃除できるようになってから言ってほしいなぁ)

    桐須先生 「どうせ真面目なあなたのことだから、勉強道具を持ってきているのでしょう?」

    桐須先生 「喫茶店にでも入って、落ち着いて勉強をしましょう。分からなければ私が教えるわ」

    成幸 「……わかりました。すみません。お願いします」






    41以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:56:14 ID:bgRCVaD6
    ………………物陰

    文乃 「………………」

    文乃 「……気分転換がてら、ショッピングモールに来てみれば」

    文乃 「唯我くんと桐須先生が楽しげに手を繋いでデートしてるって……」

    文乃 「これは一体どういうことなのかな……?」

    文乃 「っていうか、見つけたのがわたしで良かったよ。うるかちゃんとりっちゃんにはとても見せられないよ……」

    理珠 「文乃? そんなところでどうしたのですか?」

    うるか 「文乃っちー、今日アイス三段重ねサービスだってー!」

    うるか 「早く食べにいこー!」

    文乃 「三段重ねサービス!?」

    ハッ

    文乃 (うぅ……今すぐにでも食べに行きたい、けど……)






    42以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:58:06 ID:bgRCVaD6
    紗和子 「ねえ、緒方理珠? 私とアイスをシェアしましょうよ」

    紗和子 「そうすれば、たくさんの味が食べられるわよ?」

    理珠 「良い提案です、関城さん」 パァァァ 「みんなで分け合って色んな味を食べましょう」

    文乃 (ちくしょー! だよ! 魅力的なこと話してるー! でもあれを看過できないよー!)

    文乃 (桐須先生と成幸くんが手を繋いでいるところをりっちゃんとうるかちゃんが目撃したりしたら……)


    ――――理珠 『……な、成幸さん? どうして、桐須先生と仲睦まじく手を繋いでいるのですか……?』

    ――――うるか 『成幸のバカー! えっち! そんなに大人の女がいいのかー!」


    文乃 「ぐはっ……」 (わたしの胃が、限界を迎える未来が見えたよ……)






    43以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 01:59:19 ID:bgRCVaD6
    うるか 「文乃っち? どうかしたの?」

    文乃 「……ううん。なんでもないよ」

    ニコッ

    文乃 「ちょっと三人で先に行っててもらえるかな。わたしはお手洗いに行ってから合流するよ」

    うるか 「んぅ? トイレだったら一緒に行くよ?」

    文乃 「だ、大丈夫! 大丈夫だから! じゃあ、あとでアイス屋さんの前でね!」

    シュバッ

    うるか 「行っちゃった。文乃っち、お腹でも痛いのかなぁ」

    紗和子 (でへへ、緒方理珠とアイスをシェア……間接キス……)

    理珠 「うるかさん、行きましょう。関城さんがなんかキモいので」

    うるか 「ふたりは本当に大親友なんだよね……?」






    44以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:03:56 ID:bgRCVaD6
    ………………ショッピングモール内喫茶店

    成幸 「………………」

    カリカリカリカリ……

    桐須先生 「………………」

    成幸 (……いい。やっぱり桐須先生の前だとメチャクチャ集中できる)

    成幸 (あいつらと違って、教える必要はないから自分のことに時間が割けるし、)

    成幸 (何より桐須先生のピクリとも笑わない表情が適度な緊張感を与えてくれる)

    成幸 (なんだったらこれから毎日家に伺って勉強したいくらいだ……)

    桐須先生 (……唯我くん、集中できているようね)

    桐須先生 (小美浪さんのメイド喫茶でもしっかり勉強できていたようだし、)

    桐須先生 (この子は本当に、勉強をがんばろうという気概が凄まじいわ)

    成幸 「……ん」

    桐須先生 「? どうかした? 何か分からないところでもあったかしら?」

    成幸 「あ、いや、ちょっとお手洗いに行こうかなと」






    45以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:04:45 ID:bgRCVaD6
    桐須先生 「あら、そう。じゃあ、行きましょうか」 ギュッ

    成幸 「!? いや、さすがに、ひとりで行けますよ!」

    桐須先生 「何を顔を赤くしているの。男子トイレの中にまでは入れないけれど、」

    桐須先生 「トイレの場所までの案内は必要でしょう?」

    成幸 「だ、大丈夫ですよ! 場所は把握してますし!」

    成幸 「先生はここで待っててください!」

    桐須先生 「そう……?」 スッ 「気をつけていってらっしゃい」

    成幸 「はい」






    46以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:05:21 ID:bgRCVaD6
    ………………

    成幸 (……はぁ。さすがにトイレの案内までお願いするのは恥ずかしすぎるよ)

    成幸 (とはいえ、案内板も見にくいな。それっぽい方向に行けば大丈夫かと思ったけど……)

    成幸 (うーん、全然分からん。やっぱり桐須先生に案内してもらえばよかったか――)

    ? 「――ていっ」

    ドスッ

    成幸 「ふぐっ!?」

    文乃 「やぁやぁ、こんにちは、成幸くん。奇遇だね」

    成幸 「何事だよ!? ……って、古橋?」

    文乃 「そうです。あなたの師匠、古橋文乃です」

    成幸 「お前もここに来てたのか。で、どうして俺は手刀を入れられたんだ?」

    文乃 「その質問に答える前に、わたしが質問させてもらってもいいかな?」

    文乃 「唯我くん、君はどうして、桐須先生と仲良く手を繋いでデートなんかしてるのかな?」

    成幸 「……!?」






    47以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:06:15 ID:bgRCVaD6
    成幸 「いや、違うんだ、古橋。これには深い訳があってだな……!」

    文乃 「うん。わたしにはその深い訳は分からないけど、何か事情があるんだろうな、って察することはできるよ」

    文乃 「唯我くん、なぜか眼鏡してないしね」

    文乃 「でもね、今日このショッピングモールにいるのはわたしだけじゃないんだよ?」

    文乃 「りっちゃんとうるかちゃん、あとついでに紗和子ちゃんも一緒に来てるんだよ?」

    成幸 「……? それが何か問題あるのか?」

    文乃 「なんで君はそういうところとことんまで鈍いのかな!?」

    文乃 「……ま、成幸くんは成幸くんだもんね」






    48以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:08:10 ID:bgRCVaD6
    成幸 「ん……。なんか、すまん」

    文乃 「べつに。わたしが勝手に右往左往してるだけ、とも言えるから」

    文乃 「……アイス屋さんの周辺には来ないでね。たぶんわたしたちそこにいるから」

    成幸 「お、おう。わかった。そっちの方には行かないようにするよ」

    文乃 「よろしい。じゃあ、また予備校でね、成幸くん」

    成幸 「あっ……、ち、ちょっと待ってくれ、古橋」

    文乃 「? どうかしたの?」

    成幸 「恥を承知でお願いしたいことがある」

    成幸 「……俺を、トイレまで案内してくれないか? 実は眼鏡がなくて、遠くがほとんど見えないんだ」

    文乃 「……は?」 ハァ 「本当に、君は手がかかる弟だよ、まったく」

    ……ギュッ

    成幸 「す、すまん。ありがとう」

    文乃 「いいよ。手を引くくらい。わたしは成幸くんのお姉ちゃんだからね」

    文乃 (……絶対、りっちゃんとうるかちゃんに見られないようにしなきゃ)






    49以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:09:12 ID:bgRCVaD6
    ………………喫茶店

    桐須先生 「………………」

    ソワソワソワソワ……

    桐須先生 (……遅いわ。何かあったのかしら)

    桐須先生 (道に迷ってるだけならいいけど、不貞の輩に誘拐されたとか、そういうこともあり得るわ……)

    桐須先生 (彼は良い子である分、人の悪意や害意に鈍そうだもの)

    桐須先生 (心配。やはり、探しに行くべきね)

    ガタッ

    成幸 「? 急に立ち上がって、どうしたんですか、先生?」

    桐須先生 「!? 唯我くん、無事だったのね」

    桐須先生 「随分と時間がかかっているようだったから、心配したわ」

    成幸 「ああ……」 (古橋に捕まってた時間が長かったからな……)

    成幸 「すみません。ちょっと道に迷ってしまって……」






    50以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:10:06 ID:bgRCVaD6
    桐須先生 「……ま、まぁ、そんなところだろうと思っていたわ」

    桐須先生 「だから送り迎えが必要だと言ったでしょう? まったく……」

    成幸 「面目ないです……」

    桐須先生 「まぁ、いいわ。ほら、まだ時間はあるんだから、勉強に戻りなさい」

    成幸 「はい」

    カリカリカリカリ……

    成幸 (……そっか。先生)

    成幸 (急に立ち上がったのは、俺を探しに行こうとしてくれたのか)

    成幸 (……母さん以外で、こんなに俺に親身になってくれる大人がいるって)

    成幸 (なんか嬉しいな)






    51以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:12:22 ID:bgRCVaD6
    ………………眼鏡屋

    店員 「お買い上げありがとうございましたー!」

    成幸 (……ほんと、前とほとんど代わり映えしない眼鏡だ)

    成幸 (まぁ、悪目立ちするよりいいか。こういう形の眼鏡、気に入ってるし)

    桐須先生 「きちんと見えてる? 問題はない?」

    成幸 「はい。レンズが新しくなったから視界がクリアです。勉強にも集中できそうです」

    桐須先生 「そう。それは何よりね。しっかり励みなさい」

    成幸 「はい! この眼鏡で、絶対受験を成功させます! ありがとうございます、先生」

    桐須先生 「お礼を言われる筋合いはないわ。眼鏡を壊してしまったのは私だもの」

    フゥ

    桐須先生 「ともあれ、無事今日中に眼鏡が仕上がって良かったわ」

    桐須先生 「完成まで日を置くようだったら、毎日あなたの世話をしなければならないところだったもの」

    成幸 「え……?」

    成幸 「あ、あはは、先生もそういう冗談言うんですね」

    桐須先生 「……?」






    52以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:13:42 ID:bgRCVaD6
    桐須先生 「不可解。私がいつどんな冗談を言ったというのかしら」

    成幸 「へ? いや、だって、毎日俺のお世話を、って……」

    桐須先生 「当然でしょう。もしも眼鏡が今日完成しないようだったら、私は毎日あなたの家に伺うつもりだったわ」

    成幸 「そ、そうですか……」 (本気だったのか、この人)

    成幸 (あっ、あっぶねー! 店にレンズの在庫があって助かったー!)

    成幸 (さすがに毎日家に来られたら大変だし、何より先生に申し訳ないし)


    ―――― ((なんだったらこれから毎日家に伺って勉強したいくらいだ……))


    成幸 (……ん、いや、まぁ、もしそうなってたら、勉強はめちゃくちゃはかどってたかもしれないな)

    桐須先生 「? どうかしたかしら、唯我くん」

    成幸 「あ、いや……。もし今日中に眼鏡が完成していなかったら、毎日先生に勉強を教えてもらえたのにな、って。そんなこと考えてました」

    桐須先生 「……は?」

    ハッ

    成幸 (俺はアホか!? なに考えてたことをそのまま口に出してんだ!?)






    53以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:14:37 ID:bgRCVaD6
    桐須先生 「………………」 ゴゴゴゴゴゴ……

    成幸 (こ、怖え……。まずい。なんとか言わないと……)

    桐須先生 「……唯我くん」

    成幸 「は、はいっ!」 ビクッ

    桐須先生 「この後、時間あるかしら?」

    成幸 「へ……? は、はい。家に帰って勉強するだけなので……」

    桐須先生 「そう。じゃあ、今日はうちにきて、勉強していきなさい」

    桐須先生 「……さすがに毎日というのは無理だけれど、今日は構わないわ」

    成幸 「本当ですか!? じゃあ、お言葉に甘えて、この後お邪魔してもいいですか?」

    桐須先生 「ええ。では、行きましょうか」

    成幸 「はい!」






    54以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:15:19 ID:bgRCVaD6
    成幸 「ん……?」 (待てよ? この後先生の家にお邪魔するってことは……)

    桐須先生 「どうかしたの? 唯我くん? 早く車に戻るわよ」

    成幸 (そ、そうだったー!) ガーン (帰りも桐須先生の車に乗らなきゃってことじゃないかー!)

    成幸 「あ、えーと、その……、やっぱり、おうちに伺うのは悪いかな、なんて……」

    桐須先生 「無為。子どもが妙な気を遣う必要はないわ。行くわよ、唯我くん」 ガシッ

    成幸 「ヒッ……」

    ズルズルズル……

    成幸 (だ、誰か、助けてー! 文乃姉ちゃーん!)






    55以下、名無しが深夜にお送りします :2018/09/12(水) 02:16:18 ID:bgRCVaD6
    ………………幕間 ショッピングモール アイスクリーム屋

    文乃 「んー、美味しい〜!」

    文乃 「イチゴとクリームチーズのコラボが最高なんだよ!」

    キュピーン

    文乃 (……いま、なんか、手のかかる弟のヘルプの声が聞こえた気がするけど)

    理珠 「文乃、文乃、このアイスも美味しいですよ。小豆の甘みが最高です。一口どうぞ」

    紗和子 「この口の中でパチパチするヤツもなかなかよ。食べてみて」

    うるか 「チョコチップもビターで美味しいよ〜。はい、文乃っち」

    文乃 「わーい、いただきまーす!」 ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

    文乃 「美味しーい! 幸せ〜。胃に染み渡る……」

    文乃 (この幸せ空間から出られそうにないから、)

    文乃 (勝手にがんばれ、愚弟! だよ!)


    おわり



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     コメント一覧 (6)

      • 1. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月07日 03:52
      • グッド
      • 2. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月07日 04:13
      • あしゅみー先輩ssいいぞー
      • 3. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月07日 05:59
      • 面白い。情景が目に浮かぶ。
      • 4. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月07日 09:08
      • すげー
        漫画のコマが目に浮かぶわ
        すごい特徴捉えてるんじゃないか?
      • 5. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月19日 10:29
      • あしゅみーメイドで家来てなかった…?
      • 6. 金ぴか名無しさん
      • 2018年10月20日 00:50
      • ※5
        海の直後って設定なんだからまだ行ってないだろ。
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