人魚「憧れの地上にやってきました!」
    2021年02月19日 コメント(6) 長編創作・SS 
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    1 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:24:05.96 ID:UXYRaHXx0
    人魚「海中は暗いし冷たいしなにより面白いことが何もありませんでした」

    男「はぁ」

    人魚「それがどうですかこの地上は!夜になっても明るい街、行きかう人々!」

    男「へぇ」

    人魚「深夜に食べるラーメンなんかは病みつきになる背徳感!実家にいては味わえなかったものです!」

    男「ほぉ」

    人魚「魚介料理も素晴らしいですね。海中でお刺身やお寿司を食べようと思ったら醤油を海に溶かさないところから考えないといけませんから」

    男「ふーん」

    人魚「娯楽施設も多いですよね。まだいけてませんが遊園地とか憧れます。観覧車とか、恋人と乗ってみたいですね〜」

    男「ひ・・・・・・いや、ひから始まる返事はねぇな」

    人魚「まさにパラダイス!本当に、ここに来てよかった!」

    男「で、建前はそれくらいにして本音は?」

    人魚「もう帰りたいです」

    男「あ、客来たぞ」

    人魚「ア、ハイ」





    2 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:25:06.84 ID:UXYRaHXx0
    人魚「イラッシャイマセ-、パスタアタタメイタシマスカー」

    人魚「レジブクロゴリヨウニナラレマスカ?3エンカカリマスガヨロシイデスカ?」

    人魚「ヨンヒャクキュウジュウハチエンニナリマス」

    人魚「センエンオアズカリイタシマス、ゴヒャクニエンノオカエシニナリマス」

    人魚「パスタハオハシカフォークノドチラヲオツカイニナリマスカ」

    人魚「フォークデスネカシコマリマシタ、デハアタタメガオワルマデショウショウオマチクダサイ」




    3 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:26:31.03 ID:UXYRaHXx0
    人魚「毎日毎日コンビニでバイトばかり、1日8時間週5で入っても生活費でほぼすべて吹っ飛ぶ」

    人魚「夕食はその日の廃棄品!お刺身?お寿司?そんなの買うお金も時間もありませんね」

    人魚「ラーメンなんか食べたら臭いが残るから深夜どころかお昼も食べれない」

    人魚「私はこんなことするために地上に出てきたんじゃありません!」

    男「仕方ねーだろ、それが現実なんだから」

    人魚「夢見たっていいじゃないですかぁ!最近は夢でも働いてるんですよぅ・・・・・・」

    男「知ってるか?人の夢と書いて儚いって読むんだぞ」

    人魚「魚類の夢なんだからもうちょっと手心加えてください!」

    男「お前哺乳類じゃねぇか」

    人魚「んなっ!?ど、どこを見てそれを言ってるんですか!」

    男「へそ」

    人魚「胸見ろやぁ!」

    男「無い胸みて何が楽しいんだよ」

    人魚「あります!ありますよ!見せれば満足ですか!?今すぐ脱いでやろうか!」

    男「カメラ映ってるからやめとけ」




    4 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:27:24.26 ID:UXYRaHXx0
    人魚「そもそもですね、我々人魚は水中を移動するという関係上身体の形は水の抵抗を受けにくいようにしないといけません」

    人魚「つまり凹凸が少なくなるような進化を遂げたわけです。決してただの貧乳ではありません!」

    男「お前の妹めちゃくちゃバインバインだったじゃねえか」

    人魚「人の妹に発情しないでください!あの子まだ13歳ですよ!このロリコン!」

    男「客観的な見た目の話をしただけだからえまじであれで13なの?お前17だろ?ホントに姉妹か?」

    人魚「あの子が異端なんです!信じてください!私も母も姉も全員ぺったんこなんです!」

    男「つまり巨乳遺伝子は父親の方に」

    人魚「父は巨乳じゃなくて太ってるだけです」

    男「そういうことじゃなくてだな」

    人魚「は〜、どこかに夢を夢で終わらせてくれない素敵な男の人とかいませんかね〜」チラッチラッ

    男「お、上がりの時間だ。んじゃ、お疲れ」

    人魚「あ、はい。お疲れ様です」




    5 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:28:40.62 ID:UXYRaHXx0
    ―人魚自宅―

    人魚「はぁ・・・・・こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」

    人魚「姫様が陸の学校に通ってるとかいう噂を聞いて私も!って思ったんだけど・・・・・・」

    人魚「やっぱり財力がある姫様と一般人魚の私じゃ生活基盤とか諸々が違うよねー・・・・・はぁ」

    人魚「・・・・・・姫様も一人暮らししてるんだっけ。寂しくないのかな」

    人魚「家に帰りたい・・・・・・お母さんの作ったご飯が食べたい・・・・・・塩味しかしないけど」

    人魚「・・・・・・でも、明日も明後日もシフト入ってるしなぁ」

    人魚「はぁー、私も学生とかやってみたかったなぁ。勉強したり、部活とかやったり、青春したいなぁ・・・・・・高校落ちた私が悪いんだけど」

    人魚「・・・・・・うげ、これ消費期限二日前のだ」

    人魚「危ない危ない。廃棄チェックもちゃんとしてよー・・・・・・したの私だけど」

    人魚「はー、恋人とか作りたいなぁ。男さん、大学生だけど就職決まってるって言ってたし養ってくれないかなぁ」

    人魚「・・・・・・私、いつまでフリーター続けるんだろ」

    prrrrr

    人魚「あ、お姉ちゃんから電話」




    6 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:29:50.85 ID:UXYRaHXx0
    人魚「もしもし、お姉ちゃん?どうしたの?」

    人魚「え?あ、そ、そうなんだ。結婚するんだ、へー」

    人魚「お相手は?私が知ってる人?・・・・・・ごめん、知らないわ」

    人魚「あ、こっちの生活?大丈夫大丈夫!別に困ったりとかしてないし」

    人魚「いやいや、夢にまで見た地上での生活だよ?そんな簡単に帰ったりしないって!」

    人魚「あ、そうだ結婚式・・・・・・日取りとか決まったら早めに教えてね。お仕事休まないといけないから」

    人魚「え、式しないの?あー、お金かー・・・・・お金かかるもんねー」

    人魚「いやいや、ほんとにこっちは大丈夫だって!ほら、便りがないのは元気な証拠って言うでしょ?毎晩電話してるけど」

    人魚「今日はちょっと忘れてただけだってば。あ、でももう妹こっちに寄越したりしないでよ。仕事中に来られても対応できないから」

    人魚「え、男さん?いや、ただの同僚だし。学生だし。全然恋人とかじゃないって」

    人魚「うん、そういうことだから。それじゃあね。・・・・・・あ、そうそう。結婚おめでとう。それじゃあ今度こそ切るね」ピッ

    人魚「・・・・・・そっかー。お姉ちゃん、結婚するんだー」




    7 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:31:33.70 ID:UXYRaHXx0
    人魚「最近は休みの日も一日中布団で寝て、ご飯食べるために起きて、また布団入ってスマホ弄って寝て・・・・・・」

    人魚「・・・・・・ほんと、なんのために生きてるんだろって感じ」

    人魚「最近はずっと人の姿のまま過ごしてるなぁ。私、本当に人魚なのかな」

    人魚「魚の下半身じゃ外に出れないからしかたないけど。かといって尻尾を伸ばそうにもアパートのお風呂は狭いし、水を張るのもお金かかるしなぁ」

    人魚「もしかしたら私、泳ぎ方忘れてるかも。・・・・・・クロールとか覚えた方がいいかな」

    人魚「てか、魔法解いたらかけ直すのが面倒なことが問題なんだよね」

    人魚「人化の魔法、使ってる間は別に魔力は減らないけど・・・・・・かけ直すたびにごっそり魔力持ってかれるしなぁ」

    人魚「王族は魔力がすごいって聞くし、姫様は人魚形態と人間形態と使い分けてるんだろうなぁ」

    人魚「部屋もこんな安アパートじゃなくて、もっと立派な場所で・・・・・」

    人魚「・・・・・・全寮制の高校に落ちた私が悪いんだけど」

    人魚「なんで私滑り止め受けなかったんだろ・・・・・・お父さんお母さんにも意地張って帰らないって言っちゃったし」

    人魚「はぁ、バカだなぁ、私・・・・・・いろんな意味で・・・・・・」




    8 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:32:08.15 ID:UXYRaHXx0
    人魚「・・・・・・男さん、遊びに誘ったら乗ってくれるかな」

    人魚『どもですー。次の休み、暇ですか?暇だったらどっかいきませんか?』

    人魚「・・・・・・冷静に考えて、これ送って大丈夫なのかな」

    人魚「私が人魚だって知ってるの男さんぐらいだしなぁ。誘える相手も他にいないし・・・・・・送っちゃえ」

    人魚「・・・・・・」

    人魚「・・・・・・」

    人魚「・・・・・・」

    ―3時間後―

    人魚「既読つかない」




    9 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:33:27.41 ID:UXYRaHXx0
    人魚(あの後一応OKの返事来たけど・・・・・・)

    人魚「え、これってもしかしてもしかしなくてもデートだったりする?」

    人魚「男と女が二人きりで遊びに行く・・・・・・これってつまりデートだよね?」

    人魚「うん、そうだ。そうに違いない」

    人魚「ふ、服!服買わなきゃ!次の休みは、えっと・・・・・・」

    人魚「・・・・・・当日じゃん」

    人魚「あー、ヤバイヤバイヤバイ!どうしよどうしよ!デート用の服とか持ってないし!こんなことならおしゃれなやつ一着買っとくんだったぁ!」

    人魚「バイト終わりには服屋閉まってるし・・・・・・普段着で行って幻滅されたくないなぁ」

    人魚「あ、あと一応念のために、ほ、ホテルとかも調べておいた方がいい、のかな?」

    人魚「うわー、どうしよう、どうしよう・・・・・・わ、ワンチャンお持ち帰りとか、ある?」

    人魚「・・・・・・デートまで、寝れるかな」




    10 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:34:09.22 ID:UXYRaHXx0
    人魚(ここ二日ぐらいバイトでミスしまくってめちゃくちゃ怒られたけど今日も私は元気です)

    人魚「だって明日は!デートの日!」

    人魚「そして私は明日、大人の階段を上る!」

    人魚「・・・・・・パッドどこやったかな」

    人魚(あれ?でもどうせ脱ぐならパッドとか付けない方がいい?『お前逆着やせするんだなwww』とか言われたら私立ち直れないよ?)

    人魚「あと、デートするならあれだよね、予行演習」

    人魚(脳内シミュレーションモード、オン!明日のデートをシミュレート!)




    11 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:35:49.65 ID:UXYRaHXx0
    ―翌日―

    男(待ち合わせ時間から30分経過。来ねぇな)

    男「はー、なんだよ。自分から誘っといて」

    男(どこに遊びに行くとかも何も聞いてねぇし。今日は暇だったとはいえ、なんだかなぁ)

    男「・・・・・・もしかして、寝てる、とか?」

    男(普段の生活ぶりを聞いてる限りじゃ休日は寝て過ごしてるらしいし。寝過ごしてる可能性はあるな)

    男「電話してみるか」

    男(一応考えといたプランがどこまでいけるかわからんな、これじゃ)




    12 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:36:31.19 ID:UXYRaHXx0
    人魚「うへへ・・・・・・男さん、お寿司だけじゃなく私も召し上がれ〜・・・・・・zzz」

    prrrrr

    人魚「うー・・・・・・?うるさいなぁ・・・・・・こんな朝から電話なんて・・・・・・」ピッ

    人魚「はぁい、もしもし〜?」

    男『もしもし、おはよう』

    人魚「あぇ?おはようございま・・・・・・い、今、何時ですか?」

    男『12時半』

    人魚「・・・・・・あぅあわいぁい!?」

    男『その様子だとやっぱり寝てたみたいだな』

    人魚「ご、ごめんなさいごめんなさい!すぐに行きます!行きますから!捨てないでください!おねがいしますぅ!」

    男『わかった、わかったから!待ってるから!声でけぇ!』

    人魚「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!ありがとうございます!」

    人魚(急いでメイク!その前にシャワー浴びないと!あ、布団干さなきゃ!あ、やばい洗い物放置したまんまだ!)




    13 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:37:43.05 ID:UXYRaHXx0
    男「で、いろいろやってたら2時間たっていましたと」

    人魚「ううぅぅ・・・・・・本当にすいません・・・・・・」

    男「しかも寝癖直ってないし」ピン

    人魚「あうっ!」

    男「まあいいか。とりあえず腹減ったしなんか食いに行こう」

    人魚「え、まだ食べてなかったんですか?」

    男「は?」

    人魚「いや、その、てっきり私が遅いから先に何か食べてるものかと」

    男「・・・・・・廃棄弁当はうまかったか?山賊焼きだかなんだか」

    人魚「新商品だから期待はしてたんですけどあれは外れの部類でしたねー・・・・・あっ」

    男「てめぇ人待たせといて悠長に飯食って他やがったのかクソが!そりゃさらに2時間遅れるわな!」

    人魚「ひぃぃ!ごめんなさいごめんなさい!」

    男「ったく。とりあえず俺は腹が減ったからどっかの店はいるぞ」

    人魚「あ、せ、せめてお詫びとしてお金は私が出しますから」

    男「5個も年下の女に奢られる趣味はねぇ」

    人魚「でもぉ・・・・・・」




    14 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:39:08.42 ID:UXYRaHXx0
    人魚(結局近くのハンバーガー屋さんに入りました。さりげなくポテトを奢ってもらいました。揚げたてポテトはおいしいです)モグモグ

    男「んで、この後どこ行くんだ?」

    人魚「ふぇ?」モグモグ

    男「ポテトに夢中になってんじゃねーよ」

    人魚「あ、いえ、その、コンビニの物じゃないご飯食べるのっていつ振りかなって」

    男「もっとまともなモン食えよ」

    人魚「そんなお金も時間もありません」

    男「夜勤とか・・・・・・そういやお前17だから夜勤できねーのか」

    人魚「そうなんです・・・・・・もっと稼ぎたい・・・・・・」

    男「でもお前夜勤し始めたら絶対親御さんに文句言われるぞ」

    人魚「ふぇ?」

    男「電話するの夜って前言ってただろ?で、その夜に電話にでなくなるってことは・・・・・・」

    人魚「夜にも働かないといけないぐらい生活がヤバイのかってことになりますね」

    男「毎晩電話かけてこなかったら電話してくるような家族なんだろ?普通に連れ戻される可能性もあるぞ。願ったり叶ったりかもしれんが」

    人魚「実家に連れ戻される・・・・・・いっそそれでもいいかもしれませんね。私に地上は早かったんです・・・・・・」

    男「それはそれとしてこの後の行先は」

    人魚「もうちょっと感傷に浸らせてくれてもいいんじゃないですかね」




    15 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:40:15.61 ID:UXYRaHXx0
    男「こんな時間じゃなかったら遊園地にでも行ってみようとか言うつもりだったんだけどな」

    人魚「え?」

    男「ほら、この前行きたがってただろ?」

    人魚「あ、それは、そうですが」

    男「誰かさんが寝坊した上で悠長に身支度と家事を終わらせて飯食ってるからそういうわけにもいかねぇ」ツンツン

    人魚「あうっ、あうっ、ほっぺつつかないでください」

    男「一応いろいろ考えてたプランは全部潰れたからこれからどうするって話だ」

    人魚「あうあうあう、そ、それだったら、その・・・・・・」

    男「?」

    人魚「お、男さんの家、とか?」

    男「却下」

    人魚「デスヨネー」

    男「いくらお前がお花畑な夢見ガールでも一人暮らしの男の家にホイホイ行こうとするんじゃねぇよ。何が起こっても文句は言えんぞ」

    人魚「あ、じゃあ私の家に」

    男「却下」

    人魚「どうしてですか!」

    男「恋人でも何でもない男を一人暮らしの家に連れ込むな」

    人魚「うぅ・・・・・・でもぉ・・・・・・」

    男「他人に説教すんのもあれだが、お前はとりあえず自分が女ってことを自覚しろ。その内悪い男にひっかかって親御さん泣かせるぞ」

    人魚「はい・・・・・・」




    16 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:41:29.79 ID:UXYRaHXx0
    人魚(その後は近くのショッピングモールでちょこっとお買い物、あとはゲームセンターに行ったり本屋に行ったりして時間を潰しました)

    人魚「おかしいなぁ・・・・・・私の脳内シミュレーションだと今頃ホテルに連れ込まれてるんだけど・・・・・・」

    男「5歳年下の未成年をホテルに連れ込むわけないだろうが。卒業控えてんのに退学にでもなったらとんでもねぇよ」

    人魚「わひぃ!?お、男さん!?戻ってたんですか!?」

    男「残念ながらな。んじゃ、そろそろ行くぞ」

    人魚「あ、さっきの発言に関する話はこれで終わりなんですか?あの、男さん?今どこに向かってるんですか?」

    男「いいからついて来い」

    人魚「は、はい」キュン

    人魚(ちょっと強引な感じに胸がキュンとしました。私ってMなのかな)




    17 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:42:20.85 ID:UXYRaHXx0
    人魚「あの、ここは・・・・・・」

    男「乗りたかったんだろ?観覧車」

    人魚「そ、それは、そうですけど・・・・・・」

    男「この観覧車は夜に乗ると対岸の夜景が一望出来てきれいなんだとよ。ほら、乗るぞ」

    人魚「は、はい!」

    人魚(私が冗談めいて少し言っただけのことをちゃんと考えてくれてたなんて・・・・・・)




    18 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:44:28.09 ID:UXYRaHXx0
    人魚「夜景・・・・・・すごくきれいです」

    男「友達に散々自慢されたが・・・・・・たしかにこれはいいもんだな」

    人魚「海の中は、夜になると真っ暗で何も見えなくて・・・・・・いろいろありましたけど、私、地上に来られてよかったです」

    男「ま、そう思ってもらえたんなら地上の人間としては嬉しいこった」

    人魚「やっぱりここは、私たちの世界とは違う・・・・・・とても煌びやかで、眩しい世界です。明るいところに惹かれてしまうのは、私が魚だからですかね」

    男「それに憧れて飛び込んできたんだろ?たまには苦労の甲斐があってもいいじゃねぇか。ただの魚はこんなとこまでこねーよ」

    人魚「・・・・・・えぇ。今日まで頑張ってきて、はじめて、報われた気がします」

    人魚(だってこんなところ、一人で来たって楽しくありませんから)




    19 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:45:13.53 ID:UXYRaHXx0
    人魚「そして最後はお寿司、ですか」

    男「回る方で悪いけどな。回らない寿司に連れていくほど俺の懐は温かくねぇ」

    人魚「・・・・・・はじめて食べました。お寿司は廃棄で出たことないですから」

    男「そりゃよかった。腹いっぱい食え」

    人魚「・・・・・・ところで、ここのお金は」

    男「俺が出すから気にすんな」

    人魚「それです」

    男「ん?」

    人魚「男さんはどうして、私にここまでしてくださるんですか?」

    人魚(ただのバイトの同僚に、こんなにもしてくれるだなんて。私、勘違いしちゃいますよ?期待しちゃいますよ?ねぇ、男さん)

    人魚「最初に遅れた時点で愛想尽かされていてもおかしくなかったのに、それなのにずっと待っていてくれて、今日のお金も全部出してくれて」

    人魚(そんなこと、なんとも思ってない人にはしないですよね?特別な人以外にそんなことできないですよね?)




    20 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:46:25.46 ID:UXYRaHXx0
    男「・・・・・・頑張ってるやつを応援したくなるのが男心ってやつだよ」

    人魚「・・・・・・それだけ、ですか?」

    男「ああ、それだけだ。せっかく見たこともない世界にあこがれて夢を見て、飛び込んで。現実に叩きのめされて。それで終わるなんてあんまりだろ」

    人魚「・・・・・・」

    男「夢見て飛び込んだ先には夢の続きがあってしかるべきだろ。じゃねーとなんのために飛び込んだのかわからねーじゃねーか」

    人魚「・・・・・・それだけ、なんですか?本当に?」

    男「・・・・・・ま、あとはそうだな。目の前で年下の女が自棄になってて、それを放置できるほど俺は薄情にはなれねぇよ。んなことしたら親父にケツひっぱたかれちまう」

    人魚「・・・・・・」

    男「ま、でもそうだな。お前が誘ってこなかったらこの話はなかったんだ」

    人魚「え?」

    男「お花畑な夢見ガールが現実みて、それでもまだ夢を見ようとあがいてるんだ。その手助けぐらいしてやってもいいだろ・・・・・・ってのはクサイか」

    人魚(つまり、男さんにとって私が特別なわけじゃなくて、ただ彼が優しかったからってだけで・・・・・)




    21 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:48:23.13 ID:UXYRaHXx0
    人魚(私がまだ夢を見たいと動いたから、男さんは応えてくれた)

    男「飯食い終わったらそろそろいい時間じゃねーか。そろそろ帰らねぇと補導されるぞ?」

    人魚(このままだと、夢は夢のまま、さめてしまう)

    男「ほら、今日はいい夢みれただろ。な、人魚?」

    人魚「・・・・・・嫌、です」

    男「え?」

    人魚(夢を夢のまま、終わらせたくない。このままだといい夢で終わってしまう)

    人魚「まだ、帰りたくない」

    男「おいおい、そうは言われても時間が・・・・・・」

    人魚「私は、男さんのおかげでとてもいい夢が見れました」

    男「え、ああ、そう思ってくれたんなら俺も」

    人魚「でも、知ってますか?人の夢って書いて儚いって読むんですよ?」

    男「いや、知ってるけど・・・・・・」

    人魚「ここで終わったら、全部消えてしまいます。お伽噺の人魚姫のように」

    人魚(人魚姫は最後の最後で自分を抑えこんでしまったから、文字通り水の泡になった)

    人魚「私は、夢を見るだけで終わりたくない!今日を夢のまま終わらせたくない!」




    22 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:57:08.59 ID:UXYRaHXx0
    男「そうは言ってもだな、これ以上は・・・・・・」

    人魚「・・・・・・私がいくらお花畑な夢見ガールでも、一人で男性の家にいくことがどんなことかぐらいわかってます」

    男「・・・・・・多分、それはただの憧れだ。たまたま辛いところにちょっと年上のちょっと頼れる男がいたから、錯覚してるだけだ」

    人魚「それに何の問題があるんですか!」

    男「そりゃそんなことで勘違いしたまま、後悔して欲しくねーからだよ」

    人魚「今はあなたの言うとおり勘違いかもしれません!あなたの言ってるとおり後悔するかもしれません!」

    人魚「でも!勘違いも後悔も、杞憂で終わらせればいいだけです!勘違いだと思っていたこと自体が勘違いで、後悔すると思ったこと自体に後悔したい!」

    人魚「夢も!憧れも!錯覚も!現実になってしまえば同じです!私の夢を現実にしてくれたのはあなたです、男さん!」

    男「・・・・・・」

    人魚「・・・・・・でも、まだ私はお寿司を食べただけです。私の現実は、まだ一つだけ」

    男「・・・・・・おいおい、観覧車に乗ったのはカウントしてくれないのか?」

    人魚「男さんこそ勘違いしていますね」

    男「え?」

    人魚「私は観覧車に乗るのが夢なわけじゃないんです」

    男「いや、でも確かこの前」

    人魚「『恋人と』観覧車に乗る。それが、私の夢の1つです」

    男「え?あー、なんかそんな感じで言ってたような気も・・・・・・」




    23 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:58:47.21 ID:UXYRaHXx0
    人魚「ね、男さん。私まだまだ叶えてない夢ばかりです。私はまだ、今までの苦労がほとんど報われてません。男さんは私に中途半端に夢を見させて終わらせちゃいますか?」

    男「はぁ・・・・・お前、結構図々しいな」

    人魚「ええ。人魚姫に足りなかったのはこの図々しさです。でも、このままだと私の苦労も水の泡ですね」

    男「・・・・・・ちなみに、断ったら?」

    人魚「この先、悪い男にひっかかっちゃうかもしれません」

    男「へいへい。一回面倒見だしたら、最後まで見てやらないとな」

    人魚「・・・・・・男、さん」

    男「付き合ってやるよ。お前の夢に」

    人魚「いいえ、夢じゃなくて、現実に、ですよ」

    男「わかったよ。ったく・・・・・・」




    24 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 00:59:20.38 ID:UXYRaHXx0




    男「人魚。俺と付き合ってくれ。俺の恋人になってくれ」

    人魚「はい!男さん、私の恋人になってください!」








    25 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 01:01:21.97 ID:UXYRaHXx0
    人魚「・・・・・・では改め、男さん。私、今夜は帰りたくないです」

    男「あー、はいはい。わかってる。来ればいいよ、俺の家に」

    人魚「ふふ、ホテルには連れて行ってくれないんですか?ひぃひぃ言わせて見せますよ?」

    男「それはまた今度だ。とりあえず今日は、そうだな。お前の夢をもう一つ現実にしてやろうかな」

    人魚「そ、それって、そ、その」

    男「お、ちょうどいいところに」

    人魚「え?」

    男「ほら、行くぞ。深夜のラーメン、食べたかったんだろ?深夜にはちょっと早いが、まあいいだろう」

    人魚「え?あ?え?」

    男「お前が期待してたことは、さすがにもうちょい後でだ。とりあえず今はこれで納得してくれ」

    人魚「・・・・・・もう!そういうところが好きです!」

    男「往来でそういうこと言わんでくれ。周りの目が痛い」

    人魚「いいんです。付き合い立てカップルですから。これくらいで」




    26 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 01:03:31.51 ID:UXYRaHXx0
    人魚「あ、もしもしお母さん?ごめんね、昨日は電話に出られなくて」

    人魚「あ、聞いちゃう?聞いちゃう?えへへー、実はねー、私、ついに彼氏ができましたー!」

    人魚「そうそう、あの男さん。もうね、ほんとにかっこよくてね、優しくてね、大人って感じがしてね」

    人魚「私がちょっと話題に挙げただけのやりたいこと、いっぱいやらせてくれたの!無理だよ〜、あんなの惚れ直すに決まってるよ〜」

    人魚「実家につれていく・・・・・・のは無理だね、うん。人間だし。呼吸はともかく水圧で死んじゃう」

    人魚「あ、そうそう。昨日はじめてお寿司食べたの!すごいねーあれ。そうそう、ほんとに回ってた!おもしろかった!」

    人魚「人間の食への探求心はバカにできないねー。おいしいものを食べるためなら悪魔に魂を売るよ、あれは」

    人魚「・・・・・・ね、お母さん。私ね、ほんとはちょっと辛かったの。一人で無理にこっちに来て、行きたかった学校にも行けなくて」

    人魚「毎日毎日コンビニのお仕事ばかりで、慣れない足を使ってずっと立ち仕事で。もう帰りたいって思ってたの。強がってたの」

    人魚「でもね、今は帰りたくない。私、まだまだこっちにいるよ。だって、苦労した事はその分ちゃんと報われるってわかったし」

    人魚「それに、今は一人じゃないしね。男さんが一緒にいてくれるから、大丈夫」

    人魚「・・・・・・え?今?男さんの家だよ?うん、ここの方がバイト先近いし。前のアパートは引き払うつもり」

    人魚「男さんの就職先はここから近いから、引っ越すつもりもないらしいし。二人暮らしすると生活費も余裕ができるし」

    人魚「うんうん、だから・・・・・・げ、お父さん聞いてたの?そ、そういうことだから!それじゃあね!」




    27 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 01:05:07.33 ID:UXYRaHXx0
    男「お前なぁ、親父さんの話もちゃんと聞いてやれよ」

    人魚「だってぇ、あそこから絶対口うるさくなるのわかってるんですもん。やれ相手はどんなやつなんだーとかやれ変なことはされてないかーとか」

    男「そりゃ心配するわ。俺だってお前みたいなお花畑ガールが知らない男の家に転がり込んだとか聞いたら妹ちゃんに連絡するし」

    人魚「・・・・・・え、うちの妹の連絡先知ってるんですか?」

    男「一回来ただろ?そのときに『姉になにかあったら連絡お願いします』って」

    人魚「そ、それから連絡とったりとかは」

    男「暇なときには報告ついでに雑談したりしてる程度か。たまに自撮りとか送ってくる」

    人魚「・・・・・・う、浮気だー!」

    男「人聞きの悪いこと言うな!」

    人魚「あんのガキンチョまさか最初から狙って・・・・・・いや、でも結果としてここにいるのは私だから寛容な心で受け入れるべきなのでは?」

    男「てかさっきから俺のこと『お義兄さん』って呼んできてるんだが。むず痒いから何とかしてくれ。お前の妹だろ」

    人魚「もしもしぃ!?私の彼氏に変なこと吹き込まないでくれるぅ!?てか何あんた自撮りとか送ってんのよ!どういうつもり!?お父さんうっさい!妹に電話戻せ!」

    男「・・・・・・とりあえず、来週は遠出して遊園地かな。ちゃんとホテルも予約するか。健全な方だけど」




    28 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 01:09:01.79 ID:UXYRaHXx0
    【おまけ】

    人魚「ハッピーバレンタイン!私の愛がこもった本命チョコです!本命です!」

    男「・・・・・・その裸リボンがか?チョコ要素はどこに?」

    人魚「チョコは冷蔵庫で冷やしてます!これがほんとの女体盛です!」

    男「盛ってねぇじゃねぇか」

    人魚「いいんです!これがしたかったんです!これが夢だったんです!」

    男「捨てちまえそんな夢」

    人魚「だってぇ、男さん付き合って半年たつのにまだ手を出してくれないじゃないですか!出してくださいよ!魚類な私をおいしくいただいてくださいよ!」

    男「お前哺乳類だろ」

    人魚「どこ見ていってるんですか!見たいならリボン解いてください!」

    男「へそ」

    人魚「いいから解いてください!」

    男「お前妙な所で行動力あるよなぁ・・・・・・」

    ピンポーン

    人魚「あ、はーい」

    男「その恰好で出ようとするな」




    29 ◆GiMcqKsVbQ :2021/02/15(月) 01:12:28.69 ID:UXYRaHXx0
    男「クール便でなんか届いた。俺宛」

    人魚「なんか注文してたんですか?」

    男「いや、特になにも買った覚えはないが・・・・・・伊豆半島から?」

    人魚「・・・・・・この送り主の住所、ウチの家です」

    男「え?お前の家海中だろ?」

    人魚「伊豆半島沖の海中が我が家です。だから住所も伊豆です。っと、それはそれとして開けますよ!嫌な予感がします!」

    男「あ、うん。これは・・・・・・」

    人魚「・・・・・・チョコ、ですね」

    男「メッセージカード付き・・・・・・あ、お前の妹からじゃねーか」

    人魚「がああああ!人の彼氏になに送り付けてるのよ!あいつ!」

    男「えっと?」

    人魚「変なこと書いてないですよね!」

    『どうも、お義兄さん。いつもお姉ちゃんがお世話になっています。折角のバレンタインなのでお礼も兼ねてチョコレートを贈りました。愛情をたっぷり込めた義理チョコなので味わって食べてください』

    男「なんだ茶目っ気はあるけど普通のお礼じゃないか。これは来月ちゃんと返さないとな」

    人魚「あ、二枚目あります」

    『P.S たまには生写真も。私はあと二年ちょっとです』

    人魚「なっ!?こ、こんなに谷間をアピールした写真を・・・・・しかもなんでこんな貝殻水着なんて着てるのよ!そして二年ちょっとってどういうこと!?」

    男「え、つけないのか?」

    人魚「つけませんよ!普通に水着の上にシャツです!あの子は!ほんとに!もう!人の彼氏をなんだと思ってんのよ!」

    男「・・・・・・うん、とりあえず、チョコはありがたく食べさせてもらおうか」


     コメント一覧 (6)

      • 1. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月19日 07:19
      • え、ちょっとキモい
      • 0
      • 2. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月19日 08:50
      • 男がきもすぎるから途中でやめたわ
      • 0
      • 3. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月19日 09:08
      • 結構すき
      • 0
      • 4. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月20日 01:14
      • 人魚姫のごめんねごはん思い出したわ
      • 0
      • 5. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月20日 08:50
      • 女が書いたような気持ち悪さ
      • 0
      • 6. 金ぴか名無しさん
      • 2021年02月22日 03:45
      • 現実だったら無理だけど小説ならこのくらい気障でもいいと思う、好き
      • 0
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